2022年春クール「日曜ドラマ」枠(22時30分~23時25分)。日テレ95年~97年(連ドラ2回、SP2回、その他SP、映画)の初代(金田一=堂本剛、美雪=ともさかりえ、剣持=古尾谷雅人)、01年(SP、連ドラ)の2代目(松本潤、鈴木杏、内藤剛志)、05年(SP1回ポッキリ)の3代目(亀梨和也、上野樹里、加藤雅也)、13年~14年(SP2回、連ドラ)の4代目(山田涼介、川口春奈、山口智充)に続く5代目の『金田一少年の事件簿』ドラマ化。
歴代土曜9時枠だったが、土9枠は土10へ移動していた。その土10ではなく、日曜枠へ移動させての放送となったが歴代最低の視聴率平均6%となってしまった(山田版でも10%には乗せていた)。
SP無しでのいきなりの連ドラ放送はシリーズ初。また過去4シリーズで同じ事件を再度ドラマ化することはなかったが今作は1番最初の95年SPの『学園七不思議殺人事件』のリメイクからスタートするなど、未ドラマ化原作だけでなく、リメイクも含まれる。結果的にリメイクされたのは堂本版のみに限られた。
金田一役にはなにわ男子の道枝駿佑、美雪役は上白石萌歌だが、上白石萌歌は2014年4代目山田涼介版『金田一少年の事件簿N(neo)』第1話にて当時14歳で犯人役で出演しており、犯人が美雪になるのは史上初となった。またあれから8年経過して22歳となっていて歴代美雪最年長となった。沢村一樹は若々しい印象だが歴代剣持ダントツ最年長の54歳である(古尾谷氏は30代、他の3人も当時40代)。
1話 File01 学園七不思議殺人事件
95年4月8日、1番最初のSPドラマとして制作された話のリメイク。リメイクといっても95年ドラマ版は原作を大幅に脚色し、原作の犯人が途中で退場、真犯人をオリジナルキャラで新たに設定するという改変を行っていたため、原作漫画と同じ犯人でドラマ化されるのはこれが最初となり、原作を読んでない当時のドラマで女性教師が犯人だったと記憶しているオールド視聴者にとってはそもそも容疑者に女性教師がいない、リメイクで犯人変わった、という事に一応なるようにはなっている。
30分拡大だがそれでもかなり圧縮、詰め込み展開となり、桜樹先輩(大友花恋)がまだ印象も固まる前から殺され、真壁(細田佳央太)が原作以上に歴代真壁最低のクズ野郎っぽいなと思う間もなく、真壁にゴーストライター疑惑を吹っ掛けた尾ノ上(前田航基)が逆に言い負かされて発狂し、その勢いのまま殺され、美雪もあっさり襲撃され…と事件は駆け足で進行。尾ノ上(前田航基)ってあの子役兄弟お笑いコンビのまえだまえだの兄か…。激太りと言われていたが、マジで年々大きくなっていくな…。
今回は真壁のゴーストライターのはずの鷹島が登場人物から削除されてしまい、佐木(岩﨑大昇)がゴーストライターに改変。今回の事件を通して真壁に見切りをつけ、事件解決のために金田一と行動を共にした事で金田一の家来になると宣言したので、真壁はマジでいいところもかわいげもない性格悪いだけのクズ男のまま終わった。またビデオカメラを終始撮影し続ける佐木の設定は時代を反映して自撮り棒装着のスマホカメラで撮影している設定に変更。現代的になったな…。カメラオタクっぽさが無くなってしまったがそもそも事件解決のヒントになる映像記録係であればいいので終始ビデオカメラを撮り続けるカメラオタクである必要はないという英断か…。
犯人的場(光石研)は影が薄く、代わりに立花(杉本哲太)が金田一とも親しく出番の多い設定に変更されていた。的場が30年前に製薬会社の社員で新薬の人体実験で6人全員死亡したという原作設定は現状を踏まえて変更されたようで(2020年以降の世界で製薬会社が悪徳というのは…ね?)、建設会社設定に変更。25年前の1997年に変更された事で事件の発端となった大昔の出来事が原作や初代放送時よりも未来の話になってしまった辺りに年月の経過を感じまくり…。マジかよ。10年前の青山ちひろ失踪だって当時は80年代の話だったのに、今から10年前って2012年だぜ…その1年後には4代目金田一やってるんだぜ…。
で、建設会社設定に変えて、当時ずさんな建築工事体制だったのでろくに地質調査もせずに新校舎建設を始めて毒ガス発生で6人死亡という超展開に…。的場はこのタイミングでは一旦帰宅していたため不在だったが、孫のために頑張って働くと言っていたおじいちゃん作業員(北見敏之)が自分のせいで事故が起きたと放心しているのを見かけて自分と入れ替わり(的場が現場にいておじいちゃん作業員は食事に行っていた事にする)を提案して守ろうとしたが会社上層部はもっと上をいっていて事故自体を隠蔽、なんと死んだ6人を旧校舎の下に埋めて行方不明扱いでごまかし、的場には見張り番として教師として赴任するように指示を出していたという。
原作ではもっと小心者ながら救いの無い身勝手な奴という印象だった的場だが演じている光石研の人柄の良さが出ているのか先の身代わり提案エピソードぶち込みにより割と穏やかに過去の罪を告白、さらに教師として楽しい日々もあったと語り始めたのでそこまで哀れな感じでもなくなった。ただ青山ちひろ殺害に関しては青山ちひろに30年前の関係者だったところまで暴かれて警察に告発すると宣言されたので殺しにしかかった原作と違い、青山が旧校舎下の白骨死体を発見しているのをこっそり見ていて、青山が的場を疑うより前に呼び出していきなり殺してしまった。原作より穏やかに語っておいて青山殺害時だけ原作より鬼畜じゃないか…。
直後に立花が青山ちひろの父親だった事を明かして特攻して的場を刺し殺す場面も改変。的場は死なず、立花は殺人犯として逮捕ではなく殺人未遂で情状酌量の余地という処理になった。また立花と金田一が原作より親しい仲にした事で逆に青山が立花の娘だったなんて想像もつかなかった(金田一がこの瞬間驚愕していた)感じになったので、薄々その可能性も考えていたっぽいのにみすみすドヤ顔で的場の犯行を暴いて娘の白骨死体を一緒に見せて立花を暴走させてしまったという原作のちょっと設定ガバガバ感のあった部分は修正された。
