映画 ゆるキャン△

2022年7月公開。
2023年4月26日Blu-ray/DVD発売。

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Blu-ray&DVDはコレクターズ版と通常盤の2種発売。コレクターズ版はBlu-rayのみで、通常版はBlu-ray、DVD。
通常盤は1枚のみだが特典映像「舞台挨拶これくしょん」だけで100分近く収録されており、特報、予告、幕間映像、公開直前映像、本予告、大ヒット御礼PV、CMも収録されている。

コレクターズ版は加えてDISC-2「メイキングドキュメンタリー~みんなで映画、作ったズラ!~」110分「映画『ゆるキャン△』 アフタートークズラ!」60分を収録。DISC-3は本編の4K Ultra HD-BD(Dolby Vision® & 7.1ch サラウンド)仕様。

キャストがワイワイしているのが3時間近くとか興味ないのと(舞台挨拶これくしょん100分だけでも長すぎた…あとなでしこ役の人、髪色も見た目もまるっきり別人に変わってて誰かと思)4K非対応だし、通常版で十分なので通常版を入手した…がすっかり感想を書くのを忘れていてほぼ1年遅れになってしまった

2018年、2021年に2シーズン放送されたアニメ版の続編となるが、原作に無い大人になった未来の世界を描いた内容で原作者あfろは監修として参加。制作自体は2018年の最初のアニメ放送後のイベント内でSEASON2の告知と同時に映画化も決定した事をかなり早く公表していた。

この後にアニメSEASON3の制作が正式に発表されて2024年4月クールから放送されたが、当然映画の続編ではなくアニメ版の続きとなる。このまま続いた場合は今作はパラレル的なIFの未来世界みたいな立ち位置になるのではないか。

またSEASON3で制作会社が変わって作画も一新され、登場人物たちのデザインが割と変わったのでこれがこれまでの絵柄での最後の作品となった。

SEASON2終了時点での登場人物を描いているため、進級後に登場する予定の後輩メンバーは登場しない世界線となっているほか、厳密に何年後なのか、何歳なのかが曖昧にぼかされた設定になっている。リンは名古屋にある小さな出版社、なでしこは東京のアウトドア用具店、千明は東京のイベント会社からUターン転職して山梨の観光推進機構、あおいは地元山梨の小学校教員、恵那は横浜でトリマーとしてそれぞれ働いていてしばらく会っていない、多忙でキャンプからも遠ざかっているという設定。

作中ではほぼ1年経過する。メインメンバー5人からは何年後の世界なのかを推測できる具体的な言及がないが、作中であおいの妹のあかりが美大に入学したという言及があり、あかりは小学校5年生だったためストレートなら7~8年後(浪人していたとしても10年程度)と思われ、大体メイン5人は25歳前後のつもりで制作されていると思われる。

一応アニメファンの心情を考慮したのか、さすがに上司として男性は登場するが、恋人の存在は一切示唆されず、新たに結婚している様子の登場人物もいない。メイン5人だけでなくなでしこの姉の桜や鳥羽先生ら年上の面々が結婚したという話も一切出さない徹底ぶり。また年配組も同様でリンの祖父も健在で恵那の飼い犬ちくわも老犬で動きが鈍くなっているものの長生きしている。親世代を除き全員存命独り身恋人無しの世界観である。

名古屋の出版社で働いていたリンの元に千明が訪ねてきて久々の再会を果たした2人。千明はUターン転職して山梨の観光推進機構で働いていて潰れた施設の再開発を担当していたがその話を聞いたリンのそれだけ広いならキャンプ場にでもすればいいじゃんという言葉から、千明は観光推進機構の仕事としてキャンプ場を作る計画を発案。ボランティアとしてかつての仲間がキャンプ場作りに集結する…。

という展開で5人が久々に再開。大人になりそれぞれの仕事を抱えつつもみんなが揃えば変わらない関係性に戻れる、というところに良さというか尊さがあり、今作の肝は基本的にはそこだと思う。時が流れて大人になったけど変わらない部分があるというそこの良さを徹底して見せている。物語的には途中で挫折からの停滞を挟んで大人になって自由が増したからって何でもできるようになるわけではないというほろ苦さを見せつつも再起して最後は綺麗に丸く収まって終了する。まずまずな結末で大きな盛り上がりはないが『ゆるキャン△』らしい暖かい結末で、この内容で映画を作るならというところで各方面に細心の注意を払いながら最良の仕上がりこれぞ『ゆるキャン△』の世界といえる内容で満足度も高いが…。

しかし根本的なところで『ゆるキャン△』でこの世界線を見たかったかというと別にそんなことはないというか…。ファンタジーと現実の狭間を行くような世界観だが、今作を見ると女子高生がワイワイキャンプ趣味に明け暮れるという『ゆるキャン△』の世界観は元々かなりファンタジー寄りだった事に気づく。この映画はそこに大人になった現実を加味しているので逆に今まで気にならなかったファンタジーな部分が目につくようになってしまった。

最たる例はキャンプ場作りにおける現実的な部分。千明1人だけは観光推進機構の仕事として行っているものなのでこれで給料が出ているんだけど、他の4人はボランティアで無給。好きでやっているにしても負担が大きすぎる。しかも地元にいるのは教師のあおいだけなので、リンは毎週名古屋からバイクをぶっ飛ばし、なでしこは東京から車をぶっ飛ばし、恵那も横浜からの通いとなってしまい、交通費だけでもバカにならない。リンはキャンプ場作りの模様を記事にするという許可を出版社に取り付け取材として関わっているので仕事に繋げているだけマシだが、なでしこは職場からキャンプ用具を提供一応自店のプロモーションになる(?)ようなことをしたくらいでほとんどボランティア。あおいと恵那はマジボランティア。

5人の仕事はいずれもその地域じゃないとダメというものではなく、全員地元山梨県内の職場で働いている設定に出来たとは思うんだけど、この物語は別々の場所でそれぞれの生活をしていた5人が久々に再会して1つの事を成し遂げるというのが前提にあるので5人全員近くに住んでいるのではダメだったのだとは思う。しかし好きでやっているとはいえ、けっこうとんでもねぇ負担が何気なく描かれていて何のフォローも指摘もされないのは気になってしまった。

これは学生時代であればあまり気にならない理想の大人の世界として見れたと思う。ただアニメ1作目は2018年なので1作目当時リンたちと同じ年代だった視聴者も大卒の年齢に達するだけの年月が経過、基本的には学生よりも社会人の視聴者が圧倒的に多くなっているはずで、この点が気になってしまう人も多いのではないか。実際やりがい搾取が酷すぎると評する向きもあるようだ。まあ基本的には見るべきはそこではなく、”時が流れて大人になったけど変わらない部分がある『ゆるキャン△』らしい世界観”だけを楽しむべきなのだろう。作品に対する制作陣の愛情はこれでもかというくらいに存分に感じられる。

★★★★☆

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