ニュー・ミュータント

2020年公開。日本では未公開
『X-MEN』シリーズのスピンオフ作品でシリーズ13作目、最終作品。

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元々『アポカリプス』や『デッドプール』が公開された2016年頃には『LOGAN』や『デッドプール2』などと一緒に次なる作品として制作が発表されており、当初2018年公開予定で制作も完了していたが幾度となく延期された。これはFOXがディズニーに買収された事に伴いFOXでのシリーズが強制終了する事になり、このドタバタによるものと言われている。

2019年に延期されたが、話が進まずに2020年4月に延期された。撮り直して再編するという報道もあったが結局元のままでの公開がようやく決定。しかし今度は新コロパニックにより延期。なんとか2020年8月28日に全米で公開されたが、日本ではついに公開される事は無かった

日本では2021年3月31日にBlu-ray/DVDとして発売された。シリーズ史上初の劇場未公開なばかりか、日本語吹き替えが制作されずに字幕版のみとなっている。

あらすじ

ダニエル(ブルー・ハント)は突如住んでいた地域が謎の破壊活動に寄り壊滅する事態に見舞われる。一緒に逃げた父親も殺害され、何か巨大なモノから逃げ回っていたダニエルだったが気がつくと謎の収容施設にいた。そこはイリアナ(アニャ・テイラー=ジョイ)、レイン(メイジー・ウィリアムズ)、サム(チャーリー・ヒートン)、ロベルト(ヘンリー・ザーガ)といった若きミュータント4名が収容された施設で、女医レイエス(アリシー・ブラガ)が1人で監視・管理をしていた。ダニエルもミュータントの能力に目覚めたと考えられているが、それが何なのかは分からず、調査と制御のために施設に連れてこられたという。

イリアナに嫌がらせを受けるダニエルだったがレインとは親しくなっていく。またダニエル以外の4人もミュータントの能力に目覚めたと同時に何らかの暗い過去を抱えており(相手を死なせた等)、この過去が突如具現化してそれぞれを追い詰めていくという怪現象が発生し始める。原因はダニエルの能力にあるのではないかと疑いが持たれつつも、徐々に結束を増していく5人。

そんな中で、ダニエルの能力を危険視したレイエスの上司はダニエルの殺処分を命令。ダニエルを殺そうとするレイエスを止めようとレインが動き出す中、ダニエルの能力が本格的に発動して…。

青春ホラー路線

5人の若者を中心とした青春×ホラーという一風変わった作風。原作もちゃんとある話ではあるが、これまでのX-MENシリーズとは一線を画しており、スピンオフでも『ウルヴァリン』シリーズとも『デッドプール』シリーズともテイストが異なる独立した話だった。

よってシリーズとして見ると最早別物というかX-MENシリーズとしてほとんど繋がりが感じられないが、若きミュータントの葛藤と成長と考えればこれはこれでありなのかもしれない。ただ実質主人公のダニエルの能力が分かりにくい上に、結局全部お前のせいじゃねーか案件なのでなんだかなというところもある。4人にしてみればトラウマを掘り起こされた挙句にトラウマが具現化して襲い掛かってくるという現象を作り出した張本人であるダニエルを見捨てこそすれど、逆に仲間意識を持って守ろうとするにはちょっと絆を持つまでの心理描写が浅いというか。まあ隔離された状況、管理者がレイエスしかいないという状況だと5人が結束する方が自然な流れなのか…。

X-MENシリーズの要素

ミュータントが認知されている「X-MEN」の存在が認知されている「エセックス社」が関与している

シリーズ共通の要素としては概ねこの3つ。

「エセックス社」は過去シリーズでもちょっとしか出ていないが、『アポカリプス』のラストシーンでローガンが施設を脱走した後に回収作業をしていたのがこのエセックス社。回収したローガンのデータを何に使ったのかは明示されておらず、次の作品へもあまりちゃんと繋がっていなかったが、一応『LOGAN』に出てきたローガンの遺伝子で作られた少女ローラや少年少女たちを人体実験するかのように管理していた組織と今作でダニエルが見た少年少女たちを人体実験しているシーンが同じもので、これらを行っているのがエセックス社という事で繋げている。…が『LOGAN』ではトランシジェン研究所と違う名前になっていたのであまりちゃんと繋がってない(この研究所の親会社がエセックス社って事でなんとか…)。

という事で、ミュータントを兵器や暗殺者として悪用したり、危険な場合は子供でも容赦なく消そうとしたりと、X-MENとは異なるミュータントを悪用しようとしている悪の組織としてぼやっと示唆されていたのがエセックス社。今回の作品はこのエセックス社の手により管理されていた若きミュータントたちがそこから脱出するまでを描いたという事でもし続きがあるならば、いずれはもっとシリーズへ食い込む話に発展しそうな要素はある。

