森山直太朗 2001-2016
森山直太朗とはかなり不思議なシンガーだ。一般的にシンガーソングライターとして認知されているので当然1人で曲を書いていると思われれているが、作詞は初期から大学時代の後輩である御徒町凧との共作。歌詞が話題になった「生きてることが辛いなら」に関しては御徒町の単独作詞だ。さらに最初のベストアルバム『傑作撰』をリリースした05年を境に作曲まで御徒町凧との共同名義へ変更になった。Excutive Producerとしても表記されている御徒町凧の影響力はかなり大きいものと思われ、基本的に森山直太朗とは2人組ユニットであるといってもいいのかもしれない。とはいえ御徒町凧は演奏を手掛ける事が無いため、ライブの構成などに深く関与していても自身が舞台に立ってパフォーマンスすることはない。完全な共同制作体制ながらあまり他に例を見ないスタイルの活動形態だと思う。
そんな森山直太朗は03年の「さくら(独唱)」のミリオンヒット、およびその後の数作のヒットシングルで知られている。00年代後半からはヒットから遠ざかり、アルバム主体の活動へ移行していたので広く知られた曲があまりないもののトーク系のバラエティ含めたTV出演は近年意外と多い。
何故かオネェ系の口調になることがあって独身のままなのでそっちの人かと思っている人も多いとか多くないとかまた歌の大型特番が増えた影響もあって近年は毎年夏の終わりに「夏の終わり」をTVで歌う機会も増えている。なんだかんだ活動小休止を発表すればそれなりに話題になるし、全国ホールツアーをやればしっかりと動員もできる。聞けばどこかで聞いた事がある曲があるし、知らなくても1番が終わって2番のサビになる頃にはもう口ずさめてしまうような曲も多い。15周年における『大傑作撰』はまさにそんな森山直太朗は知っているけど曲はあまり知らないという人に向けた絶好の入口であり、今回は全シングル+ベスト盤に選曲されるような代表曲を中心に勝手に選出してみた。
記載無い場合は作詞は森山直太朗/御徒町凧、作曲は森山直太朗
「小さな恋の夕間暮れ」以降は作曲も森山直太朗/御徒町凧。※2016年9〜11月にかけて執筆
高校3年生
編曲:吉又良
「直太朗」名義でのインディーズデビューミニアルバム『直太朗』収録曲。インディーズ時代の作品なので弾き語りのシンプルな曲なのかと思いきやなんと吉俣良をアレンジャーに起用。むしろメジャーデビュー以降よりも丁寧な生音バンド編成による非常にどっしりとしたサウンドが展開する作品で、声が若い以外はインディーズ感(?)が無くて案外後追いでも予想以上の良さを感じられる作品でもある。その中に収録されたこの曲は直太朗が初めて作った曲とされている。母親の森山良子の影響で音楽をやるのではなくむしろ音楽を避けていたという直太朗だったが、眠っていた才能がそれを許さなかったのかこの曲が出来あがり、母親への提供のつもりでデモテープをテーブルに置いておいたら森山良子に自分で歌いなさいと言われ、それで歌手の道へ進み始めた、と語られている重要な最初の1歩。純朴な恋心が歌われたバラード。確かにこれは若い直太朗が歌った方がいい曲だと思う。
ベスト盤でのリミックスはアコースティック色をかなり強め、前半で入っていたバンドサウンドを後半までカットしてギターとストリングスと歌をメインに進行させるなど基本的にミックスで音を抜く形で仕上げている。メロディーの良さと声の良さは際立ったけどオリジナルの方が好き。
★★★★☆
インディーズミニアルバム『直太朗』
1stベスト『傑作撰2001〜2005』(リミックス)
インディーズシングル ワスレモノ
01年11月10日
編曲:吉又良
「直太朗」名義での唯一のシングル。当時は森山良子の息子であることを公表せずに名前だけで活動していた。このインディーズ時代はラジオニッポン放送の深夜番組に出ていてアナウンサーの人に「直太朗君、直太朗君」と呼ばれていたのだけ何故か妙に印象に残っていたが曲は記憶していなかった。ただ「さくら(独唱)」がヒットした時にあの「直太朗君」が売れたのか!と思った記憶がある。今作も丁寧な生音バンド編成による非常にどっしりとしたサウンドが展開するミディアムナンバー。「I'm not a loser」とつぶやく場面から始まるという心折れた状態から1歩踏み出すような心情が歌われていて、基本的に難解で何歌ってんだかわからない小難しい言い回しが特徴のメジャー初期の御徒町凧/森山直太朗の歌詞の中では比較的歌っている事が明確で分かりやすく共感しやすい。最初のシングルにしては暗い曲だなとも思うんだけど個人的には1作目にしていきなり大名曲。アルバム未収録のままなのが惜しい…。
★★★★★
アルバム未収録
レスター
編曲:中村タイチ
メジャーデビューミニアルバム『乾いた唄は魚の餌にちょうどいい』1曲目を飾った「森山直太朗」名義では最初の1曲。シンプルに聞かせる王道タイプのバラードで1曲目にして既に方向性を確立している。原点として大事な立ち位置のようでベスト盤にもしっかり2度収録されているが、2度収録されたのはどれもシングルヒット曲であり、アルバム曲ではこの曲のみ。夕方4時に寝過ごしたところから始まるというメジャー1曲目とは思えないマイペースっぷりだけどそこ含めてこれが森山直太朗というイメージは今でもある。「レスター」という言葉に特に意味はないらしいが、なんだか確固たるものを感じるのはそれだけ芯が通った曲なんだろう。
