2024年突如として発表された“12月第1土曜日の「ロマンスの神様の日」”認定発表。なんか特設サイトには色々書かれており「デートしよう」とかなんとか言ってやがおられるが、恋愛というロマンスに興味がある方に楽しんで頂くとして、当サイト的にはやはりこういうアホなロマンス企画がふさわしいだろう。恐らくこのタイミングで全バージョンのロマンスの神様に感謝したのは当サイトだけと思われ、史上初の全バージョン回顧ではないかと思う。
広瀬香美のシングル回顧は元々2011年の対談『広瀬香美『SINGLE COLLECTION』全曲レビューX(クロス)』の完成度が歴代対談シリーズの中でも最高峰の完成度で満足していたのもあって単独シングル回顧で行うには他のアプローチが必要だと思い、バージョン違いを網羅したシングル回顧を30周年(2022年)に向けて構想していたが、その中の1曲にあるサビの一節”クリスマスまでには間に合うように”に合わせてクリスマス前にその曲に到達するタイミングに毎年合わずに見送りになっていた。今年はタイミングが合いそうだったのでシングル回顧の準備を進めていたら、なんか”12月第1土曜日の「ロマンスの神様の日」”認定発表とか言い出したので、その日に合わせてとりあえず1st,2ndの前に先出しという形で3rdを公開。週明けからは1st→2nd→4thと進んでいき、”クリスマスまでには間に合うように”某曲に到達しようと思う。
3rdSg ロマンスの神様
1993年12月1日
編曲:小西貴雄
「アルペン」CMソング。初登場6位となり、1週目から大当たりとなったが2週目には4位に浮上、3週目に1位になると合算週を挟んで4週連続1位→2位→1位と合計5週1位となり、2月最終週まできっちり12週連続トップ10入り、100位以内21週ランクインで170万枚を超える最大のヒット作となった。アルペンとのタッグによる広瀬香美の方向性を決定づけた代表作。少しでも音楽を理論的に理解できるリスナーからは構成の無理やりさを指摘されることもあるが、CMソングになるに当たっての各方面からの様々な要求に応えて手を入れまくっているうちにこうなったらしい。冬の定番のように扱われているが、冬を示唆するフレーズは何一つ出てこない。これは別に広瀬香美が冬を無視したわけではなく、そもそもこれ以前のアルペンタイアップ自体が概ねこんな感じであった。GO-BANG’Sの「あいにきてI・NEED・YOU!」とかLINDBERGの「Dream On 抱きしめて」とかアーリー90’sな感じの曲がこれまでも採用されていて、この曲もその流れに沿ったものになっていると思う。しかし歴代の曲と違って何故かイントロの瞬間からゲレンデが見えるという謎の魔力を併せ持っている。奇跡の1曲。
今夜の飲み会で彼氏候補を品定めして合格ラインと勝手に判定した相手といい感じになり、大サビでは星占いの内容を思い出して確信し、最後のサビでは土曜日遊園地に行ったと思ったら次の瞬間には1年後のハネムーンまで駆け抜けていってしまい、ロマンスの神様に一方的に感謝して終わるというあまりにもイケイケ過ぎる歌詞の内容はネット普及以降では炎上というかバカにされるかネタにされること必至ではあるが、逆にここまで開き直った歌詞を書ける女性シンガーは今の世の中ではもう出てこないんじゃないかとも思う。なお合格ラインの相手が何故夜の飲み会でサングラスをしたままなのかは地味に謎である。
2008年に『愛があれば大丈夫-08’Remastering』のC/Wで08’Remastering、2016年には歴代のバージョンを集めた配信限定シングル『ロマンスの神様』に16’Remasteringなどもあるが、そもそもベスト盤必須曲である今作は毎回リマスターされ続けている上、CDではいちいち書かれていないが配信だとほとんどのバージョンに〇〇’Remasteringとあるので古いバージョンは都度用済みになってしまいほとんど意味が無い。以下並べてみたところで初出シングルバージョンだけ音小さいな…というくらいしか分からない。
★★★★☆
1stベスト『THE BEST Love Winters』
