2023年春クール、テレビ朝日系「金曜ナイトドラマ」枠(23:15~0:15)。
小芝風花のテレ朝ドラマ主演は『妖怪シェアハウス』(2020)→『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』(2021)→『妖怪シェアハウス-帰ってきたん怪-』(2022)に続いて4年連続となった(前3作はいずれも土曜ナイトドラマ枠)。
沙村広明による原作漫画は2014年より連載中(放送開始時で10巻)、2020年4~6月にはアニメ化もされていた。
1話
彼氏にフラれてバーで酔っ払いながらその場にいたラジオディレクターのオッサンに失恋トークを繰り広げていたミナレ(小芝風花)は途中で記憶が飛んでしまう。翌朝バイト先のスープカレー屋に出勤したミナレはラジオから昨日のトークが何故か放送され始めたのに驚愕してラジオ局へ殴り込んで止めようとするが、ディレクターのオッサン麻藤(北村一輝)に続きのトークを任されてしまい…。
と、金髪ド派手でガサツな主人公がアドリブトーク力、全く噛まないマシンガントークを買われてラジオパーソナリティにスカウトされるという超展開で物語がスタート。
ラジオの効果で再度ヨリを戻そうと迫ってきた元カレの嘘を暴いたミナレだったが、直後元カレを殺害、麻藤と一緒に埋めに行くと元カレがゾンビとして蘇り、魂を浄化するという謎の霊媒が出現…と超展開になったと思ったらそれはミナレがレギュラー出演し始めたラジオの初回放送のゲリララジオドラマだったというオチが。どうやら元カレの嘘を暴いたまでは現実だったが、殺害以降はラジオドラマの内容を視聴者向けに映像化するというメタ的な内容だったらしい。分かりにくい演出だな…。
さらにこのラジオが放送されていた深夜、本当にこの元カレ殺されかけていたらしく後でお礼の電話がかかってきた。なんでも騙していた女に縛られて刺される寸前だったが、一緒に聞いていた深夜ラジオを最後に聞かせてあげるとしてラジオをつけたところドンピシャで「殺してしまった…」というラジオドラマの内容が流れ始め、あまりにリンクしていたためビビった女は逃走、それで助かったという。これまたぶっ飛んだ…。
超展開に続く超展開で無茶苦茶だったが、話のテンポは良かった。小芝風花がやさぐれ金髪濃いメイクなのは正直イメチェンしすぎてて似合っていないように見えるが、それでも終始はっちゃけていて面白い。『城塚翡翠』で大人っぽかったり、ちょっとガサツな部分もあるキャラをやっていたのがワンクッションにはなったかな。
2話
序盤ではさすがに説明不足だったためか1話でのラジオドラマになった顛末を補足説明するような流れに。
1話でもミナレが迷惑をかけた階下の沖(稲葉友)の部屋に血のような腐った液体が天井からしみだしてくるようになり憔悴していく沖。ラジオ局にその旨が投稿されてきたため、2回目の番組はそこで謎を暴くロケを仕様という事になり、ADの瑞穂(原菜乃華)と共に向かったミナレ。沖はマッチングアプリで出会った律子(二宮芽生)と温泉デートに出かけるも下心で山奥の秘湯に向かい、温泉ガスで気絶して救助される間に律子は行方不明になってしまった。きっと彼女の霊の仕業だと沖が証言したものの、天井裏にバラバラ死体を隠していると見抜いたミナレは肉塊を発見して通報。
殺人事件遭遇という究極のネタを手にした…と思いきや2回目ラジオ放送は勘違い謝罪放送になった。肉塊はミナレの父が大量に送ってきたマトン肉で床下に収納したミナレだったが忘れて放置。重みで床下が抜けて排水管が通っているミナレと沖の部屋の中間空間に肉塊が落下して腐敗。そこに水漏れが発生した事で腐った血が下の沖の部屋に降り注いでいたという…。
…ってなんだその超展開。しかも律子の行方不明は本当で律子へ呼びかける事を条件に訴えないという沖。そっちもそっちでネジが飛んでやがる…。結局律子の行方は不明のままだし…。
3話
前回の一件でアパートを追い出されたミナレはAD瑞穂(原菜乃華)が受け入れてくれたので瑞穂の家で暮らすことに。同局の人気パーソナリティの茅代まどか(平野綾)に学生時代付き合っていた鶴田(青柳翔)がストーカーしてくるようになりそれを巡るドタバタが展開。公開プロポーズしたいという一方的な鶴田を番組で公開説教し、さらに乗り込んできたまどかが当時フラれた事はラジオパーソナリティを目指すきっかけにはなったが今の自分に貴方は必要ないと言い切った事でストーカー退散…と相変わらず飛躍した展開の連発だった。茅代まどかが単なる嫌味お局みたいなキャラではなく、酒豪で意外と面白毒舌キャラだったり一筋縄でいかないところは面白かった。青柳翔って10年くらい前の『クローバー』でけっこう渋くてカッコいい先輩役だったのを記憶していたが、なんかすっかり普通のオジサンになったな…。真面目過ぎるゆえの勘違いストーカーキャラだったのもあるけど。
4話
放送作家の久連木(小市慢太郎)が花輪(飯田基祐)と穂隠(片山萌美)が率いる今のTVラジオはオワコンだから自分たちが復権させるという謎の思想集団に拉致されてしまう。久連木が小説家も兼業しておりそのうちラジオの仕事は辞めるというのは知られていたため、久連木からのしばらく休むという連絡も当初は真に受けていた一行だったが、久連木のファンで思いを寄せる瑞穂は挙動がおかしくなり、久連木を専属作家状態で起用している茅代まどか(平野綾)も期限が悪くなる。
