ポルノグラフィティ 25周年全書回顧1~1999-2003~

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デビューから勢いよく売り出されていきなり大ヒットして最初から順風満帆だったように見えるが、実際にはデビューまでにかなり紆余曲折があったようだ。地元因島の同級生だったメンバーだが大阪に拠点を移したタイミングの1994年(メンバーが20歳頃)にドラマーも含めた4人組バンドとして結成され、インディーズで活動していたとされるがこの時代の音源はデモテープ数本とCDに至っては1996年の『ポルノグラフィティvsリンカーン』という2バンドのスプリット作品(2曲ずつ)1枚ポッキリしか出ていない。1997年にソニーのオーディションに合格してSMEと契約し事務所もアミューズと共に大手採用が決まりこのタイミングで3人組となって上京したが…1997年に契約が決まっていたのに今作は1999年9月である。準備期間に2年ほど費やしていた。恐らく大人の判断で自作ではもう1つ曲が弱いという事でプロデューサーをつけてプロデューサー主導の曲作りに移行する事になりその過程でやはり自作で行きたいメンバーの葛藤もあって時間がかかったのではないかと思われる。当初は吉俣良がプロデュースについた時期もあったようで、今作のC/Wにして1stアルバム表題曲でもある「ロマンチスト・エゴイスト」は作曲がRyo(吉俣良)名義である。しかし違うという事になったのか、新たに田村充義をプロデュースに、本間昭光をak.hommaとして作曲・編曲のサウンドプロデュースにつける体制へ移行。この田村充義と本間昭光のコンビは直前まで広瀬香美を手掛けていた(田村充義は最初から現在まで、本間昭光はこの数年のみ)。本間昭光は1989年にアイドル系のアレンジ仕事を中心にキャリアをスタートさせ、1991年から1998年まで槇原敬之のライブサポートキーボードとしても活動(槇原が逮捕される前まで)、1996年から広瀬香美のアレンジャーとして活動しており、「promise」「ストロボ」などのアレンジを担当していた。ここまで主にアレンジャーとして知られており、作曲家・プロデューサーとして表に出てくるタイプではなかったが…ak.hommaとしていきなり作家生活のピークに達した感がある。プロデューサー主導の体制を受けいれたメンバーの決断、そしてak.hommaのキャリアハイに当たったのは巡り合わせが凄く良かったように思う。

メンバーはアキヒト(ボーカル)、ハルイチ(ギター)、シラタマ(ベース)の3人体制。当初カタカナ表記だったが、4thシングル『サボテン』歌詞カードでのメンバー表記で初めて岡野昭仁、新藤晴一、白玉雅己とフルネームが公表され(クレジットはカタカナのまま)、7thシングル『ヴォイス』では岡野昭仁、新藤晴一、本間昭光がクレジットでフルネーム表記され、8th『幸せについて本気出して考えてみた』からシラタマがTamaに改名して岡野昭仁、新藤晴一、Tamaとなった(本間昭光は再度ak.hommaに戻した)。

自作でのメインライターは当初からTama(シラタマ)という姿勢で一貫しており、当時のメンバーインタビューではゆくゆくは自作でやっていきたいという意向を語る際はイコールTamaの曲をメインでやっていきたいというものだった。ak.hommaによるヒット曲が大半のこの時期においても自作シングルになった際は4シングルがTama作曲、1シングルが岡野昭仁であった。

しかし『ラック』リリースを最後に翌年にかけてのツアーを最後にTamaが脱退を表明、表向き半年以上リリースが途絶えた後、2004年夏に脱退とベストアルバム発売が発表され3人時代は幕を閉じた。自分の思うことを追求してみたいという強い意向での脱退となった詳しい背景は語られていないが、自作シングルでの不振からのak.hommaによる「メリッサ」「愛が呼ぶほうへ」のヒットがきっかけになったのかも不明。元々岡野昭仁、新藤晴一も作詞作曲をこなしており、新藤晴一は作詞で既に確固たるポジションを築き、当初は第4のライター的存在だった岡野昭仁が「音のない森」シングル採用に至るまでに急成長するなどこのまま行けば”メインライターはTama”という状況は崩れつつあったのも事実だろう。実際1stアルバムではメンバーで1人作曲していて確かにメインライターだったが、2ndアルバムで早くも他の2人が台頭、3rdアルバムでは昭仁が成長の兆しを見せつつも晴一作曲が無くなったので再度Tamaがメインライターの印象を残すも、4thアルバムでは4人がほぼ均等に曲を分け合う状態となっていた(Tamaは作詞をしないので他の3人と作曲数が同等か1,2曲多い程度ではTamaのクレジットが1番少なくなる)。

