カイジ ファイナルゲーム

2020年1月公開。

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1996年からヤングマガジンで連載されている福本伸行による漫画「賭博黙示録カイジ」を原作とした映画シリーズの、2009年第1弾『カイジ 人生逆転ゲーム』、2011年『カイジ2 人生奪回ゲーム』に続く9年ぶりの第3弾にして最終作を銘打って制作された。

主演の藤原竜也と脇役の松尾スズキの2人が3作連続出演。前2作に出ていた香川照之、山本太郎(政治家になったので俳優業は事実上廃業)、吉高由里子、光石研(1作目で死んだので2作目は回想)も降板となったが、1作目に出ていた天海祐希は復帰、2作目に出ていた生瀬勝久も登場するがいずれも出番は少なくメインキャラではない。

今作は原作に登場しないギャンブルによる完全なオリジナルストーリーとなっているが、原作者による脚本(共同名義)となっていて、勝手に作られた別物というわけではない。しかし公開されると同時に酷評が吹き荒れる超絶不評作品となった。

東京オリンピック終了後(2020年1月の公開時はオリンピック中止など考えもしていなかったのでそのまま2020年開催前提となっている)、日本経済は急速に冷え込んだ。缶ビール1本1000円になるほど物価は上がりまくっていた。カイジ(藤原竜也)は派遣で働いていたが7割ピンハネされる極悪な労働環境で抗議デモを繰り広げても派遣を取り仕切る黒崎(吉田鋼太郎)は聞く耳をもたない。そんな中、かつて地下帝国で強制労働していた際の班長で現在は帝愛グループ企業の社長に出世した大槻(松尾スズキ)と再会したカイジは金を持て余した老人が主催する若者救済イベント「バベルの塔」の存在を知らされて挑みなんとか勝利する。

億単位の賞金を手にする事ができる「電卓」、人生を変える情報が書かれている「カード」のどちらかの選択を迫られたカイジは金を手にしても襲撃の危険に晒されるだけと判断して「カード」を選択。大阪大会でスっ転んだ先にちょうどカードが降ってきて勝利したラッキーガール加奈子(関水渚)も「カード」を選択しており、2人は主催者の不動産王東郷(伊武雅刀)に呼び寄せられる。余命短い東郷は政治家が国民の資産を「貯金封鎖」する法案を通して、国が国民の貯金を奪って国の借金を相殺する計画を進めている事、「円」に代わる新たな通貨の紙幣を発行して一部のエリート層だけが所持する事で、一般の国民を無一文にして足を引っ張る弱者を切り捨てる事で国を立て直そうとしている事を知り、最期にそれを阻止したいので協力してほしいと告げる。

総理連中を金で釣って操って計画を先導していた若き政治家高倉(福士蒼汰)の野望を打ち砕くにはそれ以上の資金力で買収する必要がある。東郷の現在の資金では足りないため、「帝愛ランド」で開催されるゲーム「最後の審判~人間秤~」で勝利して資金を倍増させるという。その対戦相手とは黒崎だった。

黒崎が相手と知り協力することにしたカイジは事前に色々仕込んで準備をしておいたものの、黒崎の話術と作戦により一気に追い込まれていく…。

という事で今回は政治的な話になってしまい、かなり極端に破綻寸前の日本を描いているものの、公開から数年の間に今作ほどではないが物価が上がりまくって一部現実になっており、弱者切り捨てでもしないと国が終わるという主張もかなり耳が痛い感じになってしまったのは否めない。

今回も追い込まれて追い込まれる、しかし事前仕込み&窮地に陥ると頭脳明晰になり才能を発揮するカイジの立ち回りにより、最終的には逆転していくという展開。人間ドラマを挟んだり、見せ場もそれなりにあり、酷評されまくるほどつまらなくはない。ただ1作目ほどの絶望感までは無いし、前2作ほど追い込まれて焦る感じでもなくどこかカイジが落ち着いているので、絶望するより前に何とかなりそうな感じになってしまうのでもう1つ盛り上がり切らない。ただ少なくとも2作目終盤でのいいオッサンたちが揃いも揃ってインチキパチンコパワープレイで来おおおおおおい!と叫び倒すだけという珍事よりはトータルでだいぶマシな展開だったんじゃないかなとは思う。

見た目若々しいとはいえ藤原竜也もアラフォー。カイジは元々20歳そこそこくらいの若者っぽく描写されていて今作でも若者代表のようなキャラでそこまで年を重ねているようには描かれていないが、いかんせん年齢を重ねての渋みは出てくるのでその点で前2作ほどの勢いがないのかなとは思った。

オリジナルのストーリーがもうダメダメという評価になっているが、今作は原作者自ら考案したストーリーで恐らく前作以上に原作者の比重が大きい。そこまで原作者が関わっているのにこの酷評というのもなかなか凄い。そこまでは悪くはないんじゃないかなとは思うんだけど、でもそんなに面白くもないのは確かだしなぁ…。何よりみんなが薄々感じている国の破綻、苦しくなっていく庶民の生活への不安をブーストしたような世界観や思想が絶妙にエンタメとして消化しきれなくなってきていて荒唐無稽な架空の世界として前2作のように捉えきれずになんともいえない不安感があるというところが拒絶的な不評に繋がっている気がしなくもない。

★★★☆☆

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