全体には…まあやはり27年も経つと仕方ないんだけど色々無理やりなところや気になるところは増えてしまうもんだよなぁとは思った。今作での金田一と剣持はここが初対面なのでよそよそしいが剣持が終始丁寧な態度で金田一に対しても協力的で敬語で話しているのに対して金田一は「刑事さん」呼びまではいいにしても終始敬語を使わずタメ口。
犯人相手にも偉そうな態度だったがこれでもかなり抑えられてはいた。これは『犯人たちの事件簿』でも遠回しにネタにされてしまい、的場が「私は何十歳も年下の生徒に「的場」と呼び捨てにされながら罪を暴かれ」「たっぷりと叱られ」なんて記述が入るくらいだったためか「的場」呼び捨ては極力控えられ「この白骨の前でもう1度言ってみろ!」と金田一が強い口調で的場に説教するシーンも省かれた。
この辺りは難しいところで原作と初代当時は金田一より年下の小学生だったので金田一が偉そうな態度でも気にならなかったんだけど同年代を越えるとやっぱり態度のデカさは気になってきてしまう。特に今回剣持が終始丁寧な対応をして敬語で喋っているので金田一が生意気に見えてしまうところがあった。ただ少年っぽさも残している道枝駿佑はそれなりにはまり役ではあったと思う。上白石萌歌は歴代に比べてもちょっと年齢が行き過ぎてしまった感じはした。10代で…となるとやれそうな子は多いけど今の17~19歳って『明日、ママがいない』メイン勢とか芦田プロ世代がけっこう多くて子役イメージを引きずってしまうためだろうか。それにしたって朝ドラ出演中の上白石萌歌を無理に引っ張ってこなくてもなぁ…。沢村一樹は…歴代剣持ダントツ最年長なのに若い。30代の頃からほとんどイメージが変わってないのが凄い。
4代目の時も思ったけど金田一耕助の孫設定は既に破綻寸前から破綻に寄っており間もなく破綻を迎える。金田一耕助が1913年大正2年生まれ、金田一一が2022年で高校2年生16歳なら2006年生まれになるため、一誕生時で耕助93歳である。老齢期~最晩年に超ハッスルして子供を作っていた事にしてギリギリまでずらしていっても、そもそもの寿命問題として限界だ。今年還暦となる原作者天樹征丸こと樹林伸も気にしている様子が無いためもうこのままのらりくらりで逃げ切るつもりと思われるが、果たして「ご先祖様の名にかけて」や「ひいじいちゃんの名にかけて」に台詞を変える時は来るのだろうか。
旧校舎が木造という設定もさすがになぁ…。これ旧校舎が木造とか田舎は現役で木造ってのは90年代の定番設定だったけど(映画『学校の怪談』とか)、さすがに2022年時点で都内の高校に木造の旧校舎が残っているなんて事はあるのだろうか。なんかもう95年当時から30年近く経ってるわけで95年当時の新校舎が旧校舎になっててこれを取り壊して新・新校舎へ建て替えたり補強工事を進めているのが2022年ではないのか。
再放送 悪魔組曲殺人事件
知床の海難事故を受けて2話の放送を謎に1週間自粛。百歩譲って船上の事件とか船の事故が引き金になっている「悲恋湖」「幽霊客船」みたいな事件が延期になるなら分かるが船、海、孤島の事件で延期って事は、オペラ座館、秘宝島、墓場島、仏蘭西銀貨(海に死体捨てに行く描写あり)、天草財宝伝説、錬金術…とかけっこうな数の事件がダメだったことになりさすがにやりすぎなのでは…。そもそもいきなり視聴率1ケタ、気にするような人は見ないし、話題にもならないずれにせよ急遽初代堂本剛版1996年2期の1話を再放送。2月~4月まで関東ローカル深夜枠で過去全シリーズ(欠番の異人館村以外)を過去へ遡っていくように連日再放送しており、3月28日深夜に放送されていたがまさかのゴールデン枠再放送となった。
何故この事件だったのかは良く分からないがこの事件は原作コミックには無く、当時CDブックとしてドラマCDという変則的な形で発売されとっくに廃盤になっていて、ノベルス化も漫画化されていない。とっくに原作の流通が無くなっている(中古ではある)ので、原作読者でも持ってない人が多いというのがあったのかも。個人的にも原作とノベルス(決死行までの漫画と邪宗館までの全ノベルス)、関連本を完結までほぼ全部集めていた当時でもCDブックはスルーしていた。
当時リアルタイムで見たけど薄暗~い話だった以外に印象が無く、改めて26年ぶりに見ても何一つ覚えていなかった。それにしても凄い詰め込みっぷりで足早な展開だったんだなぁ…。松本恵が意味深なだけで実際は何も無かったような変なキャラだったのも覚えていなかったが、サイコメトラーEIJI、ガラスの仮面、聖者の行進、世紀末の詩など連ドラヒロイン連発になるのは翌97~98年(その後は数年行方不明となり、松本莉緒に改名して02年に復帰した)でこれはその前だったからまだ認識してなかったからか。
2話 File02-1 聖恋島殺人事件(前編)
2013~2017年まで連載していた『金田一少年の事件簿R』(全14巻)の最後から2つ目の事件が原作。Rシリーズになると最早立ち読みすらしていない完全未読なので原作は全く把握していない。ドラマ化に当たっては例のよって登場人物数の削減とそれに伴うキャラ統合改変は行われている模様。また3つ目の殺人と1つ目の殺人を入れ替えて構成した模様。
原作では金田一、美雪、剣持警部が3人で磯釣り大会に出ていて剣持の活躍で決勝に参加する事になってその舞台として島にやってくる設定だったらしいが、今作ではテスト明けに金田一、美雪、佐木が釣り堀に来ていたところ休暇で来ていた剣持と前回事件以来の再会。剣持がフィッシングツアーに行くことを話して前回の事件解決に協力したお礼も兼ねてと3人も誘われたので原作では同行しない佐木も含めた4人でフィッシングツアーに参加するという設定に。休暇に1人でフィッシングツアーに参加しようとしていたこのドラマの剣持は独身なのだろうか(妻が釣りに全く興味が無いので趣味の釣りの時は1人行動というパターンもあるが)。