★★★★☆
1stミニアルバム『乾いた唄は魚の餌にちょうどいい』
1stベスト『傑作撰2001〜2005』
2ndベスト『大傑作撰』初回盤「土盤」
さくら
編曲:中村タイチ
メジャーデビューミニアルバム『乾いた唄は魚の餌にちょうどいい』に収録されていたオリジナルバージョン。ピアノ、ギター、打ち込みで構成されている。多くのリスナーがそうだったように独唱がヒットしてから後追いで聞いたんだけど、なんかアレンジが中途半端というかもっと生のバンドでガッツリとアレンジするならする、しないならしないでピアノ1本の独唱の方が「強い」曲になるんだなと感じた。
★★★★☆
1stミニアルバム『乾いた唄は魚の餌にちょうどいい』
陽は西から昇る
編曲:中村タイチ
ブレイク前の初期の名曲というと個人的に真っ先に浮かぶ曲の1つ。当然太陽は東から昇り西へ沈んでいくわけだけど、そんな常識をあざ笑うかのように逆から昇ってくるという大胆不敵な表現が深いんだかよく分からないんだか。押さえた平メロから広がりを見せるサビメロの展開は素晴らしく、初期のメロディーの強さは随一だと思う。アコースティック・ミックスは文字通りにアコースティックサウンドをのみを残し、バンドサウンドをカットしたバージョン。再録音したのではなく、文字通りにミックスによりバンドサウンドをカットしただけっぽい。
★★★★★
1stミニアルバム『乾いた唄は魚の餌にちょうどいい』
1stベスト『傑作撰2001〜2005』
1stシングル『星屑のセレナーデ』C/W(アコースティック・ミックス)
1st 星屑のセレナーデ
02年11月27日
編曲:中村太知
全く売れなかったというメジャー1stシングル。ベスト盤でようやくアルバム初収録となるもその1回ポッキリという不遇っぷり。他に同系統の曲が全くないアップテンポの打ち込みアコースティックナンバー。何でこんな他に無いような軽快な曲が1stシングルだったのか謎だが、シングルを意識してポップで勢いのある「売れ線」を無理して目指したのだろうか。ただ正直こういう曲もうちょっとあってもいいのになと思うくらいノリが良くてけっこう好きな1曲だったりもする。なんだかんだライブで披露すれば数少ない盛り上げナンバーにもなるし。
★★★★★
1stベスト『傑作撰2001〜2005』
2nd さくら(独唱)
03年3月5日
編曲:中村太知
「さくら」をピアノ伴奏のみの独唱としてシングルカット。ロングヒットとなり当時既に不可能になりつつあったミリオンヒットにまで到達した代表作にして、教科書レベルの桜スタンダードソングとなった。同時期に「世界に一つだけの花」が大ヒットしすぎて今作のミリオンの凄みが大幅に薄れたが今作以降、毎年桜ソングでヒットを狙いに行く風潮も生まれるなど大きな影響を残した。「独唱」というのは曲名ではなくあくまでバージョン名のことだが、「さくら」という同名曲が大量に存在するため、キンモクセイがカバーした時のように森山直太朗の曲であることを示す記号として「独唱」が用いられる事も。ファルセットを多用しているので意外と合唱するにしても難しい曲なんじゃないかと思うんだけど、シンプルで覚えやすいメロディー、シンプルゆえ難解さの薄い歌詞も相まって多くの人々が卒業や春の情景の中にこの曲を重ねたんだろうなと思う。名曲というより本当にスタンダードっていう感じがする。CDでのピアノ演奏は斎藤有太。MVは横向きでピアノ弾いてるオッサン(CDとは異なり倉田信雄)といかにも大学生上がりな少し今よりもっさい雰囲気で熱唱している直太朗というシンプルな内容。実はこれがCD音源では無く、実際にその場で倉田信雄が演奏して直太朗が歌って1発録音したもので、よく聞くとCDと違っていて一部声がひっくり返りかけていたりもする。また曲の最後で「上で〜♪」を伸ばして繰り返す構成はCDには無いものでこのMVや当時のTV出演で新たに加えたものだった。当時MV見たりTVで聞いてからCD聞くとなんかあっさり終わる感じがしたのはこのせいかも。
★★★★★
1stベスト『傑作撰2001〜2005』
2ndベスト『大傑作撰』C/W さくら(合唱)
意外と知られていないC/Wに収録された別バージョン「(合唱)」。直太朗のメインボーカルに宮城第三女子高等学校音楽部によるコーラスを足し、後半はリズム音が入るなどピアノ以外の演奏音も少し含まれたバージョン。コーラスはイントロ部分に少し入り、1番Aメロは完全に直太朗のソロっで1番Bメロ以降から本格的にコーラスが入る。メインメロディーを全員で合唱するのではなく、あくまで終始バックコーラスとしての参加となっているので合唱と聞いてイメージするメインメロディーもハモリも全員で合唱するのとは微妙に違う。なお今作に限ってはカラオケバージョンも独唱、合唱という表記に合わせて「さくら(伴奏)」と題されて収録されている。
★★★★☆
アルバム未収録
風唄
編曲:中村太知
