Mr.Children 30周年シングル回顧4+ 2005-2010
小林武史がプロデューサーから演奏者へと変わったのがこの時期だ。この頃からギターが1歩後ろへ引っ込み、ピアノとストリングスが3歩くらい前面に出たアレンジが主流になっていく。一部ファンの間ではピアノまみれという新語が誕生。当サイトでもコバチルなる独自用語を創設して勝手に表現していたが、これはコバヤーチルドレンを意味する。小林武史のピアノやストリングスが前面に出た方向性の事を指し、その進行度合いによってコバヤーシルドレン、コバヤーシタドレン、コバヤーシタケレン、コバヤーシタケシンと進化していき最後は誰もいなくなって小林武史(と四家卯大)だけになってしまう…というイメージ。
伏線的な流れはここまでにもあり、ストリングスアレンジにおいて『DISCOVERY』で出会った四家卯大とベッタリになり小林武史あるところに四家卯大ありという状態にまで両者が1セットな関係でストリングスアレンジを手掛けるようになったこともあるし、小林武史がメンバーとして参加していたMY LITTLE LOVERからギタリスト藤井謙二が脱退した事でメンバーとしてのギタリストを失った事もある。また桜井がピアノでの作曲を開始した事で恐らくデモ段階でギターよりもピアノ始まりがイメージされる曲が増えていったこともありそうだ。
様々な要因はあったと思われ、徐々に進行していたピアノストリングスの増殖だが、極めつけは2007年ツアーでのサポートバンド一新であった。この際にサポートキーボードが小林武史に変更になった。これに伴いプロデューサーとしてあくまで一歩引いた目線でバンドを見ていた小林武史がプレイヤーとしての主張をぶつけてくるようになったという事は桜井本人がインタビューでも語っていた。当時の桜井はバンドメンバーとして5人の一体感がより増したというポジティブな意味合いでそれを語っていて深刻な事とは考えていなかった事が伺える。
映画『Sprit of Difference』では小林武史が制作を指揮・先導している様子がありのまま公開され、メンバーよりも画面に多く登場。ロック色の強かった曲もピアノ始まりへ改変されるなど露骨なピアノまみれになっていく制作現場の状態が改めて明らかになる。
小林武史が主張を押しつけているという声も多いが、それは最初からで小林武史は主張が強いプロデューサーであり、かつて関わった桑田佳祐も頼りっきりになり、『世に万葉の花が咲くなり』のクレジットを良く見るとKeyboards,Rhythm Programming ,Synth Bass,Sampling Instruments,Guitarsとサザンメンバーの担当楽器全てに介入するような状態となっていた。桑田佳祐は危険な奴だという冗談めかしたコメントを残して小林武史から離れてセルフプロデュースへと戻した。
小林武史が天才職人だったことは間違いない。その天才がこの時期にほとんどピアノストリングスだけになってしまいすっかりかつての多彩さを見失ってしまったように思う。プロデューサーにだってピークはあるわけで、すっかり大御所化してしまった結果なのだろうか。レミオロメンはコバオロメンに、back numberはコバックナンバーとピアノストリングスが存在感を増すだけの作風が小林武史では無かったはずだが…。
また以前のライナーでは”ロックバンド”と形容していたが、同じ小貫信昭氏がライナーを書いた映画『Sprit of Difference』ではもうロックバンドというには無理がある状況になっていたためなのか無意識なのか“ポップ・ロックバンド”という形容に変わってしまっていた。
セールス面ではトップ級を独走、オリジナルアルバムでの連続ミリオン最後のミュージシャンとなった。
4thベスト『Mr.Children 2005-2010
From 12thアルバム『I♥U』
05年9月21日
潰したトマトをハートに見立ててLOVEと読ませる。『深海』以来となる普通のプラケースで発売された。初回盤は無し。歌詞は楽曲をイメージしたイラストを歌詞の配列で表現しているため非常に読みにくいと評判。また黒トレイを外すとブックレットと合わせてハートが完成するなど新たに起用されたアートワーク担当の丹下紘希の手腕が光る内容となっている。
「Sign」「四次元 Four Dimensions 」といった通常よりも大ヒットしたシングルを詰め込んでいたものの前後の作品の売上を下回った。それでもミリオンヒットだったとはいえ、後に桜井も小林武史も今作が思ったように売れなかった、届かなかったという旨の発言を残している。Bank Bandでは鳴らせない音や衝動を目指したというBank Bandの反動ともいえる仕上がりとなった激しめの今作がイマイチ評価されなかったという認識を桜井・小林が共通認識として持っていたことが次回作以降の方向性に繋がっているところはあるのかもしれない。
ただなおもみんな売上落としている中、1人勝ちの連続ミリオンをキープしたままなのにちょっと下がった程度でそのような発言を残すなんてなんだかんだイケイケな時期だったと思われ、『SENSE』以降でもっと売上が暴落していった頃にはさすがにそのようなコメントは見られなくなった。
Worlds End
MVも制作されたアルバムリード曲。1曲目からクライマックスみたいな激しいバンドサウンドと壮大なストリングスがド派手に盛り上がる。ストリングスが明らかに以前よりド派手になり、ピアノも前に出るようになってきていてもバンドも負けじと前に出ているのでかなり勢いが感じられる。
何に縛られるでもなくどこまでだって行けるとまくしたてるひたすら前向きなパワーが心強い。シングル「未来」の1番の歌詞もそうだったが、今作での何にも縛られず(その気になれば)どこまでだって行けるんだよ!というのもニートの叫びと同調するようなところがある。当時そう感じたのはそれだけ先の知れたどころか絶望的な未来を感じて不安だったからかも。
★★★★☆
12thアルバム『I♥U』
3rdべスト『Mr.Children 2005-2010
6thベスト『Mr.Children 2015-2021 & NOW』(Mr.Children Tour 2018-19 重力と呼吸)
僕らの音
穏やかな歌モノミディアムバラード。どのアルバムにも毎回入っているようなお得意の王道曲といった感じで、確かにいい曲ではあるが無難でもあるというかアルバムに隠れているくらいがちょうどいい感じでこの曲がベスト盤に収録されるとは思っていなかった。とりあえず「Worlds End」選曲してるんだからこのアルバムからはひとまず無理にもう1曲選ばなくても良かったんじゃないかとは思う。
★★★☆☆
12thアルバム『I♥U』
3rdべスト『Mr.Children 2005-2010
靴ひも
文字の並びで楽曲に合わせた絵を形成しているため歌詞が異常に見難いアルバムの中で何故かこの曲だけは普通に靴ひもの写真の横に唯一普通に歌詞が記載されている。さすがに靴紐の形に文字を並べるのはあまりにも読み手に対して酷だと英断が下ったのだろうか。比較的淡々としたメロディーだが「僕らの音」や「CANDY」と比べるとバンドの躍動感が程よく出ているアレンジでサビはそれなりに盛り上がる。ミスチルっぽいっていうのはこういうのもあると思っていたんだけどいつの間にかピアノが目立つバラードがミスチルっぽいものみたいなイメージになっていっていったせいなのか影が薄いのが残念。