参加メンバーはなんか悪そうで殺されそうなテンプレ教授(前編では生き残った)と悪そうな教授の取り巻きばかり。いかにも殺されそうな医師2人(案の定2人とも殺された)+教授に取り入って契約をもらおうと必死な医療機器メーカー2人の4人セット、ツアーガイドが元看護士でこの医師勢の医療ミスに巻き込まれてクビになっていたり、島の事を調べている記者(生田絵梨花)、島の唯一の住人で管理人。このうち医師2人が殺されてしまう。事件の全容が全く掴めない中、金田一は島全体に響き渡るセイレーンの鳴き声とされるその音が戦時中の不発魚雷によるものだと見破り、事件の謎もジッチャンの名にかけたところで次回へ続く。
比較的新しい原作(連載は2017年頃だがこの後は『37歳』に移行していた)だが、孤島で起きる伝説と絡めた殺人事件というとっても金田一テイストな感じが懐かしさを感じる。
前回の事件で会ったばかりなので「金田一君」「刑事さん」呼びだった金田一と剣持だったが、第2の事件で海に引きずり込まれた被害者を助けるために海に飛び込んだ金田一に対して剣持が「はじめ!はじめ!」と連呼、金田一は「オッサン!オッサン!」と連呼した事で「はじめ」「オッサン」に切り替わった。その後の台詞で何でオッサンなんだ?だってオッサンじゃん!というしょーもないやり取りをしていたのは展開がやや強引だったためか。
あと今回の金田一はスケベ要素が皆無なようで美雪に全くその気がなさそうな態度。美雪の方が意識している感じになっていたが、これもなんだか年上のお姉さんが世話焼きみたいに見えてきてしまうところが…。
3話 File02-2 聖恋島殺人事件(後編)
登場人物を1人ずつ名前とプロフィールを出して確認し合う金田一、剣持、美雪、佐木の4人。とっても説明調に整理し終わった直後に少し休もうと明るく提案する美雪だったが金田一は「黙っててくれ」と言い放ち美雪しょんぼり。見かねた佐木が美雪の部屋に行くと美雪は金田一とお泊りなのでと大量のパーティーグッズを持ってきていた事が判明し、佐木もいたたまれない。
直後に今回出番がないままに教授が殺されて3番目の犠牲者になってしまう。
その後も推理に没頭する金田一。飲まず食わずの金田一を見かねた佐木がまたしてもさりげない気遣いで美雪をアシストして美雪が金田一の部屋にクッキーを差し入れするが見向きもしない金田一。またしてもしょんぼりする美雪は後に犯人と判明する人物に男なんてそんなもんだから悪気は無いだろうから気にするなと励まされてしまう始末。
クッキーを食べてようやく少し正気を取り戻した(?)のか、その後は美雪も同行して美雪と会話する事で状況を整理しながら推理を進めていき、佐木のスマホ録画、剣持の指紋採取セットによってトリック暴きや証拠集めもしていき、最後の解けなかったトリックは美雪の再度の休憩宣言に今度はちゃんと金田一が乗ってくれ、この時の美雪の手品がヒントになって解決。美雪のおかげという事で子供のように飛び跳ねて喜ぶ美雪。
犯人は医療機器メーカー2人のうちの1人だった小市慢太郎。離婚した妻の方についていった娘とわずかながら再度交流を進めていた(公園で偶然会って妻黙認で遊んでいただけなので娘は父と分かっていない)矢先に娘が小児がんで急死。しかし医療機器メーカー社員の経験的に小児がんでも急死するのは不自然だとして異動願いを出して件の病院の担当となって調査を進め、今回殺した教授ら3名が人体実験のように新薬を無理やり投与して娘を殺したことを突き止めたという。必要ない患者に新薬を投与して副作用激烈で死んじゃったってこっちの方が現実に起きている事で放送配慮案件金田一世界は悪徳なクズ医者が多いな。
当初告発のつもりで証拠を集めていたが、酔った際に2番目の被害者となった医師が、必要ないのに悪性だった事にして教授が投与を指示したという事をペラペラ告白。即座に録音していたものの聞き直している間に怒りにかられて録音機器を破壊、全員殺害を決意したという。
かなりヘビーな動機が静かに語られたため、ここまで終始偉そうな態度で真相を暴いていた金田一も動機までは考慮してなかったせいかそれ以上言う事が無くてすっかり黙り込んでしまう始末。しまいには自身が仕事にかまけて離婚してしまった経験から小市慢太郎に君も推理にばかり夢中になっていると大切なものを失うよと静かに忠告されてしまい言い返せない金田一…。しかし全く思うところも無かったのか、エンディングでは生田絵梨花に取材したいと言われて急にデレデレし始めて、またしても美雪が嫉妬してキーキーなっているところで終了。
事件はいいとして金田一…今作でのお前の態度…ダメだそれ…。どうしてこうなった。
1話ではそこまででもなかったが、今回は終始偉そうな態度で事件が全く解けないうちから敬語を使わずに断定調で犯人はこの中にいると宣言し、一行を怒らせた。美雪への態度も終始酷いものだったが、この全員を怒らせた際も美雪にみんなカンカンよ!と態度の悪さを注意されたのに知らん顔。犯人を暴く際も終始偉そうだった。途中で証拠をもってやってきた剣持が犯人に対しても丁寧な口調だったので余計に偉そうでタメ口な金田一の態度の悪さが目立ってしまった。どうもプロデューサーがドSな金田一という確実な解釈間違いをしているのが原因っぽいが…。
ここまで来ると意図的に偉そうな態度で犯人を暴きまくり最終回の犯人がこの偉そうな態度が原因で恨みを抱いて復習しにきたという因果応報なドラマ版の工藤新一レベル(この際犯人を暴く際も火に油注ぐ態度だったため犯人が名言「敬語を使え!」を新一にぶっ放すという超展開)。
美雪に対する何の興味も無さそうな態度からそもそも今作の金田一は推理以外に興味がない設定でスケベ設定も無いのかとも思われた。それでもついには犯人にまで苦言を言われて黙り込んだのでさすがに反省してエンディングで美雪に何かフォローするのかと思いきや生田絵梨花にデレるという超展開。1人バタバタしている美雪がいじらしくてカワイイ、というのを狙っている演出にしても金田一の好感度落としまくっているぞ…。
4話 File03白蛇蔵殺人事件