「さくら(独唱)」ヒット後にリリースされたミニアルバムの1曲目。auのCMタイアップでけっこうOAされていたのでサビ部分は聞けば覚えている人も多いかも。和を感じさせる小難しい言葉遣いとシンプルさの中に凛とした強さを感じさせる楽曲で、これがそのままこの年の活動方針にもなっていたと思う。「夏の終わり」が好きならそのまま好きになれる1曲。
★★★★☆
2ndミニアルバム『いくつもの川を越えて生まれた言葉たち』
1stベスト『傑作撰2001〜2005』
3rd 夏の終わり
03年8月20日
編曲:中村太知
これまたミニアルバムからシングルカットだが、今回はそのままシングルカット。突然の大ヒットの次の一手として今度は夏の終わりを歌うという実にベタな展開だった。全体に漂う和風テイストと懐かしさ、日本の夏の終わりと切なさを感じさせる雰囲気が秀逸。冒頭の胡弓のような音色はよく聞くと直太朗本人のファルセットであり、まるで伝統楽器のように響き渡るところに改めてボーカリスト森山直太朗の凄みを感じる。当時もそれなりにヒットはしたので代表曲の1つにはなっていたがそれでも「さくら(独唱)」のミリオンに対して10万程度。時が経つにつれて徐々に風化していっている感じもあった。しかし近年は夏の終わり付近に音楽番組へ出演してこの曲を歌うというのが恒例化しつつあり、単なる「さくら(独唱)」の次に出てちょっとヒットした曲という以上のスタンダード化へ近づきつつある印象も。
MVは前作に続いてCDとは違いその場で演奏したものを1発録音した音源を使用している。この生の1発録音という緊張感をあえて選択する手法は、続くDVD作品『永遠はオルゴールの中に』でひとまずの集大成を見た。
★★★★☆
2ndミニアルバム『いくつもの川を越えて生まれた言葉たち』
1stベスト『傑作撰2001〜2005』
2ndベスト『大傑作撰』
4th 太陽/声
04年1月10日
年明けにリリースされた両A面シングル。初登場6位だったが2週目には売上を微増させて5位に浮上し、広がりのあるヒットを記録した。太陽
編曲:中村太知
DVD作品『永遠はオルゴールの中に』で先行披露されていた曲をもう少しキッチリアレンジした上でシングル化したもの。ちょっと1曲歌わせて〜とさらっとした歌い出しからけっこうドラマティックに盛り上がっていく。シングルでは今までで1番盛った感じのアレンジになっているけど、スケールに見合った楽曲だと思う。メロディーだけでも引っ張っていく強さがあり、それゆえにロングヒットしていたんだなと改めて思う。シングルでは冒頭に「イヨー」という掛け声と「ポン」という間抜けな音が入っており、その後も1番サビに突入する直前に「スポポポポポン」という乱打と「イヨー」と掛け声が入り、エンディングでもイヨー!ポン!が2連発される。
アルバム収録の際は「邂逅編」と題され、全面的に再録音。これに伴いイヨー!ポン!は全部抹消、一部歌い回しも変わっているのでかなり分かりやすくアルバムバージョンしている。
『大傑作撰』での2016 Mixはシングルバージョンのリミックスとなっているが、ここでもイヨー!ポン!が綺麗さっぱり消されている。よってイヨー!ポン!は当時は面白がって随所に入れていたものの、発売後にマジ…アレ…いらなかったよな…と制作陣一同が思って以降抹消したという事なんだろうか。確かに妙に印象に残ってしまうので悪目立ちするといえばそうだけど、1度聞いてしまうと無きゃ無いでなんだか聞きたくなってしまう、そんなイヨー!ポン!を聞きたければシングル盤を探してくるしかない。
★★★★☆
シングルバージョンアルバム未収録
1stアルバム『新たなる香辛料を求めて』(邂逅編)
1stベスト『傑作撰2001〜2005』(邂逅編)
2ndベスト『大傑作撰』(2016 Mix)声
編曲:中村太知
映画『半落ち』主題歌。いきなり裏声から入る美しいバラードナンバー。タイアップに合わせて書かれたのではなく、テーマが偶然一致していた既存曲だったようだけど、ストーリー見る限りタイアップに凄くハマっていたと思う。歌詞やメロディーはもちろんだけど美声を堪能する曲。
★★★☆☆
1stアルバム『新たなる香辛料を求めて』
1stベスト『傑作撰2001〜2005』
5th 生きとし生ける物へ
04年3月17日
編曲:中村太知
月9ドラマ『愛し君へ』主題歌。ドラマ放映開始前に発売されたため、ドラマ開始後にかけてロングヒットし、一応今作が2番ヒット作となる。ド派手な男性コーラス隊の合唱から始まるが、演奏開始後はシンプルな弾き語りからスタート。ほぼ同じメロディーを繰り返しながら徐々に音数が増え、ボーカルの熱量も上がっていき最後は大熱唱。最後が僕は君が思うような人間ではないというフレーズが飛躍してしまい、「もはや僕は人間じゃない」と人間じゃなくなってしまうラストフレーズはこの部分だけ切り取るとかなりシュールだった。生命力をテーマに掲げた超大作だったが、文字通りの力作であり、聞くのにもけっこうパワーがいる。今作を最後にあまりロングヒットしなくなってしまい、ヒット期が終わってしまったけど確かにこれをやってしまうと早くも行きつき過ぎた感じはあった。アルバム・エディットでは冒頭の男性コーラスをカットし、いきなり弾き語りから始まる。
★★★★☆
1stアルバム『新たなる香辛料を求めて』(アルバム・エディット)
1stベスト『傑作撰2001〜2005』
2ndベスト『大傑作撰』
