ベストアルバム『ACE』『JOKER』は15万前後の売上に落ち着き、同年末には早くも次のシングル『今宵、月が見えずとも』をリリース。以降は基本的に自作メインとなり、8thアルバム『∠TRIGGER』は早速全曲自作となった。ak.hommaは共同アレンジャー、プロデューサーとして関与を続けた。シングル『EXIT』では久々にして珍しく新藤晴一と共作という形でak.hommaが作曲に名を連ねたが、この関与を最後に次のシングル『君は100%』からはアレンジャーからも外れた。以降は様々な新アレンジャーと組むようになり、概ねこの時期までにtasuku、江口亮、宗本康兵、田中ユウスケ、近藤隆史、篤志、トオミヨウ等レギュラーのアレンジャー陣が出揃い、その後は曲に合わせて誰かを起用していくというやり方となった。その最初の段階であるシングル『2012Spark』と続く9thアルバム『PANORAMA PORNO』まではプロデューサーの立場で本間昭光の名前がまだあったが、シングル『カゲボウシ』以降は本間昭光が完全に離れ、プロデュースは田村充義の単独名義となった。
15周年時は思いっきり1年前倒しで14周年15年目のタイミングで15th Annivesaryを掲げて、前ベスト4作の続きではなく改めて1stから表題曲を網羅した『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”』を発売。ベスト盤で1曲ごとの演奏クレジットを表記したのはこれが唯一で、17thまではシングル盤に演奏クレジットが無かったのと3人時代はアルバムバージョンが多かったため、正式なシングルバージョンの演奏クレジットが初めて判明した曲も多い。
なお『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”』ではDISC-3は39th「東京デスティニー」までの収録だったが、『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~』ではもう2曲先まで収録されているので今回は全書基準での区切りとした。
27th 今宵、月が見えずとも
2008年12月10日
作詞:新藤晴一、作曲:岡野昭仁、編曲:ak.homma,Porno Graffitti
1曲+Instrumental(カラオケ)で初となるC/W無しシングル。1st~3rdの初期3作のみに収録され4th以降廃止されていたInstrumental(カラオケ)が唐突に復活。初回盤はスペシャルブックレット、オリジナルピック、オリジナルワイドキャップステッカー、BLEACHオリジナル“一護×ルキア”両面ポスター型カレンダー封入というグッズ仕様で1000円を越え、通常盤でも800円を越えるというかなり割高なシングルだった。しかしタイアップの良さや曲自体も当たりだったのか久々の目立ったヒットとなり、初動8.2万枚と初動だけで前3作累計売上を突破し、ベスト2作と同等の累計14.8万枚に達した。最後の10万越えヒットとなり、「Winding Road」以降では最高売上となる。このヒットの後にベスト出してたら20万は軽く越えたんじゃ…
映画『劇場版BLEACH Fade to Black 君の名を呼ぶ』主題歌。翌年5月に発売されたPSPゲーム『BLEACH 〜ヒート・ザ・ソウル6〜』OPにも使用された。10年目突入を機に「新たな代表曲を作りたい」「自分の手で世の中にアピールできる曲を書く」「ヒットを狙って書いた」という力作。割高感のあるシングルでベスト盤『ACE』『JOKER』同等の売上を記録した事からも公言を果たすヒットになったと言ってもいいだろう。C/Wを入れた通常シングルだったり、C/Wなしなら思い切って1コインで安さアピールすればもう数万伸びたかもしれない。
久々に打ち込みを駆使したスピード感のあるアップナンバー。王道の期待通りというか適度な新鮮さがあって2008年5作のシングルの中でも最後にさらに上に突き抜けた1曲が来たという感じはあった。ak.homma曲を越えたシングル曲という点でさすがに初期の大ヒット群以上は無理にしても直近のak.hommaは完全に越えたと思うし、前年までのあからさまに自作で売上が落ちる状況から明確な逆転を果たして大きな自信になったのではないか。