主人公の君への思いが盛り上がりまくっていてそれがアレンジにも出ているとはいえ、かなり一方的に熱い思いが綴られ続けているので良く見るとちょっと怖いほど。”君の絵の具で濁った僕”だとか”君の色で濁っている”だとか独特の表現も出てくるが染められるとかじゃなくて濁るというのが斬新。ちょっとイメージが追いつかない。こういう主人公が浮気されていたりすると槇原敬之の「SPY」みたいになるのかな…とちょっと思ったりも…。
★★★★☆
12thアルバム『I♥U』
潜水
曲自体は正直なんという事もない地味なアルバム最終曲。ただわざわざ『深海』を思わせるタイトルをアルバムラストに持ってきているので聞く前に多くのリスナーが引っかかったのではないか。けっこう激しいアルバムだったしひとしきり暴れ回った後にまた潜ってしまうのかと。
いざ聞いてみれば単にプールで潜水して苦しくなって浮上して息をして生きている事を実感するだけ。この大胆不敵ともいえる外しっぷりは深読みしようとするリスナーを意識していたのかいないのか、そこまで踏まえて考えると面白い。「Door」もそうだったが何かしらの意味を匂わせながら実は何も無いという深読みしたがるリスナーを牽制するような表現も隠れているようなアルバムだった。
★★★☆☆
12thアルバム『I♥U』
28th 箒星
06年7月5日
1年ぶりのシングル。前作のような豪華シングルというのはいわばドーピング的な側面があり、その次というのはどうやっても下がるしかなく難しい局面となっていた。時代に逆行してCDが売れなくなっていく中で売上を伸ばすorキープという離れ業で00年代前半を突き抜けたミスチルもいよいよ時代に抗えなくなり、今作で「優しい歌」以来の50万割れ(41万枚)まで落とし、あっという間に初期3作と「I’LL BE」以外を全て下回る事態となった。
一応今作でも新たな手は打っており、初回盤は初のDVD付。DVDにはショートムービー「箒星-Ordninary Beauty-」を収録。通常の2枚組ケースではなく、DVDよりは小さめの厚紙+トレイの特殊ケース(CDとDVDが2枚並ばずに一部重ねて収納するタイプのトレイ)。通常盤は通常サイズの厚紙+トレイの特殊ケース。
箒星
果てしなく前向きなポップロックチューン。バラード系が増えてきている中で久々にこれぞというアップナンバーで当時から現在まで一貫して一際好印象な1曲だ。今作を最後にギターがどんどん窓際化していってしまい、同系統の曲はマジで『REFLECTION』まで待たなくてはならなくなったが…長かった…。今作でも間奏でだいぶプロデューサーピアノ演奏者小林武史がエゴを押さえられなくなっているのが分かるが一緒にギターも鳴っているのでまみれている感はまだ薄い。
実際に歌われているようにタイトルは「ほうきぼし」だが見慣れないので「彗星=すいせい」と最初勘違いしていた。スピッツ(『インディゴ地平線』)や少し前のユンナのヒット曲もあって「ほうきぼし」は「ほうき星」だという認識が何となくできていたのもあった。前向きな歌詞に落ち込みまくっていた当時はとても励まされた。春にB’z「ゆるぎないものひとつ」に共感しまくり、DEEN「Starting Over」に癒されるような落ちこみまくりの状態だったので今作でだいぶ心が軽くなってしばらくテーマソングのように聞いている時期があった。
初回盤DVD収録のショートムービー「箒星-Ordninary Beauty-」は20分に及ぶ長編でメンバーの登場はない。大半がドラマ進行で小林武史が今作をアコーディオンでアレンジしたインストが流れる。冴えない日々を送っていた自信のない清掃員の地味な男女がお互いに勇気を出そうとして共鳴し、1歩前に進んでいくようなストーリーが展開する。かなり話が進んでからようやく曲がかかり始めるが、1コーラス終了、2コーラス終了、最後のボーカル終了ごとに幾度となく曲が途中で止まる。ジャケ写になっているのはお互いの想いを確認し、1歩先へ進んだ2人が天にも昇る心境に到達し、ついには空中浮遊していくというラストシーンのもの。また歌に合わせてこの男女と全く同じ髪形や眼鏡に変装した人々が大量に出てきて華麗にダンスを披露するのも圧巻だったがアートに突き抜けているので異様と言えば異様でもある。
ベスト初回盤やYouTube等に収録されているMVは曲の尺に合わせて大幅に内容がカットされたものでいきなり2人が大量分身するところから始まったり、雨の中で踏み出せない思いを吐露するシーンも台詞なしだし、1歩踏み出せない序盤のシーンがカットされているので最後に青年が1歩踏み出すシーンもカットしていきなり空中浮遊しちゃうしで内容が分からないが変なインパクトの映像ばかり出てくるのでシュールである。
★★★★★
13thアルバム『HOME』
4thべスト『Mr.Children 2005-2010
C/W ほころび
ap bank fesで演奏されるのを前提にした曲らしく、ノリはそこそこいい…がライブで盛り上がるのかは微妙なノリのような…。自分たちの単独ライブではなくap bank fesで演奏するのを前提にしていたのも微妙に良く分からない。最初に聞いた時の印象はまあまあ良かったんだけど、その後あまり定着せずにすっかり忘却の彼方になってしまったので個人的には地味な曲だったという事だろう。
★★★☆☆
14thアルバム(C/W集)『B-SIDE』
C/W my sweet heart
少女に少女のままでいてくれという謎曲。『B-SIDE』対談でもセッションから始まった曲だと延々とサウンド面への言及のみでこの歌詞については最後に桜井が”ポピュラリティなんかお構いなし”、”3曲入りの1曲だから許してもらえるかな”としか言及していない。要するにこれは単に桜井の娘がお年頃になっていた時期と重なっている。この娘というのは前妻との間の子で今作時点で12歳(公式に映画『【es】』で生まれたのが94年頃だと明らかになっている)、一緒には暮らしていないが会ってはいるようなので、成長していく娘を見てかわいいなと思って作っただけのプライベートな親心ソングなんじゃないかと思う。
★★★☆☆
14thアルバム(C/W集)『B-SIDE』
29th しるし
06年11月15日
前作でいよいよ売上も下がっていくかと思われた中で空前の大ヒットを記録、「Sign」に迫る70万枚突破を果たした最後の特大ヒットシングル。厚紙+トレイ仕様だが今回はトレイが中央にあり左右両方に開く3面仕様。歌詞カードはなく歌詞は直接印字されている。また3曲ともひらがな3文字のタイトルで統一された。
ジャケットには久々に桜井が単独で登場。アートなジャケットが続いていたため、メンバーが顔がはっきり分かる状態で登場するのは「終わりなき旅」以来だった。
しるし
ドラマ『14才の母』主題歌。前年に『女王の教室』でブレイクした志田未来主演でタイトル通りに14歳での妊娠出産を描いたいわゆる衝撃作。相手役は三浦春馬だったが、2人のラブストーリーというよりも周囲も含めた困難を描いた内容だったようだ。最終回にかけて視聴率が20%を越えていったので当時としては大ヒットしたドラマになった。
かなり強い渾身の7分越えの濃厚こってり大バラード。こういった直球のバラード曲でこれ以上の壮大さはもう不可能というくらいの極めに極めたような仕上がりでここまで大作にしてしまうと同系統でどんなバラード出しても「しるし」がちらついてしまい、好みはともかくとしてこれ以上のヒット曲はもう金輪際出せないだろうというようなそんな1曲。それくらい今作で極めたと思うし、J-POPストリングスバラード全盛期を代表する1曲でもあると思う。翌年のコブクロの「蕾」も同じポジションにある曲だと思うけどこの時期本当にJ-POPのヒットがストバラまみれになってしまったからな…。
