永遠 君と僕との間に

ZARD坂井泉水が亡くなった際の追悼リリースの流れの中で2007年に発売された本がきっと忘れない ZARD OFFICIAL BOOK。この本の完成版と銘打った新たな本『永遠 ~君と僕との間に~』が発売されたので買ってみた。

30周年は2021年のはずだが、どうやら周年前倒し商法から進化して昨今流行っている“○年目に○周年イヤー突入と言って年目と周年の2年間を丸々アニバーサリーにする”というアニバーサリー2年商法にZARDも初めて乗っかる算段のようだ。ただ今年は30年目突入ですら前年であり、そんな今年から特集番組やYou TubeやらSARD UNDERGROUNDやらと色々と動きが出ている。このままだと今年、2020年に30周年イヤー突入(30年目)、2021年に本当の30周年…と、実質3年も30周年を掲げ続ける事になり、さすがにそれじゃ持たないんじゃないかとも思うが…坂井泉水本人が生きていれば50代だし、当時のスタッフや関係者などちょっと年上だともう還暦定年に差し掛かってくる頃合いだし、プロデューサー長戸大幸氏も70歳を越えているし、話題を途切れさせたくないし、悠長に待ってもいられなくなってきているのだろうか…。

完成版と銘打っていたので加筆修正程度かなと思っていたが、思ったより内容が変わっていた。完成版というなら『きっと忘れない ZARD OFFICIAL BOOK』の方はいらなくなるかなと思っていたが、消されてしまった証言・エピソードも多々あるので両方持っている必要がありそうだ。

具体的には前回は周辺スタッフの話を軸にして構成していたが、今回は長戸大幸氏の証言を軸にして話を進めているので、スタッフ関係者の話は少し減ったんじゃないかと思う。特に顕著なのが実際の楽曲制作者で、前回はコメントが載っていた池田大介・葉山たけしなどのアレンジャー陣なんかはコメント無くなってるし、そもそも作編曲者についての言及は見るからに無くなっている。特に前回は名前が出ていた織田哲郎の名前が一切出てこない(栗林誠一郎も長戸氏のコメントで1回出てくるだけ)。ミリオン3シングル始め本文中に登場するヒット曲は概ね織田哲郎、もしくは栗林誠一郎だというのに織田哲郎の名前を全く出さないのも何だか逆に凄い。

よって前回は織田哲郎と坂井泉水が会ったのは2回だけという話、その最初の1回は「不思議ね」の仮歌を織田哲郎が歌ったが坂井泉水のキーなのでファルセット駆使したなんていうエピソードは全カット

しかしこの初期レコーディングにまつわる話では織田哲郎の代わりに前回は一切の存在が抹消されていた大黒摩季コーラス参加の件が大々的に加筆され、本人コメントも登場。当時は一切語られなかった話が出てきている。これは07年当時の大黒摩季に対してはビーイング離脱時のこれに始まるいわゆる作詞:ビーイングスタッフ表記、そして07年はダメ押しでこんなん出すような関係性だったので名前が一切出てこなかったのもしょうがない。そこからのまさかの関係修正とビーイングでの復帰により、表記のあった非公認ベストは全てディスコグラフィーから抹消・廃盤として、こんなんのシリーズ公式サイトで全文公開していたライナーもほぼ同じタイミングでサイトごと抹消したのでこれで水に流したっぽい。

そんなわけでこの本の実質プロモーションとして放送されたシンソー坂上ミヤネ屋での特集を始めとして直近では主に寺尾広(ディレクター)、島田勝弘(エンジニア)、鈴木謙一(アートワーク)、大黒摩季の4人が顔出しインタビューを受けていたが、本ではTVに出ていない長戸大幸の証言中心にその他スタッフの証言も随時出てくる構成になっているので、まあ先のTVの特集で初出しの情報もだいぶ出てしまったとはいえ、本にしか出てこない話もまだそれなりにあったかな、というのが大体の印象。

TVでもそうだったのが改めて自殺ではなかったっていう事でこれに伴って死にまつわる話は当時よりも少しだけ踏み込んで内容が詳しくなったと思う。

あと大黒摩季か。特にTVではインタビュー登場後、話が進むにつれてこらえきれなくなって必ず号泣する様子が映し出されていて坂井泉水への思いの強さが伺えるが、なんせ07年当時は「しのぶ会」にこそさすがに参列してインタビューも受けていたもののZARDオフィシャルには一切コメントできない状態だった上に、タイミング悪く、亡くなる少し前に出演したトーク番組でコーラス時代の苦労話を語った際、下手だなと思うアイドルもいたでしょ?と聞かれて「何でアンタの気持ち悪い音程に合わせて私が歌わなきゃならないの」と思っていたとか、「カワイイってことはこういうことか!やっぱ顔か!体か!」などとバラエティトークをしていたため、ZARDとの不仲説に発展し、坂井泉水が亡くなった後に再度掘り起こされて炎上してしまっていた。この点もこの機会に改めて払拭しておきたい事柄だったんだろうなと思う。前は全く出てこなかったのに急に仲良しアピールしまくっててどうしたん?と不自然に見えている人もいるかもしれないけど

全体に特に強調したいのは自殺疑惑大黒摩季との不仲説、この2つをオフィシャルでしっかり否定しておきたいというのを感じる1冊だった。

結局のところ、坂井泉水はこんな人だったみたいな話はもう出尽くしているし、これ以上知る事も必要も無いと思う。

それよりも個人的には楽曲制作についてもう少し踏み込んだ話を知りたい。「負けないで」の歌詞作りにまつわる話だとか「息もできない」「運命のルーレット廻して」のアレンジを試しまくっただとか特定の曲の話しか出てこないし、その内容も全く変わっていない。今回TV特集も含めて新たに出てきたのが90年代後半以降の時代の変化に苦悩していたみたいな話で、不慣れなラップに挑戦したとか(痛いくらい君があふれている某シングルの事か)、「My Baby Grand」の歌詞は当時の苦悩がそのまま出ているとかそういった証言が出てきたので全く何も出てこないわけではないのだが…。全盛期の制作エピソードは無論の事、『ZARD BEST』を出した後の『時間の翼』期の試行錯誤からその後のラスト2作へ向かって王道サウンドが復活していった流れなんか掘り下げたらものすごく興味深いエピソードがドカドカ出てきそうだし、ほとんど触れられない00年代以降のZARDが改めて見直されるかもしれないし、作品が評価されればそれこそ本望じゃないかと思うんだが…。

作品ごとに順序立てて振り返る作品ベースのエピソード本、30周年期間の間に出てくる事は…なさそうだな…。

永遠 ~君と僕との間に~
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