シッコウ!!〜犬と私と執行官〜 全9話

2023年夏クールテレビ朝日火曜21時枠。

主演は伊藤沙莉。90年代前半のブレイク以降、主演俳優を続けてきた織田裕二が主演では無いとして話題になった。ついでにテレ朝に出るのはここに来て初だとか…。

1話

信用組合に勤めていたが念願のペット関連の仕事に就くために転職して上野原(板谷由夏)が社長の「ワン!ダフルヘブン」で社長秘書(&経理その他雑用)に採用されたひかり(伊藤沙莉)が引っ越し先に出向くと、そこには怪しく動き回っている小原(織田裕二)がいた。小原を不審者扱いするひかりだったが、後日ひかりの隣人の二川家(中村俊介、鳥居みゆき、三浦綺羅)が家賃滞納からの居座りで大家さん(宮崎美子)に裁判を起こされて立ち退き判決が出るも無視、ついに強制退去の執行担当としてやってきた執行官だったと知る。

リストラで職を失うも見た目もいい人そうな二川(中村俊介)に同情し、仕事仲間たちと強制的に立ち入っていく姿に反感を覚えて口出しし、ついには理解できない仕事だのナチュラルに暴言を吐くひかり。主人公を執行官に対する一般目線として言わせたっぽいけど、二川が猶予を無視して居座ろうとしたダメさ加減も散々示していただけに、さすがに借金の取り立てヤクザ扱いするような一連の暴言をあの低音ボイスで言われたらけっこう堪えるぞ…。実際その場では大人の態度で余裕ぶっていた小原だったけどその後でけっこう気にしてそうなシーンもあったし…。

結局強制退去となり、ひかりの介入で逆切れしていた二川夫婦の態度も軟化。執行官たちも悪い人たちではない事が随所で示され、去っていった一家も後日やり直そうとしている前向きな手紙が届いた事で救いを示していたが…。今度は「ワン!ダフルヘブン」が執行対象となりまさかの早い再会。

強制執行を前にして「ワン!ダフルヘブン」は会社ごと夜逃げ。残されたひかりを面白く思っていた小原は助手として採用するとして次回へ続く。

『SUITS』でだいぶ怖い上司キャラまで行っていた織田裕二だが今作では明るめの以前の爽やかカッコいいイメージに戻してきた。さすがに織田様をそんな脇役扱いには…という事なのか、もう1人の主人公くらいの勢いで出番が多かった。3番手の中島健人は伊藤沙莉と並んで雑誌インタビューに載っていたのでもっと存在感があるのかと思ったら、事務員役なので現場に同行する事もなく地味な扱い。いくらJ社が世間から叩かれている状況とはいえ、まさかこのまま出番少ないままでは終わらないとは思うが…。

2話

犬担当の執行官補助として小原に雇われたひかり。今回の案件でも犬がいたため早速役に立つことに。

轟木(細田善彦)と山田(内野謙太)は過激な体当たり動画で人気を得ていた動画配信コンビだったが、仲違いの末に轟木がそれでもなおお笑いノリで家に突撃して寝ている山田の部屋にペイント弾をぶち込みまくるゲリラ配信を行ったためにコンビは完全決裂。山田からの借金を踏み倒した事で裁判となり、支払い命令が出たが無視していたため執行官の出番となった。

生配信しようとしたり、小銭で支払おうとしたりと挑発的な態度を連発して引き延ばしを図る轟木。執行メンバーも巻き込んでのとにかく回収のために耐え忍ぶ展開となり、ブチ切れそうな小原も延々耐えるのみ。轟木がそこまで引き延ばそうとするのは何か理由があるのではないかという話になるもひたすら過度な要求を耐えるのみ…。

…と、通常のドラマであれば轟木の真意が明らかとなりその件をひかり発端で山田に伝えるなどして山田を連れてくる事で執行を完了するというのが王道だが、轟木の真意は匂わせたままで、解決せず。最後は370万程度を1万円札1枚ずつのらりくらり一晩かけて返していくという挑発スローリー返済アタックにも延々耐え抜く小原・ひかり、栗橋(中島健人)というストレスしかない展開のまま案件終了

…嘘…だろ…!?