今回も『金田一少年の事件簿R』が原作。1話完結だったが旅館も経営する白蛇酒造の一家の複雑な人間関係が明らかとなり、3兄弟と被害者がなりすましやら入れ替わりやら死んだと思ったら生きてたやらとなんとも複雑な展開に。解決の決め手となった美雪が賞状やトロフィー類などが写っていた写真を持ち出していたのにバラバラになっていた賞状やトロフィー類などを完璧に元の配置に戻して片づける事が出来たのはこの写真に写っている家族だったからだ!というのはいや待てよ…って感じであった。家族だろうと写っていようと元から住んでいようとトロフィーや症状の位置まで完全再現できるものではないし、完全記憶能力の持ち主だろそれは…。時間が無かったためか原作ではもう一展開あったらしい女将絡みの案件はラストで唐突に女将が後妻業の女として逮捕されたとして処理。最早必要あったのかすら分からないほどに唐突過ぎる…。
金田一と美雪が旅館に来ていたのは家族ぐるみの付き合いで金田一家と七瀬家で旅行に来ていたと説明されたが当然家族の設定なんてしていないので家族は出てこなくて2人は終始ほぼ一緒に仲良く行動。剣持がいたのは逃亡犯を追っていたためで旅館で偶然金田一と遭遇したことになっていた。前回のように美雪が邪険にされることも無く、ちょいちょい気になる部分はあったものの(反論された際に馬鹿にしたような態度で「○○なんだよな~(ドヤ顔)」ってやる等)金田一の偉そうな態度も前回ほどではなくなっていた。急に作風が変わったようだった。
なお犯人だった岡山天音は現・美雪が犯人だった4代目山田版の事件で速攻殺された被害者の人でありまさかの再共演。犯人がヒロインになったり、被害者が犯人にジョブチェンジしたり狙ってやっているのか5代目…。
5話 File04 トイレの花子さん殺人事件
99年の短編(Short File)「亡霊学校殺人事件」の改題。1997年FILEシリーズ全27巻の最後の事件の少し前から短編事件を挟むようになり、通常コミックスとは別の少し大きめのKCデラックス版で短編集「金田一少年の○○」というタイトルで4~5本の事件をまとめて収録するシリーズが2000年の終了まで6巻発売されていてその5巻「金田一少年の対決」に収録されていた事件。2005年に文庫版「短編集3 殺人レストラン」として発売されてからはそちらが現行版になっている模様。
冒頭、佐木の父が卓球の日本代表、金田一の祖父が町内会のシルバーチャンピオンだった事が判明。卓球対決のために佐木の親戚のやっている民宿へ行くという謎の展開に。金田一耕助が晩年に卓球の町内会シルバーチャンピオンだった事にされてしまったが、前述のように金田一耕助が1913年大正2年生まれ、金田一一が2022年で高校2年生16歳なら2006年生まれになるため、一誕生時で耕助93歳であり、金田一が物心ついた後に祖父に卓球を仕込まれるほどに祖父が健在であったなら余裕で100歳を超えていて驚異の卓球シルバーチャンピオンである。
原作では卓球部だった母親に仕込まれて金田一は卓球が特技だという設定にしていて1999年時点でもう祖父に変な設定を加える事は回避していたのに2022年のドラマで堂々やるとは…。だから耕助の孫設定はもうとっくに破綻していると
原作には出ていない佐木は金田一と美雪の仲をアシストするためにこの旅行を画策したという設定に改変。結局卓球は出来ずに合宿中の美大生4人と交流して肝試しに参加する事になった。原作では美雪がビビりまくっていて最終的に犯人のトリックを破るきっかけになったが、今回は美雪は余裕の態度で金田一の方が怖がっている始末で途中からは追いついた佐木とさらに追いついた美雪の3人で行動、金田一の金印のピンポン玉も佐木の佐印に変更されていた。この最中に1人行方不明になり翌朝死体で発見されてしまう。
現地の警察は全く使えないため、剣持に電話して捜査情報を横流ししてもらい、さらに現場の白い跡も写メを送って鑑識に石膏だと判定してもらう金田一。写メで石膏だと判定できる鑑識すげぇ…。
相変わらずな態度で年上の美大生3人相手に「犯人はあんたたち3人の誰かだ!」と言い放ち、真相が判明した後も警察抜きで犯人候補3人+金田一、美雪、佐木で偉そうな推理ショーを展開。これまでは一応警察(剣持)がいる場面で犯行を暴いていたので最悪の展開になってもまだなんとかなる余地があったが、いくら使えないからって警察呼ばずに関係者だけで推理ショーは無謀すぎやしないだろうか。
犯人は小野寺晃良でクズな被害者にもてあそばれて妹が自殺した事の復讐だった。例によって被害者のクズっぷりと重い犯行動機が語られてからは偉そうな態度から一転して黙ってしまう金田一だったがなんとか絞り出したのは。犯人でありながらも肝試し前に止めようとしたのは復讐に意味がない事に気づいて止めようとしていたのではないかという苦しい解釈だったが案の定犯人に「そのように言えば被害者は確実に肝試しに参加するはずだから言っただけ」と一蹴されてしまう始末。
また金田一が肝試しゴール証明のピンポン玉を便器に落としてしまいマイボールに入れ替えていたというのは佐木のマイボールに改変していたが、そこに重ねて美雪が怖がっていたので金田一が身代わりになった事に端を欲する各メンバーの指紋の付き具合がおかしいとして証拠にする指紋の設定は全部破棄して簡略化されてしまった。またオチの怪談話もカット。これで最後があっさりしてしまった感。
一応2000年の完結までは全作品揃えていたので(FILE、Case全巻+短編6巻+明智2巻+ノベルス8巻)この事件も読んでいたはずだが…短編集~Caseにかけての後半は面白さも下り坂になっていたせいかそれまでに比べて極端に読んだ回数が少なくなっていてほとんど覚えていなかった。この事件も犯人が連行されて行く中で刑事に被害者のシャツを赤く染めたのは自分ではないと告げ、マジでそこは怪談だったという恐怖のオチ部分(今回カットされたやつ)をわずかに覚えていた程度だったがドラマではよりによって「トイレの花子さん」に改題までしたのにその部分がカットって。あと卓球設定を聞いてそういえば卓球ユニフォームでドヤ顔している金田一の絵も思い出した。
6話 File 05-1 金田一少年の殺人
