2024年秋クールテレビ朝日系日10ドラマ枠(22:15~23:09)。前の時間帯の『サンデーステーション』が終了して『有働タイムズ』が始まったが放送時間が15分拡大になっているため、このドラマ枠も15分後ろにずれた。
『城塚翡翠』以来2年ぶりの清原果耶主演。
1話
社会人1年目の恩村優希(清原果耶)が日記を読み返すように大学時代を回想するという形で物語がスタート。開始時点で大学3年生(2年前)、最初の時点で既に恩村優希、白石まひる(吉川愛)、長谷川愛莉(見上愛)の女性陣3人は友人同士で共に行動しており、優希が学内で偶然出会った数学科の徳永広海(佐野勇斗)がリュックを置いて去ってしまったのでとりあえず優希が預かって行動。学食で紛失に気付いた広海は財布も仲だったので支払いできずに困っていたところ後続の和田虎之介(望月歩)が貸してくれてコミュ力の高い虎之介が広海のリュック探しを手伝い、優希、まひる、愛莉と出会う事で主要メンバー5人が知り合うという出会いが描かれた。
雰囲気系の清原果耶主演という事もあり、大きな出来事も無く、爽やかに大学時代後半という”あの頃”を描くスタイルは20年前の『オレンジデイズ』を彷彿とさせるがどこか理想的すぎて現実感が無かった『オレンジデイズ』の大学生感に対して今作の方がもっと自然な感じがする。恐らく脚本家が若手で年齢がある程度近いのではないか。何も無さすぎて空気のようなドラマになるか、雰囲気の良さで引っ張れるドラマになるかは未知数だが…。
2話
現在(といってもわずか2年後)の優希と虎之介が登場したため、優希が高校教師、虎之介が保険会社営業マンになっている事は判明。とりあえず終盤で優希が家庭教師をしている引きこもりの子供のところに広海を数学の先生として連れていき、双方に好影響を与えるというサブエピソードも終盤で展開したが、今回は虎之介がメイン。1話にも出てきた毎日22時にドリンクバーとポテトだけ注文する謎の疲れ気味の大川美鈴(是永瞳)が今日は来ないなと思っていたら店の外で雨でずぶぬれになっていたので助けたくなり、傘をさしたまま家までついていくという奇行に走る展開に。不自然にならずにこの行動が絵になっていた演じる望月歩の無害な少年感が絶妙。疲れ切っていた女性は名を名乗らず、名乗らせずに社会人になって自身を見失って疲れている様子で部屋も散らかり放題だったので片づけてあげて、朝まで何もせず一緒にいてあげた。
これによりインターン面接をすっぽかした虎之介は私服姿のまま会社に直行するという常識外れの行動で通してもらえないという奇行に走る。むしろこっちのが奇行だよ。演じる望月歩の無害な少年感をもってしてもお祈りメール送られる以前の奇行、大学名まで出して大学の印象まで落とす超絶奇行だよ。
この話を聞いた仲間達は唖然とするが、恋が始まるかもと若干うわついた様子の虎之介に対して愛莉が謎に激怒し、そんなのは恋じゃないと言い放つ。これで目が覚めたらしい虎之介は再度美鈴のマンションを訪れるが、美鈴の精神は思ったより回復しており、元気な様子で来ると思っていたとか名前を教えてくれとか普通のドラマなら恋愛フラグ全開でオープンな様子だったが、奇行男虎之介はささくれに絆創膏だけ貼ってあげるとこれが最後、もう会わない、名前も聞かないと言い放ち、生じかけた関係をへし折って別れを告げて去り、勝手に失恋してしまった。後で優希に説明したところによると誰かのために絆創膏を貼ってあげるような行動はこれが最後という戒め的な感じでこれからは大切な人に貼ってあげる人になりたいとかなんとか。そんなわけで1~2話にかけて通常のドラマなら主役ではないメインメンバーの1人による疲れた年上社会人とのラブストーリー展開フラグだったのをへし折ってただの2話跨ぎゲストで処理完了という超展開だった。斬新なドラマだな…。大川美鈴というのも公式サイトのゲスト枠でフルネームが載っているだけで作中では「10時さん」だけで名前不明だったし。
3話
まひる(吉川愛)メイン回。F1RST SENSEのRIM様への推し活に励んでいたまひるだったが、RIMの卒業が発表され、会場となる駅前がトラウマのある駅で…。思い悩んでいたまひるだったが気づいた優希と愛莉が駆け付け、広海と虎之介も含めて信頼できる友人と感じたまひるはみんなにトラウマの内容を話し…という内容。
大枠ではいい話だったんだけど…トラウマの内容がこのドラマらしくさほど重くないやや微妙なもので、お嬢様だったまひるは金持ちが集まってくるような小学校に通っていたが、同級生男子の家が没落。この同級生男子の父が良く分かっていない同級生男子にまひるを呼び出させて新居(没落してアパート暮らし)に連れてきて身代金要求の電話(?)をしようとしていたが葛藤の末に断念。帰りの車の中でそのような可能性と状況にようやく気付いたまひるは怖くなってすぐ近くの駅で降ろしてくれと言って逃げるように去った…というのがこの駅だった。たぶん誘拐未遂という話だったが、父親だけでなく何も知らない同級生男子が常に同行しており、結果的にはボロアパートに連れて行かれてカップラーメン食べて帰っただけでそこまで危険な目には遭っていない感じだったのでこれがここまで引きずるほどトラウマになってしまうというのがどうにも分かりにくい。明確に誘拐されて怖い目に遭ったとかなら分かるが…。