愛し君へ
編曲:中村太知
月9ドラマ『愛し君へ』挿入歌。ドラマと同名タイトルだったが挿入歌使用に留まった曲。この時期の王道的な芯の強いバラードナンバー。何はともかくあの月9ドラマの同タイトルソングであるためか、ベスト盤にも2回収録された鉄板代表曲の1つだけどその中では1番地味な感じはする。究極のラブバラードという凄い雑な括りではあるけど「声」と印象が少し被る。
★★★☆☆
1stアルバム『新たなる香辛料を求めて』
1stベスト『傑作撰2001〜2005』
2ndベスト『大傑作撰』
6th 今が人生〜飛翔編〜
04年8月4日
編曲:中村太知
1ヵ月半程度で生産を終了した限定シングル。アルバムに収録されていた「今が人生」をリメイクしたもの。限定ゆえかジャケットが無く、画像でジャケットになっているピースしている直太朗の姿はCDレーベル面の写真。歌詞カードも簡易なCDと同サイズの丸い紙が入っているだけだった。フジテレビのアテネオリンピックテーマ曲。アレンジはほぼ同じだが飛翔編のサブタイトルに偽りなく、コーラスがド派手になり、さらにブラスアレンジが加えられて全体的にゴージャスになっている。アテネオリンピックはゆずの「栄光の架橋」が全部持って行ってしまった感があり、確かにあまりオリンピックとこの曲が密接しての記憶が無いが、個人的には04年の夏を思い出す。断片的なフレーズが妙に当時の心境に刺さり、特に"なんだかんだあって僕は今眩く燻ってる"というのが19歳のあの夏、まさに今の俺だ…と感じたのを記憶している。年齢的に眩い時期だったわけだけど、体調が優れずに無駄に時を過ごして燻りまくっていたからそう感じたんだろうな。シングルカットもあってあまりヒットしなかったけど、04年の中でもとても印象深い。
★★★★★
2ndベスト『大傑作撰』初回盤「土盤」
1stアルバム『新たなる香辛料を求めて』(オリジナル)
1stベスト『傑作撰2001〜2005』(オリジナル)
7th 時の行方〜序・春の空〜
05年2月23日
編曲:渡辺善太郎
爽健美茶CMタイアップ。インディーズ時代のシングル『ワスレモノ』C/Wの「春の空」とアルバム『直太朗』収録曲の「時の行方」を合体させたもの。タイトル通りに冒頭(序)に「春の空」が歌われ、そのまま「時の行方」へと展開していく。「春の空」がすぐに終わるので一部だけ使っているのかと思いきや元々短い構成の曲だったのでこれでフル尺であり、どちらも曲構成を削ったりはしていない。一部歌詞やアレンジ、歌い方などは変更されているが基本的にほぼそのままくっつけ、より幻想的なアレンジを施して統一を図ったような印象。ギターとストリングス以外は打ち込みで構成されているが、和を感じさせつつ幻想的な雰囲気にこれまた妙にドハマリして発売時期かなりリピートしまくった。ベスト盤でのエディットは歌い出しがアカペラに変更され、オリジナルよりも30秒弱短く編集(エディット)されているという違いがある。
★★★★☆
シングルバージョンアルバム未収録
1stベスト『傑作撰2001〜2005』(エディット)
8th 小さな恋の夕間暮れ
05年6月15日
今作から作曲も共作扱い。作詞作曲:森山直太朗/御徒町凧、編曲:渡辺善太郎
早すぎた1枚目のベスト盤『傑作撰 2001〜2005』と同時発売。なんとかトップ10入りも果たしたが、そのまま2016年の『大傑作撰』まで10年以上アルバム未収録になっていた不遇曲。やたら力んだ曲やシングルカット、合体曲など大作が続いた中でシンプルなバラードナンバー。構えずに聞けてそれでいて美メロ。これ以降あまり作らなくなるけど王道のシングルヒット向きの楽曲だと思う。「夕間暮れ」という言葉を今作で初めて知った。曲とはあまり関係なかったがMV内で実際に直太朗が髪を短く散髪しているのも印象的だった。しれっと今作から作曲まで御徒町凧との共作になったのは結局何故だったのだろうか…。今までも実質そうだったのを戻しただけなのか、御徒町凧が作曲にも口を出すようになったのか、印税の配分が面倒なので均等にしたのか。2人の発言を見るに基本的には作詞は御徒町寄り、作曲は直太朗寄りで制作している感じではあるけど。
★★★★☆
2ndベスト『大傑作撰』
9th 風花
05年11月16日
編曲:渡辺善太郎
NHK朝ドラ『風のハルカ』主題歌。売上はそうでもないがかなりロングヒットしたため、ランクイン週数では自身3番目の20週を記録した筆頭の代表曲の1つ。このドラマ、思い返せば唯一見た朝ドラだった。直太朗が主題歌だというので途中まで見ていたんだけど最後の方は朝起きれなくなって見なくなってしまった(大学生秋冬の堕落あるある)。メロディーや裏声を駆使した歌い方でまるで風が流れていくように感じられるのが秀逸。その分だけ難易度がやたら高く、紅白でこの曲を歌唱した際はオケと一緒に流されていた同期ボーカルと生声によるWボーカルが若干不協和音状態になってしまっていてビミョーな感じになっていた。2016 Mixは音のバランスを変更したようなイメージ。
★★★★☆
2ndアルバム『風待ち交差点』
2ndベスト『大傑作撰』(2016 Mix)
10th 君は五番目の季節
06年3月1日
Sound Produced by 田中義人
