ONE DAY〜聖夜のから騒ぎ〜 全10話

2023年秋クール、フジテレビ系月9ドラマ。

“たった1日”の出来事を1クールかけて描く謎と愛と奇跡の物語。主人公は別々の人生を歩んできた、全く関わりを持たない3人の男女。ドラマで描かれる1日の中でも3人の物語が同時並行で進行していくのですが、次第に運命の交錯へと導かれていきます。聖夜が終わり、時計の針が再び午前0時を指した時、彼らの目の前に広がる光景とは?謎をひもとく伏線は第1話から張られ最終話ですべて回収されるので、映像、セリフ、表情すべてにご注目を!

という触れ込みで、二宮和也、中谷美紀、大沢たかおの3人が主演で、二宮和也が記憶喪失の殺人事件犯人として追われる「逃亡編」、中谷美紀が事件を追う地元横浜のローカル局キャスターの「地方テレビ局編」、大沢たかおがシェフの「レストラン編」の3つが同時進行して徐々に繋がっていく…はずだったが…?

事態はグッダグダとなり月9そのものがから騒ぎにすらならない低視聴率でついには前作『真夏のシンデレラ』を下回る月9史上最低平均視聴率を更新する大惨事となった。今年は25日が月曜日でクリスマスイブからクリスマス当日までの話だったにも関わらず、総集編やSPも制作されずに前週の18日で最終回となってしまうなど打ち切り臭漂う終幕となった。

「逃亡編」は勝呂寺誠司(二宮和也)が死体の横で目を覚ますところから始まり、殴られて記憶喪失になり名前も思い出せなかった勝呂寺誠司が自身が何者かを探るために殺人犯として追われながら自身を慕う組織アネモネのトップであるミズキ(中川大志)の元に身を寄せるが組織内でも内部抗争があったり、警視庁の蜜谷(江口洋介)が事件直後に誠司に逃げろと電話をかけてきているっぽかったり、謎のフリージャーナリスト(中村アン)が蜜谷に会うようにけしかけてきたりと謎が謎呼ぶミステリアスな展開で気になる流れではあった。

そして事件を追うが地元ローカル局がスクープを取る必要が無く、地元ローカル局らしい番組を優先する新社長(丸山智己)に反して報道を続けようとする倉内桔梗(中谷美紀)、当初は味方がいなかったが徐々に倉内に感化されて一丸となっていく報道部の様子を描いた「地方テレビ局編」はそういった一丸となっていく展開がベタすぎるものの事件を追っている流れから、倉内が大学時代の後輩に勝呂寺誠司ではなく天樹勇太という名前だった事に気づいて、誠司=勇太?という進展があったのでまだ事件進行に関わりはあった。

問題は「レストラン編」で冒頭で逃亡した誠司がレストランにたどり着き、店内を突破して逃亡した際に侵入者を追いかけたシェフの立葵時生(大沢たかお)が先代から伝わる秘伝のソースをひっくり返して目玉のビーフシチューの提供を不可能にしてしまう。そこからは事件にほぼ無関係なディナーをどうするんだ問題でのドタバタしたやり取りがまさに「から騒ぎ」の如く展開。コメディ調でテンポ良いノリでドタバタを描くというところで三谷幸喜辺りが得意としてそうなシチュエーションなんだけど、脚本家に腕が無いせいかことごとくつまらないし、レストランパートになるとせっかく盛り上がっている事件の話が完全にストップするのでとにかく邪魔でしかない。

3つの事件とは別に真礼(佐藤浩市)という白髪の老人がひたすら失踪した飼い犬フランを探し続けるという謎サイドストーリーも展開したがこれも無関係のまま延々続いていく。

という感じで「レストラン編」が足を引っ張りまくりここだけ別ドラマ(質の悪いコメディ)。中盤過ぎには買い出しで出かけた時生と逃亡中の誠司がぶつかってスマホを取り違えるというベタな展開で接点が生まれ、スマホ回収のためにミズキが店にやってきて手伝いと勘違いされて一時働く事になるというギャグドラマのような展開もあったが、これも滑りまくっていた。

時生の娘が倉内の部下のキャスター査子(福本莉子)という繋がりは最初からあり、実は時生と倉内も5年前に出会ってちょっとお互い気にし合った事があった事が判明したり、査子がミズキを尾行して誘拐されたので奪還のために一時巻き込まれる展開などはあったもののやはり邪魔なままのレストラン編。中盤過ぎには唐突にソムリエの梅雨美(桜井ユキ)が勇太の恋人だった事が発覚するもとってつけ感がハンパなく、話が繋がった興奮が全く無くただとってつけ感しか出ないのが本当に凄かった。桜井ユキは前年のフジ火曜23時枠『ホスト相続しちゃいました』で主演をやった事もあるとはいえ、これほど豪華キャストが揃っている中で天下の月9でJニーズ(途中で退社したけど)の嵐の二宮和也の恋人役って申し訳ないけどちょっと盛り上がらないのでは…。一応伏線を張ったつもりではあったらしく、それは1話で記憶喪失の誠司がレストランの中にまで入っていったのは無意識に恋人の梅雨美がいる約束の場所へ向かったという演出だったりはするっぽい。