『∠TRIGGER』収録時のみ表記は無いが微妙にミックスが異なる。ひっそりと久々のアルバムバージョン(ミックス)になっているっぽい。当時もミックスが違うとか何か言われていた記憶はあるが聞いてもなんか違うような違わないような…という感じで分からなかったが今回違うところはないかと聞き比べてみたところ取っ掛かりを1つ見つけた。イントロからサビ始まり直前の6~7秒付近のトトトトト…の打ち込みドラムの連打がシングルでは中央だが、『∠TRIGGER』収録バージョンでは左右に揺れて鳴るのでこの部分で聞き分けできる。それ以外にも細かい違いがあるのかもしれない。一時期Wikipediaに15周年ベスト盤にはアルバムバージョンで収録されていると誤情報が書かれていたが、前述のトトトが揺れるか否かで判断したところ、ベスト盤は全てシングルバージョン(中央)である。
★★★★☆
8thアルバム『∠TRIGGER』(表記は無いがアルバムミックス)
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”』
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~』
28th この胸を、愛を射よ
2009年9月9日
作詞作曲:新藤晴一、編曲:ak.homma,Porno Graffitti
1998年9月8日の「アポロ」発売からデビュー10周年翌日となる9月9日に9が並ぶことから999はポルノの日!と銘打ち、2009年9月9日発売、品番SECL-999、価格999円とわざわざ品番や価格まで特別に全て9統一でのリリース(これに伴いC/Wは1曲)。MV集『COMPLETE CLIPS 1999-2008』と同時発売。初登場2位だったが累計で6.5万枚と伸びず、好調だった前作から一転して最低売上を更新してしまった(とはいえここからはポルノグラフィティだけでなく90年代~00年代前半に大ヒットを経験した人たちは誰もが最低売上更新の連続である)。999を唐突にポルノの日!とか言い出したところで話題になったとは言い難く…というか2009年9月9日はThe Beatlesが初のリマスター盤発売(全オリジナルアルバム単品&BOX発売)という事で世界的に盛り上がっていたのでこれでは分が悪すぎた。
10周年でもっと王道のアップテンポな「アポロ」に通じるような曲が期待される中でのあえての勝負バラードという渾身のザ・バラード。こういうデカい曲にはストリングスがないと成り立たない、ストリングスで世界を広げて行かないとダメだという事でメンバーからak.hommaにストリングスが必要だと伝えてアレンジされた。この辺り、以前だったらk.homma判断でストリングスやブラスを加えていたところメンバー発信なところに確かな進化を感じる。このためかストバラではあるがギターとのバランスもある程度考えられていてギターがそんなに窓際ではないし、ストリングスばかりが目立つことも無い。バラードのヒットが必要との考えもあって気合が入っていたのは確かで、サビのメロディーは確かにスケールの大きさを感じさせる。
ただ当時まあまあいいなと思いつつなんだかそんなには残らなかったんだよな…。サビ以外が残りにくかったのもあるし、個人的にもやはり2009年9月9日はビートルズに全部持っていかれてしまって印象が薄くなってしまっていたのもあるとは思う。あとこういうバラードにじっくり浸るには9月ってまだ暑いんだよ…
★★★☆☆
8thアルバム『∠TRIGGER』
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”』
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~』
29th アニマロッサ
2009年11月25日
作詞作曲:岡野昭仁、編曲:ak.homma,Porno Graffitti
アニメ『BLEACH』OP。2作連続イレギュラーな発売が続いていたが、今作ではC/W2曲の全3曲編成に戻った。初回仕様は「BLEACH」のワイドキャップステッカー、オリジナルポスター型カレンダー封入となっていたが品番は1種のみ。前作よりは好調で最後の6、7万以上の売上となり、O社年間トップ100(94位)最後のランクインとなった。
「BLEACH」連続タイアップでまたタイプの違うカッコいい曲で力強いロックチューン。サビが意外と覚えにくく盛り上がり切らない感じもあって勢いで聞かせるというよりもサビの後にチュールッチュッチュッチュール♪なパートをさらに展開させたり、バンドサウンド全体を少し凝った感じにしたりと、あちこち工夫して全体の引っ掛かりを底上げしている感じもある。そこそこの印象のまま徐々に忘れつつある…というような立ち位置の曲になってきていたが久々に聞いたら聞き応えがあってak.hommaアレンジャー時代末期のこの時期の中ではこれが1番良かったかなとは思った。