何の爽快感も無く主人公勢がただクズ野郎の要求に耐え続けるだけで終わるってそんなドラマあり?

轟木は喧嘩別れになったままの山田が直接来ることを期待してのらりくらりしていただけの超絶お子様思考なだけだった。終盤にはそのことに気づいていたひかりだったが、ひかりのもう1つの職場である保護動物カフェ「わんわんステーション」に山田が偶然来店。この際にひかりが「土手沿いを散歩させるといいですよ」とアドバイスした事で、後日犬の散歩中に轟木と山田は偶然再会。元々犬好き同士で意気投合してコンビを結成した事もあり、轟木は相変わらずの無礼な態度で謝りもしなかったが山田の方がそんな態度を割とあっさり受け入れた事で轟木も安心して以前のような仲の良さを取り戻す気配を見せて終了。

…いや山田よ…お前も裁判まで起こすほど激怒してたのに謝罪すらされずに憎まれ口叩かれて照れくさそうにしているだけで何あっさり受け入れてんだ…。なに裁判まで起こすとか俺の方もやりすぎたわスマンとか言いだしかねない空気醸し出してんだコラ。

そもそも轟木が超豪邸に住んでいた事からも配信者として大成功しているのは間違いなく、こんな大金持ちが380万だか借金したまま返さないって時点でもう山田を繋ぎとめるために無理やり借りて返さないって駄々こねてただけじゃん…。
轟木の30代半ばとは思えないほど幼稚な態度も酷かったが、そんな轟木と組んでいられた山田も相当な野郎だった…。結果的に主人公勢の苦労はなんだったんだよ…あんまりだよ…。あんまりすぎるよこの脚本。

3話

冒頭、ひかりがバイトをしている保護動物カフェ「わんわんステーション」に小原と栗橋がやってきてひかりにまた手伝ってほしいとお願い。

え…?またそこから…?

1話は隣人の案件だったので巻き込まれ、2話では小原に雇われての執行補助の仕事だったが、永続的に雇うものではなく、他の補助者の人たち同様に案件のたびに1ショット契約的に集められる仕組みになっていて主人公も例外ではないどころか主人公に継続する意志が無い。ドラマ的には3話になるのにまだ主人公が執行補助の仕事をするのに1クッション2クッション何か出来事を挟まなきゃならないってなんだか回りくどいな…。

栗橋によれば小原が凄くひかりを買っているらしい事もあって気になってひかりがやってきてまた雇われることに。今回はパチンコ屋が電気修理代を払わないための強制執行。いつも執行室にいるだけの間々田(菅原大吉)、渋川(渡辺いっけい)、日野(勝村政信)というベテラン俳優の無駄遣いトリオだが、3話にしてようやく50代でもここでは「若手」の小原を応援しているという姿勢が明らかに(いい上司的な役割が多かったこの3人だが勝村政信も21日で還暦となり3人とも60代)。そして渋川が同行することになった。どんな展開になるのかと思いきや店名が「ブルドッグ」なので警戒していた犬は全くおらず、犬担当のひかりの出る幕が無くなり、閉店直後の店内に突入して売上金を直接頂くため逃げられてはいけないと過去最大の10名以上の大所帯で複数の車を出してわらわら集まっていたのにあっさり突入、少し抵抗するも強制執行の前になすすべなく観念して回収してなんとこの案件、朝ドラ1回分の放送時間にも満たない勢いで終了。なお全額回収できていなかったが、残りは弁護士に相談の上で何とかしてくださいとアドバイスしただけで完全終了してしまい、その後一切取り上げられず。執行官は恨みも買うとか言っていたので恨んだパチンコ店員が夜襲でもしてくる展開があるのかと思ったらそれもなし

