- Mr.Children 30周年シングル回顧1+~1992-1995~
Mr.Children 30周年シングル回顧1+~1992-1995~
桜井和寿(Vocal&Guitar)、田原健一(Guitar)、中川敬輔(Bass)、鈴木英哉(Drums)の4人で89年に結成。田原、中川は中学からの同級生で高校入学後に桜井と出会う。当初は田原が野球部に所属していたが桜井が田原を誘い、この3人が前身バンドの原型となった。Beatnik→THE WALLSを経て活動していたがドラマーが脱退して次のドラマーを探していたところ当時腕利きのドラマーと評判であちこちのバンドを掛け持ちしていて界隈では有名だったという鈴木英哉に白羽の矢が立つ。鈴木は田原と中川とは同じ中学の同級生だった(よって桜井だけ中学は異なる)。コンクールの決勝が迫る中で急に前ドラマーが抜けたので誰でも良かった、鈴木も鈴木で土下座して頼まれたから仕方なく引き受けたと振り返っているが、これが結局不動の4人となる。Mr.Childrenと改名してトイズファクトリーから92年にメジャーデビューを果たす。
サポートミュージシャンとしての活動を経て1988年に桑田佳祐『Keisuke Kuwata』のアレンジャーとして参加、一躍その才能を発揮して知名度を上げ、その後もサザンオールスターズの共同アレンジャーとして関与していた小林武史が初の新人バンドプロデュースを手掛ける事になり、以後長い付き合いとなった。主張の強い小林武史のプロデュースワークは的確であったが厳しくもあったようで初期の楽曲は小林武史が作詞や作曲に介入している楽曲も散見される。また桜井と小林の2人で煮詰めて3人のメンバーは後から参加する(それまで待機)という制作体制が一時期は当たり前になってしまう事もあったという。
4枚目のシングル「CROSS ROAD」がロングヒットの末にミリオン、続く「innocent world」以降はミリオン常連のトップバンドへと上り詰めた。アルバムでは300万枚を突破して当時の歴代最高売上を突破、95~97年頃のトップセールス期は「ミスチル現象」とも呼ばれている。
1stベスト『Mr.Children 1992-1995』全曲に加えて全C/Wとアルバム曲の独自追加(1stアルバムのみ全曲回顧)で構成。
1stアルバム『EVERYTHING』30周年全曲回顧
1st 君がいた夏
92年8月21日
記念すべき1stシングルはデビューアルバム『EVERYTHING』から3ヵ月後のシングルカット+C/Wに新曲「グッバイ・マイ・グルーミーデイズ」。歌詞に合わせて夏の終わりにリリースしたのが良かったのか、アルバムでは果たせなかった100位以内ランクインを果たしての初チャートイン作(69位)となった。
裏ジャケットに歌詞が全部記載されているので、開かなくても歌詞が見れる仕様。
君がいた夏
夏の終わりを歌ったポップながら少し寂しさと懐かしさも感じられるような実に聞き心地の良い爽やかな1曲。イントロとアウトロのスライドギターがいい味を出しているが、ベスト盤の解説ではわざわざ“桜井の印象的なスライド・ギター”などと黙ってれば分からないのにいちいち「桜井の」って…余計な事が書いてあるのが気になる(ベストの解説と同じ小貫信昭氏が書いた2020年『道標の歌』にも”印象的なスライド・ギター”というワードが登場しているがこの際は誰が弾いているかは書かれていない)。当時のMVにはこの部分の演奏は映っていないものの、桜井は一貫してアコースティックギターを弾きながら歌唱しているし、当時からライブでは田原さんがスライドギターを弾いていたはずだが…。ファンのレビューでもナチュラルに”田原さんのスライドギターが”と触れているものが散見されるだけに、公式ベストで桜井がレコーディングで弾いていたのをバラす(もしくは単なる誤表記?)のはどうなのか…。
子供の頃から慣れ親しんでいた山形の海の風景がモチーフになっているようなので行ったことないのにのどかな海辺の風景が感じられるのはその辺の描写のうまさもあるのか。
98~99年頃に一気にそれまでのシングルを集めた際に最初に聞いたので1stアルバム入手よりも早くシングル盤として聞いた記憶がある。その時点で初期の名曲と言えば「抱きしめたい」というのが定説になっていた一方で今作と「Replay」は既に地味な扱いでシングルを再生した時が完全に初聞きだった。いやぁめっちゃ初々しいなぁとは恐らく後追いで誰もが感じるとは思うんだけど、98~99年のミスチルをリアルタイムで聞きながら初期にたどり着いたあのタイミングで聞いたのが1番初々しさを感じたんじゃないかと思う。
★★★☆☆
1stアルバム『EVERYTHING』
1stベスト『Mr.Children 1992-1995』
C/W グッバイ・マイ・グルーミーデイズ
初々しさと屈託ない明るさが全開な初期らしい1曲だが、サビが無い、全部がサビのような曲構成はちょっと珍しい。最初に聞いてからしばらくしすると「君がいた夏」は夏の終わりにしか聞かなくなってしまい、こっちの方が良く聞くようになった。抑えきれずにダイヤル廻して留守電に名前を告げるくだりには時代の変化を感じる。92年だとそろそろダイヤル廻す電話が無くなっていく時期ではあったと思うんだけど…記憶の最初の頃はダイヤルだった記憶があり、小学生の間に変わったような…。
今作もカタカナタイトルが正式表記だが歌詞中ではGood-bye my gloomy daysとちゃんと英字表記でタイトルが登場する。
★★★☆☆
2ndアルバム『Kind of Love』
2nd 抱きしめたい
92年12月1日
2ndアルバム『Kind of Love』と同時発売。「抱きしめたい」はそのままアルバムに収録され、C/W「君の事以外は何も考えられない」は未収録となった。同時発売もあって当時はヒットせず100位圏外。大ブレイク後の94年に初めてトップ100に浮上し、最盛期の95年1~4月には連続でランクインして最高56位を記録したがこの時も100位ギリギリのランクインを連発(80~90位台)。その後96、97年まで浮上した。当時は101位以下は加算していなかったので記録上は合計16週ランクインで6万枚程度しか売れた事にはなっていない。もし101位以下でも加算していたらけっこう驚くような累計売上になっていた可能性が高く、ベスト盤のライナーでは70万枚の売上と記載され10倍界王拳を越える怒涛の水増し表記がされていた。
抱きしめたい
売れる前の3シングルの中では圧倒的な人気を誇る初期の名バラード。当時トイズファクトリーの先輩でもあったJUN SKY WALKER(S)の宮田和弥の結婚式で披露するために制作したとされるが実際には披露されなかったらしい。初期の曲はやはりまだ初期という感じでブレイク以降ほどの強さは感じない曲も多いが今作は大ヒットオーラが確かに感じられ根強い人気曲になったのも納得。最初に聞いたのはオリジナルではなく『1/42』でのライブ音源でボーナストラック的に初期の名曲と呼ばれていたこの曲が入っていたので凄く感動した。シングル盤を入手したのはその直後だった。
バラードといっても後年に聞くほどけっこうロックバラードだなと感じられるくらいにエレキギターがちゃんと前面で鳴っていてストリングスもいないのでいわゆるコバチルバラードとは一線を画す。こういうバラードのアレンジも選択肢の1つとして普通に存在する00年代以降であってほしかった。
★★★★☆
2ndアルバム『Kind of Love』