今作からシングル曲なのにシングルっぽくないというか、あまり盛り上げない、張り上げない、抑えた雰囲気へと完全移行。ヒットからも完全に遠ざかるようになってしまい、個人的には今作から一段落ちて地味になったなと感じた。全体に漂う喪失感、四季の次にめぐってくるのが君であるというほど大事な君が過去形になっており、やたら暗いしてっきり故人を偲ぶ曲なんだと長年思っていた。しかし後に御徒町凧は昔の彼女を思って歌詞を書いたと語っており、単なる元カノへの未練を詩的に表現しただけだったらしい。マジかよ…。「遺香」とか出てくるのでこれは完全に死んだ恋人を思い出している悲しい曲だと思ってたのに『大傑作撰』でのY子の事という2人の共通の知り合いらしき内輪イニシャルトーク見たときはショックだったぜ…。
シングルはドラムが打ち込み、サウンドプロデュースの田中義人にSound Colageというクレジットがされているように全体にどこか編集したようなもやがかかったような音像だったが、アルバムバージョンではドラムが生になり、生のトランペットが入るなど打ち込みを生演奏に差し替えていてシングルでのもやが取れたような雰囲気に変更されている。
またシングルもアルバムバージョンも後半で「目眩めく悠遠に願わくば嗚呼」と繰り返すパートがあり、ここで本来「めくるめく」なのを「めくりめ〜く〜ゆ〜えんに」と歌っているが、実際に「めくりめく」という言葉は無い。これを書いた御徒町凧本人は意図したわけではなく単なる間違いで発売後にそれに気づいたとかでそれからずっと気になっていたという。御徒町が差し替えを訴えた事で『大傑作撰』ではこのコーラス部分のやり直しが実現したそうで「めくるめ〜く〜」に変わっている。ついでなので直太朗のボーカルも全部歌い直したそうで結局ボーカル全部再録音となった。オケはシングルバージョンと同じ演奏クレジットになっておりシングルバージョンをそのまま使用した模様。
★★★☆☆
シングルバージョンアルバム未収録
2ndアルバム『風待ち交差点』(アルバムバージョン)
2ndベスト『大傑作撰』(2016 New Vocal Recording)
11th 風になって
06年9月13日
Sound Produced by 笹路正徳
タイトルに「風」があって歌い出しが「遥か遥か」。そのまんますぎるがこれは「風のハルカ」への1年越しのアンサーソングかと思ったら、元々主題歌として作ったのがこれだったということらしい。今でも直太朗本人はこの曲の方がドラマに合っていたと思っているそうだけど、曲自体はけっこう普通のポップナンバー。これも確かにさわやかで風を感じられる曲ではあるんだけど、これまでの楽曲と並べるとパンチの弱さは否めない。今作と「風花」を提示されたら「風花」が選択されるのは納得。ここからしばらくアレンジャーが笹路さんになったけど、抜群の安定感を獲得した一方で落ち着いちゃった感じもあった。
★★★☆☆
2ndアルバム『風待ち交差点』
12th 恋しくて/夢みたい〜だから雲に憧れた〜
06年10月25日
2作目の両A面シングルにしてアルバム1ヵ月前の先行シングル。ピアノ演奏のみの「恋しくて」シングルバージョンは今作でしか聞けない。恋しくて
Sound Produced by 笹路正徳
演奏は笹路正徳のピアノとボーカルのみという「さくら(独唱)」以来のシンプル編成。冬の到来を歌っているのでこの曲を聞くと11〜12月の年末へ向かっていく空気を感じる。しかしアルバム先行にしては地味な曲を立て続けに出すなぁ…と正直思った。アルバムでは通常のバンドスタイル+ストリングスというオーソドックスなストバラに変更された。オーケストラバージョンと言うほどド派手こってりアレンジではなく、J-POP大ストバラ時代が幕を開けた中ではいちいちオーケストラバージョンなどと名乗るほどではないような…。シングルバージョンが「(独唱)」でオーケストラバージョンが無表記のオリジナルバージョンという方が分かりやすい。それこそいきものがかり辺りが歌いあげる姿も浮かぶくらいの名バラードなんだけど、本・亀・島だったらもっと派手に音を盛ってヒット曲っぽくするところを笹路さんは随分抑えるなぁ…といった感じ。ストリングスも扱えるベテランアレンジャーでも笹路さんとか佐久間正英さんはあまりあちこちで売れ線ストバラアレンジを連発しなかったが、ここに差があるのかも。
★★★☆☆
シングルバージョンアルバム未収録
2ndアルバム『風待ち交差点』(オーケストラバージョン)夢みたい〜だから雲に憧れた〜
Sound Produced by 笹路正徳
ワルツっぽい要素もあるシンプルナンバー。これまたそれなりに良メロなんだけどきっちり抑えめに整えられたアレンジもあってか、夢みたいを連呼するサビはともかくとしてじっくり聞かないとなかなか印象に残ってこない。
★★★☆☆
2ndアルバム『風待ち交差点』
13th 未来〜風の強い午後に生まれたソネット〜
07年5月9日
Sound Produced by 笹路正徳,森山直太朗