★★★☆☆
8thアルバム『∠TRIGGER』
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”』
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~』
30th 瞳の奥をのぞかせて
2010年2月10日
作詞:新藤晴一、作曲:岡野昭仁、編曲:ak.homma,Porno Graffitti
ドラマ『宿命 1969-2010 -ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京-』主題歌。C/Wが1曲なので値下げされたが「今宵、月が見えずとも」初回盤と同価格(カラオケ&BLEACH特典とC/W1曲が同価値なのかよ)。ここに来てもう1段階チャートでの存在感を落とし、ついに初動5万割れの初登場4位となり「メリッサ」以降続いていた連続トップ3入り記録も途切れた。ただしこの後も2,3位は週次第で頻繁にランクインしている。
ドラマの欲望というテーマを基に女性目線で書かれた揺れ動く感情、狂い咲くようなヴァイオリンに乗せた3連リズムで異国情緒も漂い全体の引っ掛かりはかなり強くインパクトのある1曲。ただこの癖の強さがどうにもハマれず当時はかなり聞き流し気味に過ぎ去っていってしまった(ヒットした印象も無いので自然に耳にした記憶は皆無)。改めて聞くと当時よりは聞き応えがあって1つの深化としてはこういうシングルもありだと思った。
★★★☆☆
8thアルバム『∠TRIGGER』
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”』
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~』
31st 君は100%
2010年10月27日
作詞作曲:岡野昭仁、編曲:ak.homma,Porno Graffitti
タイアップは無かったが初登場2位となり、さほど売上も落とさなかった(次回作の月9主題歌も含めて3作連続全て5万台で収まっている)。間もなく訪れるak.homma離れをお試ししていたかのようにC/W「煙」でak.hommaではなくtasukuとの共同アレンジになっていたり、もう1曲の「GET IT ON」は初の洋楽カバー(T. Rex)だったりと新たな挑戦をしていた。
“すべての人にエールを”というやたら前向きポジティブないかにもJ-POP的な応援歌。いわゆる頑張れ負けるな夢は叶う的な無責任にポジティブを押し売りするというJ-POP批判に使われがちな王道的な応援歌の手法をここに来て真っ向勝負でドスレートに出してきた感じ。ここのところ少し大人っぽくなってきていたけど「BLEACH」タイアップでのヒットもあったので新たな10代のファンを掴もうとしたのだろうか。曲自体はポップチューンとしてストレートにいいとは思うんだけど、さすがにここに来ての“君”をひたすら鼓舞するストレートタイプの応援歌はちょっとハマり切れなかった。そうならないような創意工夫された自問自答を軸にして元気をくれた「ギフト」を書いたのと本当に同じ人たちなのかと思ったがそこは晴一と昭仁の作詞者としての違いか。2014年に行われた当時双方20代だった時の対談レビューでも揃って、受験シーズンなら響いたけど大学に入ったらペラく響いた、就活セミナーでやたらポジティブな講師が「君たちはできるさ!君たちはできるさ!えい!えい!ウオオオオオ!!」とか言ってくる感じ…等、歌詞が若すぎてあの時点でも既にちょっと響かないという感じだった。
1周回ってみて思うのはそこも含めて開き直っての100%だったのかなと思う。頑張れ負けるな夢は叶うとか熱血に唱えるのではなく、あえて軽く響かせているというか。いずれにしても今にしてみると物凄く”震災前”の世界線だなという感じはする。
★★★☆☆
9thアルバム『PANORAMA PORNO』
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”』
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~』