やがて送られてきた台本の謎ラップをミナレが録音。この辺りから一行もなんだか様子がおかしい事に気づき始め、録音されたラップもなんだか変なのでエンジニアの箱坂(井頭愛海)が試しに逆再生してみたところ、監禁されている事を伝えるメッセージだった事が発覚。
警察の動きが鈍いので救出模様を録音するという事で乗り込んだ一行。部下たちはほとんどミナレの一撃で沈められていき、同行した瑞穂、箱坂共に録音要員のため助っ人戦闘要員で呼ばれた中原(片寄涼太)がほとんど不要なレベル。花輪は自身の思想を演説しようとするがミナレにこっちだって一生懸命やってんだ!そんなに変えたいなら局に就職しろ!とバッサリ。動揺した穂隠がその通りだとあっさり陥落して久連木を開放、警察も乗り込んできてラスボス感すら醸し出せないままにあっさり花輪も逮捕されてしまった。録音は警察に没収されてしまい、今日の放送内容が無くなってしまったが、緊急で久連木が書き上げてきた台本は山の中でクマににらまれながら小声でお悩み相談というネジのトンだ内容で、瑞穂が笹を揺らしてうなり声を上げてクマの物真似をするという瑞穂がなんかカワイイだけの珍妙な放送が展開するのだった。
そして兄に6年軟禁されていた事を明かしたマキエ(中村ゆりか)の元には復帰した店長(西村瑞樹)が事故を起こしたマキエの兄の城華(庄野崎謙)と共にやってきて城華が襲い掛かってきたところで次回へ続く。
相変わらず荒唐無稽な展開をテンションの高さとノリツッコミだけで押し切るハイテンション展開。ここに来てレギュラーメンバーの関係性も固まってきて面白くはなってきているが…ドタバタだなぁ…。
5話
マキエを軟禁していた軟禁兄はいきなり中原に掴みかかるが妹のことになると血が上るだけですぐにおとなしくなって土下座してきた。マキエは自立したいと告げて密かに放送作家を目指してラジオ投稿でアナグマ泰治(流れ星☆)の番組でネタが採用されてアナグマ泰治(流れ星☆)の元へ通って勉強していた。このうちアナグマ治郎(たきうえ)が古いラジオマニアで様々な資料を持っているためマキエが自宅に出向いたところ、密会をスクープされた事のあるグラビアアイドルのみんと(玉田志織)がやってきて修羅場となり、ミナレ・中原・瑞穂が乗り込むというドタバタが展開。
結局軟禁兄は普通に許してくれ、ネタが使えなくなったもののマキエが書いた台本をミナレの番組で採用。この台本を劇中人物たちで唐突に始めるというワケの分からなさも含めて終始ドタバタしていた感じ。まあもうドラマの作風というより作品自体がドタバタな作風なんだろうな。ノリは面白いんだけど中身がほぼないっていう…。
6話
2005年に海外へ渡ると言って姿を消して、久連木証言では2006年に海外で死んだというミナレそっくりの芸人シセル光明(小芝風花)。似ているから起用しただけなのか気になるミナレは若干テンションが低め。そんな中、カップルYouTuberヒロナツ(カルマ、花音)のラジオ番組で残念な容姿のリスナーの恋愛相談を誹謗中傷して足蹴にした態度が原因で大炎上。ヒロナツは反省せずに「波よ聞いてくれ」の方がもっと過激だとSNSで反論したためにこっちにまで飛び火が飛んでくる事態に。麻藤の元妻である編成部長大祝(黒谷友香)も登場し、炎上しないような講習会まで開かれる。麻藤がいい加減すぎて離婚したという事だったが、麻藤サゲ大祝アゲの構造でトークを展開していたが実際は説得力を持たせるためにあえて麻藤がピエロになり、それを察した大祝が乗っかっていた事が後から判明するなど意外と息ピッタリだったという意外性も。
最後は「波よ聞いてくれ」にヒロナツを出演させ、謝罪してもらうという形になり、ミナレはシスターコスプレで番組を進行。謝罪原稿を読もうとするだけの2人の原稿を取り上げて心からの謝罪を要求すると何も言えなくなり約束が違うとキレ出したので逆にミナレがブチ切れ、ヒロを投げ飛ばす。大祝が乱入して今の言動態度でヒロナツの番組打ち切りを決定したと真摯に告げ、しおらしく去っていく2人。「波よ聞いてくれ」は炎上せずにミナレと大祝が肯定的な評判となり、結果的にヒロナツの炎上も沈下、ビジネスカップルになり果てていた2人は復縁を発表してYouTuberとして再スタートなんだか丸く収まる形に。
ミナレも自身のトーク力が麻藤や大祝に評価されているのを知り、シセル光明の事を気にするのは辞めた模様。ただ麻藤は「ミナレはやはり貴方の…」とシセル光明と最後に会った日を思い出しながら何か思うところがある模様。シセル光明が最後に告げた出身地はミナレと同じ北海道だった。ただ原作だと30年前に活躍していた設定のようだが、このドラマでは約20年前の2005年となっているので、ミナレの母親がシセル光明なら2005年時に麻藤と会っていた頃にはもうミナレが生まれていないと時系列が合わない。
メディアとネットの在り方をふざけつつも問題提起した意外と深い話…だったのか…?