メロディーの強さはあるものの、じわじわとだけど確実にちょっとう~ん…というハッキリしない違和感の正体が徐々に見えてきたというか、ピアノやストリングスが前に出てきてないか、小林武史がどうも最近おかしくないか?という印象になってきつつある時期だった。後にコバチルと呼ぶ事にしたが、ここがコバチルの本格的な始まりだった。撮影はしたらしいが編集段階でカットしてしまったためMVも桜井1人しか出ていないし…あと異様に幅が狭い。
★★★★☆
13thアルバム『HOME』
4thべスト『Mr.Children 2005-2010
6thベスト『Mr.Children 2015-2021 & NOW』(Mr.Children HOME TOUR 2007 -in the field-)
C/W ひびき
コーラスの感じ含めて最初期っぽいかわいい感じの軽快なポップナンバー。ド派手なストリングスバラードが炸裂した次の曲でこういう軽やかなテイストの曲が出てくるのが最高に心地よく、このシングルで当時1番聞いたのこっちだったと思う。
翌年『B-SIDE』発売時にMVが制作され、リード曲のように再利用された。
★★★★☆
14thアルバム(C/W集)『B-SIDE』
C/W くるみ-for the Film-幸福な食卓
映画『幸福な食卓』主題歌。25thシングル両A面曲のリメイク。前年に行われたツアーで披露していたアレンジを基にして映画主題歌用に再録音。この前年のライブでのアレンジというのは2022年に6thベスト『Mr.Children 2015-2021 & NOW』にライブ音源としても収録されたもので、ライブ音源ではバンドインするのがかなり早いが、今作では最後のサビ前までバンドが登場せずに小林武史の濃厚ピアノ演奏と桜井によるBank BandよりもBank Bandな状態で延々進行。まるで遅れてきたナッパ戦、フリーザ戦の悟空のごとく、最後のサビでようやくメンバー3人が登場するがギターは遠い。それでもようやくやってきたバンド演奏に感動はしたものの…う~ん…。この当時よほどバンドメンバー3人に覇気がなかったのか、ツアーメンバーに今更自ら参入するほど第2のバンドメンバー化した小林武史が張り切っていたのか、やたらピアノ始まりのバンドが遅れてやってくるパターンが連投されるようになり、小林武史への違和感が確信に一気に変わっていった。
キーを下げたのに加えて原曲より歌い方が優しくなっているところなどボーカルのアプローチは原曲にはない良さはあったと思う。とりあえずもう少しバンドアレンジで聞きたかったし、原曲のアコーディオンのような音色とか原曲のアレンジの良さを全部ピアノとストリングスだけで塗りつぶしたところで勝てるはずがない。せめてアコースティックギター使うとかさぁ…。「くるみ-for the Film-幸福な食卓」というよりシンプルに「こばみ」と呼びたい。
また当時映画主題歌に使いたいと小林武史に依頼があり、小林武史が快諾して小林武史がリメイクした、小林武史のピアノ演奏と桜井のボーカルが…、小林武史が「くるみ-for the Film-幸福な食卓」と命名…となんでもかんでも全部小林武史がやったかのような記事が出ていて、メンバーの意向がほとんど感じられず、小林武史何様なんだよ…と憤りにも似た感情になった。…が、よく考えたらプロデューサー以前に何様も何も事務所社長様であり、主題歌に使いたいという話があったとして事務所=社長様に話を通すわけだから正しいルートではあった。
★★★☆☆
14thアルバム(C/W集)『B-SIDE』
6thベスト『Mr.Children 2015-2021 & NOW』(MR.CHILDREN DOME TOUR 2005 “I ♥ U”~FINAL IN TOKYO DOME~)
30th フェイク
07年1月24日
1曲500円の40万枚限定生産として発売された。当時その辺のCDショップからは完全に消えて完売し、一時期中古価格もやや高騰していたはずなのにO社の累計は32万程度でかなり余った計算になってしまった。00年前後に浜崎あゆみが30万枚限定シングルを出した時はO社の記録もほぼ30万前後でそこまでズレが無かったので若干謎だったが、この頃はネットショップでの売上も上がってきて集計の精度が落ちていたのだろうか。まさか生産枚数までフェイクだったわけじゃあるまいな
薄い紙ケースに布に入れたCDと歌詞カードが入っている紙ジャケット仕様。ミスチルシングル史上唯一“開かない”シングルCDとなる。女性らしき口とベロのドアップ画像が表ジャケとなっていてベロ出しジャケットまさかの11年ぶりアゲイン…、タイトルに引っかけて裏ジャケでは同様のフェイク画像になっている、文字が全て反転しているというフェイクデザイン。
歌詞カードは折り畳みになっているが、歌詞とクレジットは表と裏に全部書いてあり(なので本来ペラ1枚で済んだはず)、開いた部分はただ真っ黒なだけで何も書いていないというまたしてもフェイクであった。
普段演奏時間の表記なんかしないのに今作のシールには4’54と曲が4分54秒である事をわざわざ表記している。実はそれすらフェイクで実際には9分51秒収録されている。小さなギミックもすべてはフェイクであった。
フェイク
映画『どろろ』主題歌。打ち込みを駆使し、ややマニアックな『Q』以前の空気感を少し彷彿とさせる。この頃から映画ドラマタイアップがバラードを要求してくるのか常時バラードばかりになってしまうだけにこういう刺激的なのは珍しくなってくる。優しい曲調の多いアルバム『HOME』内では少々浮いていた。しかしこの時期としては刺激的なサウンドや刺激的な歌詞もあって当時は妙な曲だと思っていたのだがけっこう覚えている1曲になり、『HOME』の中では「箒星」をダントツとしてそれに続くくらい聞いた回数の多い曲となった。
CDでは”それすら”で曲が終わるが、『HOME』初回盤DVDのライブ映像ではラストが”それすらフェイク”と歌いきっているという違いがある。
演奏終了後に40秒弱経過すると謎のリミックスインストみたいな曲が延々と流れる。歌は入っておらず、しかしカラオケというわけでもない謎のインストで一体これが何なのか、目的も意味も全てが不明だがきっとこれも歌入りのリミックスやシークレットトラックやカラオケが収録されていると思わせてのフェイクなのだろう。この謎のリミックスインストはシングルCD限定で以降のアルバム収録時は当然カット、配信版はシングルでもカットされている。
★★★★☆
シークレットトラックはシングルCDのみ(配信でもカット)
13thアルバム『HOME』
4thべスト『Mr.Children 2005-2010
6thベスト『Mr.Children 2015-2021 & NOW』(Mr.Children HOME TOUR 2007 -in the field-)
From 13thアルバム『HOME』
07年3月14日
2週連続1位(『Mr.Children 1992-1995』以来、オリジナルでは『Atomic Heart』以来)、120万枚を突破して前作を上回る売上を記録。次回作でさらに上回った事もあって結果的に前作『I♥U』のウケが良くなかったという認識を桜井・小林両名が深める事にも繋がったものと思われる。
2007年は前後の年と比べてもアルバム売上が全体に伸び悩みミリオンが今作以外に倖田來未しか出なかった。1人勝ち状態でアルバム連続ミリオンを継続していたとはいえ発売タイミングの問題や必ずそれ以上の大ヒットが1作以上はあったためこれまで年間1位は獲得した事が無かったが今作で初の年間1位となった。
初回盤は前々作以来となるDVD付でドキュメントを収録。前回と違って今回は桜井の単独インタビューとライブ映像のダイジェスト等で構成されている。
Wake me up!
