藍坊主×映画監督/勝又悠「太陽の夜」

レコチョクによるクラウドファンディング形式のプロジェクトWIZY。2017年8月に始まったWIZYでの藍坊主と映画監督の勝又悠による藍坊主の楽曲「群青」を映画化プロジェクトによる作品。

勝又悠監督は近年の藍坊主のMVを手掛けており、また出身地もメンバーと同じ小田原で学年が1つ上という同世代であり、特にボーカルhozzyと意気投合していて今作のプロジェクトが始まった模様。

いくつかのプランを選択可能で、個人的には「群青」のCD化と新曲だけ欲しかったが、CDだけのプランはさすがに無かったのでCDがつく最安のプランである「応援プラン」を選択した。

最終的なサポーター数が758名というのはかなりシビアな気がするが、藍坊主の音楽そのものではなく映画作品となると現状こんなところだろうか…。

応援プランの内容

・映画「太陽の夜」DVD(映画本編・ドキュメント・「群青」MV収録)

・サントラCD(「群青」初CD化&新曲「ブラッドオレンジ」とメンバー作の劇中インスト収録)

・サポーター数が600名を越えたので映画リーフレット

デモ音源がつくと2000円も値上がりする上に、以降はTシャツだ楽譜だドラムセットの一部だとあまり興味のわかないアイテムが付属するのみだったので、選択肢は実質これ1択だった。

映画「太陽の夜」

「群青」の映画化という割には正直曲の印象とは似ても似つかないかなり暗い内容の映画だった。思春期の中学生少女が主人公で、20歳くらいの若い女性臨時教師に憧れに似た感情を抱くんだけど、その教師が男とデートしているのを目撃すると熱が冷めて…という思春期の難しい感情を表現している50分程度の短編映画。

たぶんテーマとしては閉鎖的な田舎町で大人に対して嫌悪感を抱くと同時に性に目覚め始めてその自身の変化に複雑な感情を抱いている少女がカッコいい年上の女性に憧れのような自分でも理解できない感情を抱くもその大人の女性の「女」な部分(男とデートしているだけだが)を見て興醒めしてより制御不能な感情に支配されるがそれを乗り越えて一歩大人へと近づく…2学期が始まる…みたいなことなんだとは思う。実際の監督コメント。でも物凄く分かりにくい上に主人公本人が理解できない衝動の行動が視聴者に理解できるはずもなく。

主人公の女の子は終始超絶不機嫌で、親でさえもどう取り扱っていいのか困るような性格。こんな不愛想なのに好いてくれる丸坊主男子がいるんだけど、かなり一方的に喋りたて盛り上げようとする彼でさえお手上げになるほど不機嫌。少年が強引に遊びに誘っているとはいえ、そもそもそんな不機嫌な態度取り続けておいて 何 故 来 た ?というレベル。めげない少年が凄い。

家が不動産をやっているので2学期から来る(舞台設定は夏休み)臨時の新人教師の女性の家を親が仲介しており、この縁で先に新人女性教師と知り合って、家までついていくんだけど、あまりに無感情・無感情な少女に対して新人女性教師もどう接していいか分からない感じ。しかも終盤では彼氏とほろ酔い帰宅中に待ち伏せされて相談があると無理やり連れだされた挙句に、走りまわされ、突如買ってきたスイカを破壊したり意味不明な事を叫んだりされるのである。教育以前に最早恐怖を感じるレベルの奇行の数々。いつ自分に襲い掛かってくるかも分からない身の危険を本能レベルで察知する勢いで正直新人教師の手には到底負えないような難しすぎる生徒である。しかしこの子の親は大家さんなのである。他の生徒だったら少し距離を置いてしまえばいいが、大家の娘なので下手に突き放せないし、距離も置けない。引っ越したばかりでも部屋に教育関係の本が真っ先に出してあるくらいは勉強熱心な新人先生の立場になって考えるともう勤務前から憂鬱が止まらない。

“疾走感と切なさを伴った藍坊主らしさが全面からほとばしる「群青」を勝又悠監督と共に映画としてお届け!”なんていうキャッチコピーを掲げておいて「群青」からどうインスパイアされたらこんな思春期の難しすぎる少女を扱った映画になるのか…(1番最初に監督が「群青」デモを聞いた時に書いたというプロットはやはり陶酔気味な妄想が過ぎるようなところがあるものの曲の雰囲気から著しく逸れてはいなかった)。何もかも唖然とするしかない映画だった。

この監督「魔法以上が宿っていく」のMVでも突如少女が藍坊主のライブに乱入して同曲をステージで熱唱するなんていう内容を作っていたし、「Luno」の初回盤DVDドキュメントでもライブを見に来たMV出演の少女に変な演出を加えていたので、思春期の少女の本人すら理解できない複雑な心理とそれによって生じる衝動的かつ突発的な謎行動というものに対して深いこだわりがあるのは確かと思われる。

いずれにせよ思春期の少女なんて体感したことが無いし、本当に思春期の少女がこんな成長過程を通るものなのかもさっぱり分からない。独特すぎるテーマの映画で全く理解できなかった…。前述のMVの内容からある程度は独特の世界観の内容でさわやかなものにはならないだろうなとは予想していたがまさかここまで恐怖レベルの少女の奇行を見せられるとは思わなかったので、正直怖くなった。
教師志望の人ならこのような生徒に迫られたときどうすればいいのかディスカッションする教材として見ると心構えはできるかもしれな

「群青」と新曲「ブラッドオレンジ」は名曲

理解不能なものを購入してしまったことに後悔しかなかったが、「群青」が名曲であることに揺るぎは無いし、藤森真一が書き下ろした新曲「ブラッドオレンジ」も「群青」と並ぶ期待通りの藍坊主らしい名曲だったのでこれは良かった。

今回も時乗浩一郎が参加しているし、マスタリングも山崎翼というバーニーグランドマン所属のプロのエンジニアが担当しているので『Luno』のような自主制作っぽさは無い。次のアルバムも時乗さんの手を借りつつプロのエンジニアでレコーディングされれば久々の名作が生まれるのではないかという期待が。

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