1stベスト『Mr.Children 1992-1995』
8thアルバム(ライブ盤)『1/42』(ライブバージョン)
5thベスト『Mr.Children 2011-2015』(regress or progress ’96-’97 tour final IN TOKYO DOME)
C/W 君の事以外は何も考えられない
1stや2ndアルバム期では王道的な爽やかポップス。オリジナルアルバムに入っていればけっこう人気出ていたんじゃないかと思うくらい耳当たりのいい曲だが、ミスチルのC/Wは実験曲やワケの分からん曲、ちょっと違う路線の曲が多いという印象が強かったので後追いで聞いた時はけっこう驚いた。初期のC/Wは普通にアルバム収録されたり、『Atomic Heart』からのシングルカット連発なのでC/Wだけになっていた曲はあまり多くなく、こんなポップなのがまだ隠れていたなんて思いもよらない。『B-SIDE』で聞くと1曲目がこの曲でC/Wもけっこういいじゃんと思ったのも束の間実験作の雨嵐になったりするんだけど…。
若さ溢れる感じが微笑ましいラブソングだが、『B-SIDE』の対談ライナーでは、この曲が生まれた誕生秘話が生々しく笑い話として語られている。まさにそのまま書かれた曲である事が明かされ、田原さんがいきなり呆れ気味に桜井の曲作りの執念に感心なさるという場面も…。
★★★☆☆
14thアルバム(C/W集)『B-SIDE』
From 2ndアルバム『Kind of Love』
92年12月1日
シングル『抱きしめたい』と同時発売。「抱きしめたい」はそのまま収録されているが、「君の事以外は何も考えられない」は未収録。1stC/W「グッバイ・マイ・グルーミーデイズ」も収録され、「All by myself」が3rdシングルのC/Wとしてシングルカットされた。
ブレイクに伴って100位以内159週に及ぶ大ロングヒットとなり、95年に記録した13位が最高ながら96年になってミリオンヒットに到達した。次回作よりも売上が高く初期の最定番人気アルバムだった。
紙スリーブ&特殊ケースの初回盤は次回作と並んで激レア。
前述のように当時の表記はジャケット通りの『KIND OF LOVE』で「Tomorrow never knows」封入のディスコグラフィーでは『KIND OF LOVE』で記載されていたが、90年代後半のディスコグラフィーでは現表記へと書き換えられている。
虹の彼方へ
1曲目を飾ったリード曲的なナンバー。爽やかポップバンド然とした佳作でタイトル通り虹が見えてきそうなワクワク感に満ちた屈託のなさがまぶしい。桜井と小林でひたすら作りこんで3人のメンバーが後で呼ばれるような状態だったためバンド感があまりないとされるアルバムではあるが今作は割とバンドの勢いも出てはいると思う。
★★★★☆
2ndアルバム『Kind of Love』
思春期の夏~君との恋が今も牧場に~
作詞:桜井和寿・小林武史、作曲:鈴木英哉・小林武史
ドラムの鈴木英哉ボーカル曲。「ぼくじょう」ではなく「まきば」と歌われている。サザンオールスターズも経験していた小林武史としてはやはり他メンバーのボーカル曲というアイデアは自然にあるものだったようで後に桜井はサザンの松田ボーカル的な構想が小林武史に合っての提案だと明かしている。鈴木本人が作曲に参加している事からも比較的乗り気だったものと思われる。牧場を舞台にしたほのぼのとした世界観になっていて明らかにメイン路線ではない感じではあるが、鈴木のほんわかボーカルはなかなか味があっていいアクセントになっている。本格ブレイク前に辞めてしまったため鈴木ボーカルは90年代後半の時点で既にそんなのあったの!?という知る人ぞ知る感じになっていて最初に聞いた時は衝撃的だった。
★★★☆☆
2ndアルバム『Kind of Love』
星になれたら
作曲:桜井和寿・寺岡呼人
寺岡呼人との共作。ゆずのブレイク以降00年代後半まではゆずのプロデュースをメインで手掛けていたので初めて聞いた時点ではゆずのプロデューサーがこんなところで共作していたのか!と驚いたが当時JUN SKY WALKER(S)のベースとして活動していた(翌年脱退)。
共作の効果が存分に出ているのかメロディーの良さが早くも頂点を突き抜けているような名曲。旅立ちと別れを歌った曲なので00年前後の頃には卒業・状況などの別れのシーンにとても合う曲で卒業ソングとしても親しまれていたのを記憶している。元々人気曲だったのが『Mr.Children 1992-1995』に収録された事でさらに有名になったような印象もある。
★★★★☆
2ndアルバム『Kind of Love』
1stベスト『Mr.Children 1992-1995』
ティーンエイジ・ドリーム(Ⅰ~Ⅱ)
歌詞中ではteenage dreamと表記されているがカタカナタイトル、しかしバージョン表記にローマ数字というなかなかチャンポンした表記になっているが、タイトル通りまっすぐでポップなサウンドで10代の頃の青春が屈託なく歌われる。まだそんなに10代と距離があるわけではない20代半ばの視点で振り返る形となっているが、まさに純粋無邪気なままでいられずに変化していく様子がリアルタイムに綴られているようでもある。もう少し後だったら鮮度を失って書けなくなっていただろう。
さほど大作感は無いがⅠ~Ⅱと連作形式になっているようにポップなⅠが終わってからⅡへ移行すると歌詞が全部カタカナになり、曲調も一転してもっとストレートに願望や欲望が歌われる。いわば10代の表と裏といった感じ。
★★★★☆
2ndアルバム『Kind of Love』
3rd Replay
93年7月1日
初登場19位と大きく躍進しブレイク目前となった。ジャケットでは色々な恰好をしたメンバーが延々と横並びしていて裏ジャケどころか中にまで全部繋がっている(CDトレイ下を除く)。妙にポップな雰囲気で半ばふざけたような仮装も散見されるなどかなり遊んだジャケットと言えるかも。
Replay
グリコ「ポッキー」CMソング。当時のポッキーのCMには牧瀬里穂が出演していた。当初からミリオンを目標に掲げ、CMタイアップのために15秒でサビがきっちり納まる事を意識しての15秒サビを作りまくっていたという努力の甲斐あってか初のCMタイアップで、本当に職人的に冒頭サビが15秒CMサイズ。屈託なくポップで爽やかな曲だがあまりに15秒サビを意識しすぎた弊害か意外とコンパクトにまとまりすぎていて歴代シングルの中でもどうしても影が薄くなってしまいがちなのは仕方ないか。
今作も前2作同様に99年頃に中古で見つけてきて初めて聞いたが残念ながら小学3年生の頃にポッキーのCMで聞いた記憶は全くなし(93年だとポカリのCMすら記憶が危うい…)。大名曲といった感じではなく、コンパクトなポップソングといった印象だったのと、一部を除いて概ねキーが低めだったので意外とカラオケでの登場率が高かった記憶がある。
★★★☆☆
3rdアルバム『Versus』
1stベスト『Mr.Children 1992-1995』
C/W All by myself
作詞作曲:桜井和寿/小林武史
2ndアルバム『Kind of Love』からのシングルカット。比較的シリアスな雰囲気でけっこうアレンジが凝ったファンクっぽい曲調で聞き込める1曲。ただまだ若かったメンバーの演奏が追いついていないのかどこかもったりしているような気もしなくもない。長年あまり良さが分からなかったが演奏に浸ればけっこうおもしろい1曲だと思う。コバチル化でバンドサウンドが遠ざかっていく中で過去作を聞き漁る中で00年代も半ばを過ぎた頃になってようやく良さに気づいた曲の1つ。