94~95年原作12~14巻収録、原作は当時14話の最大話数でそれまで2冊で終わっていたのが単行本3冊にまたがる唯一の事件だった(次の「タロット山荘」も14話だったが2冊に収まっている)96年の堂本剛版では超圧縮して1話完結でまとめていた事件でもあり、「学園七不思議」に続くリメイクとなった。「聖恋島殺人事件」は最初から前編後編で予告していたが今作は前後編扱いされずに「金田一少年の殺人」と1話完結のようなタイトルになっていたが結局解決せずに7話は「金田一少年の殺人 解決編」と題されるなど前後編になるのを当初隠すような告知になっていた。
今回の事件は最初の被害者が残した暗号が伝言ゲーム化していて辿っていくたびに同じく暗号を解いている犯人が用済みになった相手を殺害していく流れになっているため、堂本剛版では展開を圧縮して被害者を削減した結果、暗号の内容も改変しなくてはならなくなっていたが今回暗号は原作準拠。しれっと落語家のおじさんだった桂木がグラビアアイドルのゆきぽよに変わってしまったが…なんだこの謎改変。アイドルにしてはケバみとギャルみが強すぎないか。そういう路線のアイドルなのか。
いつきとも知り合いになっていないので剣持の旧知の仲だった事に変更。これにより原作では無条件に金田一無実を信じて率先して行動してくれたいつきは信頼する剣持の頼みなので協力してくれたという設定に。事件が起きた後に剣持は通報せずに話を聞いていたが参加者が通報してしまったので金田一は捕まる前に逃亡。捕まってからトイレに入った隙に逃走した原作とは異なる展開となり、さらに金田一を犯人と決めつける現地の刑事も舞台が軽井沢から神奈川に変わったついでに高林(高橋努)という原作の要素無しのオリジナルの刑事に変更されていた。高林は状況から淡々と金田一を犯人と判断して捜査を先導しているだけなので最初から決めつけていた長島に比べると嫌味度は減ったが逆に犯人だと決めつけられているから逃走して自分で犯人を捜すしかないという原作にはあった逃亡動機が薄めになってしまったのは否めない。なんせ捕まる前に逃げてるし。
橘を怒らせるくだりも悪戯心でヅラを暴いた原作とは違って、桂木(ゆきぽよ)に絡んでいる橘に半ば巻き込まれ気味に突入していって相変わらずなタメ口な失礼な態度で怒らせ掴みかかってきたので揉めている間に池に転落。その後もヘラついていたのでダメ押しで激怒されるという、橘もどうかと思うけど金田一の行動よりも結局態度案件…という展開に。さすがに時任に話に行った時はある程度敬語だったけどそれも時任が襲い掛かってくる勢いだとすぐにタメ口に戻ってしまうし、いつきと都築に助けてもらった時もほぼ初対面なのにちょっとなれなれしいし、やはり今作の金田一は態度がなぁ…。ちょっと生意気だけど愛されキャラ的なのを意識しているのだろうか。失礼さの方が目立っちゃってるけど。
拳銃ゲットのくだりになってくるとかなりの超展開となり、ゆきぽよ殺害現場からの逃走に現場から出ていくトラックの荷台に乗り込んだ金田一。検問で困って荷物の中の着ぐるみに擬態してやり過ごすまでは良かったが、急いでいるという運転手が突如暴走。確認もせずに警官がまだ荷台から降りる前、荷台の幕も全開のままフルアクセル踏み込んで走り出し、金田一は警官を助けるために躊躇なく姿を見せるが、暴走運転手はさらにすさまじい速度での急カーブをぶちかましたため拳銃一式だけ荷台に綺麗に残して警官は吹き飛ばされて行ってしまったという…。いや警官が電車に引っかかって死にそうになった原作を雑に改変しすぎだろ…。この状況で後で警官が「金田一は本当は私を助けてくれようとしたんです」と証言してくれてもトラック暴走の件も踏まえないとちょっと厳しくないか(高林には「容疑者の17歳少年が拳銃を奪って逃走」(警官は荷台から突き落とされた)としか伝わってないし、捜査班の間ではこの認識だろう)。
金田一というより道枝君の激走、俊足っぷりが随所で発揮された逃走劇となったがラストでは疲れ果て「ジッチャンの名に」かける前に気絶して次回へ続く。
なお最大の改変は美雪ほぼ降板状態で冒頭の橘のパーティーに同行せずに佐木だけ、現場映像を渡すために奮闘するのも佐木だけと佐木の方がヒロインなジャニーズ案件化している以上に美雪の出番が皆無で半分くらいしてようやく佐木と一緒に心配している様子が出たのと明らかに同時に撮影されたような心配カットがラストで挟まれただけのほぼ1シーン出演。朝ドラとの兼任でスケジュールが限界突破してしまったのだろうか。さすがに不自然すぎる出番の無さだった。
7話 File 05-2 金田一少年の殺人 解決編
気絶した金田一を助けたのは佐木だった。いつきの作戦で金田一に渡されていた事件当日の動画データの入ったタブレットにGPSを仕込んで辿ってきたという。アナログに佐木を尾行するより警察がこの手を使えば楽勝で金田一を確保できたのに…。美雪へ連絡すべきだという佐木に照れて連絡を拒否した金田一。これにより事件途中での美雪との接触は皆無となる事が確定。原作の美雪への誕生日プレゼントエピソード全削除どころか連絡すらしないって…。
野中の元に出向き、暗号の答えが大村→時任→桂→野中、つまり「大時計の中」と判明。野中も金田一に会った直後に気づいたが犯人に殺されてしまった。なお地味に原作では犯人は野中を襲撃して本当に伝言は他にないのかと迫っていて野中に襲い掛かった時点では暗号の答えに気づいておらず、気づいた直後に顔を見られて殺していたが、今回は最初から顔を見せて殺しにかかっていたので原作犯人よりは頭のキレが良かった模様。
追い詰められた金田一は通りがかった少年に剣持へのメッセージを託す。渡されたメモには金田一が絶望して自殺する事を示唆するような内容が書かれていたが少年はオレンジジュースを持っていて火であぶると空砲を撃てというメッセージが隠されていたオレンジ暗号文…という原作の明智が同じ型のポケベルを持っていたのでポケベルの番号でメッセージを託したという流れを大きく改変。正直ポケベルはおろか「大時計の中」よりも難解な暗号だった気がするが剣持のキレが良かったのと金田一曰く絶望して自殺するかのようなメッセージは自分らしくないので(何か他にメッセージが隠されていると)気づくと思ったとの事。