32nd EXIT
2011年3月2日
作詞:新藤晴一、作曲:新藤晴一,ak.homma、編曲:ak.homma,Porno Graffitti
フジテレビ系月9ドラマ『大切なことはすべて君が教えてくれた』主題歌。「ギフト」以来の初回盤DVD付、通常盤の2種発売。「Love,too Death,too」とベストの新曲「約束の朝」「A New Day」以来ak.hommaが作曲に関与しているが珍しい共作となっている。月9ブランドは既に形骸化しつつあり、ドラマ自体もさほど話題にならず、今作も「音のない森」以来となる5位(この時点でトップ10落ちした「ヒトリノ夜」に続く下から2番目タイ)に終わり、前2作より売れたとはいえ同じ5万台で主題歌効果でのシングルCD売上上昇は見られなかった。ただ配信では10万DL以上に与えられるレコード協会の着うたフルでのゴールド認定を今作で受けており、自身のDL記録ではak.hommaによる初期シングル群と並ぶトップ10級の筆頭ヒット扱いとなる。ak.hommaによる初期シングル群以外でゴールド認定が出たのは今作と「THE DAY」、「オー!リバル」(25万以上のプラチナ認定)の3曲のみである(この2曲の頃には着うたフルではなくPC配信での認定)。
結果的にak.homma最終参加曲となり、ak.hommaのEXITになった1曲(厳密には次のアルバムには作編曲演奏への関与は無いがプロデューサーのクレジットは残り全体の総括では関わっていた)。末期の関わり方は明らかにメンバーに自立を促してフェードアウトしようとしていてこの時点でも作曲からはほぼ身を引いた状況だったが月9主題歌という事で手を貸したのだろうか。たぶん妙に強く張り上げるサビのメロディーを強化するのにak.hommaが関わっているんじゃないかと思うんだけど(サビ以外って事は無いだろう…)、月9主題歌として気負い過ぎたんじゃないかなぁ…という気がどうしてもしてしまう。強いサビメロを作ろうと高音張り上げている感が凄く出てしまっているというか。
前述のように着うたフルでゴールド認定されているとはいえ全くヒットした気がしないというかあまりじっくり聞いた記憶も無いのは9日後に発生した東日本大震災で世界が一変したためだろう。
初期のak.hommaのイメージは根強く、ak.homma復帰を願う声は未だに絶えないが、このまま続けていても縮小再生産化していくのは目に見えていたと思うし、そうなる前に離れた判断は素晴らしかったと思う。Mr.Childrenが小林武史から離れる決断をするのがこの5年後だった事を考えるとデビュー以来長年の信頼関係があるプロデューサーを離れるってけっこう革命的な事だし。そろそろ10年以上経過して同窓会的に1回やってみるかくらいならありな段階には達したようにも思うけど、あの頃のak.hommaのキレは期待できないだろう。
★★★☆☆
9thアルバム『PANORAMA PORNO』
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”』
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~』
33rd ワンモアタイム
2011年9月21日
作詞作曲:岡野昭仁、編曲:田中ユウスケ,近藤隆史,Porno Graffitti
前作を最後にアレンジからもak.hommaが「EXIT」でEXIT完全撤退して新たなアレンジャーと組むようになった。“本間昭光”名義では制作には関与しないがプロデューサーとしては残る形がアルバムまでは続いた。田村充義は引き続きプロデューサーとして関与している。今作では一旦1種発売に戻っているが、1種発売は今作が最後となった。
日本テレビ系列放送情報番組『スッキリ!!』2011年9月度エンディング。2001年の911の時も多くのミュージシャンが無力さを痛感していたが(ポルノグラフィティの場合は3rdアルバムにその影響が出ている)、自国での東日本大震災での甚大な被害は直接的な震災による被害が無かった地域でも電力不足に伴う節電要請という形で日本全体の生活に影響。ライブで多大な電力を使うという理由からライブの自粛が相次ぐ事態となり、開催しても派手な演出が控えられるなど質素なステージが展開した(特にJニーズ社が節電ライブ自粛を率先してやっていた印象で下半期には他のJニーズも通常ライブを再開する中でSMAPだけは最後までライブを回避して年末のイベントしかやらなかったりした)。