映画「初雪の恋 ヴァージン・スノー」主題歌。久々に勝負曲、名曲が来た!と当時歓喜した。完全に低迷状態になっていたので今回はヒットを意識したのかなという気もする王道の美メロバラード。06年のシングル群があまりに地味だったのでとりあえず枯れたわけじゃなかったのかと安心もした。C/Wには3月に披露していたライブ音源が収録されているが、こちらはピアノと本人のギター演奏のみのシンプルな編成。思ったほどヒットはしなかったけどこの時期では爪跡を残した方だったと思う。ベスト盤の初回盤DVDのライブ映像でかろうじて収録されるも本編CD未収録なのがもったいなかった。
★★★★★
3rdアルバム『諸君!!』
14th 太陽のにほひ
07年8月8日
Sound Produced by 笹路正徳,森山直太朗
CMでも使用されていた歌い出し冒頭のブロックと1回だけ別のメロディーを挟んで同じブロックを繰り返すだけで終わるシンプルな編成のナンバー。歌い出しのメロディーをほぼ繰り返すので意外と覚えやすく、淡々としたバンドサウンド含めて歌われている通りに蒸し暑い夏の午後のなんだか揺らいでるような空気が見えてくる。地味かと思ったら意外とハマる曲で、2ndアルバムに比べて3rdアルバム期は個人的には一旦地味になっていたのが持ち直したような印象がある。
★★★★☆
3rdアルバム『諸君!!』
15th スノウドロップ
08年1月30日
Sound Produced by 笹路正徳,森山直太朗
ウィンターバラード。バンド+ストリングスだが派手には盛り上がらず、優しく落ち着いた雰囲気。シングルとして切る曲としては実に優等生的で十分にいいにはいいんだけど冬という要素を除くと割と普通の曲だったかなと思う。「さくら(独唱)」「夏の終わり」に続く季節ソングとして話題になるような事も全くなかったし…。当時は今回も安定していいなと思ったんだけどそんなに強くは残らなかった。
★★★☆☆
3rdアルバム『諸君!!』
夕暮れの代弁者
Sound Produced by 笹路正徳,森山直太朗
昭和のエンターテイナーみたいなジャジーでオシャレ(オサレ?)な王道イメージとは異なるノリのいい楽曲。バラード連発のイメージや近年はフォークのイメージが強いがはじけた事もけっこうやっていて、ライブでは王子様風にキレのあるダンスを踊る(やはり昭和のアイドルみたいになるけど)事もあり、直太朗のエンタメ性が強く反映された楽曲なのかも。初期のキャッチフレーズとして多用していた「夕暮れの代弁者」をすっかり使わなくなっていたこのタイミングで曲名にして、しかも普段の王道とは異なる楽曲というところが興味深い。アルバムだから自由にやれたっていうのはあるにしても、こういう曲をシングルにできなかったものなのか。
★★★★☆
3rdアルバム『諸君!!』
2ndベスト『大傑作撰』初回盤「土盤」
花
Sound Produced by 笹路正徳,森山直太朗
中孝介への提供作。中孝介が当時期待の大型新人として売り出されていて、大ヒットはしなかったがそれなりにロングヒットした事もあって中孝介の代表作にして、この時期の森山直太朗の他の曲よりも知名度が地味に高い。バンド+ストリングスでフルに盛り上がる提供バージョンに対して今作は弾き語りのシンプル編成。自分の曲というよりも中孝介のヒット曲のカバーという認識でセルフカバーしたと語られている。中孝介が圧倒的なボーカルでもってしてこの曲を想像以上に歌いこなしていたのに比べると弾き語りというシンプルさもあってインパクトは薄いけど、それでもやはりこの時期の曲ではずば抜けたパワーがあるのは確かだと思う。
★★★★★
3rdアルバム『諸君!!』
2ndベスト『大傑作撰』
諸君
Sound Produced by 笹路正徳,森山直太朗
「諸君」という言葉がリーダーというか上に立つ者っぽい感じがするが、色々あるけどなんとかやっていこーぜというみんなの人生の応援歌を御徒町&直太朗流にやるとこうなるのかなといった感じの人生のテーマソングのような楽曲。小難しい言い回しが多く、詩的な雰囲気からなかなか共感を得にくいところがある中では比較的メッセージが入ってきやすい曲だと思う。
★★★★☆
3rdアルバム『諸君!!』
16th 生きてることが辛いなら
08年8月27日
作詞:御徒町凧、作曲:森山直太朗、編曲:笹路正徳
"いっそ小さく死ねばいい"という冒頭の歌詞が過激で自殺推奨として物議を醸したと報じられた問題作。この曲のみ作詞と作曲が共作ではなく完全分業になっている。97年頃に御徒町が書いていた詞が、引っ越しの手伝いをするために訪れた際に直太朗が発見して曲をつけたとされている。最後まで聞けば生きることを推奨した曲であることは分かるし、取り立てて問題作と騒ぐような事でもなかったが、最初に問題作として仕掛けたのはどこの誰だ?既にあまり注目されていない状況だったのにいきなり1000件も賛否両論があったなどと報道され、最終的にこれでTV出演や紅白まで復帰した(割にはそこまで売れたわけでもない)ので、どうも時間をかけてわざと世間をバズらせる戦略だった気もするけど…。ストリングスまで入って美しく盛り上がり、実際には人生賛歌のようにも聞こえる感動的な仕上がりだが、一般的にはこの盛り上がるバージョンには違和感というか知ってるのはコレじゃない…という感じがあると思われる。というのもC/Wに弾き語りが収録されているが、専門学校のCMタイアップとしてOAされたのも、当時のTV、紅白歌合戦で歌われたのもすべてC/Wの弾き語りバージョンであり、一般的に知られているのはこっち。オリジナルは最後転調までするが今作は最後まで弾き語りで淡々と歌われる。美しく盛り上がるオリジナルに比べると装飾が無い分だけシリアスさが強い。知名度が高いものの弾き語りはアルバム未収録。