「叫び 祈り」を経てのアルバムの実質的なオープニングナンバー。爽やかなモーニングブラスポップ(?)ナンバー。朝の情報番組テーマ曲のタイアップとして書き下ろしたかのような曲だがそのようなタイアップは無い。後に本当に『めざましテレビ』テーマソングを「Happy Song」で担当するが正直「Happy Song」よりもめざましタイアップっぽい。
今作のツアーからサポートを一新、ギターのサポートメンバーを外してギターの厚みを薄めた上にキーボードとして小林武史が自ら参加するようになったことでコバチル化が急速進行していくが、『HOME』ではピアノの存在感が増しつつも「しるし」の大ストバラが目立つくらいでストリングスよりブラスサウンドの導入の方が多い。今作もブラスを生かしたポップなサウンドが印象的だ。
★★★☆☆
13thアルバム『HOME』
彩り
穏やかな労働賛歌。仕事全般よりも作業的な労働を想定したような内容になっているのは自動車の部品組み立ての仕事をしている桜井のサーフィン仲間から着想を広げて書かれたためだろう。なんてことない作業が回りまわって誰かのためになっているという作業の意味を全面肯定する優しい賛歌…だが、どうなんだろうか。当時これで頑張れるものなのかな?ちょっと綺麗すぎるのではないかという違和感があった。どうも入ってこなかったんだけど、実際に働くようになってみるとやはりもっと入ってこなくなり、むしろ苦手な曲になってしまった。苦手というかもうずっとどう聞いていいか分からない。もう歌詞を無視してメロディーと雰囲気だけでしか聞いていない。後に「fantasy」という曲で”いわゆるそんな希望を勘違いを嘘を“というフレーズがあるんだけど2015年にこのフレーズを見た時に他にももっとありそうなもんだけど真っ先にIDカードに記すのはこの曲だなと思った。
なんてことない作業が回りまわって誰かのためになっているなんていう慰めは確かに必要なのかもしれないが、そんな思考のマジックよりも日常に彩りを与えてくれているのはMr.Childrenの音楽だったのではないかと。そんな大観衆の前で多くの人々を魅了する特別な存在であるMr.Childrenがこの曲を歌う事自体もなんてことない作業なはずもない。Mr.Childrenからこの内容を歌われる事の違和感の正体とはその辺りにあるのかもしれない。
『HOME』初回盤DVDにはap bank fesで発売前に披露したライブバージョンが収録されているが、キーが低くピアノメインのコバチルアレンジになっている。この傾向は次のシングル「旅立ちの唄」でも同様でコバチル化への変化を感じる。
★★★☆☆
13thアルバム『HOME』
4thべスト『Mr.Children 2005-2010
PIANO MAN
PIANO MAN=小林武史の歌桜井が暇なときにピアノに向かっている時に出来たので仮タイトルにしたらそのまま本タイトルになったという。ジャズの要素が強くなり、ブラスサウンドが前面に出た「ブラスマン」になってしまったと語っていたが、自分がタイトルになっていると思って奮起したプレイヤー小林武史が存分にピアノで跳ねまわっているので十分に目立っていて「PIANO MAN」で問題ないと思う。ピアノストリングスというコバチル定番ではない、ピアノブラスでジャズをやるMr.Childrenという珍しいスタイルが聞けるという結果的に割とピアノストリングス一辺倒になっていく中で貴重な方向性になったと思う。
しかし小林武史の経歴を振り返るとストリングスよりブラスサウンド導入の方が多かったんだよな。ブラスアレンジの山本拓夫との出会いの方が四家卯大より早いし…。コバチル末期にブラスアレンジまで四家卯大になってしまった時は誤植かと思ったぜ
★★★☆☆
13thアルバム『HOME』
37thシングル『himawari』C/W(Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ)
あんまり覚えてないや
発売当時このアルバムについて桜井がどう思われてもいいと発言していたけど、アルバムラストを飾る曲のタイトルはまさにこのアルバムの印象である。それなりにいい曲も入ってるんだけど、どれも横一線でどうもあんまり覚えてない。でもなんか悪くはない。この曲もメロディーや序盤の歌詞はわりと何でもないんだけど3コーラス目の”じいちゃんになったお父さん ばあちゃんになったお母さん”」以降のくだりは感動的でもある。『HOME』を象徴した1曲。でもやはりこういう家族的な穏やかな境地は求めてないかな。
★★★☆☆
13thアルバム『HOME』
31st 旅立ちの唄
07年10月31日
9ヵ月ぶり、『HOME』、アルバム未収録のC/Wをまとめた『B-SIDE』を経ての新曲。今作で限定ではない状態でついに40万割れとなり、この辺りからはシングルの売上枚数で語られることはあまりなくなっていく。今作はトレイも紙で作られた全面再生紙使用の紙ジャケットとなっていて、CD収納部も紙にはめ込むタイプになっているため、CDに擦れた跡が生じやすいほか、紙質がヤケやすいものとなっているので非常にデリケートな仕上がり。元々古紙風ではあったが…帯がすっかり茶色くヤケてしまっていてマキシシングル以降のシングルで何故か圧倒的に今作だけ大昔みたいな見た目になってきてしまっている。
『B-SIDE』で前作までのC/Wで未収録だった曲がまとめられたが、今作以降のC/Wでオリジナルアルバム未収録になった曲はそのままアルバム未収録のままとなる。
旅立ちの唄
映画『恋空』主題歌。女子中高生中心に泣けると大ヒットしたケータイ小説だったが、当初実話と言っておきながらその昼ドラも真っ青な破天荒な展開と、明らかにリアリティに欠ける想像描写の連発、病気描写に明らかな間違いが指摘されまくった事から、あっさりフィクションと見破られ、ネット上で袋叩きにあった問題作でもあった。感動していた世代が若い特定の世代のみに限られ、映画版も新垣結衣、三浦春馬が主演していたので話題作ではあったが評論家と一般受けは最悪レベルという剥離した大ヒット作となった。
正直なところそろそろアラフォーの足音も聞こえ始めていた立派なおじさん、中年に差し掛かっていたMr.Childrenに主題歌をお願いするよりも若手バンドに依頼した方が良かったと思うし、なんでミスチルに依頼したのか。タイアップがずっと若者向けのままなので恐らくもっと年配のファンは一足先にタイアップ先の映画やドラマには昔ほどハマれなくなってきていたものと思われるが、いよいよ個人的にもこの辺りからタイアップ先のターゲット世代から外れてついていけないタイアップが増えていくような感覚がある。