次の案件は親の介護の後に燃え尽きて引きこもりになってしまった中年男性、矢上(高橋光臣)の強制執行。これにもひかりは同行。鍵を多数かけていたため鍵開け担当の砥沢(六角精児)が開けられず、ひかりの幼少期に母親が熱で寝ていたひかりを家に残して出かけている間に鍵が無くて家に入れなくなり隣人のベランダを使って家に帰ったという団地アパート90年代あるある(近年のオートロック的なセキュリティちっくなマンションだと無い)の話をしたところ、それだという事になり、小原とひかりが命綱つけてベランダの縁をアクションすることに。

家に侵入するとゴミと猫にまみれて矢上がいたがそのままついに終わりが来たかと咳き込んでしまったので一旦入院。後日許可を取って執行することに。全部捨てていいという伝言だったが両親の遺品が詰まっていたため小原の判断でチョイスしてあえて1ヶ月ほどは預かる形にして猫は「わんわんステーション」に引き取ってもらった。退院した矢上は栗橋の報告によると遺品を引き取りに行ったそうで小原の判断は正解だったという事に。さらに「わんわんステーション」にも猫を引き取りに来たが、飼い主がちゃんと自立した状態にならないと引き渡し出来ないとして一旦お断りすることに。介護離職を余儀なくされて母親の介護だけに生きてそのまま引きこもってしまったという事は小原も把握していたが、矢上本人がひかりや店長(ファーストサマーウイカ)の前で改めて身の上話をし始めた。同行した親戚の人は執行補助のひかりと会っているので分かっているはずだが、矢上はひかりと執行の際に会った記憶はほぼなかったように思うが(ひかりがすぐに親戚の人を呼びに行ってしまったので)…。展開上補足説明が必要とはいえ、涙ながらに境遇と心境、これからどうしたらいいかとか重すぎる話をされてもな…(特に初対面の店長は困るだろこれ…)。それによると母が倒れたのは矢上が高校時代だった事が判明(御丁寧に役者も別の若い役者を使用)、演じている高橋光臣が40代なのでそこから20年以上は介護生活だった事になるという重すぎる身の上が明かされた。介護離職になったと言っていたので卒業して就職までは介護と並行してかろうじて行えたようだが…。介護が辛すぎて早く死んでくれないかと思った事もあるが、最期が迫る中で改めて幸せでもあった事に気づきいざ亡くなってどうしようもない喪失感と絶望感に打ちのめされた事を語り、こんな年で今更どうしようというのかと絶望する矢上。ひかりは終わりだけど始まりでもあると明るく告げ、猫は他の引き取り手に渡さずに待っていると約束。なんとなく救いを持たせた感じにはなったが、思ったよりも深刻な社会問題が唐突に提示されてしんどくなってきた…。なんでこんな社会派になってんの…。

こういうきつい案件がある事もあって店長はこれ以上ひかりを巻き込むのは反対し、小原も納得するが追いかけてきたひかりに小原はやんわりとだけど確実にまた仕事してほしいな感を隠さずアピール。改めて執行官としても思いや決意を語り、ひかりも知らなかった世界に一定の理解を示すようになったが(特に一旦終わらせて始まりのきっかけを与えるという考え方は矢上にも語ったようにひかりの心に意義として響いた模様)…結局そのままお別れ。

という事でまたも主人公が執行官補助として定着せずに、次回契約未定で終わってしまった。しかし空室になっていたひかりの隣人として栗橋が引っ越してきたので、栗橋経由で今後の1ショット契約はもう少しスムーズになるか…?連絡先も交換してないので毎回「わんわんステーション」に小原と栗橋が出向いて協力打診、1度断られるも後日やっぱりひかりが来てくれてさあ仕事開始だ!って毎回やられるとさすがにね…。