★★★☆☆
2ndアルバム『Kind of Love』
From 3rdアルバム『Versus』
93年9月1日
先行シングル「Replay」のトップ20ヒットに続いて今作ではいきなり初登場3位を記録。100位以内で今作も105週ランクインのロングヒットにはなったが前作よりは全体に下回る推移となり、累計80万枚を突破したものの前作を30万近く下回る。
前作に続いて初回盤が特殊ケースでレア。売上差だけ90年代後半の全盛期でも前作より中古相場は低めな傾向だった。
前2作同様に今作もジャケットの表記は『versus』であったため、シングル「Tomorrow never knows」封入のディスコグラフィーでは『versus』表記だったが、90年代後半以降にはもう『Versus』に書き換えられている。表記ブレがあったのは今作までで4th以降は基本的にジャケット表記、当時の表記から小文字大文字の使い分けは一貫している。
Another Mind
アルバム1曲目。冷たい雰囲気のアコースティックギターで始まるシリアスな内面吐露系の楽曲。さわやかポップスが並んでいる中で誰かが定めた自分を演じているという苦悩を前面に押し出した作風が異色。一般的にラブソングではない内面を解放した曲として「innocent world」が初めてのように公式ですら扱っているが、シングルとして初というだけで、爽やかなだけではない苦悩が出たのはこの曲が最初だったように思う。後に『深海』以降へ通じていくような片鱗はここにあった。
★★★★☆
3rdアルバム『Versus』
メインストリートに行こう
93年9月1日
作曲:桜井和寿/小林武史
ベスト盤に収録された「LOVE」と「my life」とシングル「Replay」を除くと意外とポップな曲が少ない感じもあるアルバムだが今作はブラスアレンジも交えた明るいノリのアップテンポナンバー。この頃のレパートリーの中ではライブの盛り上げにおいてはかなり必要な1曲だったのではないかと思う。ただ当時はよく披露されるもその後20年くらい披露されなかったらしく、2017年の『ヒカリノアトリエ』ツアーで久々に披露されその音源がライブ音源として『himawari』C/Wに収録、久々に脚光を浴びた。
★★★☆☆
3rdアルバム『Versus』
37thシングル『himawari』C/W(Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ)
逃亡者
93年9月1日
作詞作曲:小林武史
全2曲存在するドラム鈴木のボーカル曲のうちのもう1つ。前回と違って今作は完全に小林武史単独での作詞作曲となるため、カバー曲や小林が手掛けたインスト曲を除くと作詞作曲に桜井が一切関与していない(歌ってもいない)という史上唯一の曲となった。
前作同様にひたすらに牧歌的ほのぼの感に満ちている鈴木ボーカルには不思議な魅力がある。明らかにお遊び的な余技であり、コンセプト的なアルバム作りが顕著になっていくこれ以降『Atomic Heart』には元々鈴木ボーカル第3弾のはずだった「雨のち晴れ」が収録されているのでまだまだありとしても『深海』~『DISCOCVERY』の時期には入れるところは無かったか。『Q』辺りで復活させても良かったんじゃないかとも思うが…これっきり鈴木ボーカル曲が終わってしまったのは残念。
★★★☆☆
3rdアルバム『Versus』
LOVE
93年9月1日
カワイイ雰囲気のポップなラブソングでメロディーも抜群に耳に残るファン人気も高い名曲。しかし桜井本人があの子もこの子もいいなという気持ちをそのまま書いたと語っていたようによく見るとけっこう自分勝手な桜井の女好きな一面が若さ全開で溢れたような内容だ(とはいえ翌94年に担当のトイズファクトリー社員の女性と結婚して即子供も生まれているんだけど…)。メロディーとアレンジのドキャッチーぶりが凄いのであまり気にならないが若いから許された1曲だったような気もする。
★★★★☆
3rdアルバム『Versus』
1stベスト『Mr.Children 1992-1995』
my life
93年9月1日
「LOVE」と並んでベスト盤に選曲された人気曲。冒頭の“62円の値打ち”しかないラブレターが現代では既に意味不明だが、発売当時の便箋の手紙を出した際の郵便料金が62円であった(アホみたいな枚数を重ねて25gを超過する分厚いラブレターではないという前提は当然ある)。89年の消費税導入以降、94年1月23日までが62円で94年1月24日には80円になってしまったので発売から5ヶ月持たなかった。次の値上げは消費税8%導入の2014年4月1日の82円だったので、80円になってから発表していれば2014年3月31日まで長くその通りの料金の曲になっていたのに…。しかし80円だとメロディーにハマらないので80円では歌詞になっていなかったかもしれない。そして82円ならそのまま62円と同じハマりで歌えるようになっているのでなんだかんだ62円で良かったのかもしれない。
明るくフラれたことを歌う曲。ラブレターとフラれたーで韻を踏んでいる遊び心もあり、公式ライナーでも鈴木がフラれるたびにmy lifeしちゃったと言っていたとか(多忙だったのにそんなに出会いと別れを繰り返していたのか)けっこうコミカルな扱いになっている。ポップで雰囲気はいいんだけどサビは案外そんなに強くなく、「LOVE」に比べるとちょっと印象は薄めだったりもする。
★★★☆☆
3rdアルバム『Versus』
1stベスト『Mr.Children 1992-1995』
4th CROSS ROAD
93年11月10日
初登場9位で初のトップ10入りを果たすと大ロングヒットとなり、年内はトップ20付近をうろついていたが年明けに再度トップ10に浮上すると最高6位、トップ10内よりもトップ20や10位前後への連続ランクインで5位より上の最上位入りはしないままにほぼ1年50週にわたる100位以内ランクインで120万枚を越えるミリオンヒットを達成。
ミリオンを目指して曲作りをしていた桜井が出来た瞬間に「100万枚売れる曲が出来た」と叫んだというエピソードはベスト盤ライナーで有名だとして紹介している。ただベスト盤のライナーにそう書いて完全に定説のようにしておいて同じ小貫信昭氏が書いた『道標の歌』では同じエピソードを書きつつも突如“実際に桜井はそう言い放ったのだろうか。これは単なる伝説なのか…”などと本当じゃないかもしれない可能性に言及し始め、続けて鈴木のコメントとして本当にそう言ったかは覚えていないといきなりあやふやに。鈴木証言では100万枚売れる曲を絶対に作ってみせる!とは言っていたとなっているので、『道標の歌』執筆のために改めて整理したところ確証が得られず急に自信が無くなってしまい妙にトーンダウンした文章になったかのようである。現在最新の情報においては信憑性は不明に変わっているのである。10周年の頃に『うたばん』でヒストリーをやった時は桜井自ら100万枚売れる曲だとしてメンバーに聞かせたと語っていたが田原は「覚えてる?」とすっとぼけていたし、メンバー間でそんなに大きな出来事では無かった事も伺える。