3rdベスト『Alpen Best』
4thベスト『タイアップコレクション~広瀬香美のテレビで聴いたあの曲達~』
5thベスト『SINGLE COLLECTION』
6thベスト『Winter High!!~Best Of Kohmi’s Party~』
7thベスト『THE BEST “1992-2018″+”雪” Set List Non-Stop Mix』
8thベスト『WINTER TOUR 2020 “SING”+Live at Blue Note Tokyo』
9thベスト『Kohmi30th』
ロマンスの神様[a cappela]
2001年11月7日
from 2nd(バラード)ベスト『THE BEST Love Winters-ballads-』
編曲:広瀬香美
1人多重コーラスのアカペラバラードのリメイクバージョン。バラードベストを出す際にバラードではない曲をバラードにリメイクして収録するというバラードベストあるあるの法則(?)に従って、堂々の1曲目を飾った。スローテンポなので2番がカットされている。ゆうきっとあいがせっかいをすっくう♪とほのぼのコーラスしながら始まるイントロ部分からゆったりと展開してバラードっぽくなってはいるが、バラードというよりもアカペラアレンジを堪能すべき内容。この曲にバラードはやはりちょっと合わないと思うので普通にスローにするのではなくアカペラ化したのはナイスアイデア。
2016年の配信シングル『ロマンスの神様』にも収録。
★★★☆☆
ロマンスの神様(弾き歌いVersion)
2007年12月5日
from 3rdベスト『Alpen Best』
編曲:広瀬香美
「アルペン」CMソング。01-02シーズンを最後にライブで声を維持するための肉体改造に伴いしばし休養になると同時にアルペンCMタイアップからも離れていたが、コンピ盤『R35』が”もう1度妻を口説こう”のキャッチコピーで大ヒットしたのに思いっきり乗っかって07-08シーズンのCMは“あの頃、ゲレンデにいた人達へ!”を掲げて“もう一度ゲレンデで恋しよう”と登場人物たちがこの曲とスキーというあの頃を思い出す内容になっており、広瀬香美とアルペンタイアップの始まりの1曲である今作が再び起用された。その際に新たに制作されたのがこのバージョン。『Alpen Best』では1曲目にオリジナルバージョンが収録され最後にこのバージョンが収録された。
弾き語りではなく、弾き歌い。はじけるようなアッパーなピアノ演奏+多重録音コーラスと手拍子や足踏み等、鳴っている全ての音源を自ら演奏した勢い溢れる弾き”歌い”バージョンとなっている。確かにこの勢いは弾き”語り”ではなく、弾き”歌い”と形容すべきだ。休止前後の頃からバラード続きだったのでてっきりしっとりしたセルフカバーだと思っていたので久々に勢いのある広瀬香美が復活して当時は感動した。オリジナル以上にワクワクする躍動感に満ちていてリメイクバージョンの中で今作が最高だと思う。その次のオリジナルアルバム『Making My Life Better』にも収録されたが冒頭5秒に新たなコーラスが加わっている。2016年の配信シングル『ロマンスの神様』にはオリジナルで収録。
★★★★☆
11thアルバム『Making My Life Better』(イントロ前に5秒追加)
ロマンスの神様 2016
2016年10月12日
From 配信シングル『ロマンスの神様』、13th(25周年記念)アルバム『25th プレイリスト』
編曲:小西貴雄