メンバーも考えを尊重するコメントを残しており、脱退後も過去映像を見た時には自然に名前を出す事もあり、SNSで写真を上げる事も極まれにあったりと交流は続いている。Tama名義でのソロ活動は引き続きソニーと契約、田村充義プロデュース体制となっていたが商業的には大苦戦となり、2010年頃から姿を見せなくなり10年近く音沙汰がない時期があった。2019年に白玉雅己名義で活動を再開、近年は配信でのソロ作品リリースが再度活発化しているようだ。

2025.2新規執筆

1st アポロ

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1999年9月8日/2006年3月29日(12㎝化再発)
作詞:ハルイチ、作編曲:ak.homma
モーニング娘。「LOVEマシーン」が初登場1位で年末にかけて大旋風を巻き起こしたのと同じ週に初登場76位。引っ張りに引っ張ってのデビューだった事もあってか割と新人バンドにしては最初から売り出す気満々な感じであちこちで曲がかかっていたような印象で2週目にはさっそく28位に急浮上すると16位、14位、5位5週目でトップ10入りし、8位、7位、9位、10位と刻みながらロングヒットし、100位以内24週40万越えのヒットを記録。前述の「LOVEマシーン」筆頭にヒット曲が多い時期ではあったが確かな爪跡を残した。次回作と並んで8センチCDだったため、2006年に2作まとめてマキシシングル化されており、この際には別集計で初登場29位から4週ランクインしている。

ド頭からキャッチーなメロディー、アポロを題材にしたユニークな歌詞の組み合わせがいきなり秀逸。デビュー曲候補は他にもあったようだが、なるほどこれは確かに最良のデビュー作だ。インパクトがありすぎてザ・1発屋感も同時に漂いまくり、実際多くのリスナーがグループ名もなんだかアレだし、ネタ的な1発屋になりそうだと思ったのではないか。

当初はアポログラフィティ、ポルノグラフィー、アポログラフィーなど正式なバンド名が覚えてもらえなかったりもした。グループ名で言うと略称として”ポルノ”が定着したものの、元々ポルノと言えば18禁なイメージが一般的であったため、2003年既に広く知られていた時期であっても大学の教授が「女子学生から提出されたレポートに「私はポルノが好きです」と書いてあり非常に驚いたがどうやらそういう名前の若者に人気のグループ名らしいと分かった」とか学生との世代差を感じる話を語っていたので世代間ギャップはずっとあったのかもしれない。

なおアポロが月に行ったのは”僕らが生まれてくるずっとずっと前”とされており、実際1969年、発売当時で30年も前なので確かにずっとずっと前ではあるが、メンバーは1974年生まれなのでそんなに生まれてくるずっとずっと前というほど昔ではなかったりもする。まあ生まれる前なんてもう全部”ずっとずっと前”という感覚ではあるのかもしれない(1985年生まれの筆者は1979年のサザンオールスターズ「勝手にシンドバッド」を”生まれてくるずっとずっと前”の曲だという認識ではあるし)。しかしこの曲からさらに25年も経過したが、その後誰も月に行かないのは一体どういうことなのだろうか。そろそろ”アポロが月に行った”という熱狂を体感した世代の高齢化が進み、伝説・神話化してきている上にアポロ100号どころか2度目の月が無い事でイマイチ歌詞の意味合いが伝わりにくくなってくる頃合いに変わりつつあるのではないかとも思う。