先の「君がいた夏」の”桜井のスライドギター”の件もそうだが、小貫氏は距離の近い長い付き合いの中での取材を基にしてミスチルの公式ヒストリー担当のような地位でもあるため、小貫氏の書いた内容が公式の歴史と化している状態ではある。現場サイドじゃないと知らないような貴重な話も多いので非常に重要なエピソードが多く伝えられているのも事実だが、それでもメンバー本人ではないため知らないうちに脚色していたり、ベスト盤ライナーは過去の取材エピソードを基にして書き下ろしていただろうから(曲解説で桜井が当時そう言っていたのを”思い出す”と書いていたりする)いつの間にかの認識間違えや実は思い込みだった話が紛れていたり、事実ではない事を断言してしまったりするケースもあるのかもしれない。『道標の歌』は新規に証言を得ているっぽく振り返り視点のメンバーコメントが散見され、ベスト盤での解説と微妙にニュアンスが異なっている部分があるのはそのせいかも。そもそもメンバーだってあれだけの多忙の日々の中で年月が経過した今、正確に思い出せているかも分からないし。
ジャケットの金色の文字が初回盤だと箔押し、通常盤は普通のインクという違いがあるというが、経年によりだいぶ綺麗な中古が減っている中、パッと見で見分けるにはもう1つの違いである初回は黒トレイ、通常は白トレイという違いで見分けた方が確実かもしれない。
CROSS ROAD
ドラマ『同窓会』主題歌。斉藤由貴、西村和彦がメインキャストだったが同性愛(ゲイ)を扱ったけっこう凄い内容だったらしく、当時TOKIOやV6でデビュー前の山口達也、国分太一、坂本昌行といったジャニーズ勢が揃ってゲイの少年役で出演、今じゃ放送不可能ではないかと言われるほど過激なシーンが多かったらしい。1話の段階ではそこまで過激な内容になるとは思ってなくて、1話の台本をもらってドラマの内容に合わせて書き下ろしたつもりがまさかあんな展開になるとは…みたいな感じだったとか。
楽曲自体は聞き手をつかんで離さない圧倒的な勢いのメロディーが素晴らしく確かにこれは凄い曲が出来たと叫んでも不思議ではない。また小林武史の手腕も見事でバンドの枠を超えてスケールアップして重ねたアレンジが秀逸。ピアノにもストリングスにも頼らずにバンドとキーボードとシンセで天才的にポップなアレンジに仕上げている。この天才がどうしてピアノまみれストリングスまみれ一辺倒に変わっていってしまったのか今作ではピアノで埋めるのではなく、ギターを重ねてアレンジしているしな…。
個人的にも最も好きな曲の1つだが、初めてちゃんと聞いたのはかなり遅くて98年秋。「終わりなき旅」での活動再開のタイミングで本格的に聞こうと思ってCDを集め始めた中で、とりあえず知っていた「Tomorrow never knows」とタイトル見ても知らないが一緒に並んでいた今作をを買ってきて聞いたのだが、かけた瞬間にミスチルだとも知らずに“前から耳に残っていたタイトルも知らないけど凄くいいと思っていたあの曲”がまさにこの曲だった。うおおおおお!!これもミスチルだったのかぁぁぁぁぁ!!と燃えた中2の秋であった。
★★★★★
4thアルバム『Atomic Heart』
1stベスト『Mr.Children 1992-1995』
5thベスト『Mr.Children 2011-2015』(Mr.Children HOME TOUR 2007 -in the field-)
C/W and I close to you
作曲:桜井和寿/小林武史
3rdアルバム『Versus』からのシングルカット。ファンクというかノリのいい感じの曲。メロウな曲だけでなく「All by myself」といい、こういう凝った感じのをC/Wでは見せようという意図だったのか。当初C/Wは路線が違い過ぎてなんだかしっくりこないなぁと長年思っていたが、やあはりストバラにうんざりするようになってきたのとクロスして段々いいなと思えるようになった。メロディーというよりアレンジ込みで楽しむ系というか。
★★★☆☆
3rdアルバム『versus』
5th innocent world
94年6月1日
初の1位を獲得して前作を上回る190万枚越えの大ヒットを記録。5位→3位→3位と推移した後に5週目に1位に返り咲いた後は4週連続2位に居座るなど前作とは異なり最上位でのロングランを記録、前作には及ばなかったが100位以内にも41週ランクインした。なお1番最初にO社の順位だと明記しておきながらO社とかけ離れた謎の売上枚数ばかり記載している『Mr.Children 1992-1995』『Mr.Children 1996-2000』ライナーにて何故か今作だけはO社の190万枚越えより少ない185万枚に減らされている。どうしてそうなった。「抱きしめたい」なんかO社6万に対して70万、「Replay」も30万ととんでもない水増しをしているのに「CROSS ROAD」が130万枚で急に水増しが5万枚を割り込んで、今作では逆に5万以上減らされるという…。さすがにツッコミが多かったのか既にO社売上が意味を失いつつあったためか、macro,micro発売時は順位や売上への言及は無くなっていた。
今作はデザイン上、トイズの社名や品番など決まっている文字以外は英字は全て小文字表記で統一されているため、mr.children、innocent world、coupling with my confidence songと曲名もバンド名も小文字表記となっているほかイノセントワールド、マイ コンフィデンス ソングと英字の曲名の下にカタカナでも併記されている。加えて背文字部分での曲名表記が「イノセントワールド」であったため、O社の登録やチャートでは普通に「イノセントワールド」として扱われた。『Atomic Heart』収録時は今度は頭文字だけ大文字統一により前作は「Cross Road」、今作は「Innocent World」表記となっていたが歌詞部分では「CROSS ROAD」「innocent world」表記、正式表記で統一された『Mr.Children 1992-1995』でも同様に表記され、現在の公式サイトでも「innocent world」「my confidence song」と全小文字表記が正式扱いとなっている。
当初C/Wには反戦歌として知られる「Where Have All the Flowers Gone」(邦題「花はどこへ行った」)のカバーを収録予定とされ、日本語訳詞を田原と小林が連名で手掛けていたがオリジナルと内容がかけ離れているという理由(著作権の関係とも言われていた)でお蔵入りしてしまい急遽新曲「my confidence song」に差し替えになった。プロモ版カセットは存在し当時のラジオでかかったり、ライブで演奏したりはしていたらしい。現在まで蔵出しもされておらず幻のまま。田原健一が個人名義でクレジットされた曲も他にない。
innocent world
アクエリアスCMソング。ポカリのCMソングはヒットを連発していたがアクエリアスでヒットというと今作くらいしか思い浮かばない上に当時かかっていた記憶もあまりない。当初はこれまで通りの世界観で制作しようとしていたが小林武史の導きにより桜井が自らの内面をぶちまけた(mr.myself)という歌詞になったという。これが多くの人に届いた上に”いつの日もこの胸に流れてるメロディー”というフレーズ通りにいつまでも名曲と言われるような究極のメロディーラインの名曲になった。