そして振り返ってみれば早くも犬登場せず。出てきたのは店名「ブルドッグ」&置物、猫数匹。出てきた犬は全て「わんわんステーション」の背景としてでしかなかった。タイトルにもなってるのに犬要素薄すぎるし、やはり変なドラマで掴みどころが無いなぁ…。小原がひかりに異様に執着するのも今回の会話でますます分からなくなった。当初は犬担当である事と資質を見抜いたっぽい感じだったのに、いきなり「俺は独身だ!バツイチだけど」と言い出してなんか40代、そして50代になっても俺はまだやれる!とか俺はまだ若いんだ的なノリで語りだして、年齢を越えた友情だの信頼だの言い出したのでまさかひかりにその気があるのか?誤解しかねない発言連投してるし、良く分からない。

ベテラン俳優無駄遣いトリオももしかして「踊る」のスリーアミーゴスのオマージュ的な立ち位置のつもりだったりするのかな…。

4話

ひかりの隣人として栗橋が引っ越してきたが小原の紹介だったという。2人の娘を育てるシングルマザー山家(さとうほなみ)を担当していた小原が家を訪問したところ、帰宅してきた山家は山家ではないと言って逃亡。再度押しかけるために補助者を探していた小原はたまたま犬の散歩をしていたひかりと遭遇して…とあまり栗橋が隣人になった事とは関係なくぬるっと同行する展開に。いちいち鍵担当として砥沢(六角精児)を召喚するのがしんどくなったのか、息子(大朏岳優)というリトル六角精児みたいな鍵担当が登場した。

山家は同情を誘うシングルマザー苦労話と涙で必ず返すと宣言。期日に出向くと3日前引越しという大胆な手口で逃亡していた。借金返せなくて差し押さえになっているのに借金重ねて引っ越し逃亡っておま…。別れただけだった夫は死別したことにするし、実家に帰るという保育園への報告も虚偽だったし、息を吐くように嘘ばかりつく…。六角精児はこの時だけ同行しており鍵開け担当として仕事(もぬけの殻だったけど)。

後日、別の債務で山家の差し押さえ案件が出てきたので今度こそ逃がさないと差し押さえに出向く。なんかお気持ち表明とかしていたが毅然とした態度で期日を告げ、いざ当日。運送担当の長窪(笠松将)が自社の運送会社で運送担当の補助者としてひかりを雇った事でひかりが同行。犬担当といっても今回犬も猫も全く出てこないので運送担当にするしか…しかし鍵開け担当はまたも息子(大朏岳優)になっていた。しかし息子になると鍵開けの出番が無いぞ…。

開き直ってシングルマザーって大変話をお気持ち表明し続ける山家。聞かされるひかりも小原も困るしかないが、小原は支援サービスの紹介を、ひかりは母子家庭だった経験を話して聞かせる事で温情を見せる。しかし山家が発したのは「税金何に使ってるんですか?」という行政批判の言葉だった。どうしようもねぇな…。

結局あまり悪びれた感じも無く、最後まで突き抜けてしまい終了。苦労するシングルマザーというのを前面に出して同情的な展開にしたつもりなのかもしれないが、ケロリと嘘を連発して逃亡を図った事や国民の誰もが不満・不審に思っている「税金何に使ってるんですか?」を言わせておけばクズっぷりが中和されるだろうという安直な展開はちょっと無い。借金重ねてる割に割といい暮らし継続してたし、その辺りも含めて世間のせいにするゲスの極み乙女ってことでのさとうほなみ=ドラマーほないこかを起用したならシャレが効いていた

5話

家族経営の「花巻みらいクリニック」の執行話。院長(竜雷太)は既に車椅子で一線を退いており、妻(田島令子)は看護師長、医学部に合格できなかった長男(松本実)は事務長として経営を支え、長女(野波麻帆)は医師となり院長の後継ぎとして安泰かに思われていたがいかんせん設備が古くなり、近隣にもっと新しい大病院が出来て患者が減っていったこと、日々に忙殺されていたせいか長女の愛想の無さが口コミに書かれるなど評判も末期状態となり、設備を新しくした投資で抱えた借金が返せなくなり医療器具代金の未払いで訴えられての動産執行となった。