★★★★☆
4thアルバム『あらゆるものの真ん中で』
2ndベスト『大傑作撰』
17th 涙
09年10月21日
編曲:西海孝
変則的なシングルで表題曲であるこの曲は3曲目に収録され、C/W2曲が1,2曲目に収録されていた。しばらくメインアレンジャーだった笹路正徳を離れての新体制で西海孝を招いての作品だったが、次のアルバムは石川鷹彦の全面プロデュースになったので、結果的に今作だけ単発作のようにポジションが浮いてしまい、前作と共にアルバムではボーナス扱いで最後に収録された。バンド+ストリングスの大バラードナンバーで6分半もある大作だが、雰囲気は難解でなんともとっつきにくい楽曲。こっちの方面に進むのではなく石川鷹彦プロデュースでシンプルな往年のフォーク路線へ向かう事になるが、メロディーだけなら今作の3曲にも昔のフォーク的な匂いは以前よりも強めに感じられたのでアレンジャーの選択がちょっと違っていたという事だったのかも。今作は過渡期どころか一方通行の行き止まりでした…みたいな感じもする。
★★★☆☆
4thアルバム『あらゆるものの真ん中で』
18th 花鳥風月/言葉にすれば
10年9月29日
前作以降リリースされたアルバム『あらゆるものの真ん中で』は先行のシングル2曲をボーナス送りにして、新曲13曲を石川鷹彦プロデュースで制作した新体制での作品だった。今作はそのアルバムからのシングルカットと新曲を収録した両A面シングルにして、今作以降はアルバム主体へ移行し、シングルリリースをあまりしなくなった。このためアルバム5枚にわたって関与した石川鷹彦プロデュースでのシングルはこれ1作ポッキリ。花鳥風月
編曲:石川鷹彦
シンプルなアコースティックバラード。日本の四季折々の美しさが感じられる和風な雰囲気をこれだけの少ない音数で感じさせるのは何気にかなり匠の技だったと思う。ただシングルでわざわざ切るには地味だったか…。
★★★☆☆
4thアルバム『あらゆるものの真ん中で』言葉にすれば
編曲:石川鷹彦
新曲。一応バンドにはなっているがやはりアコースティックギターメインのフォーク色が強くシンプルな佇まい。A面曲の中では正直最も地味であり、何度聞いても印象に残らない…。
★★★☆☆
アルバム未収録
うんこ
編曲:石川鷹彦
音源化されていなかったが存在はしていた未発売曲を一挙まとめて石川鷹彦との2人だけで緊急レコーディングして緊急発売したというアルバムの収録リストが発表されるやいなや、この曲の存在が発見され、ナンダコレwwwwwとネット上で話題になった問題作。このため曲は知らないが「森山直太朗には「うんこ」という曲がある」という事だけは妙に知られている。歌詞はわずか4行の超短曲で、そのままズバリ直球で「うんこ」が歌われているが、ほぼ弾き語りで歌い終えると皮肉のようにとても美しいストリングス演奏が繰り広げられる。シュールさではずば抜けており、『大傑作撰』でもちゃっかり「土盤」に収録された。
★★★☆☆
5thアルバム『レア・トラックスvol.1』
2ndベスト『大傑作撰』初回盤「土盤」
フォークは僕に優しく語りかけてくる友達
編曲:石川鷹彦
当初はシンプル過ぎる印象が強かった石川鷹彦プロデュースも徐々に馴染んできて往年のフォークを様々な形で現代に蘇らせたようなアプローチでシンプルな中にも幅が出始めた時期の楽曲。タイトル通り昔のフォーク風のナンバー。フォーク世代だった両親が懐かしがっていたのであの頃のフォークの空気感が確かにここにあるようだ。
★★★★☆
6thアルバム『素敵なサムシング』
2ndベスト『大傑作撰』
19th 日々
13年3月27日
編曲:蔦谷好位置
久々のシングルは久々に王道のバンド編成のミディアムナンバー。かなりシンプル志向が続いていた中で「未来〜風の強い午後に生まれたソネット〜」ほどではないけどあの時のように久々にヒット曲を出そうという気合が入っていたようにも感じられる。ありふれた日々に幸せを感じられる歌詞もよかった。JUDY AND MARY解散後のソロ活動で低迷しかけたYUKIのプロデュースを担当するなりソロとしての確固たる地位を築くのに貢献して以降、エレファントカシマシやゆずなどある程度のキャリアを重ねた後に新鮮な息吹を吹き込んで再生させるのに定評がある蔦谷好位置のアレンジだが、今作に関しては新鮮さはなく、笹路さんプロデュース期との違いもあまり感じられない。
★★★★☆
7thアルバム『とある物語』
2ndベスト『大傑作撰』
どこもかしこも駐車場
編曲:石川鷹彦
