23rd　My Baby Grand～ぬくもりが欲しくて～

97年12月3日
前作がイレギュラーなヒットだったため前々作同様の初登場3位と元に戻ったが、売上は前々作を上回り30万枚を突破した。しかしこれが最後の30万以上のヒット作となった。

My Baby Grand～ぬくもりが欲しくて～

作曲：織田哲郎、編曲：池田大介
タイトルは坂井泉水がレコーディング時の音程チェック用にスタジオに置いていたお気に入りのトイピアノに名づけていた「Baby Grand」からとっているとされる。安定感のある織田メロディーにがっしりとしたロックバンド風アレンジ。余計なものは何もないが、個人的には全盛期よりもこの頃の方がリアルタイムでチャートインしているZARDを見ていたので90年代前半よりも馴染み深く、この時期のZARDサウンドが最も好きだ。「きっと忘れない」「あなたを感じていたい」と倍以上売れた冬のヒット曲もあるが、冬になると1番聞きたいのはこの曲。

近年の特集番組や長戸大幸談として『永遠君と僕との間に』、寺尾広が『ZARD/坂井泉水～forever you～』等で証言しているのは(何故か2人が別の本で全く同じことを証言している)、90年代末期に実験的な作風に向かった理由として流行りの音楽が16ビートのダンス系に変わった事に触れ、ZARDとしても16ビートやラップに挑んだが正直得意ではなかった、もうZARDの音楽は世間に評価されないのではないかと人知れず悩むようになり、そんな悩んでいる心情が今作の”記憶喪失にいっそなればいいと立ち直るまでずい分長い時間がかかった”というフレーズに表れているとしている。

ただ時系列的に今作はまだ97年でありZARDの音楽はロックバンド的な方向性によりシフトしつつもさほど実験的な方向には走っておらず、時代にも置いていかれているとか売れなくなってきたというのが深刻な状態ではなかった。ヒットシーンの様子が明らかに激変してZARDに留まらずビーイング全体が一気に過去になり、かつての同僚たちが消えていき、ZARDの人気低迷が深刻化したのは明らかに99年ベストアルバムを最後の花火のように打ち上げた頃であり、落ち込むには2年近く早い。

今作リリース時点でそこまで思い悩むほど追い込まれるようなショッキングな事態が目に見えてセールス等に表れていたかというとせいぜい『風が通り抜ける街へ』がいきなり30万割れで当時としては大コケしたくらい。前作『永遠』では十分に持ち直して存在感をきっちり示していたし、こっそり歌詞に忍ばせるほどにもう思い悩んでいたのか？とはどうしても思ってしまう。少なくとも当時は恋愛の1番いい時期を描いたクリスマスの物語だと今作について語っていただけに、本人がいなくなってから急に実は悩んでいてそれがこのフレーズなんですと言われてもなぁ…。
★★★★☆
8thアルバム『永遠』
2ndベスト『ZARD BEST～Request Memorial～』
ライブアルバム『ZARD Cruising&Live～限定盤ライブCD～』（ライブ）
2ndセレクション『ZARD BLENDⅡ～LEAF&SNOW～』
3rdベスト『Golden Best 15th Anniversary』
3rdセレクション『Soffio di bento Best of IZUMI SAKAI Selection』付属DVD
1stBOX『ZARD PREMIUM BOX 1991-2008 Complete Single Collection』
2ndBOX『ZARD SINGLE COLLECTION～20th ANNIVERSARY～』
5thベスト『ZARD Forever Best～25th Anniversary～』

C/W　Love is Gone

作曲：綿貫正顕、編曲：池田大介
ドラマ『失楽園特別編』主題歌。ヒットを受けての総集編+少し新作部分というスペシャル版では何故か新曲を起用してこの曲だったらしい。CDでは男性視点だが主題歌として使用された1回限りの音源では女性視点で「僕」が「私」に、「君」が「あなた」に変わっていたとのこと。かなり重めのロックバラード。90年代後期のZARDロックサウンドの中でもかなり重厚にギターが響いていてかっこいい。

C/Wのみの収録だったものの知ってる人はこの曲を好きだという人も多かったようで隠れ人気曲の1つ。『ZARD BEST～Request Memorial～』では投票47位で収録されなかったが、『Request Best～beautiful memory～』では21位と票を集めて収録が決定。しかし収録の際は葉山たけしによるZARD王道のサウンドに思いっきりリアレンジされてしまい、構成まで変更されるなどほとんど別の曲になってしまった。リアレンジバージョンもいいのだが、ZARD王道の域を出ていない。原曲のイメージを少々逸脱するほどの重厚ロックアレンジこそこの曲の最大の特色。
★★★★☆
4thベスト『Request Best～beautiful memory～』（リアレンジ）
1stBOX『ZARD PREMIUM BOX 1991-2008 Complete Single Collection』
2ndBOX『ZARD SINGLE COLLECTION～20th ANNIVERSARY～』