平メロは低いが、サビになるとかなりの高音連発。歌うとかなり気持ちいい曲ながらサビ終盤の高音が出ずに確実に死ねる曲でカラオケで毎回誰かが爆死していたのも思い出深い。ライブではサビを観客に歌わせる場面が多いようで『1/42』ではアンコール前に観客が合唱しているのを出てきた桜井が歌唱指導している場面も聞く事ができるほか、実際にその後演奏した際にはサビを観客に歌わせているところも収録された。
2000年前後の20世紀歴代シングルとか90年代年間チャート特集などの総決算的な『CDTV』でも当然今作はよくかかっていたが一応MVがあるのに使用されていたのはほぼ毎回ゲストライブの時の映像(なんか人工的に雨降らせてるやつ)ばかりだった。MVがモノクロ主体でメンバー3人がほとんど出てこない、特に使用されるサビ部分は映っているのが桜井と都会の街並みばかりだったためだろうか。ジャケットのフードを目元まで被せて歌っている姿もMVでは確認する事ができるが…大ヒット曲に限ってなんか変なジャケット(「名もなき詩」とか不気味すぎるし…)や全く本人がいないのばかりだな…。
★★★★★
4thアルバム『Atomic Heart』
1stベスト『Mr.Children 1992-1995』
8thアルバム(ライブ盤)『1/42』(ライブバージョン)
5thベスト『Mr.Children 2011-2015』(【es】 Mr.Children in FILM/Mr.Children ’95 Tour Atomic Heart)
C/W my confidence song
「Where Have All the Flowers Gone」(邦題「花はどこへ行った」)のカバーが収録中止になって急遽制作したためなのかほぼアコースティックギター弾き語りのソロ曲のような短曲。軽快な曲でさらっと聞きやすく意外と耳にも残る。また最初は”愛しき人は去れど”などと失恋を歌っているのが2番になると”平和な日々に埋もれ僕らはもろく(Ah 頼りないこの国は)”などと国家レベルの憂いになってきて最後は”永遠なる欲望の果てに誰もが土に戻る”と嗚呼無情な領域にまで到達するなどかなり思考展開が早く、短いのに非常に深い内容。
★★★☆☆
14thアルバム(C/W集)『B-SIDE』
From 4thアルバム『Atomic Heart』
94年9月1日
当時毎年のようにアルバム売上記録が更新されまくっていた時期で343万枚の歴代1位売上を更新。自身最大のヒット作となった。新曲はどんどん出していきたいがC/Wまで量産する余裕が無かったためなのか、翌年にかけてC/Wでのシングルカットが3連発(1曲はリミックス)された。
初回盤は青いプラスリーブ、青いプラケース仕様。大ヒット確実で生産数も多かったためか当時からさほどレアではなく、通常盤と同じ扱いで中古流通している事が多い。耐用年数を考えないその場限りの特殊パッケージをアート優先で採用し続けた結果、経年劣化が著しい作品が多いが、今作も青いスリーブはパリパリに割れやすく、綺麗な青だった色もどす黒く変色しやすい。
Dance Dance Dance
作曲:桜井和寿&小林武史
田原のギターがサンプリングされたジャガジャガジャガッ♪が印象的なデジロックとバンドサウンドが融合したような新機軸な1曲。田原と小林で探ったイントロとも紹介されており、これまで桜井と小林の2人での曲作りの話ばかりだった中でほとんど初めて桜井以外のメンバーと小林武史が出てくるエピソードでもある。ライブの規模も武道館やアリーナクラスまで拡大していった時期だけにそういった大会場を沸かせるようなアップナンバーとして制作されたようだ(確かに今までの曲で大会場でドカンと盛り上がる曲が意外とない)。“落ちる定めのヒットチャート”などと退屈なヒットチャートにドロップキックを放つ前にチャートへの言及もしている。サビ前で一旦地味に抑えてサビで開放的にはじけるところがけっこう好き。
★★★★☆
4thアルバム『Atomic Heart』
1stベスト『Mr.Children 1992-1995』
8thアルバム(ライブ盤)『1/42』(ライブバージョン)
5thベスト『Mr.Children 2011-2015』(【es】 Mr.Children in FILM/Mr.Children ’95 Tour Atomic Heart)
雨のち晴れ
94年9月1日
作曲:桜井和寿&小林武史
前2作のアルバムに続いて鈴木ボーカル3曲目になるはずが、作った桜井が気に入ってしまったのでそのまま自分で歌うことになり、鈴木ボーカル曲自体がそのまま消滅してしまった。推定20代後半のしがないサラリーマンライフが歌われるが、サラリーマン経験の無い桜井が若い時に想像で書いただけあってデフォルメされているというか着想通りに鈴木がサラリーマンだったら?という発想に基づいている感じがする。また嘆きも多いが割となんとかなる的な前向き思考になっていて大して絶望しても疲れてもいないのが特徴。実際にサラリーマンになった後の多くのリスナーにとって果たしてこれは現実だったか、もっと残酷だったか、もっとイージーだったか、それもまた人それぞれなのだろう。これは普通に鈴木が歌っていてもハマっていたと思うのであのほのぼのボーカルで聞いてみたかった…。
★★★☆☆
4thアルバム『Atomic Heart』
1stベスト『Mr.Children 1992-1995』
8thシングル『【es】~Theme of es~』C/W(remix)
14thアルバム(C/W集)『B-SIDE』(remix)
Round About~孤独な肖像~
94年9月1日
『Atomic Heart』のアルバム曲でシングルカットもされず、ベスト盤にも選曲されずにアルバム収録のみで残るのは3曲しかないが、その中では疾走系ナンバーのこの曲は単曲でも時々聞きたくなる1曲。そこはかとなく80年代っぽさが見える他には意外と無いタイプの曲だと思う。
★★★☆☆
4thアルバム『Atomic Heart』
Over
94年9月1日
アルバムの中では逆に浮いていたくらいだが1st~3rdまでのポップなラブソングの延長にある期待以上の王道ナンバー。いわゆる初期っぽいポップな曲ってほぼ今作が最後だったと思う。仮タイトルが「2ビートでKAN」なのも有名だったが、Gilbert O’Sullivanの「Alone Again (Naturally)」を参考にしたと言う秘話がライブで語られ『ヒカリノアトリエ』シークレットトラックに収録された事でこの話も近年有名になった。“顔の割に小さな胸”という作者桜井本人にしか理解できないような独特の基準がサビで堂々出てくることもありこのシークレットトラックのMCでも「物議を醸した」と笑い話にしているが「不徳の致すところ」と語ったのみで結局どういうことなのかの説明はしていない。まあどういうこともこういう事も無く、本当に独自の基準をお持ちなのだと思う。
「CROSS ROAD」と並んでミスチルと知らずにどこかで聞いて凄いいいメロディーの曲だと思っていた曲の1つで初めて聞いた時にやはりこんなとこにこれもミスチルだったのかぁぁぁ!!と盛り上がった中2の頃。純粋だったよね。
★★★★★
4thアルバム『Atomic Heart』
1stベスト『Mr.Children 1992-1995』
36thシングル『ヒカリノアトリエ』シークレットトラック(ライブ弾き語り+MC)
6th Tomorrow never knows
94年11月10日