『恋空』に関してはまあ無邪気に引き受けてしまう桜井さん純粋だなぁとしか…。さすがに映画のストーリーを見て書き下ろしたのではなく(知っていたらさすがの桜井でもあまりの荒唐無稽さにさすがに閉口、しかしプロフェッショナルに徹して仕上げるとかアプローチが少し変わっていたのではないか)、書いていた曲が運命の出会いのようにピッタリだったようでそのようなコメントをしていた。
そんなわけでファンのメイン世代はよりによってこのタイアップかよ…という感じだったと思うんだけど、旅立ちを歌った歌詞の内容は死別の映画の内容にも当てはまるが、もっと広く卒業などの別れにも適用できる内容になっていて楽曲のみでも十分に成立。「恋空」の曲という感じにはならなかったのは幸いだった。
『HOME』モードが続いていて穏やかな曲調でバンド感も薄く、メロディーはいいんだけど早い段階でどうも地味な印象のシングルになってしまった。ただ発売前にライブで披露した音源がMVにそのまま使用されたため、CDとMVでアレンジもキーも異なる。このライブ音源は1番が小林武史のピアノと桜井ボーカルでバンドは遅れて入ってくるこばみ、こばどりに続くコバ立ちの唄といえるアレンジがまたしても炸裂。CD版はこれでもバンドの出番を十分に増やしたものだったのだ…。これでか…。
このツアーよりついにライブのサポートにまで小林武史が参加するようになり、これは桜井本人も認めているように小林武史はプロデューサーではなく1人のプレイヤーとしての主張をするようになったとのことで、ピアノまみれになっていくのは必然だったのだろう。当初小林の事実上のメンバー化に肯定的だった桜井も少なくとも2014年には一転して離れる事を決断するわけだからおおよそ7年か…気がつかぬ間に染まり切ってしまい気づくまでが長かった。
★★★☆☆
15thアルバム『SUPERMARKET FANTASY』
4thべスト『Mr.Children 2005-2010
C/W 羊、吠える
狼の血筋じゃないので狼ではなく羊の声で吠えるという負け犬の遠吠えならぬ羊の遠吠えみたいな負け癖のついた男が主人公の抵抗ソング。その何とももどかしい思いを表現したかのようにアレンジもスッキリせず、パワーを放出するというよりかはどんどん内にため込んでいくような雰囲気。やけにドラムばかりドタドタと目立って聞こえるのは、ギターが絞られているせいだろうか。ピアノプレイヤー小林武史の主張が強くなる一方でじわじわと田原さんの窓際化が進んでいく。
★★★☆☆
15thアルバム『SUPERMARKET FANTASY』
C/W いつでも微笑みを from HOME TOUR 2007.06.15 NAGOYA
10thアルバム『IT’S A WONDERFUL WORLD』収録曲の最新ライブ音源。この2007年に原曲が損保ジャパンCMソングに起用され、新垣結衣が出演していた偶然もあり、新垣結衣出演タイアップ曲が2曲収録されたシングルになった。アレンジが変更されていて、口笛のような音色だった部分がブラスアレンジに置き換えられ、一部歌詞をライブに合わせた言葉に変更したほか、随所の音程を変えたアレンジ歌唱をしているので、全体にやや違和感がある。終盤の“もし僕が~”のくだりの部分のアレンジ歌唱はアレンジしたというより声が裏返ってしまったようにも聞こえるし、ちょっと落ち着きがない感じがしてどうも馴染めない。
★★★☆☆
ライブバージョンアルバム未収録
10thアルバム『IT’S A WONDERFUL WORLD』(原曲)
32nd GIFT
08年7月30日
シングル2作とライブDVDの3ヶ月連続リリースの1作目として発売。前回2004年のゆず「栄光の架橋」が代表的ヒットになっていた事から2008年の北京オリンピックタイアップで久々にドカンと売れるのではないかという見方もあったが、なんとも微妙な推移となり、一応前作より推移は良かったものの初動の段階で20万割れとなっていたため巻き返すには至らず累計は34万枚となり前作よりもさらに下げた。
ジャケットは『しるし』に似た厚紙+トレイのいわゆる3面デジパック仕様。紙質がつるっとしたものに変わったほか、今回は右側に収納部があり、歌詞カードを収納。細かく折り畳んだミニポスターのような大きさの歌詞カードとなっている。“横断歩道を渡る人たち”を”ギフト”ボックスにしてリボンの”メビウスの輪”をかけるという、収録曲すべてを表現したジャケットだと説明されているが、このリボンとメビウスの輪が歌詞カードの反対面にデカデカと載っていて、全体にリボン&メビウスの輪、C/W「風と星とメビウスの輪」のイメージが強いアートワークだ。
GIFT
NHK北京オリンピックテーマ曲。それ以前の2大会は大黒摩季、ZARDでアップテンポだったが、前大会のゆず「栄光の架橋」でNHKオリンピックタイアップ=壮大バラードが定着。前任「栄光の架橋」は頭の片隅にあったと思われるが上限を知らないのか!?と驚いたくらい壮大なスケールの曲。金メダルよりも価値のある選手全員の健闘を称えるような内容だが、オリンピック選手に限らず、出れなかった選手も、スポーツ選手に限らず一般の頑張っている人にも…と対象をどんどん広げて全ての人の輝きを称えようとしたせいか、広げ過ぎてしまってとんでもないスケールになってしまった感がある。これはこれで感動的ではあったが、当時はいきなりストレートに金メダル否定するような歌詞で疑問の声が上がっていたし、改めて思うのは一応オリンピックのテーマ曲なわけだから、ちょっと対象を広げ過ぎたのではないかという事と、広げ過ぎた事で普遍的になるわけでもないんだなという事。なんていうのか誤解を恐れずに書くのであればそこまで崇高に生きてない気がしてきて申し訳ない気持ちになってしまうのだ。
これは当時の桜井の年齢がアラフォーに達し、選手と同世代とは離れてきてしまった事も影響していて、やはり終わった後に称える曲であって若きアスリートが頂点を目指して挑んでいく曲はもう書けなかったのかなとも思う。何より1つ前のゆず「栄光の架橋」が目指す者の曲として完成され過ぎていたのもあるかも。22年5月のMステでのファン投票ではまさかの3位人気を見せていたのは意外だったがファンの年齢層も上がったため、当時より歌詞が刺さる人が増えてきているのかもしれない。
また今作で初の紅白歌合戦に出演、破格の別スタジオ&フルコーラス対応(会場とのやり取りも無し)でオリンピック映像を流しながらの盛大なステージとなったが、ここまでド派手にやった割には前後のNHKオリンピックテーマ曲としてはあまり語り継がれない曲になってしまったなという印象もある。「栄光の架橋」以降で見ても「風が吹いている」「Hero」「カイト」はそれぞれ代表曲的なポジションになっているけど、今作はミスチルに代表曲が多すぎるのもあるけど代表曲としてはまず上がってこない。