シングルバージョンは発射音から始まるが、New Apollo Project Versionでは発射音の前に英語の会話とカウントダウンの音声が追加されていてよりアポロ発射の臨場感(?)が増している。またエンディングがフェードアウトしていくシングルバージョンに対して、ちょうどシングルバージョンのフェードアウトが始まるくらいのタイミングでビシッと曲が終わりすぐ次の曲に繋がる仕様に変更されている。
★★★★☆
1stアルバム『ロマンチスト・エゴイスト』(New Apollo Project Version)
2ndベスト『PORNO GRAFFITTI BEST BLUE’S
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~

2nd ヒトリノ夜

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2000年1月26日/2006年3月29日(12㎝化再発)
作詞:ハルイチ、作編曲:ak.homma
今作も20万枚を越え、1発屋の危機が去るほどではないものの2作目として十分な合格点と言える売上を記録しているのだが、売上より遥かに1発屋っぽいイメージが進んでしまったのは初登場12位になってしまったため。サザンオールスターズ「TSUNAMI」、モーニング娘。「恋のダンスサイト」、椎名林檎「ギブス」「罪と罰」、鈴木あみ「Don’t need to say good bye」らとんでもない激戦週に当たり(ていうかモーニング娘。と2作連続同じ週…)、トップ5は堅かったTHE YELLOW MONKEYも9位に押しやられるような異常な高レベル週であり、初動6.9万枚も出ていたのに初登場12位である。2週前なら3位、前週なら5位、翌週はこの週の余波があったのでまだ高レベルだったがそれでも10位相当である。2週目14位、3週目16位と刻んで100位以内11週ランクインも十分なヒットとはいえ、初登場のトップ10落ちが響いた感は否めない。

2作目にして最後の8センチシングル。1998~1999年の宇多田ヒカルが両方出していて別集計されていた当時のO社チャートで目に見えてマキシが売れているのが明らかとなっていたためか、マキシシングルへの移行が急速に進んだ。前述の上位勢も「TSUNAMI」「恋のダンスサイト」は8センチだったがケースはマキシ仕様(「TSUNAMI」は初回盤のみで通常盤は8センチジャケット)、椎名林檎、鈴木あみ、イエモンもみんなマキシシングルだったので、新人のポルノグラフィティの方がちょっと遅れてるくらいの感じになっていた。

アニメ『GTO』2代目OP。初代のL’Arc〜en〜Ciel「Driver’s High」が16話までの使用だったのに対して今作は17話~最終45話まで使用された。元日の『CDTV』出演時には新曲としてもう披露していて、『GTO』でのOAは16日。初OA後の前週リリースにしていれば…。元々デビュー曲候補として「アポロ」より前にあったとされるが、デビュー曲選定にかなり時間をかけて吟味していた事と『GTO』タイアップとの兼ね合いから候補から外されたものと思われる。とにかく勢いがあってキャッチーなデジロックナンバーとして同系統ではあり、今作がデビュー作でもやはりいきなりヒットはしていたと思う。同じくデビュー候補だったとされる1stアルバム収録でライブ定番になり次回作C/Wにライブバージョンが収録されベスト収録もされているシングル以外での初期の代表曲「Century Lovers」だといきなりの大ヒットまで行かずそこそこ程度だったかなとは思うけど、いずれにしてもシングル級の候補曲は揃いに揃っていてその中でも超上澄みが最初の2作だったという印象。

冒頭の“100万人のために唄われたラブソングなんかに僕はカンタンに想いを重ねたりはしない”というのはミリオンヒット連発の時代が反映されており、要するに大ヒット曲に揃いも揃ってみんな共感している大衆を皮肉ったものなんだけど、わずか数年で100万も売れるシングルヒットが実質無くなってしまった。現在はストリーミング億レベルの再生数を競う時代となり、100万では記録にも残らないし、YouTube100万再生辺りもなんかそこまででもないのでピンと来ない(今でも達成できるレベル)。後追いほどなんだかピンと来ないフレーズになってしまったかもしれないが、当時はハルイチなかなか言うねぇ…という感じだったんだよ…。