こうしていつき、都築、高林の前で剣持に左胸を撃たれて救急車で運ばれた金田一。なんと高林を始めとした金田一を容疑者として追っていた刑事勢の出番はこれで終わってしまった。その後はどうやって救急車から離脱したのかは不明だが剣持の運転で現場に出向き、トリックを解明。そのまま都築といつきを呼び出して4人+使用人菊蔵(半海一晃)という最少人数で真相解明を開始。高林も出番終了でここにいないということはこれ、後で全部剣持が1人で神奈川県警に説明したという事に…真の被疑者死亡だし、その死んだ被疑者を勝手に病院に運んで臓器移植しちゃってるし…金田一の銃刀法違反をもみ消すとも言ってたし映ってないところでメチャメチャ大変だな剣持さん…。
菊蔵さん、最初に金田一が聞いた時は「エアコンが壊れていると言われたので風通しをよくしようと思ってドアを開けた」という感じで説明していたのに真相解明時にもう1度聞かれた時は「エアコンが壊れているから風通しをよくしてくれと言われたが高い位置にある窓を開けるのはしんどいのでドアを開けた」とビミョーに説明が追加された上に説明のニュアンスが変わっていたのは何故だったのか。
相変わらず推理中の金田一は偉そうだった上にわざと墓穴を掘らせてドヤ顔で「その言葉を待っていた」とか追い込みまくっていたけど今回ばかりは金田一本人が散々な目に遭わされたんだからそのくらいドSに追い込みたくもなるだろう。相変わらず動機を知ってからは同情的な態度に一変してたけど。
原作では50代のオッサンだった都築だが今作ではジャニーズ先輩のA.B.C-Z戸塚祥太(35歳)。娘設定ではなく恋人(小林涼子)設定となり、腎臓病の恋人を救うために設定が変わった。奇跡的に適合してドナーとなり移植したが手術失敗、その後悪徳医師に臓器密輸を持ち掛けられていたという流れは同じで自殺して移植も同じ。ただ相手が子供ではなくいい大人になったので手術成功後に既に状況はすべて把握していて罪も一緒に背負うと深刻な顔で語るという鈍重な後味になってしまったが(原作では子供なので教えずいつきが引き取った、堂本版ドラマではその子供が松本版2代目美雪に成長した)、剣持・いつき・金田一が都築が望んでいるのは幸せに生きる事だと諭しておしまい。いやあんまり救いになってねって。臓器密輸に加えて罪の無い5人殺害の凶悪犯だぞ…(原作の子供でも将来知らされた時の衝撃ヤバいだろうけど)。
美雪は解決後に駆け付けて金田一に抱き着く(金田一アワアワしてて抱きしめ返すものなのかどうしようかでモタモタ)、エンディングで佐木と一緒に出てきて連絡をくれなかった事を責めるが金田一ごまかしで相変わらず釣れない態度だが美雪の方があきらめているのかそれ以上は追及しない…と出番は最小限。やはりこの回の撮影中は朝ドラ集中だったんだろうか…。
しかしいくらジャニーズ案件とはいえ美雪より佐木の方が出番が多くなるとはなぁ…。
8話 File 06 首狩り武者殺人事件
94年原作11~12巻「飛騨からくり屋敷殺人事件」のドラマ化。地名(飛騨=岐阜県)が入っていたがロケ地が違うため剛版では「首無し村殺人事件」として制作されており、今回のリメイクもまたタイトルが違うという事に…。「くちなし村」とは言ってたけどどこにあるのかは言ってなかったかな…。
依頼人(にして犯人)の紫乃(仙道敦子)さんが剣持の幼馴染設定はそのまま使用。しかし今作での剣持を演じる沢村一樹は歴代剣持最年長(54歳)なので幼馴染設定に無理が無いようにか50代の仙道敦子が起用された。原作の剣持は当時特に年齢を明言していなかったがノンキャリアの警部だし普通に40代以上のオッサンに見えるため紫乃を若く設定しすぎてね?というのは当時から言われていて剛版ドラマでは年齢的に大きな無理はなかったがそれでも新人警官と学生の関係性に設定していた。何せ原作では37歳にしてしまったからな…。今回のドラマでは全員年齢表記をしていなかったが、紫乃の年齢を上げたのに伴ってか龍之介(吉村界人)、征丸(福山翔大)もアラサーの役者が起用されていて原作の10代から丸々10歳ほど年上に改変していたようだ。次男がリストラされてもえぎ(近藤華)が次男の役割(病気でおかしくなったフリをしている)を引き継いでいたが、何故かもえぎだけ原作17歳より若い15歳の近藤華を起用。随分と年の離れた兄妹になってしまったが…これによって終盤の展開が致命的に…。
赤沼が殺される回転扉のトリックはそのままながら妙に簡易化したような…。時間がないためか美雪が拉致される流れも強引でもえぎと使用人(剛版ドラマの簡略設定を流用)のウメ(福井裕子)に同行してお祭りに真昼間に出かけていたはずなのに次のシーンでは2人で帰り道に迷って辺りは真っ暗。この2人映ってない間にどんだけ長時間お祭り堪能していたんだ…。
剣持が「はじめのじっちゃんの名にかけて」の勢いで一気に事件を解いて猿彦が銃暴発で死亡してからは1度帰還。バスで街まで出てからホテルのレストランで飯を…というところで今回同行していなかった佐木が登場。佐木と回転扉でクルクル回る事で回転扉トリックを解く事に繋がったとはいえ…記録係不要で出番がなかったなら追いかけてきたとかいう超設定で佐木をこんな無理やり登場させなくても。ジャニーズ案件で出演マストなのかこの佐木は。
紫乃の犯行が暴かれる前に邪魔な紫乃を消そうと龍之介が毒を盛っていたためそのまま紫乃が死んでしまうのはそのまま進行。こんな蛇足なオチは大胆にカットして改変すべきだった…。改めてここで毒を盛るのに無理があるし、原作より人数減ってて弁護士ともえぎとウメしかいない中で無理に殺さなくても自殺に見せかけるにしても他にいくらでもグッドタイミングあるでしょうよ…。