そしてF1RST SENSEもRIMも実在するアイドルが本人役で出演という形で2022年結成なのに未だ楽曲リリースが1つもないという売れてないドサ周り営業中心で売り出し中なのは共通しているが、作中での売れてなさの描写はさらにブーストかけまくっている感じでなかなかヒドイ。観客が終始一桁しかいないわ、メンバー1人作中で卒業扱いにされてしまうわ、卒業公演で今までで1番大きい会場と言いながら駅前広場フリーライブなのは変わらず、しかも優希と愛莉が出会った頃にはもう応援していたというくらい数年以上の活動歴でこの体たらく。結局この会場周辺のトラウマが克服できずにまひるは配信でライブを視聴したというが、現場に一桁しかファンがいないのに配信見ている人なんてマジで1人2人なんじゃないのか。売れてない設定にしてもどう考えても採算どころかメンバーが自費・趣味でアイドル活動しているような状態。もう少しファンがいてもいいじゃないか…。
4話
愛莉(見上愛)メイン回。元より少し一匹狼的なところがあってプライベートまで深く関わっていなかったり(優希とまひるも家に行った事が無かった)、恋愛関連の話題になると急に厳しい表情になったり、1人だけ話題に参加しなかったり、好きが分からない等これまでの描写からしても昨今1ドラマ努力目標1人(毎回ゲストの登場人物多いドラマなら確実に1人)はねじ込みが義務化されているかのような同性LOVE案件かのような匂わせはあったが…。作中でも出会って日の浅い虎之介がこれまでの様子や優希の似顔絵を見てしまった事で優希が好きなのかと自然に聞くなどしていたが愛莉は明言せず、答えが曖昧なまま思い悩むという展開に。
遊園地の着ぐるみバイトの先輩島田和沙(SUMIRE)がよく愛莉を食事に誘ってくるので何気なく相談したところ、相手が女性だとは言わなかったものの「その子」という言い方から和沙は察したのかいないのか、意外と的確に悩める愛莉を引っ張ってくれ、愛莉は家に優希を呼んだり、優希と広海が2人で遊園地に来た際に着ぐるみ姿で正体を隠したまま優希の似顔絵を描いて渡して、答えは出ないままでもどこか整理をつけた感じで最後まで明確な同性LOVE案件だと単純には明示しないまま終了。安直な案件ねじ込みではなく、ひと味違う作風で繊細な感情をあえて曖昧に描いたのは新しかった。…が、分かりにくくもあり、バイトを辞めるとさっぱり宣言した和沙は後輩の愛莉と単純に仲良くなりたかったのか、同性LOVEだったのかこれまた徹底して伏せられたまま終わってしまった。当初の食事に誘い続けて応じてもらえるまでの喜びっぷりと、愛莉の独白を聞いて「その子」がどっちなのかも聞かずに確実に同性の優希だったと見抜いて似顔絵描きの際にも徹底してリードして導く者としての役割を全うして自身の本音を見せなかった事からも話を聞いた時点で自身の思いは封印したのかなと思えなくもない。
また優希としては全く気づいていないので2年後である現代で愛莉から遊園地でもらった似顔絵と全く同じカラー版が届けられて驚き、2年前である本編に突入して経緯が判明し、終盤で現代に戻ってきて2年経って初めてあの着ぐるみが愛莉だった事に気づいて電話するという流れ、大事な人だと発言しつつも踏み込まない愛莉もまた繊細かつ曖昧。和沙が画用紙に2年保証と事前に書き込んでおいて2年経って気持ちが変わらなければカラーで送り直せと提案していたのをそのまま実行した事と2年前当時よりハッキリ大事な人だと本人に告げたことからより自覚したっぽくはあるけどそれでも安易に好きだとは言わせないところにこだわりがある…っぽい。前回推しを失ったまひるが新たに気にかけたのが虎之介でこれも好きとはまた少し違う”推し”であり、一方で優希はラストで明確に広海を好きな人が出来たと霊前の母に語るなど1人だけハッキリ「好き」を明言にするなど色々複雑かつ繊細な作風が印象的だった。
5話
広海(佐野勇斗)メイン回。数学のギフテッドとして海外にいたが挫折して日本の大学に編入したらしい…というくらいしか判明していなかったが、キャンバス育英財団の同窓会で同じギフテッド仲間の克弥(福崎那由他)と再会。克弥はかつて天才小説家として期待されていたが挫折して現在はライターとして就職。未だ数学を捨てきれない広海に“元”天才であり普通に生きなきゃいけないと少々きつく当たる。さらに壊れた洗濯機を買い替えるために初バイトを虎之介(望月歩)に相談し一緒にウェイターの単発バイトに出向くが、元々人や物が無秩序に動き回っている空間が苦手で子供の頃に馴染めずにキャンバス育英財団に行き着いた経緯があり、動悸が激しくなってしまう。