今作は無力さを痛感したメンバーがそれでも未来へ向かうために何ができるかを真剣に模索して作り上げた渾身の1曲。ポジティブソングという括りではあるが、「君は100%」のポップさとは一線を画す。切実で祈りにも似た力強いアップナンバー。かつてない勢いの強さに加えて新アレンジャーと組んだことによるBrand Newな感じ(?)のヒリヒリした電子サウンド感もあって突き抜けた1曲になった。というか今作を聞いて”編曲:ak.homma,Porno Graffitti”って思ってた以上にマンネリ化しつつあったんだなと改めて思ってしまうほど今作は新たな1歩になったと思う。
残念ながらヒットの記録は残っていないが、当サイト年末投票ではこの時点で通常だと数人程度なところにいつもより票が入って年間7位となっており、同じように感じた読者もいたようだった。
★★★★☆
9thアルバム『PANORAMA PORNO』
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”』
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~』
34th ゆきのいろ
2011年11月23日
作詞作曲:新藤晴一、編曲:Tomi Yo,Porno Graffitti
今作より初回盤DVD付、通常盤の2種発売が基本となった(アニメタイアップの際にアニメ盤も加わる形)。初登場8位となり、「ヒトリノ夜」以外でトップ5落ちは初となり、2作連続で4万台で最低売上を更新したもののそこまでがた落ちしたわけではなく、またこの後さらに落ちるも毎回5位前後で収まっているのでこの週は若干運が悪かったといえる。
2010年代後半頃から2020年前後にはどこにでも回り込んでくる引く手あまたの業界内人気No.1アレンジャーとなったトオミヨウ。2011年での起用は早いほうで、槇原敬之や玉置浩二も同時期に起用していたがそこから一気に評判が広がっていった感がある(玉置浩二に関しては父親の須藤晃と親交が深く作詞にも起用していたのでその縁での接点もあったのかなとは思う)。ふんわりとした優しいメロディーとサウンドに暖かみを感じるウィンターバラード。派手さはないがバラードの晴一はやはり良い。当初C/Wのつもりだったが周囲で好評だったのでシングル候補に浮上したらしいが、前後のシングルが新体制での代表曲的なアップナンバーになった事もあり、ちょっと埋もれてしまっていた印象もある。というか実際リアルタイムでの印象があまりなくて、しばしそんなに覚えてない曲になっていた。後年になって改めて気づいて冬が来るたびに少しずつ印象が上がっていった。
★★★★☆
9thアルバム『PANORAMA PORNO』
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”』
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~』
35th 2012Spark
2012年2月8日
作詞:新藤晴一、作曲:岡野昭仁、編曲:tasuku,Porno Graffitti
3月末のアルバム『PANORAMA PORNO』先行シングル。前2作を上回り5万枚に達した最後のシングル。編曲には関与していないがak.hommaが田村充義と連名でプロデューサーとして名を連ねているのはアルバム『PANORAMA PORNO』が最後となったのでシングルでは今作が最後となる。C/W(3曲目)には馬場一嘉をアレンジャーに迎えて20thシングルをリメイクしてボサノヴァ風アレンジを施した「ハネウマライダー〜幕張Ver.〜 Studio Session」を収録、初回盤DVDはMVではなくこの「ハネウマライダー〜幕張Ver.〜 Studio Session」の映像が収録されていた。
映画『逆転裁判』主題歌。発売年がタイトルに使用され、曲中ではイントロや間奏部分で繰り返される“Spark”(“すぺぇく”に聞こえる)には2012は含まれていないが、1番と2番のAメロで“「2012」の街”というフレーズが登場する。また歌詞では“にせんじゅうにのまち”と歌っているが、曲タイトルは”にーぜろいちにーすぱーく”である。なお前年のアルバム『∠TRIGGER』最終曲「ロスト」のエンディング部分にデモ音源のようなアコースティックギターの弾き語りが収録されており、そのメロディーが今作のサビの原曲となっている。このため最初に聞いた時のあのメロディーだ!と分かったファンも多かったのではないか。