語尾だけ変えてタイトルを連呼するだけのサビ、締めのフレーズが「そろそろ火星に帰りたい」という意味不明っぷりでシュール極まりない曲。アルバム主体に移行してシングルヒットを出すよりもシンプルかつシュールなフォーク志向を強めていたここ数作の中で取り立てて変わった方向性ではなく、王道中の王道ではあるんだけど現在の森山直太朗というシンガーをかなり的確に表現した挨拶代わりの1曲のようでもある。基本的に初期ほど強くはないんだけど、なんだかスーッと耳に入ってきて、2番のサビが来る頃にはもうサビを辿れるようになり、最後のサビの頃にはもう口ずさんでしまうという不思議な魔力。これが00年代終盤以降の森山直太朗の最大の魅力だと思う。本人も偉くお気に入りで、『大傑作撰』発売時のインタビューで最も推したい曲としてこの曲を挙げ、初回盤特典DVDのインタビューコーナーの合間にはまさかのMVフル収録。発売当時もアルバムリード曲だったがもっとアピールすべきだったという後悔を残しているほどだった。
そのMVは公園で路上ライブをする直太朗というシンプルなものだが曲が進むにつれて直太朗がどんどん老けていき最後は特殊メイクでおじいちゃんになってしまう。行きかう人々は不自然なまでに歌っている直太朗に一切の関心を示さずにスマホを見ているという色々深い内容。
★★★★☆
8thアルバム『自由の限界』
2ndベスト『大傑作撰』
よく虫が死んでいる
編曲:石川鷹彦
充実さを見せていた石川鷹彦プロデュース後期の1曲。今作もフォークというより昭和の歌謡曲風のナンバーになっており、80年代を知らずとも勝手にイメージされる強烈な「あの頃」っぽさとそこに乗っかるタイトルサビのシュールさ。先の駐車場連呼といい、完全に独自の路線を確立した。
★★★★☆
8thアルバム『自由の限界』
2ndベスト『大傑作撰』初回盤「土盤」
自由の限界
編曲:石川鷹彦
シングルを出さなくなり、アルバムにおけるリード曲もマイペースなものが増えたので外に向けた感じの曲があまり出なくなっていた中で、この曲は非常にシングル曲っぽい曲だなと思う。適度に盛り上がる3連リズムのアレンジと軽すぎず重すぎずにストレートに美メロと希望を感じられる。何故これがシングルカットどころかリード曲にもならなかったのか…。
★★★★☆
8thアルバム『自由の限界』
20th 若者たち
14年8月13日
作詞:藤田敏雄、作曲:佐藤勝、編曲:高田漣
ザ・ブロードサイド・フォーの66年発表作のカバー。ドラマ「若者たち2014」主題歌。主題歌もそのままリメイクされ、カバー曲となったが歌い手に直太朗が起用された形。特にフォーク志向を強めていた中で今こういったフォーク系のカバーをそのままカバーできるシンガーは案外他にいないんじゃないかというくらいなので見事なカバーだったと思うし、適任者は直太朗しかいなかったなとも思う。
★★★★☆
9thアルバム『黄金の心』
2ndベスト『大傑作撰』
五線譜を飛行機にして
編曲:笹路正徳
映画「ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE2 サイキック・ラブ」の主題歌MVも制作されたアルバムリード曲。これまたシングルよりシングルらしい楽曲。サビの締めでタイトルが出てくるがここでのファルセットが実に王道的で美しい。というかシングルだけ並べるとヒットしなくなってからの森山直太朗は売れる曲が書けなくなったようにすら思えてしまうところだがシングルを切っていないだけである事が良く分かる。むしろ00年代後半にヒットから遠ざかっていた時期よりも静かに確実に上がってきている気さえする。
★★★★☆
9thアルバム『黄金の心』
21st 生きる(って言い切る)
15年9月9日
編曲:高野寛
オリジナルとしてはまたしても久々のシングル。今作プロモーション時期にこの後の活動小休止を発表。この時点で半年程度ともコメントしており、半年など発表するまでもなかった気がするんだけど「小休止」という聞きなれない響きと、その後に控えた15周年に向けての「再開」で話題になる…なかなか賢い…。久々のシングルだがタイトル通りに真っ向勝負なマジバラード。ここ数年のアルバム曲で見せていたシュール&繰り返しのサビで気がついたら口ずさめてしまうという王道で勝負すればいいのに、シングルはもう少ししっかりした曲でないといけないという意識があるのかないのか、正直力作っぽくはあるんだけど「涙」と並んで印象には残りにくい。シングル曲となると何故こうなってしまうのか。
★★★☆☆
10thアルバム『嗚呼』
魂、それはあいつからの贈り物
編曲:森山直太朗、河野圭
リード曲は「嗚呼」に譲ったもののアルバム1曲目を飾り、小休止を経ての直太朗はまた少し新しくなったぞ…と思わせるには十分なほどのアップナンバー。ストリングスでスリリングに盛り立てる手法はColdplayの「美しき生命」を思わせるところもある。個人的にはTV出演でことごとく「嗚呼」を歌うよりこっちを歌った方がリスナーを引き付けたと思うんだけどなぁ…。
★★★★☆
10thアルバム『嗚呼』
2ndベスト『大傑作撰』初回盤「土盤」
嗚呼
編曲:森山直太朗、河野圭
サビが「嗚呼」しかないリード曲にしてタイトル曲。バラードの森山直太朗らしい楽曲で、ついに文字1つだけでなんともいえない感情を歌として表現しているところに15年の深みを感じられる。とはいえそんな背景など知ったことではない「夏の終わり」などの初期ヒット曲で記憶が止まっている視聴者相手に歌番組でこればっかり歌ってアピールしても正直届けきれなかったところはあると思う。
★★★★☆
10thアルバム『嗚呼』
2ndベスト『大傑作撰』