前作から5ヶ月、300万枚を突破する空前のヒットとなったアルバムから2ヶ月、ミスチル現象とも後に言われるようになった大ブームの中で発売された新作は当たり前のように圧倒的初動売上(65万超え)で初登場1位、2週目3週目はチャゲ&ASKA、B’zにそれぞれ1位を譲るも4週目5週目に再度1位を獲得、11週トップ10に居座り、276.6万枚という驚異の大ヒットを記録。今作がシングル最大のヒット作となった。90年代はタイアップなど波にさえ乗れば今よりは当てやすかったとはいえブレイクするだけでも難しく、さらにもう1作ミリオンを出してすぐに前作越えを果たすのなんてミリオンレベルまで行くと難しいのに前作であっさりやってのけ、さすがに190万枚から上は無いだろうという中でさらに今作である。「CROSS ROAD」以降の連続3段ブレイクはなかなか例がない。
空前の大ヒット作だが年間チャート特集をやると扱いが悪くなってしまうのは11月発売の宿命で売上が94年と95年に分断されているため。特にどこで年度を区切るかで大きく変わってしまい、O社では当時11月までと12月以降で区切っていたため94年22位、95年4位だが『CDTV』では95年20位以下だったりする。
Tomorrow never knows
ドラマ『若者のすべて』主題歌。歌詞は別だがAメロBメロサビが30分ほどで制作され、小林武史が提示したコード進行と桜井の書いたAメロが偶然同じだったために3時間ほどで一気に出来上がったとされている。天井の知れないような高みへと向かっていくような圧倒的なスケール感の大名曲。この段階で有頂天にならずに(まあ多少はなっている部分も無かったわけではないだろうけど)“勝利も敗北もないまま孤独なレースは続いてく”と必殺のフレーズを炸裂させてくるのはなかなか凄かったと思う。高校の時だったかに1つ上の先輩世代が卒業の時にこの曲をチョイスして合唱しててちょっとカッコよかった(1年後の我々の学年の卒業の時はTHE BOOM「風になりたい」が歌われた)。断崖絶壁で熱唱している桜井という空撮映像のMVもダイナミック(当時はドローンなんかないからマジ空撮だし)。
当初このようにかなりダイナミックな曲だと思っていたら実際に聞いてみたら意外とアレンジ自体はそんなに派手では無くて抑えた感じで意外だった。2番でバンドが入ってもなんだか淡々としているし、間奏もギターソロじゃなくてサックスソロだしで、意外とそんなにバンドサウンド自体に熱さが無いというか。
実際にシングルバージョンはベースドラムが打ち込みだった(=中川・鈴木は不参加)と明言されている。田原さんは参加しているのか?中川鈴木が呼ばれず田原さんだけギター弾きに呼ばれることがあるのか?実は桜井が全部ギター弾いてるんじゃないのか?というのも無くは無いが多忙な上に桜井と小林でどんどん曲作りもアレンジも進めているような状態でやはりメンバー3人がおざなり…というか高レベル化していく曲作りに演奏力も理解もついていけないところもあったのかなという気もしなくもない。その後『BOLERO』収録時のRemixはベースドラムを中川鈴木の生演奏に差し替えたものだとベスト盤のライナーでも正式に明言され、remix表記が無くても『Mr.Children 1992-1995』や25周年時に1年限定配信(圧縮音源のみ)となった『Mr.Children 1992-2002 Thanksgiving 25』収録時はremixで収録されている。『BOLERO』と『Mr.Children 1992-1995』は同じremixだがベスト盤のリマスターにより音の迫力がド派手になっている。また配信版では『BOLERO』にremix表記は無いが音源自体はシングル、『BOLERO』、remixのリマスターである『Mr.Children 1992-1995』の3音源ちゃんと分けられていているようだ。
明言されているもののシングルバージョンとremix、一体どこが違うのか、全く分からないという声も少なくなく、実際パッと聞き全く同じ。独自のアレンジを加えずに打ち込みを忠実に生演奏で再現しているっぽい。『BOLERO』発売当時のレンタルカセット録音と8センチCDで入手した今作を聞き比べても違いは分からなかった。その後『BOLERO』もCDで入手し、条件を揃えてもまだ良く分かっていなかったが、『Mr.Children 1992-1995』のライナーでベースドラムが生演奏と書いてあったのを見て真剣に聞きこんでみた結果、ドラムの響きは確かに何となくremixの生ドラムの方が柔らかい響きになっていて、シングルバージョンは機械的で固い響きだなと分かるようにはなった。ただ生演奏になっても淡々としていて躍動感はさほどないのでバンド感が増した感じも無く、差し替えの際にもう少し分かりやすく変えても良かったんじゃないかとは思う。
なお1番はベースもドラムもほとんど入っていないので1番のわずかなチキ、カッなどの音をいくら聞いても違いは分からない。1番終了後にバンドインした後のドラムのスネアの音でようやく違いが分かるので聞き比べるなら1番終了後のスネアの音に集中して聞く事が推奨される。
★★★★★
シングルバージョンアルバム未収録
6thアルバム『BOLERO』(Remix)
1stベスト『Mr.Children 1992-1995』(Remix)
8thアルバム(ライブ盤)『1/42』(ライブバージョン)
5thベスト『Mr.Children 2011-2015』(Mr.Children Tour 2018-19 重力と呼吸 in TAIPEI)
C/W ラヴコネクション
4thアルバム『Atomic Heart』からのシングルカット。C/W予定だった「everybody goes-秩序のない現代にドロップキック-」を1ヶ月後に表題曲としてリリースする事になったため、急遽引っ張ってきたものと思われる。The Rolling Stonesを意識したというロックナンバーだが「Jumpin’ Jack Flash」を意識したようで曲調が似ているほか、何故か制作されたMVでも雰囲気を寄せている(一切商品化されてなかったため存在すらあまり知られていないほどの幻のMV状態だったが2020年にYouTubeで公開された)。今作ではブラスアレンジも加えてより現代的(当時)で華やかな雰囲気もある。元々ライブを意識して制作していたようだが、大会場でのライブを想定して制作した「Dance Dance Dance」が実際に大会場でのライブばかりにキャパが拡大した事で重宝されるようになったことも重なってどうにも「Dance Dance Dance」に及ばない一段下のイメージになってしまったところもありそう。
最初に聞いた時のこの手のC/W、アルバム曲のノリは圧倒的名曲のA面曲と違ってビミョーだなぁとしか思っていなかったが、ピアノまみれになっていった00年代後半以降になってからこの頃の多彩さ、A面以外の良さやこういう曲があるからよりA面が輝くという当時のバランス感覚の素晴らしさにも気づいた。
★★★☆☆
4thアルバム『Atomic Heart』
8thアルバム(ライブ盤)『1/42』(ライブバージョン)
7th everybody goes-秩序のない現代にドロップキック-
94年12月12日
前作から1ヶ月でのリリース。タイアップも無く、前作のC/W予定だった「everybody goes-秩序のない現代にドロップキック-」を急遽シングルに格上げし、C/W「クラスメイト」はまたしても『Atomic Heart』からのシングルカット。