年明けの『CDTV』出演時にいち早く新曲として披露した際は2番サビの歌詞が飛んで「歌詞忘れたぜベイベ」と言いながら1番の歌詞でもう1回歌っていた姿が妙に印象に残っている。最初のその時点で「アポロ」の1発屋にならない2枚目用意してんだなと思った記憶。確かシングル2作はレンタルもしなかったんだけど、チャートやTVで耳にしてとても良かったので『ロマンチスト・エゴイスト』はレンタル、以後シングルは全部レンタルするようになったという流れで聞き始めた。
★★★★☆
1stアルバム『ロマンチスト・エゴイスト
2ndベスト『PORNO GRAFFITTI BEST BLUE’S
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~

3rd ミュージック・アワー

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2000年7月12日
作詞:ハルイチ、作編曲:ak.homma
今作よりマキシシングルへ移行。C/Wが2曲以上収録されるようになった。また今作まで3作連続でBacking track(カラオケ)が収録されていたが今作を最後に廃止されてしまった(以後『今宵、月が見えずとも』、『青春花道』、『東京デスティニー』、『ブレス』アニメ盤のみで復活)。

「ポカリスエット」CMソング。起用されれば必ず大ヒットというわけではないが90年代ビーイング系での大ヒットが複数あったポカリタイアップでビーイングから離れた1999年もTRICERATOPS「GOING TO THE MOON」は自身唯一のトップ10ヒット、センチメンタル・バス「Sunny Day Sunday」は今でも夏の定番曲として残るほどの1発屋大ヒットを飛ばしていた。2000年はまずJUDY AND MARY「Brand New Wave Upper Ground」が起用されていたが最もOAされる夏の時期は今作だった。初登場8位を記録してトップ10復帰というまずまずの出足…だったが初動5.9万枚は12位だった前作より1万枚も低く、しかも前作と同じ週だったら同じ12位相当であった。今作はそこからロングヒットとなり6位→8位→6位→5位(最高位)→8位→9位と夏の間トップ10後半に居座った謎に8位を3回も取っている。次回作発売後も下位で売れ続けており、22週ランクイン46.4万枚となり、登場週数こそ2週及ばなかったものの累計売上では「アポロ」超えを達成。早くも1発屋ムードを吹き飛ばした。後年メンバーはこぞってアポロのイメージと戦っている時期で今作のヒットにより「アポロ」との闘いに終止符を打ったというような発言までしている事から1発屋の危機感は相当なものがあったと思われる。実際1発を越えられずに消えていく者、固定人気は獲得してその後も一定数のヒットを出し続けても結局最初のその1発を塗り替えるヒット曲は出せないままでいる者が大半のこの世界において、3枚目でもう越える大成功というのはかなりの快挙だったと思う。まあアミューズには圧倒的先例、1st「勝手にシンドバッド」が浮上型ヒットとなり大ブレイクし、2枚目がパッとせず3rd「いとしのエリー」で1st越えという偉業を20年も前に成し遂げていたサザンオールスターズ大先輩がいたので他社に比べるとそこまで奇跡ムードでは無かったかもしれないが…。

ラジオDJがラジオネーム恋するウサギちゃんからの恋愛相談に答えるというラジオ番組をそのまま落とし込んだ歌詞がユニークで、前作の100万人のくだりに続いてこの時点でハルイチの歌詞はユニークで面白いという作詞に対する一定の評価は得られていたんじゃないかと思う。1番のサビまでで回答を終えているため、2番では次のラジオネームが紹介さそうだが、そのまま恋するウサギちゃんのハガキ1通だけで1曲持たせているのが地味にスゴイ

投稿が”おハガキ”だったり、“ダイヤルをして”に時代を感じてしまうところはあるが、2000年時点ならメール投稿はもうあった。後者に関しては2000年時点で既にダイヤル式は相当古い珍しいものになっていたし、着信音が単音から和音に進化してきた携帯電話(後のガラケー)もかなり浸透してきて高校のクラスの半分以上が所持しているくらいにはなっていた。”ダイヤル”は電話をする事の慣用句として使用しているだけだろう(恋の電話相談企画なので「恋のダイヤル6700」のイメージもあった?)。サウンド面ではデジロック色の強い楽曲でメンバーのバンド演奏というよりかはテテーテテーと鳴り続けるギターと共にデジデジしたやかましい部分が目立つ感じではあるけど曲のインパクトがとにかく強かった。