さらに「また毒をもったのね!」とかつて父にかわいがられていた次男に嫉妬して毒を盛っていたという過去をもえぎに改変してやった上に、それをやったのを3年前にしたため、よく考えたらかなり凄い展開に。演じた役者の年齢だと15歳と29歳という年齢差で3年前にやったというので、父が12,3歳のお年頃の妹をかわいがっているのを20代半ばの兄が嫉妬して妹に毒を盛るというトンデモである。亡くなった父というのは写真のみだったが公式相関図にも載っているように普通におじいちゃんであり、15年前でも割と年を取ってから生まれた初めての女の子だっただろうからそりゃ普通にかわいがるだろう。20代半ばになっていた息子がそれに嫉妬して毒を盛るっておま…。なんか1番改変すべきところをそのままやってしまって凄いトンデモになっちまったな…。もえぎ覚醒、紫乃死亡→母さん!母さん!からエピローグなしでフェードアウトさせてどうでもいい佐木との再合流になってしまったのもまあもうあれ以上は無茶苦茶すぎて何も描けないか…。
あと改めて他の人は犯人の紫乃も「紫乃さん」呼びなのに猿彦はずっと「猿彦」呼ばわりなのは行動がクズすぎるせいなのだろうか。確かに敬語を使わない金田一でも猿彦呼び捨てだけは何の違和感もないんだよな。
9話 File 07-1 オペラ座館 ファントムの殺人
00年に1度終了後04~11年まで年1ペースで短期集中連載していた2期の2作目2005年『オペラ座館・第三の殺人』の初ドラマ化。原作1巻(堂本剛版でドラマ化)とノベルス1巻(金田一の声が工藤新一だった初アニメ映画でアニメ化)に続く3度目のオペラ座館だったが、今回のドラマではオペラ座館が初登場なので改題された。前2作に登場していた黒沢オーナーが今作では死んだことになっているため人物の連続性も特になく、今回は亡くなった黒沢と剣持が親友だったという設定で親友の追悼公演を見るために剣持が金田一、美雪、原作では出てこないジャニーズ案件佐木を連れてオペラ座館へ行くという展開に。いつきさんとも知り合いだったし、剣持の交友関係を自由に使っているなぁ…。
絶海の孤島みたいな扱いだったオペラ座館も何故かロープウェイを使わないと行けない山の上の孤立地帯みたいになっていたが、ロープウェイで山の上へ→ロープウェイ降りてから全員ライトバンで送迎してもらってようやくオペラ座館到着、さらにオペラ座館の近くにある事件の舞台の1つにもなった塔は走っても10分くらいかかるような位置にある…という島と大して変わらないような地形になっていた。海が近くにない森林地帯でロケしたから無理やり山の上という設定にして孤立感を出すためにロープウェイじゃないといけないという秘境設定にしたのかな…。かなり無理があったような。割と山の上が広いのに車で下山できるルートが無くてロープウェイだけって…。
練習中に早速シャンデリアタックで1人死亡。続いて剣持が襲撃されて行方不明になってしまい、もう1人殺されてしまう。2年前に失踪したという霧生鋭治(古川雄大)がファントムになったのではないかと戦慄する中で地下室を発見した一行は潜入。金田一が何者かに足を掴まれて引きずり込まれてジッチャン助けてぇぇ!と何故か名にかけずに助けを求めて次回へ続く。
10話 File 07-2 オペラ座館 ファントムの殺人 解決編
金田一を引きずり込んだのは閉じ込められていた剣持だった。剣持が無事と分かるも、さらにもう1人殺されてしまい犠牲者は3人に。復活した剣持と金田一、美雪、佐木で事件現場を洗い直しながら改めて1つ1つの殺人トリックを解いていく金田一。この過程でゴキブリが出没、慌てふためく金田一に美雪が金田一耕助の孫なんだからしっかりしろと言い放ったところそれを聞いた剣持がジッチャンって金田一耕助だったの!?と驚くという謎のオリジナルギャグシーンが挟まれた。なんと剣持はここまで金田一耕助の孫だと知らずにいて、佐木に今まで先輩がジッチャンの名にかけてと言っている時にどう思っているのか聞くとイマドキ珍しいじいちゃん子なんだなと思っていたというおとぼけ回答。『首狩り武者殺人事件』の時に「はじめのジッチャンの名にかけて」いたのに名も知らぬおじいちゃんの名にかけていた事に…。
突然になんだこのギャグ。歴代のシリーズと比べてもあまり特徴的なところがなかったので少し何か面白いシーンを入れようという事になったのだろうか。確かに孫設定は形骸化していて、このシリーズでも『学園七不思議殺人事件』冒頭で美雪のナレーションベースで「こう見えて金田一耕助の孫なんです」と紹介していた以外は実際の台詞で祖父が耕助だという言及は無かった。町内会の卓球名人属性が加えられた時は金田一も美雪も佐木も一切耕助の名前を出さずにおじいさん、ジッチャンとしか言わなかった。一応許諾を得ているとはいえ、横溝正史としては非公式設定ではあるし、原作自体が初期に見切り発車でろくに許可取らなかった事後承認みたいな形をしていたっぽくて、「金田一耕助(ジッチャン)の名にかけて」だったのを「ジッチャンの名にかけて」に途中から表記を変えるようになったりもしていた。特に今回は何度も書いているように孫設定が破綻寸前(孫生まれた時点で耕助OVER 90’s問題)になっているので美雪ナレーションで冒頭説明しただけで現場で「耕助の孫」だと明かして周囲が驚くみたいなシーンはやっていなかったはず。『学園七不思議殺人事件』での剣持もやたら事件に首を突っ込んでくる金田一に対してナチュラルに受け止めて邪魔にもせずに情報をくれたりしていて、そのまま金田一が事件を解決して信頼を置くようになったので祖父については話してはいなかった。最終回で台詞で出してきてギャグに利用するとは面白い開き直り…。
という事で犯人はレオナ(山本舞香)。火事で顔に火傷を負った霧生(古川雄大)はレオナを誘拐したとされていたが実は駆け落ちで、レオナを劇団に取り戻すために殺された3人は霧生をベロベロに酔わせて樹海に放置。樹海で目を覚まして絶望する霧生までしか描かれなかったがそのまま樹海で彷徨って餓死したであろうことが明かされた。奇跡の生還果たしてたら被害者の3人はどうするつもりだったんだ。レオナがそれを3人が話しているのを盗み聞きした時には手遅れ確定だったためか、特に樹海に探しに行く事も無くそのまま復讐を決意したという。ターゲットの3人をきっちり殺して目的を果たしていたレオナはこの後樹海に行って死ぬつもりだったが、予定を変更してこの場で火を放って自殺しようとする。それを必死に金田一が救出して思いとどまらせて締めとなった。