ジャケットのCGキャラクターの着ているシャツに「es」、CHORUS:es sistersと謎の「es」表記があり、次回作に通じていく要素が含まれている。これはこの時点で「es」をキーワードとしたドキュメント映画の撮影が進んでいてその予告的な意味合いがあったと思われる。es sistersの正体はMY LITTLE LOVERとしてデビュー前のAKKOというのが通説となっている。
退屈なヒットチャートにドロップキックを放つがごとく、勢いで初登場1位、ミリオン突破も果たした。7週トップ10に居座るなどけっこうな大ヒットといえる推移も見せてはいたがいかんせん前後に大ヒット曲が連発され過ぎててこれでも完全に埋もれてしまうくらいの存在感の薄いシングルになってしまうというのが当時のとんでもなさを物語る。
everybody goes-秩序のない現代にドロップキック-
タイアップは無し。前作のC/Wの予定を出来が良くて急遽シングルにしたというが、これまでアルバムでも全く見せたことも無かったギター全開でロックなバンドサウンドをいきなりシングルA面で炸裂させるとはかなりのチャレンジャー。現代ではあっさり見放されてもおかしくないのでとてもこんな真似は出来ないだろう。
長い間そこまで好きな曲ではなく、ミスチルを教えてくれた97年中学1年生当時のクラスメイトは「ニシエヒガシエ」で終わった…とか絶望してたけど、聞けばこの曲もダメな曲の1つに挙げていたのでロックな曲が好きではなかったようで本当にポップな良メロが好きだったのだろう。世間を毒づくような歌詞や痛快なサウンドも含めて大人になってきてからの方が刺さるものがあるというか、響いてくるものが増えていったような印象がある。まあそりゃそうだろうなという感じで、今作の中で言及されている人たちの中でも最も若い”娘”でも最初に聞いた年齢の時からすれば年上のお姉さんであって(94年当時は知らないので『BOLERO』が出た97年を想定)、”秩序のない現代”にも”皆病んでる”にもまだ実感が伴っていなかった。時が流れて古くなってしまった部分もあるにはあるけど“皆病んでる 必死で生きてる”は色褪せていないどころかますます色濃くなっている事を感じる。またミスチルがロックバンドであることを認識できる楽曲の1つでもある。
ギターソロも貴重だよなぁ…と思ったらなんか田原さんじゃなくて桜井によるギターソロらしいと後で聞いてちょっとしょんぼりした。
★★★★☆
6thアルバム『BOLERO』
1stベスト『Mr.Children 1992-1995』
C/W クラスメイト
4thアルバム『Atomic Heart』からのシングルカット。これまでにない実験的な作風が目立っていたアルバム内では以前に近いサウンドが展開したミディアムナンバー。ブラスアレンジも効かせたオシャレでムーディーな空気が漂い非常にロマンティックであるが内容は浮気ソング。今作やサザンの「LOVE AFFAIR~秘密のデート」をロマンティックで切ないいい曲だと言いながら芸能人(他人)の不倫報道は全力で糾弾しにかかる、秩序のない現代にドロップキック
「everybody goes-秩序のない現代にドロップキック-」の歌詞だけで歌詞記載部分を全部使用してしまっているため、今作の歌詞は透明なCDトレイ下に印刷されている。…が、トレイの繋ぎの部分などはいくら透明でも下の文字が歪んでしまっていて特に1番サビの中間部はトレイを引っぺがさないと全く読めない。シングルカットだし、300万枚も売れたアルバムの方でみんな持ってるし別にそれくらいいいよね!といえば確かにそうではあるが…。
★★★☆☆
4thアルバム『Atomic Heart』
奇跡の地球/桑田佳祐&Mr.Children
95年1月23日
サザンオールスターズ桑田佳祐とMr.Childrenのコラボシングル。C/Wにはインストを収録。Act Against AIDS(AAA)の一環として期間限定でリリースされ全ての収益は寄付された。初登場1位、170万枚を越える大ヒット、9週連続トップ10入りとなるも半年間の期間限定販売で在庫が尽きていったためなのかその後急速に順位を落とし、100位以内18週でチャートアウトした(35位以下には最後の2週しかランクインしてないほどストーンと消えた)。また結果的にミスチルにとっては3ヶ月連続でのシングル発売となった。
桑田佳祐は93年より05年まで毎年ソロでAAAのライブを行なっていて、93年まではサザン含めて小林武史と組んでいたため、小林武史繋がり桑田佳祐主導でのコラボとなっている。レコード会社はタイシタレーベルとトイズファクトリーの共同になっていて発売元が共同名義、販売元はビクターだが品番は両社のものではなくAAA-1とAct Against AIDSのプロジェクト名が使用された。サポートギターでは同年MY LITTLE LOVERとしてデビューする藤井謙二も参加していた。
奇跡の地球
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:小林武史&Mr.Children
一応編曲にはミスチル名義で参加しているがデビュー予定の藤井謙二をわざわざサポートで呼んだり、一応バンドサウンドっぽくなっているもののメンバー3人の存在感は希薄。小林武史を仲介役とした桑田と桜井のコラボのようだし、恐らく当時だからミスチル4人ワンセットになったけど、後年であればマジでBank Band×桑田佳祐という形で展開したのではないかと思われる。
個性的なボーカルがぶつかり合う対等なデュオ歌唱は豪華共演感がありかなり熱い。ただその一方であまりバンドっぽくもないちょっと変わった感じの曲調なのでスペシャルコラボ感を除くと割とビミョーな感じの曲でもあり、正直そんなに好きな曲でもない。桑田ソロでの歌唱だったら普通にいい曲程度になっていたと思うし、この時期のソロとサザンでももっと好きな曲があるのでいざ好きな曲を選んでいくとなかなか選ばない感じにはなってしまう。
2002年の桑田佳祐のベストアルバム『TOP OF THE POPS』1作にしか収録されていない。それまでは定価を遥かに超える事は無かったとはいえ生産はとっくに終了していたので1000円前後の中古の値付けではよく売られていた。
★★★☆☆
Mr.Childrenアルバム未収録
桑田佳祐ベスト『TOP OF THE POPS』
8th 【es】~Theme of es~
95年5月10日
2週連続1位を記録し、トップ10は6週、100位以内は19週、160万枚に迫る売上を記録。C/Wはまたしても『Atomic Heart』からのシングルカットとなったがremixバージョンとなっていて初めてバージョン違いとなった。今作には初めて表題曲インストが収録されなかった。「【es】~Theme of es~」が6分近く、「雨のち晴れ remix」は9分半まで引き延ばされているため、2曲でも15分オーバーとなり、いつものように表題曲インスト(カラオケ)をその後に収録すると8センチCD収録容量を限界突破してしまい収録できなかったためと思われる(8センチCDは概ね20分程度が限界とされる)。
【es】~Theme of es~
心理学用語のesを大々的にテーマにしてドキュメント映画『【es】 Mr.Children in FILM』を制作してその主題歌。映画の主題歌ではあるが、タイトル通りにesの概念自体のテーマ曲でもあり、前作の時点でesを記号として使用していたようにこの時期相当esに取りつかれていた感がある。当時最高傑作と公言していたそうだが、その後2010年まで全くライブで披露しなくなっていたそうなので、どうも安易にes!es!と連呼してやりすぎた、esで済ませても何の解決にもならなかった事に早い段階で気づいてしまったのではないか。