通称”変な踊り”も有名だが、MVでは普通に歌唱していて、当時チャート番組で流れていたのはMVなのでヒットしていた当時は”変な踊り”の印象は無かった。”変な踊り”は事務所社長からの指示でフリを入れろと言われて嫌だったのでわざとダサい振付をツアーでやったところ浸透してしまった…と明かされている。手を左右上下にカクカク動かすという確かにあまり合ってないような大雑把なフリだが、サビ直前の歌詞を歌わずにわざわざ「変な踊りお願いします」とか「変な踊り行くぞカモン」とか必ず”変な踊り”と言いながら客を煽るもんだからそりゃ”変な踊り”浸透するって…。後年はTVでも必ずこれやってるし。

Ver.164は冒頭にラジオ番組風のジングルが加えられたもの。それ以外はシングルと同じようだ。Ver.164というのはlove up! Stationの部分を各地のラジオ局や番組名に置き換えたバージョンが多数存在するためで本当に164バージョンあるとかなんとか…。
★★★★☆
2ndアルバム『foo?』(Ver.164)
1stベスト『PORNO GRAFFITTI BEST RED’S
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”

4th サウダージ

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2000年9月13日
作詞:ハルイチ、作編曲:ak.homma
今作よりBacking track(カラオケ)の収録を廃止。代わりにC/Wがもう1曲増えて全4曲となった。ただし3曲目の「冷たい〜3年8ヵ月〜」と4曲目の「Search the best way」はメロディーが同じで歌詞とアレンジを変えた曲という試みになっている。また在籍時、作曲のみで単独作詞をしなかったTama(シラタマ)がハルイチと共同ながら唯一作詞に参加しているのが「Search the best way」である。

「ポカリスエット」CMソング。秋になるとこっちに引き継がれていたような記憶があるが、元々ポカリ用に作っていたが落選した曲だったようで、ポカリのライブに出演した際に発売前のこの曲も先行披露したところ気に入られて起用されたという流れだったらしい。今作の初動は12.5万枚で大幅に伸びたが、SMAP「らいおんハート」が空前の大ヒットで2週連続1位だったため、初登場2位となった(前作もまだ20位にいた)。翌週には14.1万枚に売上を伸ばして1位に浮上。初の1位となった。3週目は4位に後退したが新譜が強力だっただけで3週目も10万を越えており、3位→3位→5位→6位→9位と秋が深まっていく中で上位に居座る前作以上の大ヒットを記録。最終的に24週ランクインで98.2万枚、ミリオン目前の自身最大ヒット作となった。この時代のミリオン目前シングルはどれもそうだが、集計ボーダーだった100位でも1000枚以上は当然として2,3000枚は当たり前に出ていたので200位集計だったら積み上げてミリオン突破していたと思われる。前年の「アポロ」もあったし、前作のヒットだけでも十分だったと思われるが、今作の大ヒットが決定打となりNHK紅白歌合戦に初出場して今作を披露した。

前作でも大ブレイク感はあったが今作は聞いた瞬間になんかとんでもない名曲が出てきたぞコレ…という凄い感覚があったのを記憶している。「慎吾ママのおはロック」や「らいおんハート」と一緒にヒットしていた印象もあるのでこの辺りはセットで2000年秋の印象と共にある。あと老けメイクのMV。以後も秋のヒット曲、名曲率が高い気がする。デビュー日に合わせてシングルを出す機会が多いからかもしれないけど。

ラテンを取り入れているが、アレンジのベースになっているのは本間昭光の広瀬香美「promise」での成功経験が大きかったんじゃないかと勝手に思っている。失恋全開の切ない歌詞が女性言葉で綴られているので女性目線の曲という印象が自然にあるが、実際には”男にもある気持ちを女言葉で書いた”、”女の気持ちを書きたかったわけではない”と説明されており、男性の女々しい失恋の痛手を女性言葉で表現しているとする見方もあるらしい。ただまあ思いっきり私はかわいい女じゃなかったなんていう明確に私=女と明記した女性視点のフレーズもあるのでそんなややこしい解釈しなくてもいいような気もしなくもない。