大失敗して虎之介も一緒に平謝りしたという顛末は描かれず、余計な事をしてしまったとひどく落ち込んだ虎之介が優希、まひる、愛莉のところにやってきた際に説明したのみ。この事から他人と距離を置こうとしていた広海だったが、優希の温かい励ましで立ち直るという穏やかな流れに。また優希、まひるが教師を目指す中、愛莉は違う道を行こうかと考えており、偶然出会った際に広海とほとんど1対1では初めて会話してあの2人なら話しても大丈夫だと背中を押してもらい、優希、まひるに話して2人も受け入れた。この際に優希が自分の思う方に進めばいいよと言ってあげるのが正解なんだろうけど簡単には言えないみたいな事を話したのが広海と同じような事で波長の合っている2人を愛莉は応援する事にして広海には優希をよろしくして泣かせたら許さないとも告げるのだった。
相変わらず、淡々と進んで分かりやすく各々の感情が提示されるわけではないので掴みにくい部分も多いが雰囲気は良い。
それよりもただでさえ「人生の日記を読み返してみたくなった」という通常だと10年前後は経過してそうな演出で過去を回想する形で描いているのが、起点の時点でわずか2年前でそんな本腰入れて日記をめくり返すほど過去じゃなくね?というのが気になっていたが作中の時間経過が早く、今回は年明けになってしまったので今回からテロップ上は「1年前」になってしまった(ただ春休みが終わったら4年生と言っているのでまだ過去編の起点だった3年生始まりの春から丸1年には到達していない)。この調子だともう次回にでも現在と読み返す日記の過去が1年未満になってしまい、さすがに1年とか半年とかついには数ヶ月前をわざわざ日記演出でペラペラめくって振り返るのはなぁ…。
6話
表示上はまだ「1年前」だったけどついに読み返したくなった日記が去年の8月に…。既に就活勢は就活を終えており、この間に優希と論文に追われた広海もしばらく会っていなかったらしい。久々に5人で集結した一行は夏に旅行に行こうと盛り上がるが…。優希の姉の優見(菅野莉央)が友人の結婚式で急遽上京してきて滞在中に隠していた母の遺灰を発見されてしまい豹変した優見は激怒して帰ってしまう。優希が高校3年の時に病死した母(りょう、写真のみ)の遺言で父の拓郎(平山浩行)、優見、優希は分けた遺灰を海に撒いたが、優希はそれが出来ずに嘘をついて隠し持っていたという。
それでなんでここまで激怒されなきゃいけないのか、双方に思いはあったとはいえ、姉は姉でもう少し妹の思いも尊重できないのか…色々と言ってはいたが正直姉がかなり難ありの性格にすら見えるようなちょっと理解しがたい展開だった。優希はひとまず静岡の海辺にある実家の銭湯「恩」へ帰郷。その後も刺々しい態度のままの姉、そして父の拓郎は姉妹が明らかに険悪っぽい空気なのにのほほんとしていて何も聞かないし干渉しないし。隣人の緑(中村ゆり)は事情を知っており、広海に居場所を教えて広海が先行して静岡入りして優希と再会。広海が1人では足りないとして他の3人にも背中を押してもらっていいんじゃないかと提案したため、優希は3人にもLINEで事情を説明して背中を押してほしいとお願いしたところ、翌日には3人も静岡に駆け付けてくれて、みんなの見守る中で優希は遺灰をまいてようやく区切りをつける事が出来た。その後、広海は優希に好きだとハッキリ言って2人の仲もいい感じに。
遺灰を撒いた場所は実家の2階からも見える位置にあり、「決意した」という優希の言葉から察して優見が見守っていたが、一緒に父の拓郎も見守っていた。その後も一切この件に触れなかったものの、蚊帳の外というわけではなく、拓郎はある程度察していたが言わずに見守るスタンスの父らしき事がなんとな~く示唆された。優見とは改めて話し合って和解する場面が描かれ、この際に優見は隣人の緑を思い出した、葬儀の時に見かけた(正確には来ようとしていた様子の人)と語り、緑と亡き母が知り合いだった事を示唆しながら次回へ続く。
このドラマとしては最も話が大きく動いた…というか主人公の抱えていたものが明かされる話だったが相変わらず雰囲気重視で分かりにくい。父の拓郎が察しているのかいないのか最後まで蚊帳の外に置いたままで最後の最後でなんとなく察してました感を空気だけで示唆したり、姉の優見の激怒っぷりはちょっとフォローしきれていなかった印象だし、遺灰を撒いた後の夕陽が絶景過ぎて越えられそうにないからと夏休みの旅行計画を破棄してしまう(4人にとっては静岡旅行ではあるけど、優希は実家に帰っただけだし…)とか、チョイチョイ気になってしまう部分はあり、視聴率が2%台でやべぇ…というのもそれはそれで納得。雰囲気はいいんだけどなぁ…。
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