当初は売れるものを競売にかける競り売りにより一旦終了したが、今度はビルのオーナーからも家賃未払いで訴えられたため病院ごと出て行くことになってしまう。持ちビルじゃなかったんかい。家族間の関係も悪化していがみあいまくり、患者の問題もあり、小原もなんとかしようとするが、院長が聞く耳を持たずに退去しようとしない。仕方ないので医師としての誇りに訴えかけに執行とは別に出向いて説得を試みるなどいつもよりもやや感情に訴えかける方向性になってきた。父がいなかったひかりにはケンカばかりの花巻一家が逆に言いたい事言いあえて仲良さそうに見えたのでそれも告げてみたり。

といった小原とひかりの言葉が院長に刺さり、執行当日病院はスッカラカンになっており、院長からの執行官殿宛に(ついでに犬担当の人へも)直筆の手紙が残されており、そこには感謝が綴られていた。恨まれてばかり執行の仕事で感謝の手紙に感涙する小原。院長は長男が介護し、まだ動ける妻は介護施設に再就職、長女は別の病院で医師として働いている事が最後に明かされた。

4話最後で新事業を始めたとしてひかりを勧誘しにきた上野原(板谷由夏)は相変わらず怪しい感じだったが、ペット業界で働きたいひかりは話に乗るか迷う。ただ執行の仕事にも興味が出てきていたのでしばらく保留にした後、「わんわんステーション」の仕事、長窪の元での運搬担当の執行補助の仕事、小原の犬担当としての執行補助など犬と執行関連を掛け持つ現状の方が充実していて満足だとして断った。ひかりから断りの電話が来た直後に上野原の元には日野(勝村政信)が乗り込んできてまたしても執行されるというオチも…。

ラストでは何故かひかりの元に長窪が「付き合ってくれ」とやってきたかと思うとひかりを連れ出し、明らかにひかりに気がある栗橋が憤りまくっているところで次回へ続く。

サイドの話が取っ散らかってるな…。上野原はせっかく再登場しても寸分の狂いなくまた執行されるというお約束をかますだけだし、ラストのラブロマンス詐欺みたいな展開はなんなんだ…。

メインの執行話は今回は家族がいがみあっていたもののこれまでのようなクズ野郎ではないし、ごねるにはごねたけど小原の説得が効いての大改心で感謝の手紙と綺麗にまとめていて今まで1番良かったんじゃないかと。家族の回想シーンで野波麻帆に大学受験~新人医師時代の若作りをさせたり、竜雷太の顔面老人の若作り黒髪ヅラなどそれぞれ一瞬といえど破壊力のある若き日の回想メドレー映像をいちいち撮影して作ったところが無駄に細かい…。

6話

長窪に突如連れ出されたひかり。長窪の母の元に連れていかれ婚約者のフリをしてほしいと頼まれる。相手は運命が決めている、幸せのためにやっているなどと電波な発言を叫び出すなど様子のおかしい長窪母に、長窪は今十分幸せに見えるとひかりが援護し、気になって尾行していた栗橋も助け船を出すが…。結局変な母親が唐突に出てきただけで終了。後日、みんなで食事している際に長窪が子供の頃から父が普通に働いているのにいつも金が無いという他と違う変な家庭だとは思っていたが結局両親が離婚して父の方についていき、母が変な宗教にハマって宗教に金を全部落としてしまっていたのが貧乏の原因だと分かったと説明。今回のメインの話と絡めてみんな色々ある、色々抱えているという様々な家庭事情を提示する演出の一環だったっぽい。

今回のメインは競売にかけられた家を買った夫婦からの執行の依頼。競売を使って通常よりお安く悲願の持ち家(マンション)を購入したのは良かったが前所有者が出て行かないという。相手は老人(でんでん)と孫(毎田暖乃)と犬で暮らしている家だったが、老人の息子(孫の父)が借金の抵当に入れていたためにこうなってしまい、老人は借金もしておらず真面目に生きてきただけで何も悪いことはしてないと居直り、キレ散らかしていた。