ただ前述のようにディズニー買収によりシリーズが終焉。今後は独立したシリーズではなくMCUに組み込まれてアベンジャーズになるのではないかとも言われているし、そもそもX-MENシリーズ終盤は興行的にも大コケ状態であり、これまでのように多少の矛盾はありつつもシリーズが独立して繋がってちゃんと続いてくれる見込みは極めて薄い…。

今作単体でも悪くは無いけどX-MENシリーズとしてはやはりスピンオフから何らかの展開を経てもう少し他作品と繋がりが出てくるところへの序章に過ぎずこれだけで終わってしまうとなると微妙かなぁ…。

★★★☆☆

キャラクターまとめ

イリアナ(アニャ・テイラー=ジョイ)

能力名はマジック。作中では片腕を光る剣に変化させる、テレポート(瞬間移動)、持っていたぬいぐるみも戦闘補助として操るなど多彩な能力を披露。それゆえにマジックという事のようだ。1人だけ戦闘能力がとびぬけて高く、最初から能力のコントロールも唯一出来ている。では何故この施設に収容されたままなのかといえば態度が反抗的なのがネックになっていたのだろうか。

立ち位置的に主人公ではないように思うがキャストクレジットがトップになっていたり、やたらアニャアニャ言ってるレビューが多いのは他の作品を通して役者の知名度が高いからのようだ。

撮影が相当前だったためか、インタビュー映像では髪形と顔つきがだいぶ変わっている。

レイン(メイジー・ウィリアムズ)

能力名はウルフスベーン。超短髪の少年のような風貌だが女の子。人狼や完全な狼に変身する能力を持つ。作中では完全に変身しないほぼ人間形態でも手足を獣化させて高い身体能力を発揮できる模様。実際ダニエルが殺されそうになってレイエスに襲い掛かった時には人間形態のままかなりの深手を負わせて血みどろにしている。

やはり撮影が相当前だったためか、インタビュー映像では髪形と顔つきがアニャ以上に変わっている。最早誰だか分からん。

サム(チャーリー・ヒートン)

能力名はキャノンボール。自身を凄まじい速度で高速で飛ばす能力を持つが着地が制御できず、本人も頑丈ではないためケガが絶えず、終始片腕を吊っている。1番最初に能力を披露した。

ロベルト(ヘンリー・ザーガ)

能力名はサンスポット。炎熱系の能力者でフル開放した場合は自身が炎の塊となる。サンスポットの能力者は唯一過去シリーズに登場した事があり、『フューチャー&パスト』ではX-MENメンバー(現代パート)として登場していた。

ダニエル・ムーンスター(ブルー・ハント)

能力名はミラージュ。この人の能力が物語の軸にしてホラー要素を一手に引き受けている。本人も能力の自覚が無く、レイエスですら測りかねている状態だった。周囲の人間のトラウマ、恐怖を呼び起こし悪夢を見させる、その悪夢を具現化させ現実世界で実体化させる、自身の抱える闇に関しては巨大なクマとして具現化されて大暴れする(本人が現実に気絶状態でも暴れまわる)など制御不能で勝手に発動するかなり厄介な能力。制御できたとしてどう生かすのこれ…。

実質主人公だが、ブルー・ハントが新人役者で他のメンバーのような知名度や実績が無かったためか、クレジットトップに扱われていない。

セシリア・レイエス(アリシー・ブラガ)

女医として登場したが、施設周辺から出られないような強力な結界を常時張っているほか、個人に対しても結界を張って攻撃を防いだり、閉じ込めたりできる。5人のうち4人が自在に能力を使いこなせないとはいえ5人の能力ではいずれもこの結界を突破できないなど地味に強い。

ある程度は人格者のようにも思われたが、エセックス社の手先であり、エセックス社の目的がミュータントの悪用、兵器利用なのでまともに退院させたり解放する気は無く、命令が出るとあっさりダニエルを殺処分しようとした辺り、あくまで組織人だったようだ。レインにズタボロに引き裂かれて深手を負い、5人に追い詰められた際には逆に能力で5人を個別に閉じ込めるなど深手を負ってもなお強さを見せた。この際には自身に深手を負わせたレインも殺そうとせずあくまで命令にあるダニエルだけを殺そうとしていた。5人はもうレイエスを仕留めるつもりで来ているし、深手を負ったレイエスも生き残りがかかっているので5人全員殺すのが最善な状況でもそうしようとしなかったので心底悪人ではなかったのかも。とはいえ深手が響いて最後は結界維持もしんどそうな中での具現化した巨大クマの襲撃になすすべなく食い殺されてしまった。万全の状態であればクマ相手でも結界を発動させて攻撃を防いだり、封印したり出来たのだろうか。

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