すきすきワンワン! 全10話

2023年冬クール、日本テレビ系「シンドラ」枠。月曜深夜0:59~1:29。いわゆるジャニーズ枠ドラマ。

主演は岸優太(King & Prince)、飼い犬の生まれ変わりの青年役に浮所飛貴(美 少年)とメイン2人がジャニーズでレギュラー出演者は他には管理人役のおいでやす小田しかいない。1,2話に元カノ役で桜田ひよりが出ていたため放映前はおいでやす小田より先の3番手のメインキャストのように発表されていたが紹介では最初から1,2話ゲストと書かれていた。6~8話では松本まりかが出演したがこちらは桜田ひよりのように登場話数への言及やゲストなのかの言及がなかったが8話を最後に登場せず、結果的にはこれもレギュラーではなく6~8話のゲストだった。

少年時代が人生のピークだったと語り、今は無気力で何もせず、母が死んで継いだ実家の部屋の一部を管理人の柿田(おいでやす小田)経由で貸すことでわずかな収入を得て暮らしていた炬太郎(岸優太)。彼女(桜田ひより)とも既に関係が悪化して別れていたが借金をあえて返さない事で繋ぎとめようとしていた。そんな炬太郎の元に柿田が新たな間借り人を連れてくる。フリーのプログラマーだという天(浮所飛貴)は炬太郎の事を知っているようで、自分は飼い犬の「てん」の生まれ変わりだと告げる。当初信じなかった炬太郎だったが、犬時代の思い出話を聞かされて段々信じるようになっていく。2人の奇妙な共同生活が始まった。

2話では桜田ひよりとの出会いからこじれるまでの回想、そして現在ちゃんと決別するまでが描かれて桜田ひよりは退場(1話は顔見せ程度だったので実質メインだったのは2話だけ)。3話では少年時代の野球の補欠仲間だった光太郎(前原滉)が文学賞を受賞した大作家先生となって、少年時代の炬太郎を恩人だと言っていた事から取材を通じて再会。変わらず慕ってくれる光太郎に対して、何もしていない自分を見つめ直した炬太郎はまずはバイトから初めて徐々に人生を動かしていこうとする。

4~5話ではデリバリマンのバイトを行っていたが6話では高校時代に一時預かっていた猫エリザベスの生まれ変わりを自称するエリー(松本まりか)が登場。お嬢様気質で懐いてくれなかったエリザベスだったが本当は炬太郎を気に入っていたらしく、炬太郎が大学時代に書いた卒論の着眼点が良かった事から自身が働くコンサル企業へとスカウト。インターンとしてのチャンスを与えてくれた。

しかし炬太郎はどこか甘さが抜けず、てんが熱で寝込んだだけで会社を休むという行動に出た事で、てんが炬太郎の成長の足を引っ張っているとされてしまい、すったもんだあった挙句に反省&てんは大事な存在だ言う事でひとまず決着したかに見えたが…。

エリーの出番は8話までで終わってしまい、9話ではいきなりインターン期間が終了すると不採用で終わってしまった。エリーの方は炬太郎の甘さを指摘しながらもかなり気にかけてくれていたのにどうしてこうなった…となるとやはり住む世界が違い過ぎたとしか言いようがなく、炬太郎本人も他のインターン仲間と最後に食事しに行ったら価値観が違い過ぎて合わないと思ったとコメント。向き不向きは分かったし小さな幸せを大事にしたいと前向きに締めてはいたが…ドラマとしてはゲスト登場回が終了した途端に無理やり切ったみたいでなんとも…。せめてエリーが最後に何か一言声をかけるシーンくらい入れるもんじゃないのか。

8話終盤から天本人は「てん」の記憶が薄れているのを感じ始めていたようだが9話では天との今の生活を楽しみつつ先の事も考えてまた職探しでもしないと…と言いつつも特に何もせずのんびり生活を送る中で炬太郎も天の中から「てん」の記憶が無くなり始めている事に気づく(柱の傷の事を天が聞いてきて説明したところ思い出したと言っていたのに翌日また同じことを聞いて今度は覚えてない)。さらに初期の頃に天の方から話していた「てん」時代の思い出のアイテムに至っては全く思い出せなくなってしまい、双方しっかり話し合って記憶が消えていっている事実を再確認しあう。炬太郎は最後に天とやりたい小さな幸せリストを作って2人でワイワイと楽しく遊び回るが…。

細かい記憶は失いつつもまだ「てん」だった事はちゃんと覚えていて炬太郎が他の犬にも好意を抱かれていた事も覚えていた天は散歩の帰り道、犬の気持ちが分かるからそういう仕事とかどうかな?と炬太郎に持ちかける。結果的にこの問いかけが最後の言葉となった。それいいかもなぁ…と炬太郎が新たな目標のきっかけを掴んでトリマーじゃなくて…トレーナーとかどうかな?と振り返ったところ、何故か天が行方不明になっていた。CM突入