この北京オリンピック、実は小林武史はフジテレビのオリンピックテーマ曲でレミオロメン「もっと遠くへ」もプロデュースしていたが、個人的には「もっと遠くへ」方が断然熱かった。みんなを称える精神も立派だけど、オリンピックはもう少し熱くなってもいいのではないか。熱狂の後のエンディング曲として、オリンピック終了後の総集編で使えばハマる曲ではあったと思うけど選手の心情としては「もっと遠くへ」だったと思う。
『SUPERMARKET FANTASY』収録時にエンディング部分が若干変更され、ベスト盤にもこのバージョンで収録された。このためシングルバージョンはアルバム未収録である。wikiに書かれているのを見るまで長年シングルとアルバムが違うのを把握していなかったが、よく聞いたらシングルでは、最後のピアノ演奏がポロンと終わった後にファーーーと弱めのストリングスが鳴るが、アルバムとベストではそれが無くピアノのポロンで終わる。
ただ演奏終了後の無音時間に差があるため同じ音源のはずの『SUPERMARKET FANTASY』と『Mr.Children 2005-2010
★★★☆☆
シングルミックスアルバム未収録
15thアルバム『SUPERMARKET FANTASY』(エンディング若干変更)
4thべスト『Mr.Children 2005-2010
6thベスト『Mr.Children 2015-2021 & NOW』(Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25)
C/W 横断歩道を渡る人たち
久々に吉田拓郎調フォークナンバー。壮大な「GIFT」の後にさらっと聞ける曲ではあるが、やはりプレイヤー化した小林武史の意識の変化は出ていてアレンジはけっこう派手。ピアノの存在感が確実に増していてプロデューサーとしての判断じゃなくて、1人のピアノ担当メンバーとして主張しているのが良く聞くと分かる。
★★★☆☆
アルバム未収録
C/W 風と星とメビウスの輪(Single Version)
アルバムの発売は正式に発表されていなかったがアルバムが近い事を予感させるかのようにいきなりSingle Version表記になっていた。演奏は小林武史のピアノと桜井のボーカルの完全に2人だけ。3人のメンバーが遅れてやってくるパターンでもなく、3人は出番がなくそのまま終わってしまう。
当時のシングル感想に“とりあえずストリングが入って壮大さが増すだけ…とかいう小林の影しか見えないような変化だけは無しの方向で期待したい”と書いていたのだがアルバムバージョンでは想定を越えたオーケストラアレンジとブラスアレンジが盛りに盛られた特盛アレンジになっていて乾いた笑いしか出なかった。元々桜井の想定がこのシングルバージョンだったようなので桜井がピアノを求めた結果のピアノ曲であって小林武史が1人暴走したわけではないであろうことは一応注記しておく。
★★☆☆☆
Single Versionアルバム未収録
15thアルバム『SUPERMARKET FANTASY』(バージョン表記無しでこちらがオリジナル扱い)
33rd HANABI
08年9月3日
前作発売前から既にドラマ主題歌としてOAされていたが、最終回直前になっての発売。既に楽曲が馴染んでいたためか、初動26万枚を記録し、2週連続1位、ロングヒットして49万枚の売上を記録し、余裕で前作を上回った。年間チャート6位となり、年間トップ10級の現時点での最後のシングル大ヒット作となった。
NHK紅白歌合戦で「GIFT」が披露されたのはオリンピックタイアップなのでマストだったとはいえ実際に多くの視聴者が2008年のヒット曲として認識していたのは「GIFT」ではなく「HANABI」の方だった…という状態だったと思われる。ここまで6年連続の年間チャートトップ10入りとなったが今作を最後に積極的なシングル発売を行わくなり、連続記録は途絶えた。
ドラマはその後、09年年始にSP、10年に2期が制作され、しばらく空いて17年に3期、18年に映画、これに付随して3期で加わった新人勢を主役にしたSPドラマ版も制作された。この最初の放送時のみ木曜で2期以降は月9枠となり、主要キャスト以外は入れ替わりもあったが、主題歌は一貫して「HANABI」が最後まで使用され続けた。このため2010年の2期の際に200位以内に浮上、2017~2018年にかけても浮上している。シングルCDは200位以内に浮上した程度だったがドラマ放送時の配信(特にレコチョク)が強く、2017年のレコチョク年間ランキングでは星野源「恋」に続く2位というリバイバルヒット級であった。ぶっちゃけ2010年代以降の最大のヒット曲って新曲より「HANABI」じゃね?なんて言われることも…。
長く人気ドラマに使用され続けた事でファン以外の需要も大きいようでストリーミング解禁後もMr.Children楽曲の中でトップ級の再生数になっているようだ。
「掌/くるみ」「Sign」以来となる厚紙+トレイの2面デジパックだが、前作に続いて歌詞カードはミニポスター並の折り畳み仕様。青がかった背景に片面に「HANABI」、片面にC/W2曲と広いスペースをふんだんに使って歌詞が掲載されている。歌詞に使用した面積が最も広いシングルと思われる。
HANABI
ドラマ『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』主題歌。 山下智久、新垣結衣、戸田恵梨香、比嘉愛未、浅利陽介ら85~88年生まれの当時の20歳そこそこの若手キャストが救命センターの新人医師、フライトドクター候補生(比嘉愛未は看護師、フライトナースで4人の就任より前から勤務していたが世代は同じ設定)として成長していく姿を描いた医療系ドラマ。現実的には当時のキャスト陣が医師を演じるにはあまりに若すぎであり、大学院どころか大卒年齢にも達していない(新垣結衣は6月生まれで放送時点で20歳になったばかり、戸田は8月生まれなので撮影時はほぼ19歳だった)という矛盾があるためか、キャスト紹介に年齢記載をしていなかったが、何度か映り込んだ履歴書等からこの1期時点で実年齢より上の20代後半(リアルタイム加齢した映画時点で30代後半)と実態に即した設定にしていたようだ。
壮大な前作から一転して久々に青春(のその先)の匂いを感じるような爽やかながら切ない曲。アコースティックを生かしたおとなしめのサウンドでストリングスも大きめに被さってくるところはあるがさすがに盛大さも抑えめで非常にライトで聞きやすい。自問自答を繰り返すような歌詞の内容は暗めでいつものようにそんなに明るく終わるわけでもないが比較的普遍的な誰もが大なり小なり抱えている問題が描かれていて引き込まれる。今作の肝はこの誰もが抱えてそうなモヤモヤを絶妙描写しているところだろう。真夏ではなくあえて夏の終わりにリリースしたことで儚さも際立ったように思う。久々に個人的にもグッと来た1曲になった。