法廷バトルモノである『逆転裁判』のイメージでスリリングさやスピード感、緊張感のある楽曲になっているが、歌詞自体はタイアップに寄せるよりも、東日本大震災という困難があった2011年を経た2012年を力強く生きていく決意を込めたような内容となっている。「ワンモアタイム」も頼もしかったが、2012年という時代にさらに頼もしく強く響いた1曲だったと思う。当サイトの2012年の年間投票で2位となり、年末投票を開催していた2018年までで最も票を集めたように一定以上に届いていたんじゃないかと。
タイトルに年号を入れた曲の宿命としてもう思いっきり年を重ねるごとに遠ざかっていって余計に古く感じてしまう…というのがあるが、今作が歌っているメッセージ性が色褪せることなく、なんとなく節目になるタイミングの年、Over 30’sを迎えた年とか、2020年の世界変異を経た後の2021年の年明けとか、音楽業界的にはようやく全ての規制が消えてミュージシャンが観客の素顔を見ながらライブが出来るようになった最初の年明けとなった2024年とか物価高騰しまくって最早毎年のように?様々なタイミングでLITTLE SPARKしていたような気がする。
10thシングル「渦」のHelix Track、そのC/W「ワールド☆サタデーグラフィティ」の★★★以来となる、アルバムバージョン“PANORAMA ver.”表記がされた。例外的なリメイク「NaNaNa ウィンターガール」とか「今宵、月が見えずとも」が無表記で微妙にミックスが違っていたとかあるけどアルバムの1曲目となったのに合わせてかイントロ部分が新たに作り直されている。1曲目に置いたのは前述のように「ロスト」との繋がりを意識したのもあったと思われる。
★★★★★
9thアルバム『PANORAMA PORNO』(PANORAMA ver.)
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”』
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~』
36th カゲボウシ
2012年9月19日
作詞作曲:岡野昭仁、編曲:馬場一嘉,Porno Graffitti
NHKドラマ『つるかめ助産院〜南の島から〜』主題歌。前述のようにこの年は「2012Spark」の方が売上も評価も遥かに高い印象だったがNHKタイアップの宿命で紅白はこの曲となった。C/W(3曲目)の「ルーズ」は新藤晴一が主題歌候補として制作していた曲を「カゲボウシ」採用決定後に手直しして収録したものとなる。
シングルで秋冬にバラード系というのは初期からの定番ではあったが、今作はさらにオーガニックな方向性となり、完全にアコースティックサウンド。ドラマサイドからは「愛が呼ぶほうへ」のような、という具体的な提示もあったようでだいぶ”オーダーと違う”感じにならなかったのかとは思うんだけど、歌詞とメロディーがしみこむような曲というオーダーに確かに応えた染みわたる1曲。まだまだ盛って盛って大作!壮大!ストバラ万歳!のような空気だった時代にバンドというより弾き語り系のシンガーソングライターのようなサウンドは新しかった。
後に『カメレオン・レンズ』C/Wにライブバージョンが収録されている。
★★★☆☆
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”』
46thシングル『カメレオン・レンズ』C/W(Live at NHKホール・2018/01/31)
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~』
37th 瞬く星の下で
2013年3月6日
作詞作曲:新藤晴一、編曲:田中ユウスケ,立崎優介,Porno Graffitti
33rd以降シングル表題曲のアレンジャーを1曲ごとに変えていたが田中ユウスケは2度目の登場となり、以降は2度目以降の起用と新規起用がしばらく並行して続く。アニメ『マギ』OP。これに伴いアニメ仕様の期間生産限定盤が用意され、初回盤DVD付、通常盤、アニメ盤と初の3種発売となった。ソニー系列は基本的にデジパックのアニメ盤(期間生産限定盤)に主題歌サイズの音源が追加収録されることが多いが、今作の場合3種全て4曲目にアニメVer.が収録された。またアニメタイアップは他にもあるがポルノグラフィティで主題歌サイズ音源を収録したのは現時点でこれが最初で最後である。