終盤では組織内構想で追われた誠司がようやく蜜谷と会って話をするためにバスジャック事件を起こすが何故か時生が居合わせるという超展開に発展。蜜谷から潜入捜査官だった事を聞かされ、誠司は潜入用の偽名だった事も正式に判明。天樹勇太は警察官だった父の遺志を継いで警察官になった正義の人だった事が判明したが、記憶喪失だという話をしているのに時生が割り込んできて梅雨美の事で文句を言うという本人覚えてない事で攻め立てる頓珍漢な展開になったと思ったら、狂言銃殺の際には時生の持っていたケチャップを使用するなど超展開に次ぐ超展開が炸裂。この際のいかにもミスリードな「撃たれたフリの嘘演出」の際に何故か記憶がフラッシュバック

これで記憶が戻ったらしいが戻った後も記憶が無い時とローテンションなキャラが変わらず、非常に分かりにくいまま終盤へ。撃たれたのは嘘なので発砲音の衝撃だけで記憶が戻ったのか…?

最後は一課長の一ノ瀬(遠山俊也)がアネモネと繋がっているのを見抜いていた警察一行(蜜谷、狩宮(松本若菜)、実は監察官だった八幡(中村アン))の策略で一ノ瀬を泳がせ、倉内もスクープの形で取引現場を押さえて一斉逮捕して一挙解決。時生と倉内はぎこちないながらも交際をスタートさせる気配を感じさせ、天樹勇太は警察を辞めると告げると梅雨美の元へ。1年後、それぞれが描かれ、勇太は何故かレストランの見習いにジョブチェンジしているメチャクチャなオチでTHE END…。

どうしてこうなったも何もない、全てがナンダコレ…。

・ノベライズを2冊に分けて出したり、誰も考察してないどころか考察する要素が全く無いのに考察本を出したことから一応“考察”系ミステリーとして制作したはずなのにきっかけとなった事件の説明がほとんどされないまま終わってしまった。結局犯人はミズキで相手は裏切り者だったから殺したと最終回前の9話で証言していただけだが殺された相手がどんな人物だったのかほとんど明かされていない。それよりも慕っていた誠司の記憶が吹っ飛ぶほど激しく殴って気絶させて現場に放置した理由は一切語られないまま終わってしまった。

・父の遺志を継いで警察官になった勇太が5年の潜入捜査でミズキと友情をはぐくんでいたのは確かでこれに心痛めたのか、向いてなかったとしてあっさり辞めてしまう投げっぱなしのオチ。

・最後まで散々だったレストラン編はメインディッシュがお弁当というトリッキーさで時生以外の全員が唖然とするも何故か客も含めて全員納得してしまい視聴者だけが置いていかれる始末。

・真礼の犬探しは最後まで関係が無く、唯一繋がりがあったのは目撃者の女性(村重杏奈)と真礼が話したことで女性の気が変わって家出を辞めて年の離れた夫である店員の菊蔵(栗原英雄)の元に帰ってきてくれたという8話での1回ポッキリ。サブキャラに貢献するだけっておま…。

・犬のフランが見つかっていないのに真礼はお弁当メインディッシュを出して騒然としている最中のレストランに現れると先代シェフだった事が発覚。ある程度見届けると帰っていってしまうという「先代でした」というのを見せるためだけの不自然な展開となった上、何故かサンタの恰好で風船を配りだし、0時寸前にフランの方からどこからともなく走ってくるという後から無理やりオチをつけたような幕切れ。先代の元で昔一緒に働いていた髙嶋政宏が出てきた時に時生が先代の娘と云々言っていたので、時生が婿養子に入る形で真礼の娘と結婚して後を継いだと思われるが、時生と真礼の会話では特に何も触れず、査子は真礼の孫のはずだがニアミスで1度も会わなかった

・視聴者がなめられているとしか思えないほど全体に”伏線”がベタ過ぎ。
→天樹勇太の父が警察官だったと判明した時点で、潜入捜査官なんじゃね?と薄々見えてきてしまう。
→時生が不自然にケチャップを取り出した時点でケチャップ偽装するのが読めてしまうのになんと銃殺された演出で1話跨ぎ
→一ノ瀬本人にそこまで挙動不審な様子は無かったが蜜谷と八幡の連携が分かりやすすぎて一ノ瀬を内通者とにらんで狩宮も協力してみんなで一ノ瀨を騙しているのがミエッミエ。

やりようによっては十分に面白いドラマになりそうだったが…。脚本家が激しく実力不足だったとしか言いようがなく、本当に凄惨な出来になってしまった。フジテレビ凋落はもう10年近く言われているけど、このキャストで史上最低視聴率とか普通にやっていれば作れない。『フジのから騒ぎ』を痛感する1作だった。夜明けは遠いなこれ。

25日に総集編+解説のSPでもう少しちゃんと説明するつもりだったのだろうか。

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