最後のサビで半音上がってヘロヘロなところでダメ押しの最高音”もういっかぁぁぁぁぁい♪”は数あるミスチルカラオケ爆死ポイントの1つとして数えていい箇所だと思うが、やはり本人もきついのか発売直後のap bank fesで歌ったのみで翌年のツアー以降は早速キー下げで歌っていたそうだが何故か2015年小林武史を離れた途端に原キーで歌い始めたという。
★★★★★
15thアルバム『SUPERMARKET FANTASY』
4thべスト『Mr.Children 2005-2010
6thベスト『Mr.Children 2015-2021 & NOW』(Mr.Children TOUR 2015 REFLECTION)
C/W タダダキアッテ
03年に発表し、04年の『シフクノオト』に収録されていた「タガタメ」の別バージョン。アレンジがまるっきり別物になっているが、元々原曲はこんな感じで原曲を再現してレコーディングしたものが今作らしい。歌詞に変更は無いが1番と2番のサビが入れ替わっているほか、カタカナ表記だった部分は全部通常の日本語表記になったので”タガタメ”だった部分も“誰がため”になっている。
歌詞が変わっていないのにノリが呑気で陽気なカントリー調になっているのでとんでもなくさらっと聞けてしまい、原曲のような切迫感はまるでない。アレンジってすごいんだな…と改めて思わされる仕上がりだ。しかしやはり「タガタメ」を知っていてこれを聞かされるとどうしても軽すぎてしっくりこなくなってしまうのが正直なところ。
★★★☆☆
アルバム未収録
C/W 夏が終わる~夏の日のオマージュ~
タイトル通り、夏が終わる事を歌った寂しくもしっとり地味な1曲。夏の終わり以外に聞いてもただの地味なC/Wであり何の印象にも残らないという完全に季節限定曲で、涼しくなってきた頃に毎年1回だけ聞いて夏の終わりを実感する時だけは非常に染み入る曲に化ける。
★★★☆☆
アルバム未収録
From 15thアルバム『SUPERMARKET FANTASY』
08年12月10日
消費されることを前向きに捉えた売れ線に振り切ったアルバム。「HANABI」のヒットもあって前2作のオリジナルアルバムを上回り125万枚を突破する大ヒット作となった。O社では初動から2009年度分に集計されたためダントツで上半期1位となったが、嵐のベスト盤が猛烈な勢いとなり上回ったため(09年時点では150万に届かないくらいでそこまでの大差では無かった)09年の年間2位となった。オリジナルアルバムでの最終ミリオン作品。
初めて初回盤DVD付が品番を別にして発売されたが、5曲のMVだったため、後の『Mr.Children 2005-2010
エソラ
消費されることを肯定的にとらえて開き直った『SUPERMARKET FANTASY』を象徴するキラキラなポップナンバー。ジャケットのイメージもまさにこの曲だが、実際にジャケットが出来てからこの曲を制作したらしいので当然か。MVもジャケットの世界観で作られているし、とにかくテンションの高いカラフルさ、ポップなキラキラ感み振り切っていて気持ちがいい。とんでもなく過剰なアレンジではあるが、今作は賑やかさが上回っているし、バラードでも無いのでマンネリ感も無く、こういうコバチルならこれはこれでありだった。
発売時期の関係か何となく年末にかけて華やかさを増していく冬のイルミネーションとも重なるところがあり、クリスマスではない12月の曲というイメージが強い。
★★★★☆
15thアルバム『SUPERMARKET FANTASY』
4thべスト『Mr.Children 2005-2010
6thベスト『Mr.Children 2015-2021 & NOW』(Mr.Children STADIUM TOUR 2011 SENSE -in the field-)
少年
NHKドラマ『バッテリー』主題歌。ドラマは08年春クールの放送だったが、放送中に一切発売の動きが無く、放送終了後の7月のNHKの歌番組「夏うた2008」で披露されるもやはり発売する様子が無く、結局12月のアルバムでようやく音源化された。
『SUPERMARKET FANTASY』の中では比較的ロックバンド色が前に出ていてキラキラよりもロックバンドっぽさを感じられる貴重な1曲。ただその分だけ露骨にメロディーのインパクトが弱く、シングル発売に至らなかったのは何となく納得…。さすがにサブスク解禁以降であれば配信シングルとしては出していたかもしれないが…。
★★★☆☆
15thアルバム『SUPERMARKET FANTASY』
東京
描いた夢をかなえられるのはほんの一握りだと分かっているけどそれでももう少し頑張ってみよう、という現実を見つつも前向きかつストリングス前面なポップな応援歌。まあ夢を叶えまくってきた夢の象徴そのものであるMr.Childrenだからこそ余裕をもって歌える曲でもある気がするが、何かと冷たい街扱いされがちな東京を肯定する1曲としてはけっこうスーッと入ってきた。
こういう歌詞はもっと売れてないギリギリのミュージシャンが歌うとまた全く違う響きになるんだろうな。
★★★☆☆
15thアルバム『SUPERMARKET FANTASY』
花の匂い
08年11月1日(着うたフル)
中居正広主演でのリメイク映画『私は貝になりたい』主題歌。初の配信限定シングルとして発売されていたが、PC配信は無く、10月に着うた、11月に着うたフルと着うた限定で配信されていただけなので、現在のPC/スマートフォンメインになってからは事実上配信市場から消えた状態となった。公式サイトには当時の専用ジャケットも載っているが、現在配信されているのは『SUPERMARKET FANTASY』『Mr.Children 2005-2010
映画の内容に合わせたように主人公の妻の目線で死んだ”あなた”へと歌いかけるバラードナンバー。歌詞に重みがあって涙腺を刺激する泣きの名曲。当時はそれでもまあ普通にいい曲くらいの印象だったんだけど、祖父が亡くなった最期の時の祖母の様子を見ていて歌詞が重なって個人的にとても泣ける1曲になった。
★★★★☆
15thアルバム『SUPERMARKET FANTASY』
4thべスト『Mr.Children 2005-2010
From 16thアルバム『SENSE』
10年12月1日
前作とは一転して発売告知だけして詳細を2日前の11月29日まで明かさず、TVはおろか雑誌インタビューにすら登場せずに作品について何も語らないという徹底したプロモーションしないプロモーション(?)が展開した。
シングルCD一切なしのままリリースされたため全曲初CD化となるが、「365日」は2009年からCMでOAされていて、「fanfare」は2009年唯一の新曲として着うた限定配信されていた。今作直前の9月には映画『Sprit the Difference』を公開し11月にDVD化していたので主題歌の「Forever」も少しだけ先に世に出ていた。