「アルペン」CMソング。『25thプレイリスト』に先駆けて配信限定でリリースした『ロマンスの神様』にオリジナル、a cappela、弾き歌いversion、ライブ音源の歴代バージョンが網羅されそこに収録された新録音バージョン。この年はCMもテコ入れされ、長年起用されていた加藤晴彦からブレイク前新人の永野芽郁に交代。明らかにJR SKISKIの影響を受けた青春路線へとシフト。なんか2007年の『R35』便乗といいスキーブーム後の苦境の中でパクりばっかりじゃね?“青い冬、はじまる”をキャッチコピーに新曲「青い冬ハジマレ」も制作され、「ロマンスの神様 2016」を使ったバージョンと「青い冬ハジマレ」を使ったバージョンと永野芽郁主演で複数パターンのCMが作られた。この「ロマンスの神様 2016」バージョンのCMでは永野芽郁がこの曲を口ずさんで「その曲あなた生まれる前のじゃない!」と突っ込まれる場面があり、もうそんなに時が経ったのか…と物凄く遠い目になる。というか「ロマンスの神様」が生まれる前どころか永野芽郁さん1999年9月生まれなので「ストロボ」(1998)まで全トップ10ヒットシングルが生まれる前ですわ…。広瀬香美が売れてた頃に生きてないんですわ…。生まれた後なの「恋のベスト10」からなんですわ…。
オリジナルと同じ小西貴雄がリアレンジを担当し、当時とは違うアレンジだがイメージを損なわずにリアレンジした2016年の新たな「ロマンスの神様」として仕上げてきたような印象。目玉としてアピールしていたのはキーを半音上げて自身の限界にチャレンジしたという点で、日頃の喉を維持する鍛錬の成果を存分に見せつける形となった。
さすがにYouTubeでの再ブレイクや50代になった頃にはここまで過剰なキーへのこだわりを見せる場面は減ったが、この2016年頃は高音キーの維持に過剰なまでにこだわっていて、今作のように半音上げでも歌えることをアピールしたりと、高音出るのよアピールが凄かった。あまりにもアピールして聞いている方がムチャだろと思うような更なるキー上げチャレンジをしてライブ披露までしていたものだから、さすがにちょっとアピールがウザいという人も出てきていたかもしれないが(実際ヤフーコメントとかで見かけた記憶)、こういった事を自ら惜しげもなく披露してしまえる自信というのもまた広瀬香美らしいし、こういう自信家じゃないと一連のヒット曲のような歌詞もかけなかったと思う。
★★★★☆
7thベスト『THE BEST “1992-2018″+”雪” Set List Non-Stop Mix』
ロマンスの神様(Live at NHK HALL in 2001)
2016年10月12日
DVD化はされていたようだが、配信限定でリリースした『ロマンスの神様』で音源化された2001年のライブバージョン。デビュー以来ライブを行っていなかったのでこの時が初のツアーであった。何故この後すぐにしばし休止をして肉体改造に挑んで歌い方を変えたのか、その答えの一端がこの音源で伺える。
とりあえずイントロからしてめっちゃ音が低い。あれ下げた?っていうレベルじゃないくらい誰が聞いても分かるレベルで低くなっていてガッツリとキーが下がっている。ちょっとこれは別の曲なんじゃないかというくらいに低すぎて違和感が…。
初のツアーで高音を維持することができなかったので肉体改造に挑んだと休止明けに語っていたが、ライブ映像を見ていなくてこの話からてっきり原曲キーで歌ってヘロヘロだったのかと思っていたのでこの音源には驚いた。元々TVで懲りてCD制作のみで生きていくと決めていてライブをやるのをずっと拒否していたのをようやく承諾したのがこの時だったようだが、原曲キーではライブで歌えないとして思いっきりキー下げしまくってステージに立つ事となり、プロとしてこの時のパフォーマンスでは到底納得がいかなかったんじゃないかと思う。今作でわざわざそんなキー下げライブ音源を収録したのは前述のここから努力して2016年になって半音上げを成功させたという自信から来るものだったんじゃないだろうか。
★★★☆☆
アルバム未収録
ロマンスの神様(オリジナルカラオケ)
一応これも。2016年配信限定『ロマンスの神様』には御丁寧にオリジナルカラオケバージョンも最後に収録されている。元々初出の8㎝CDにはカラオケが収録されていた(初期のシングルはC/Wまで、途中から表題曲のみ)のだが、配信でシングルを出した際にカラオケは全部カットされてしまったので配信で聞けるカラオケはこれだけである。
ロマンスの神様(Live at Blue Note Tokyo 2019.10.06)
2019年11月27日