ひかりは孫と交流を深めて思ったより複雑な家庭事情を聴かされる。母と弟もいたが母が出て行く際に弟だけ連れて行った、後で前妻の子だったから冷遇されてたと知った、父は1発稼いでくるといって失踪したままだという。初期のひかりだったらこれだけで同情してしまい、執行を妨害しようとしていたんだろうけど同情しつつも家を購入した夫婦の立場ではそれもまた災難であるし、何より執行しないわけにはいかない状況なのでその点には口出しもおせっかいもせずに、同情しつつ事態を見守り気に掛けるみたいな辺りは段々執行官らしくなってきたのかなという。ここで長窪の家庭環境の話も出てきて、まあ家庭環境いろいろだよねっていう。

結局強制執行となり、激高した老人は事務所の方に乗り込んできてドタバタとしたが、自分たちの不幸ばかり嘆く老人に対して栗橋が不幸なのは家を買った夫婦だってそうだ!と説教。ブチ切れて襲い掛かった老人だったが、腰をやってしまいクールダウンすると栗橋の言うとおりだと納得。最後は素直に出て行き、マンションを買った夫婦にはアドバイスを送ってなかなか出て行かなかった事を謝罪する殊勝さも見せて去っていった。

アフターケアも行い、栗橋の紹介で元教師の経験を生かした講師の仕事を始めて新生活の基盤を築いている事、継母からの連絡で一緒に住もうと言われたが老人と暮らすことを選択した孫、犬は「わんわんステーション」で保護していて近々引き取りに行く意向が示されて終了。

ラストではひかりが小原にお願いがあるとして「ほ…」と言いかけてまたも引っぱったまま次回へ続く。

怒鳴り散らす頑固ジジィという厄介な相手で聞く耳持ってないだけかと思ったら実は元教師だと判明したり、弁護士に相談すればいいと散々言われていたのを無視して居座っているのかと思ったら「あちこち相談したが断られたんだ!」と言っていたり、やれることは一応やっていたらしい。これまでに比べると割とまともな人というか本人に責任はない初のパターンだけにドラマとしてはなんともやりきれないというかスッキリしないのを精一杯平和的に着地させた感じか。まあ態度が厄介なのも断られた原因だろうと推測されてたようにすぐ怒鳴り散らかすので弁護士も引き受けたくなかったっていうのは分かるかも…。

さすがに孫娘には優しかったようだがこの怒鳴り散らかす性格が子供全般に適用されるほど器量の広い人物にも見えず、竹刀を振り回すようなそぶりも見せていた事から教員時代は現代では問題視されるような熱血を通り越した体罰系教師だった…ような気はしなくもなかった。

7話

上野原が再び登場して今度はクラウドファンディングでドッグホテルを作ると言い出す。由比(ファーストサマーウイカ)の「わんわんステーション」にも協力依頼に登場し、由比と上野原は互いの主張で揉めるがそんな矢先に飼育放棄の疑いがあるという高校生からの通報を受けて現場の婆さんの家へ向かう事になり、上野原も同行。家の窓に何かを訴えている犬の姿が見えたがその奥で婆さんが倒れているのを発見したため救助に家に入っていくことになり、この状況の中で由比と上野原は協力して見事な連携を見せる。

消費者金融「タンタンファイナンス」からの執行で債務者の家に向かう事になった小原ら一行にタンタンファイナンス土山(波岡一喜)も同行。しかし夫が行方不明となり、動産で差し押さえられるものも無さそうなので執行不能と判断。すると土山がブチ切れて絡んでくる。ひかりが砥沢、須賀川と共にサイレンの音を偽装して追い払う事には成功するが…。