晴一作曲のアップテンポなシングル表題曲は「NaNaNa サマーガール」「DON’T CALL ME CRAZY」「痛い立ち位置」と過去3曲どれも変化球気味の楽曲だったが、今作はかなりストレートにポップな1曲だと思う。当時はアニメタイアップ依頼で書いた中の1曲、スタッフの説明では設定が独特なのか内容が分からなかったので原作を数巻読んで書いた、普段からあまり合わせ過ぎないように歌詞を書いているが今回は合わな過ぎたのでトラックダウンまで行ってから書き直した、電子書籍で原作を購入してiPhoneで熟読して書いた…と語っており普段よりも難航した様子が伺える。『全書』の昭仁の一言コメントではタイアップ先から歌詞の方向性の修正リクエストが入って晴一が楽屋で頭を抱えていたと証言しているので、自発的に合わないので書き直したように言っていた当時の晴一のインタビューとはニュアンスが異なっている。当の晴一は“ヒジョーにまとまった曲ですよね。良くも悪くも。”と割とドライなコメントだけ残しているのと、アップテンポなシングルではけっこう癖の強さを出してきていた作風からして今作はあまりに王道っぽいだけに普段よりタイアップ職人に徹したところはあるのかもしれない。
アニメVer.は冒頭からの1コーラス+もう1回サビ(2つ目のサビは間奏明けのサビの歌詞)という構成だが、サビ2つとも最後の歌詞が変更されていて”世界がわずかに輝く”→”世界が微笑む”、”不安を数えた指に温もりが灯る”→”冷たい胸に灯がともる”に変更されている。わずかながら歌詞の変更があった事が収録された理由だろうか。
★★★☆☆
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”』
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~』
38th 青春花道
2013年9月11日
作詞作曲:新藤晴一、編曲:tasuku,Porno Graffitti
14周年(15年目突入)を大々的に15th Anniversaryと銘打ってのシングル2作、ベストアルバムの3ヶ月連続リリースの1作目。今作では“デビュー15周年イヤー突入”と誤用していた。何故か昭和歌謡路線に走っており、異色の雰囲気となっている。『全書』においても今作と次回作には当時の雑誌インタビュー記事の掲載が無く、アートワーク案のメモ書きしか掲載されていない。C/W3曲目の「おいでよサンタモニカ(instrumental)」はカラオケではなく最初から歌の無いインスト曲、4曲目には「青春花道(オリジナル・カラオケ)」が収録されており、初期3作と「今宵、月が見えずとも」以来表題曲カラオケが復活した。Backing Trackやinstrumental表記ではなく”オリジナル・カラオケ”と書かれたのは初。
『全書』では昭仁が“80年代のチャレンジ期”と語り、晴一は“狙った曲”とコメント。”ヒジョーにまとまった”タイアップ曲として出した前作に対して今作の方が「痛い立ち位置」に続いてさらに80年代濃厚な歌謡っぽいギラギラ感が前面に出た1曲。2番冒頭部分で突如ドラム音が80年代特有のポンポン音に切り替わるという遊びも。このポンポン音が青春時代の音色になっている世代のリスナーじゃないとなんでこれが「青春花道」なのか実感できないんじゃないかと思う。個人的にも流行りの音楽を聴き始めた事にはとっくにとっくに駆逐されたような音色だったので懐かしさよりもダッセェ…としか思えないんだよな…。15周年のベスト先行としては攻めすぎて異色だったが、ギミッギミッギミッ♪などインパクトのあるフレーズもあり、印象には残る。
★★★☆☆
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”』
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~』
39th 東京デスティニー
2013年10月16日
作詞作曲:岡野昭仁、編曲:宗本康兵,Porno Graffitti
前作に続く15th Anniversary第2弾でベスト盤『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”』先行シングル。前作では15周年イヤー突入と誤用していたが今作では“メジャーデビュー15年目に突入”と正しい表現を使用していた。前作を踏襲しており、C/W3曲目の「Mission of the Far East(instrumental)」は最初から歌の無いインスト曲、4曲目には「東京デスティニー(オリジナル・カラオケ)」が収録されている。