From 8thベスト+ライブアルバム『WINTER TOUR 2020 “SING”+Live at Blue Note Tokyo』
編曲:鳥山雄司
ベスト盤とセットで収録された『AUTUMN TOUR 2019 “Vocal Unlimited vol.8” Live at Blue Note Tokyo 2019.10.06』のライブ音源。10月6日に行われたライブを11月27日に速攻でライブアルバムにするという…。
ブルーノートでのライブだがバンド編成ではなく”Arrange & Guitar:鳥山雄司”のクレジットしかないアコースティックギター主体+本人ピアノ演奏+簡易同期打ち込みオケ編成によるアコースティックアレンジでの演奏だった。アコースティック編成なので盛り上がりにくいところはあったが、本編最後となったこの曲ではサビ頭のコーラスパートを観客と大合唱、収録された音源の中でも最大の盛り上がりとなっている。
★★★☆☆
ロマンスの神様(with 百田夏菜子)
2021年1月27日
From 14thアルバム『歌ってみた 歌われてみた』
編曲:広瀬香美
ももいろクローバーZの百田夏菜子をメインボーカルに迎えたバージョン。広瀬香美はピアノ演奏とコーラスに徹しており、最後のサビ以外は百田夏菜子による単独メインボーカル。一生懸命な歌唱に加えて意外と大サビ以外の(ずっと~♪の部分はさすがにね…)サビの高音も線の細い裏声にならずパワフルに歌い上げていてTVによく出ていた頃のももいろクローバーZの生歌唱に比べても抜群に上手くなっている印象。また広瀬香美がサビ頭のBoy Meets Girl、Fall In Loveの普段はコーラスや観客パートにしている部分を単独で歌っているのはほとんど初めてに近く新鮮(最後のサビだけは休まず全部歌っている)。
★★★★☆
ロマンスの神様/広瀬香美 x Night Tempo
2023年12月13日(配信限定)
Produced and mixed by Night Tempo
Night Tempoによるリメイクセルフカバーバージョン。イマドキっぽい電子変換アレンジといった感じ。何故か大サビがカットされており、2コーラスのサビからそのままラストサビまで繋いで駆け抜けてしまうので3分半で終わってしまう駆け抜ける構成。
シティポップブームの立役者であるためか、イラストのイメージが1993年原曲当時よりももう一昔前の80年代、シティポップブーム便乗っぽいのはミスマッチ感があってちょっと気になるが…。
広瀬香美本人は海外在住でスキーをしないと公言しており実はゲレンデにほとんど縁のない人である。海の男のイメージの強かった加山雄三は実はスキーもやる人だったので新潟県湯沢市で「加山キャプテンコースト」(1991~2011、現在そのまま廃墟化)を立ち上げた事があったが、スキーをやらない広瀬香美はさすがにスキー場経営にまで乗り出す気はなかったと思われる。
2022年経営難に陥っていた長野県の「北信州木島平スキー場」が民間譲渡されることになり、2023年にSBCメディカルグループ(CM打ちまくってる「湘南美容クリニック」)がお買い上げ。SBCは同時に「ロマンスの神様」のネーミングライセンスの使用権に関する契約を締結しており、なんと2024シーズンより「スノーリゾート ロマンスの神様」に改名、まさかの「ロマンスの神様」スキー場化爆誕。このバージョンはその「スノーリゾート ロマンスの神様」テーマ・ソングとして制作されたもの。シーズン中にはゲレンデ下部特設ステージに実際に広瀬香美が訪れて極寒の中でライブを行ったりもした。
美容色全開なかつてないスキー場運営が今後どのように転がるのかはかなり不透明(少なくとも地味だった前身に比べてかなり派手にはなっている)だが、広瀬香美は「ロマンスの神様」の使用権を与えただけで経営しているわけではない。まあ潰れたら潰れたでイメージダウンはあるかもしれないが…。
★★★☆☆
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