後日今度は「タンタンファイナンス」が借りているビルの賃料の支払いを滞らせたためにビルを貸している社長(ヤクザ)が追い出すために「タンタンファイナンス」のフロアの電気を止めてしまい、電気を通すように裁判所の命令が下ったため執行する事に。ヤクザにひるまずに執行を行う小原の姿に土山は感銘を受けて反省の意と今後はもう少し相手の事も考えると改心を告げておしまい。

土山の改心を描いて二面性を示しつつ、上野原が由比と協力するエピソードも挟んだという事はこれまで金儲け&すぐに違反やらかして執行されていた上野原のペットへの愛情は割と本物でもあった事を示してこちらも二面性という事なのか。上野原を今更いいところもあるみたいに描いても今更感強すぎるけどなぁ…。

ひかりが小原にお願いがあるとして「ほ…」と言いかけたのは上野原登場でうやむやになってそのまま今回のラストまで引っ張ったが「法律についてもっと教えてほしい」というものだった。ひかりがだいぶ執行官に興味を持ってきたところで最終章へ。

8話

女子大生の杏奈(幸澤沙良)が執行対象になり、母親と2人暮らしの家に執行に出向くと母親は寝耳にウォーターだったという話に始まり、貧乏学生が借金地獄に陥って追い詰められるというエピソードが展開。今回は借金と言っても30万程度で元々母子家庭の貧乏学生でバイト三昧だったが、悪い先輩に投資を勧められて騙されたというもの。個人での金貸しサイトに登録しようとするが相手は体を要求してきて葛藤するという追い詰められる杏奈寄りの物語が展開すると同時に同じ母子家庭で育って少し共鳴したひかりが救いの手を差し伸べるという流れになり、最終的には勇気を出した杏奈が正直に現状を説明。法律の勉強を始めていたひかりが率先して協力し、詐欺投資の件を警察に告発し、先輩は逮捕、詐欺グループも一斉摘発という新聞一面を飾る大事件へと発展し、体目当てで金を貸そうとしていたオッサンは直接呼びつけて違法行為だと警告し、ここには小原も駆けつけて説得力に厚みを持たせて解決。ひかりは正式に執行官を目指したいと意思表明するのだった。

最終章とかいうから続き展開になるのかと思ったら今回も普通に単発エピソード。執行が最序盤だけで終わる、ゲストキャラをひかりが主体となって救いに奔走し、小原がほぼ初めて完全にメインに回るというところと犬関係の仕事という夢から新たな執行官を目指す夢にシフトしたところで章が変わった、という事なのか…。若干最終章詐欺感が。

9話

執行官になりたいと宣言するも苦労が多く、ハードルも高い事から渋い顔をする執行官一同。理解してもらえてなりたいと言ってくれるのは嬉しいだけに複雑なところではあったが…。

そんな中、執行対象が「幼い娘」という子の引き渡し案件がやってくる。夫の大輔(福士誠治)が専業トレーダーになると退職するも大した稼ぎが無く家事も失敗ばかりでゲーム三昧の日々で、代わりに働きだした咲の不満が募り衝突を繰り返すようになってしまい、最終的に夫は娘を連れて母の済むマンションへ逃亡。しかし裁判では咲に子供を引き渡す判決が出たという。相手弁護士との話し合いで応じるという約束が取れたため、いざ執行に出向くも拒否されて失敗。

咲の話ではヒドイ父親っぽかったが、大輔がたまたま栗橋の先輩であったため、栗橋を通じて大輔視点での説明もひかりに伝えられ、それによると精神的にしんどくて会社を辞めざるを得なかった事やトレーダーの仕事はちゃんと熱心にやっている、家事や育児協力も頑張っていたが仕事が忙しくなった咲がイライラするようになってパパをかばう娘にまでどうしてどうしてと迫るような精神的な危うさを感じた事から家を出たという。

どっちが悪いのか分からなくなってしまったものの、ひかりは咲には子供にとってはパパもママも大切である事や大輔は夫としてはダメかもしれないが父としてもダメだとは限らないと事前に伝えていた事もあり、2度目の執行は冷静な話し合いとなり、咲が大輔に父親としての大輔まで否定した事は謝罪、大輔も応じて双方父と母としては認め合い、離婚は避けられない様子だが娘の父親、母親としては協力し合ってしっかりやっていこうという着地点で解決するのだった。