『学園七不思議殺人事件』では犯人死亡が生存に変更されていたものの、直近2件(『金田一少年の殺人』『首狩り武者殺人事件』)では犯人に死なれてしまっていて(前者は自殺、後者は犯人を犯人と知らずにバカ息子が殺そうとしているのに気づけなかった)、今回こそ死なせてたまるかという思いがあふれているようでもあり、いいシーンだった。
最後は結局美雪に対してつれないままの態度の金田一。事件になると全然見てくれないという美雪に見ているさ!と答えたものの、その視線の先にはいつも見ている佐木がいるというBL好きな道枝君岩﨑君ファンがキュンキュンするのか?というような3人のシーンでおしまい。う~ん…。
全部終わっての感想
特徴のないフツーな金田一少年という感じだった。決してつまらないわけではなくそこそこ面白いんだけどなんていうか無難。事件自体は駆け足になりすぎずそれでもスピーディーに展開、合間のギャグがキレるわけでもなければ、演出に特徴があるわけでもない。金田一が美雪に興味無さそうなのは決定的でこれが最大の特徴になってしまっていたのがどうもなぁ…。美雪が1人で盛り上がって落ち込むというのが特に『聖恋島殺人事件』で悪目立ちしたが『金田一少年の殺人』では最早出番すらない始末で…。
代わりに佐木が盛られまくりで最早裏ヒロイン。小説家設定、GPS追跡、呼んでないのに近くまで来る、鍵開け名人、金田一美雪剣持がビビり倒す中で1人動じないゴキブリ退治名人…等、毎回のように属性が盛りに盛られるというジャニーズ案件すぎる扱いはさすがにどうかと思った。歴代佐木もいずれもジャニーズだったとはいえ(初代は真壁もジャニーズ)、金田一と美雪の間に割って入りこむような事は無かった。今作での佐木は一応「美雪の金田一への思いにいち早く気づいていて金田一のつれない態度を不憫に思い2人をくっつけようと応援している」という属性ではあったんだけど、あまりうまく行くことが無く、ラストシーンも金田一と美雪ではなく金田一が見ている視線は目の前の美雪から遠くで撮影している佐木…とかなんかどこかBL属性がブレンドされてでしゃばってくるのでなんかそういう需要狙ってんのかなぁ…という感じが露骨だった。いずれにせよ金田一と美雪の関係が薄いのが金田一少年っぽくなくて、これがフツー/無難という印象に直結しているのかも。
一方で犯罪プロデューサー高遠は出てこず。アイツが出てくるとまた高遠プロデュースか…となって事件の犯人や動機よりも目立つので明らかに以前よりも犯人の身の上エピソードが残りにくくなったし、金田一と高遠とのやり取りだけで尺取り虫になってますます実行犯の動機説明する時間が無くなるし、結局捕まえても脱走するので永遠に話が終わらない無限ループになってしまうので正直アイツはいない方がいい。明智も一切出てこなかったけど、余計な準レギュラーを増やさずに金田一美雪佐木剣持の4人だけで固めて後は全員1発ゲストなのは良かった。
金田一の態度はチョイチョイ偉そうなタメ語で気になるところがあったのはこっちが年を取り過ぎたせいか…。普段は最低限の一般常識で普通に会話しつつ真相解明時に必要に応じて強気な態度になったりするさじ加減がなんか今回の金田一は凄くヘタだった印象はある。
あまり話したく無さそうな過去の話を聞こうとしているのになんで「教えてくれ!」とか態度でかいの?とか、真相解明の場面でノー敬語で話を進めている中で「これから犯人が使ったトリックを説明します」とか変なところで急に敬語になったりと緩急の付け方が滅茶苦茶だったような…。これは道枝君ではなく、完全に制作側の問題で実際に歴代のプロデューサーが金田一の態度についてドSドSと連呼しながら明らかに何か記憶と解釈が年月を経て歪んでませんか?というような話を嬉々として語ってしまっている辺りが原因だったのかなと。プロデューサーが言う“剛くんと松潤は、犯人を追い込むドSな感じが、それ好きでやってない?みたいな感じ”というのは、いくらなんでも記憶歪めすぎだろうと。改めて堂本版を見返しても少なくとも犯人を追い込む時の強気な金田一は好きでやっているようには見えない(剛版の強気な部分は純粋に正義感という感じ)。対して今回の道枝君は明らかに推理中に否定する犯人に対して挑発するような態度を取る場面が悪目立ちしていて(『聖恋島殺人事件』が特に目立ってネット上でも少し話題になっていた)それはまさに「ドS」を地で行く演出になっていた。道枝君が剛くんと松潤のような感じで行きたいと言ったのは事実だろうけど、道枝君は山田版が1番リアルタイムであるとはいえ歴代金田一をしっかり見て挑んでいるはずで、普通に見ていれば”それ好きでやってない?みたいな感じ”なんて解釈は道枝君もしないはずだ。遠い28~21年前の記憶だけで見返しても無くていつの間にかあの2人は犯人を追い込むのを楽しむくらいのドSだったなんて解釈がおかしくなっているプロデューサーのせいで演出がおかしなことになってしまっていたんじゃないだろうか。ほぼ新人の道枝君がこのドSな金田一は自分が好きでやりたかった金田一とは少し違いますとかドSって言うけどこの脚本のドSは何か違いませんか?この言い方だと偉そうに見えませんか?とか意見できるとも思えないし。
沢村一樹の剣持警部は歴代最年長だったが当初から金田一と対等で凄くいい大人として描かれていて4人の中でも出番も活躍も態度も最も違和感がなく良い存在感だった。
あとは公式トップとかOP映像の謎の仮面押し、ホラーっぽい雰囲気は何だったのか。本編の作風がライトすぎてホラーじみた演出など皆無どころか、『トイレの花子さん殺人事件』のように率先してホラー要素を削ってしまったりもしていたので全然合ってなかった。
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