前作とは作者もアレンジャーもごっそり変えているが80’s歌謡路線なのは共通しているのと、15th Anniversary、ベスト先行もあって前作と兄弟作のような印象が強い。今作の方がミッドナイト感があり、80年代の夜の東京といったイメージ。前作のギミギミのようなインパクトポイントが無いので印象薄めだが、今作の方がオシャレで聞き応えはあると思う。
ただ変わったシングルとしてはありだけど、改めてのオールタイムベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”』に向けての先行シングルがこれで本当に良かったのかは…。そもそも1年前倒してるんだけど、40枚目、本当の15周年を迎えるタイミングとなる次回作まで出してからの方がキリは良かったのではないか。
★★★☆☆
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”』
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~』
40th 俺たちのセレブレーション
2014年9月3日
作詞:岡野昭仁,新藤晴一、作曲:岡野昭仁、編曲:江口亮,Porno Graffitti
“2014年9月にメジャーデビュー15周年を迎える”と前作に続いて正しい表現を使用。というか本当の15周年を迎えるタイミングでのリリース。ただ前2作でMVのバックに”15th”をギラギラ輝かせてしまい、記念のベスト盤も前年に出してしまったのでなんか2年連続15周年言ってない?という謎な感じになってしまった。
シリーズ3部作「見んさい」「聞きんさい」「歌いんさい」の1作目に位置づけられているが、路線的には前2作の昭和歌謡、80’sな路線も引きずっていて昭和っぽいブラスサウンド全開な歌謡ポップナンバー。世間が思うポルノグラフィティらしさからは前2作に続いてハズしてきた感はある。
今作のMVではメンバー15変化をしたり、楽曲的には月面着陸を取り上げて「アポロ」も登場、1stシングルを思わせる歌詞になっていたり、その歌詞を2人で分け合って書いていたりと周年記念曲っぽさは意識されている。1番を昭仁、2番を晴一が書いたらしいが、1番の歌詞があくまで月面着陸を例え話のように扱っていてマジで月に行く話としては明らかに描いていないのに対して、2番の歌詞ではいきなりマジで月に不時着しているというぶっ飛んだ展開になっており緑色の肌した生き物(月星人?)に囲まれてここでは異邦人(超訳)という遊びすぎな歌詞が展開する。晴一ェ…。
★★★☆☆
10thアルバム『RHINOCEROS』
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~』
41st ワン・ウーマン・ショー〜甘い幻〜
2014年11月5日
作詞作曲:新藤晴一、編曲:宗本康兵,Porno Graffitti
前作で3部作を掲げていたためか、前作から2ヶ月で立て続けにリリースされた。
シリーズ3部作「見んさい」「聞きんさい」「歌いんさい」の2作目に位置づけられている。「青春花道」からは4作目となる昭和歌謡、80’sな路線としては最後に位置づけられるだろうか。『全書』コメントでは晴一が自分なりに狙った曲と語っており、何をどう狙ったかには言及していない。しかし少なくとも確かに聞かせる泣きのサビメロからしても変化球続きの中では久々にメロディーの良さで勝負してきた感じはある。コーラスの昭和感も含めてなんというか古き良き、そして遠ざかった昭和歌謡の”濡れ”感が絶妙といったイメージ。当時も久々に単純にサビが良い曲がやっと来たという感覚はあった。
歌詞で”ワン・ウーマン・ショー”が登場するのは1番サビ終わりのみ(サビ始まりなので2回目のサビ)、そしてサブタイトルの”甘い幻”は最後の締めのフレーズとなっていて歌わずに台詞になっていてそれぞれ離れたところで1回ずつしか出てこないのは珍しいかも。
★★★☆☆
10thアルバム『RHINOCEROS』
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~』
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