端的に本能的、衝動的欲求をesとして、曲中では“僕を走らせるes”と説明できない行動理由を一言で説明する言葉としてesを置いている。これを駆使すると行動や感情の理由を全て「それはesがそうさせているからだ」で説明できてしまうし、なんとなく意味深で頭いい感じにもなる。一方で、結局「あれ」とか「それ」って言って終わらせている、乱暴な言い方をすれば「It」なんかと単語の意味としてあまり変わらなくもなってくる。『深海』以降の苦悩、不倫関係も含めて混迷に突入していく中で“僕を走らせるes”では到底説明できないし納得も出来ないし救われないと気づいてしまった…というのが一時的に物凄く連発しまくった後に曲自体を長年封印した理由なんじゃないかなと。映画も未だにDVD化してないし(離婚した妻との間の生まれたばかりの娘と対面しているシーンもあったりしたのでそういう理由もあるのかもしれない)、当時関連本『【es】 Mr.Children in 370 DAYS』を出版していたとはいえ、2020年に出版された『道標の歌』ではバッサリと飛ばされesプロジェクトには一切触れなかった(「Tomorrow never knows」の後に次の章になると何故かもう95年秋まですっ飛んでいて「名もなき詩」の話になってしまっている)。
今作では初めて本格的にストリングスも導入。今ではストリングス?え?当たり前ですがNANIKA?くらいの空気のような勢いになってしまったが当時は珍しいロックバンドとストリングスというスペシャル感のある楽曲だった。ピアノではなくアコースティックギター1本で始まり、静かにストリングスとバンドが絡んでいき、エレキギターも派手に主張はしないが普通にそこにいる。この感覚は久々に今作を聞きなおすと強く実感するが、ピアノがいない、ギターが前にいるストリングスバラードになっていてサウンドバランスが全然違うのでかなり新鮮に感じる。
★★★★☆
6thアルバム『BOLERO』
1stベスト『Mr.Children 1992-1995』
C/W 雨のち晴れ remix
3連発の4thアルバム『Atomic Heart』からのシングルカット。ただしリミックスバージョンでループが多用されたため倍近い長さになっている。原曲と大きく違うのはイントロが長いのとこれまた異常に長くなった間奏で桜井のサラリーマン日記(?)の朗読が挿入されたところ。サラリーマン日記は途中から7時起床5時退社12時に寝るの繰り返しだけになってしまうなど”単調な生活を繰り返すだけ”を表現していてそれなりに効果的。いかんせん9分近くなっているので長い…。
あと大人になって「17時退社」ってそんなんある?都市伝説じゃねーの?というのを多くの人が実感すると思うんだけどどうだろうか。
このバージョンは元々はライブで披露した際の寸劇バージョンで、このライブ映像はDVD化されていないVHS/LDのみのドキュメント映画『【es】Mr.Children in FILM』に収録されている。99年頃に何故かレンタルビデオ屋に置いてあったので1度だけ見た記憶があり、ほとんど内容は忘れてしまったが、桜井が生まれたばかりの娘と新生児室で対面するシーンやこの寸劇部分は印象に残っている。この寸劇は田原さんだけ何故か普通にギター弾いている中でメンバー3人はサラリーマンルックでサラリーマン寸劇をしながら曲を披露するというものでほぼオケを流している状態で進行、終盤で演奏スタイルになったのを記憶している。要するにほぼ録音されたオケを流していたわけで、そのオケが今作に収録された(映画にも収録されたし映画主題歌のシングルだし)という事だろう。
★★★☆☆
14thアルバム(C/W集)『B-SIDE』(remix)
4thアルバム『Atomic Heart』(原曲)
1stベスト『Mr.Children 1992-1995』(原曲)
9th シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~
95年8月21日
3週連続1位、「奇跡の地球」を除くと2連続で再度売上を上昇させ前作を上回って180万枚を突破。また早くもシングル総売上1000万枚突破となった。まだ9thだぞ…。タイアップが無かったためO社のノンタイアップシングル売上歴代1位を記録した。曲自体はチャリティ的な内容とは関係が無いが、1月に阪神・淡路大震災が起こった事を受けてこのCDに発生した収益は全て義援金として寄付される旨がCDに記載されている。売上と印税の全てと書かれていたが、さすがに現在も発生し続けているであろうカラオケ等の印税を延々寄付しているわけではないと思われ何処かのタイミングまでだったのだろう。
シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~
これまでにありそうでなかった爽快なロックナンバー。「everybody goes-秩序のない現代にドロップキック-」で見せたロックバンド感ををもう少し一般受けするポップな方向に持ってきたような勢いがある。久々の恋愛ソングで、前作までで至った境地からすると開き直ったかのようでもあるが、やはり変化はしていて大サビではアダムとイブの時代にさかのぼってみたりと以前よりもスケールが拡大している。大ヒット曲だしライブでも盛り上がる定番曲になってもおかしくなかったが、当時披露したっきりほとんど演奏されなくなり、前作ほどではないが一時期けっこうなレア曲になってしまったらしい。歌詞が何言っているのか分からなくて恥ずかしいというのが理由らしいが、アダムとイブの時代まで行ってしまうのは少しやりすぎて若気の至りだったか…。
MVでは思いっきりエルヴィス・コステロのパロディしているのも話題に。このMVは映画『【es】Mr.Children in FILM』がVHS/LDされた際にボーナス的に収録されていた。最後になんか変な映像が入ってて何やってんだこれ?と思った記憶。
★★★★☆
6thアルバム『BOLERO』
1stベスト『Mr.Children 1992-1995』
5thベスト『Mr.Children 2011-2015』(ap bank fes ’12 Fund for Japan)
C/W フラジャイル
5月3日に渋谷で突如開催されたゲリラライブの音源。この曲にスタジオ録音バージョンは存在しない。映画『【es】Mr.Children in FILM』冒頭にこの時の映像も途中まで収録されており、今作までがesのプロジェクトの一環だったともいえる。
正直そんなにメロディーがいいとかインパクトがあるような曲ではないが、ストレートにロックバンドしている事もあり、ロックバンド色が強い『深海』『BOLERO』期に突入していく中での1曲という感じは確かにある。音がけっこう荒く、もう少しいい音質だったらなぁ…。なお掲載されている歌詞とは一部異なっているが(“あやふやな世界”を”裏腹な世界”と歌っているように聞こえる)、間違えて歌唱しているのか誤植なのかは分からない(『B-SIDE』で改めて手書きの歌詞カードを掲載した際もそのままなので間違えて歌ったっぽい)。
★★★☆☆
14thアルバム(C/W集)『B-SIDE』
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