7話
引きこもりの息子を連れ出してほしいという番組への相談メールから瑞穂が企画を立てて取材してドキュメント番組することになったミナレ。母親ではなく実は妹からの連絡だった上に、母と娘、父と息子の子連れ同士の再婚で父が死去、息子視点では放任過ぎる自由人の義理母と逆に真面目すぎてうざい義理の妹という相性の悪さで複雑な家庭環境だった。
相変わらずのハイテンションと勢いで強引に突き進み、最後はミナレのバイトしているカレー屋の老人ホームへの出張スープカレー店の手伝いとして老人たちと接する事で劣等感だらけだった息子が自分より弱い立場の人を見て下には下がいると安心。どうせなら犯罪者を相手にする刑務官を目指すことにするというぶっ飛んだオチへと吹っ飛んでいった。
相変わらず勢いだけ面白かったが、それよりもここでも母親役にまた遊井亮子。今年になってからあちこちで見かけるんだけど、今期は『勝利の法廷式』にレギュラー出演しながらNHK BSプレミアムの『グレースの履歴 』にも終盤ゲスト出演、月9『風間公親-教場0-』にもゲスト出演したばかりだという。今回はいつもの冷たい不機嫌な感じとは真逆のふわふわ自由人という役どころだったがなんか似合ってなかったような…。最初の殺人ネタギャグで怖さを醸し出すためだけにキャスティングしてないか…。
8話
ミナレの母(高島礼子)が北海道から上京してきて、お見合い相手候補3人を用意したから連れ帰ると宣言。ちゃらんぽらんな生き方を指摘されたミナレはラジオ業界最大のイベントとされる『ジューンブライド・ラジオ』の出演者最終候補に残っていると豪語するが母は選ばれなかったら連れ帰ると条件をつけてきて苦し紛れに乗っかってしまう事に。次の放送が当たれば出演決定に至れるはずだと意気込んでいたが、放送当日に千葉県で大地震が発生して停電になってしまう。
局に残っていた麻藤の指示で今こそ「波よ聞いてくれ」が必要だと言われたミナレは闇の中を瑞穂と共に出社。ADの瑞穂がディレクターを任され、同じく社に残っていたレコーディングエンジニアの箱崎(井頭愛海)と共にスタジオ3人体制でぶっ通しの特番としてリスナーの投稿を読む形での「波よ聞いてくれ」の放送が明け方まで延々と続いていく事に。
母含めてスープカレー店メンバーらも夜通しラジオを聞き、地震情報だけではない軽快なトークでリスナーからも愛されている事を改めてミナレ本人も認識、スープカレー店の店長もなんだかんだミナレを雇ってあげられるのは自分しかいないなどと遠回しに認めている発言をしており、一連の流れから母も考えを改めてミナレを認めた。最後は停電が復旧し、茅代と久連木に番組を引き継ぐ形で生放送を終えたミナレの元に母がやってきて今後も頑張れとエールを送って去っていった。また『ジューンブライド・ラジオ』への出演も決定してハッピーエンド。
麻藤はシセル光明が最後に会った際に北海道にミナレを思わせるような姪っ子がいる事を告げていた事からシセル光明とミナレは親戚と考えており、この機会に母に尋ねてみたところ母には否定されてしまう。やはり偶然に過ぎなかったのかという事になったが、母が否定したのは自身の姉妹に該当者がいないというだけで、父方の親戚には言及していない。わざわざ小芝風花を2役で起用したのにただ似ていただけでしたという歯切れの悪いオチなのは何だったのか…。
全部終わっての感想
あまり内容は無かったがテンポの良い軽妙な掛け合いと個性豊かなキャラクターが揃っていてその時々のやり取り自体はとても面白いドラマだった。そういう面白さなので恐らく後年になってどんなストーリーだったかは思い返そうとしてもストーリーは覚えてないという事になりそうではある。
イメチェンして挑んだ金髪の小芝風花もこれはこれでありだった。瑞穂役の原菜乃華も好印象だったがこの人『すずめの戸締まり』の主演声優に抜擢されていた人だったのか。まだ10代で出演作見てみたら子役時代に『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』にゲストで出ていたのか(当時の感想に「ドロレス(原菜乃華)という子」と名前も書いてた)。
最後もこのまま続いていくかのようだったけど原作も続いているみたいだし、無理にこすって微妙な事になってしまった『妖怪シェアハウス』よりもシリーズ化に期待できそう。
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