一応わずかばかり先に世に出ていた曲もあったものの収録内容が確定したのが発売目前かつ判明してからもメンバー稼働のプロモーションが無かった事もあり、80万枚に届かないところまで売上は暴落。次のベストアルバムで再度ミリオンに返り咲くもいよいよオリジナルアルバムでの連続ミリオンが途絶え、オリジナルアルバムCDで安定してミリオンを売る事の出来るミュージシャンは消滅した。
I
ポップに突き抜けた前作の反動か、不穏な空気が全開なアルバム1曲目。ほとんど情報が無いまま発売されたアルバムを買ってきて最初に流れてくるのがこの曲という事で今回はダークなアルバムなのかと感じさせるが、そう思わせるのを狙ってあえて1曲目に置いたような感じもする。自虐っぽい歌詞が並ぶが、かつてほど深刻な重さを感じないのは冷たい感じはするけどそこまで重くはないためか。
★★★☆☆
16thアルバム『SENSE』
擬態
11月29日にラジオOA解禁されたリード曲が今作だった(収録内容解禁と同時に前年の着うた配信曲「fanfare」、CMでかかっていた未発売曲「365日」、映画『Mr.Children / Split The Difference』主題歌だった「Forever」といった存在が知られていた曲の収録も判明)。
Salyuへの提供曲として書かれたが自分たちでやりたいとなった曲である事が後に明かされている。「I」に比べるとサウンドはミスチル節ではあるがそんなに穏やかじゃない心境を歌っている久々にキレ味のあるヒットチューンといった味わい。”富を得た者はそうでない者より満たされてるって思ってるの?”のくだりはセレブ化したバンドからの正直な視点であり、どんな立場だろうとその立場なりの迷いや満たされない思いはあって当然だし、このくらい開き直ってくれた方が共感はできなくてもむしろ信頼できるように思う。
★★★★☆
16thアルバム『SENSE』
4thべスト『Mr.Children 2005-2010
fanfare
09年12月2日(着うたフル)
アニメ映画『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』主題歌。2作目の配信シングルで今回もPC配信は無く着うた限定で11月16日に着うた、12月2日に着うたフルで配信された。今回はアルバムでのCD化まで丸1年かかった上に、2009年新曲発売はこの着うただけで、CDが1枚もリリースされない初の年となった。
『ONE PIECE』原作者の尾田栄一郎がMr.Childrenファンで尾田氏の要望で主題歌を担当する事になったと明かされている。映画10作目にして初めて原作者自らストーリーを手掛ける事を依頼され、Mr.Childrenが主題歌なら頑張ると条件を出した事で実現させたとされる。
『ONE PIECE』の世界観に合わせたのか、まさに荒波の中を航海していくようなとんでもなくエネルギッシュでド派手な楽曲。熱量もハンパないが派手過ぎてやや肥大化しすぎている感もあり、正直好みは別れそうではあるが、個人的にはどこかパッとしない『SENSE』の楽曲では最も印象的な1曲にはなった。バンドも小林武史もストリングスも全てがMAXのテンションで突き進んでいて小林武史とストリングスの派手さにギター始めバンドも負けていないように思う。
ベスト盤のライナーにて『SENSE』収録時にリミックスされていた(バンドがもっと聞こえるようにした)と書かれており、書き方からベスト盤に収録されたのはシングル配信バージョンと思われるが違いはほとんど分からない。そもそも着うたフルという超圧縮された音源と当時の携帯電話のスピーカーから流すのとCDアルバムをCDコンポから聞くのでは同じ音源でもだいぶ違って聞こえるだろうし、ベスト盤はTed Jensenリマスターで迫力増しているので、当時の着うたシングル音源と『SENSE』との平等な比較は事実上不可能である。
★★★★☆
16thアルバム『SENSE』
4thべスト『Mr.Children 2005-2010
365日
10年12月1日
NTT東日本、西日本のCMソング。2009年から使用され、ライブでも披露していたが「fanfare」と違って着うた配信すらされずに未発売となっていてようやくの音源化。CMソングとして広くお茶の間に流れていたため、アルバム内ではダントツに知名度が高く、発売前の時点で馴染んでいた曲だったんじゃないかと思う。
HYの「366日」が2008年だったので、どうも印象が被る。メロディーは当然全然違う曲なんだけどピアノストリングスバラードだし、コブクロやいきものがかりも全盛期でストリングスバラード連発しててストバラがヒットの法則でトレンドみたいになっていた時期だったのでどうもサビだけ着うたDLして満足されるトレンドヒット曲の1つという印象が抜けない。当初から聞いているグループが最近どいつもこいつもストバラ連発でストバラアレルギー状態になっていただけに今作も最初から食傷気味であまり熱心に聞かず毎回自動的に流し聞き状態になっていたんだけど、通常それでは印象に残らないのにサビのメロディーは強く耳に残ったのでなんだかんだ強い曲には違いない。
★★★☆☆
16thアルバム『SENSE』
4thべスト『Mr.Children 2005-2010
6thベスト『Mr.Children 2015-2021 & NOW』(Mr.Children Tour 2011 SENSE)
Forever
9月に公開、11月にDVD+CD化されていた映画『Sprit the Difference』エンディング曲。映画本編で演奏された楽曲群は既出曲と初披露カバーだったが、同時進行していた新曲が今作でエンディング部分でかかっていた(なのでこの曲を演奏しているシーンは無し)。映画自体が小林武史の影響力がリスナーの想像以上に強くほぼ場を仕切りまくり、既存曲をピアノ始まりでメンバー3人が後から入ってくるピアノまみれ、いわゆるコバチル化させたリアレンジを連発したため、ファンの間でも小林武史に危機感を持つ者も出始めるなど物議を醸す事態となった。
そんな状態になっていた時期の新曲だけに曲自体は桜井節で安定の良さはあるもののなんとも煮え切らない感じのバラード。バンドに全く覇気がなく、いくら曲に合わせている、曲が優先なのでこういうアレンジなのだと言われてもちょっと最近おかしくないかい?と問いかけたくなるような覇気の無さだった。それこそ「擬態」辺りでもエンディングでかけておいた方がアルバムへの期待が高まったんじゃないかと思うんだけど、2010年最初の新曲として制作が進んでいたのがこの曲だったというのだからドキュメント映画の締めとしてはこの曲しか無かったっぽいが…。
★★★☆☆
16thアルバム『SENSE』
コメント