この家にもとってつけたように犬がいたので一応犬担当としてのひかりの役割はあり、逆にこれまで物の差し押さえ回収はマストだったため出番が多かった運搬担当の長窪は出番が無く、最初と最後に栗橋の試験合格お祝い関係で無理やり出てきたのみ。

栗橋は予備試験に合格し、事務員を辞めることになったが、後任としてひかりを指名1年後にはひかりが事務員となり、栗橋が司法試験に合格し裁判官を目指して司法修習生になっている様子が描かれたが、その後はさらに時代が飛んで小原抜きでひかりが執行官として運搬担当の長窪、鍵担当の砥沢、立ち合い人の須賀川を引き連れて単身で執行に出向いて執行官の名刺を差し出す遠い未来を見せて終了。ていうか、ひかりが執行官になるまで時が進んだとしたら5~10年は最低かかるので、砥沢と須賀川は60後半~70代になってて定年・引退なのでは…。

破綻した夫婦間の子供の連れ去り主張というと昨年よりリアルに元卓球少女の妻とTの国の夫がリアルに揉めているのが現在進行形となっており、難しい案件だったが…。これまでの話よりも双方にクズ感が無くて、綺麗にまとまった話になったと思う。

全部終わっての感想

舞台設定がやや歪で、結局のところタイトルにまで入れた「犬」があまり関係なかったというか…。執行官というとどうしてもお堅いイメージになってしまうのでポップな雰囲気にするために犬を使ったのかな…というのは妙に明るくポップなタイトルバックだけでもひしひしと感じられた。「シッコウ」もカタカナで「犬」となると、「犬のシッコウ」→「犬のおしっこ」みたいになってしまうし。

執行されてしまうくらいある意味で「行き着くところまで行ってしまった」人を相手にするので執行される側は同情されるくらいでは甘い、余地のないけっこうなクズとして描かなきゃならないけど、クズを垂れ流し続けても不快なだけのドラマになってしまうし、なんとか軽快に明るくしようと味付けした結果がこの独特の風味になったのかなと…。

加えて主演俳優織田裕二を脇に回して伊藤沙莉を主役に置きつつも主演俳優織田裕二をいきなり明確な脇役として使うのもしのびないので主役級の働き、菅原大吉・渡辺いっけい・勝村政信と普通のドラマに1人はいればいいような上司・責任者ポジションの役者を月9(『HERO』とか)ばりに3人も起用して結局持て余し気味、 主人公を好きになる役どころのSexy Zone中島健人が最後まで告白すらさせてもらえずに主人公に好意を気づかれもしないで終わるピエロポジション…など活躍の仕方も普通のドラマとはだいぶ違っていた印象。 六角精児が多忙だったのかなんなのか、途中から鍵担当がちょいちょい六角精児に似せた大朏岳優に切り替わる場面があり、彼を「息子」と設定したりしているのも不思議な感じだった。勝村政信がつぶやいていたように評判を見ての軌道修正が正不可能な放送時点で既に全部撮影終わってたドラマだったのでブレは無かったのかなと。

夏ドラマなのに終始桜が咲いていてみんなコートで厚着のままという事で今年の関東の桜の早さからして4月どころか3月末までに主要な撮影が全て終わっていたのは明白だったが、酷暑の中で厚着のドラマ見るのが地味に暑苦しかった。

最後に一気にひかりが執行官になったところまで描いて、次は犬抜きで執行官モノのドラマとしての続編を作れるようにもなっていたが…よりによって来年春~夏のNHK朝ドラに伊藤沙莉主演が決まっている上に弁護士・裁判官になった人が主人公のモデルとなっているので、執行官とはいえイメージが被ってしまい、1年後に続編というわけにもいかない。結局これっきりになってしまいそう。

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