CM明け炬太郎ナレーションで「犬の記憶を完全に失った天は一緒には暮らせないと言い出してすぐに出て行った」と恐ろしくそっけない説明文だけでまさかの天出番終了

…なんだ一体何が起きた…?一緒に話しながら歩いて帰宅寸前で天が突然消えた?となったのが謎のまま、時間が飛んで記憶が消えて出て行きましたナレーションってなんだよ。話が繋がってないんだけど…。

腑抜けた日々を送っていた炬太郎だったが、天が残していったゴミ袋の一部が破れていて日記のようなものが見えていた。そこには炬太郎と出会ってから記憶を失う事を自覚しての最後のメッセージまで今までの思いが記録されており炬太郎は号泣しながら読み終えると新たな人生を進む決意をする。最後に天に言われた言葉を胸に素直にドッグトレーナーの道へ進んだ炬太郎は上司から次の担当の犬を連れてこられ、それが「てん」(と同じ犬)だったところで終了。

岸君って2015年『お兄ちゃん、ガチャ』での子役時代の鈴木梨央とのW主演以来の連ドラ主演で初単独主演扱いだったのか…。 『お兄ちゃん、ガチャ』ではメチャメチャ美少年でカッコよかっただけにキンプリでデビューした頃には若いのになんか老けたな…というか城島茂方面の顔立ちになったなと思っていたんだけど、今作ではそんな年齢不詳な20代後半、おじさんでも青年でもない絶妙加減がまた違う味になっていて良かった。対して浮所飛貴は既に21歳ながらカワイイ系の美青年。元飼い犬という事もあって、どこかBL感漂う作風含めて女性ファンをキュン死(?)させるようなアザトカワイイ飼い犬っぷりを発揮。

てんが「20歳の頃に突然雷鳴と共に犬の記憶が目覚めた」と証言して炬太郎を探してやってきたという事なので、明示されていないが天の年齢は浮所飛貴と同じくらい(21歳)と思われる。炬太郎は唯一26歳と明示されていて(岸君は27歳)、小学生の頃にてんが死んでいるというので約15年前。実は天の年齢では微妙に生まれ変わりの辻褄が合わない。てんが死んだ時点で既に天は5歳前後になっていて生まれてしまっているのである。

加えて6~8話に登場したエリーに至っては演じている松本まりかが38歳。若く見えるので10歳くらい若いアラサー設定なのかも知らないがそれでも炬太郎と同世代以上にしかならない。エリザベスは炬太郎が高校時代に存命であり、いつ死んだかも語られていないが、直後に死んだにしても10年程度しか経過していない。

このドラマの転生設定、時間軸が全くかみ合っていないのだが、それに対する疑問も説明も皆無。「前世」の記憶と明言しているのに前世と現世に時空の概念が無いというのだろうか。ある日突然時空を越えて犬や猫の記憶がふいに憑依するように宿ってくるという設定なのかこれ。そう、描写としては記憶の憑依、もしくは人格の乗っ取りに近いレベルの事が起きているのである。

天からてんの記憶が消失していく流れもビミョーに分からなかった。炬太郎が記憶が消えていっている事に気づききっかけとなった柱の傷の思い出話は少なくとも「てん」の時の実感を伴った記憶として思い出せるか否かに関係なく、天として炬太郎から話を1度聞かされたわけで、つい先日直接聞いた柱の傷の経緯の話まで忘れてしまうというのはただの物忘れである。1話以降楽しく過ごしてきた記憶自体はあるはずなのに「てん」の記憶が完全に消えてしまうととっとと家を出て行ってしまうとはどういう事なのか?この辺りは何の説明もなかった。「てん」どころか全ての記憶が吹っ飛んでいっているとしか思えない。

元々の「木ノ宮天」という人格「てん」の記憶が宿っていた木ノ宮天では人格が全く違っていたのか?断片的な記憶が消えていっていても天の炬太郎への懐きっぷりや犬だった事自体は覚えている段階では2人の関係に変化は見られなかっただけに、完全に記憶が消えた後はナレーション処理で片づけるほどであまりに冷たすぎる。元々の「木ノ宮天」は「てん」の記憶によって人格をほぼ乗っ取られているような状態だったとしか思えないような描写だったんだけど…。「てん」の記憶が完全に消え去った=炬太郎との日々の記憶も消去されて何故炬太郎の家にいるのかすら分からなくなる、という事なのか。「てん」の記憶が消えていく過程で人格ごと消える事を察してまだ今の意識があるうちに直前で姿を消したのか。

炬太郎の成長物語としては良かったんだけど、年齢と前世周りの設定がガバガバすぎて謎ばかりが残ってしまった。

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