“D” tour styleイントロにウッドベースが加わったもので前年のツアー「2ndライヴサーキット “D4-33-4″」で演奏していた。バージョン名はツアータイトルの”D4-33-4″に由来している。
★★★★★
2ndアルバム『foo?』(“D” tour style)
1stベスト『PORNO GRAFFITTI BEST RED’S
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”
配信(From THE FIRST TAKE)
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~

5th サボテン

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2000年12月6日
作詞:ハルイチ、作曲:シラタマ、編曲:ak.homma
初のメンバー自作曲での表題曲採用。クレジットはカタカナ名義のままだが、今作の歌詞カードではメンバー表記が岡野昭仁、新藤晴一、白玉雅己と初めてフルネームで表記された。シラタマって苗字だったの!?と思った記憶。メンバー3人の中では作曲に特化したメインライターという認識(当時)だったシラタマ(後のTama)による作曲。インディーズ時代から「小さな鉢のサボテン」というタイトルでの代表作の1つとされ、1stアルバム収録の話もあったというがみんなが聴いてくれる一番良い時期に出そうと温存されていた。前2作の連続ヒットを受けてこのタイミングでリリースされた。2作連続で前作が20位に残っているタイミングで初登場1位を記録。初動13.0万枚は前作を上回り、4位→4位→6位(合算週2週分扱い)→9位→10位と何気に7週もトップ10に残っていたがその後はストーンと落ちて12週ランクインに留まり、累計は47.5万枚となった。

売上的には自作曲ではダントツ最大、全体でも3番ヒットとなったので、”みんなが聴いてくれる一番良い時期”という目的は成功した。ただこの後ak.hommaに戻した次回作「アゲハ蝶」が「サウダージ」と双璧の大ヒットになった事もあって90万台2トップの間に挟まされた半分程度の3番ヒット曲となり、思いっきり霞んでしまったところがある。代表曲を上げると到底3番目には上がらず影が薄くなってしまったのは否めないか…。

圧倒的代表曲群のインパクトには及ばないが飽きずに繰り返し聞ける良曲。改めて思うのは耐用年数が長かった。他のヒット曲はインパクトの強さゆえにちょっと飽きてしまう時期もあるが、この曲はいつ聞いても違う味わいがあって良い。季節的には秋冬の空気感が合うかなというところはあるか。アコースティック/エレキ両方のギターの存在感が絶妙なアレンジだ。3人の中では当初シラタマ(Tama)がメインライターだったというのも確かにうなずける。

C/W(4曲目)には別バージョンの「サボテン Sonority」が収録されており、歌詞が過去形、アレンジがよりおとなしめのアコースティックサウンドに変更されている。これもまた違った味わい。

『foo?』収録時にミックスを変更していると当時FC会報で言及があったらしいが違いはほとんど感じられない。強いて言うならわずかに演奏に多少厚みがあるか…?とも思うが、『foo?』がかなりのぎっしり波形で次に収録された『BEST BLUE’S』が最も抑えめ、15thベストでまたぎっしり、『全書』でまた抑えめとマスタリング傾向だけでも毎回そこそこ違うので良く分からん…。
★★★★☆
C/W(Sonority)
2ndアルバム『foo?』(表記は無いがミックス変更)
2ndベスト『PORNO GRAFFITTI BEST BLUE’S
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~

6th アゲハ蝶

B00005L9L7
2001年6月27日
作詞:ハルイチ、作編曲:ak.homma
資生堂「ティセラ・トコナッツココナッツ」CMソング。発売前から前評判が高く自身最大の初動17.6万枚初登場1位となり2週目も14.8万枚だったが強豪が多かったので4位→3週目も11万で4位→4週目も10万で3位となり4週連続で10万枚を超える売上を記録、その後も4位→6位→9位→5位と8週連続トップ10入りして夏を駆け抜けると年明け2月までロングヒットして28週ランクイン。200位以内に集計が拡大した2003年、2004年の1~2月に合計3週再ランクインして暫定31週ランクイン、91.8万枚の2番ヒットとなった。100位以内の登場週数では今作が最大のロングヒットとなる(200位以内フル集計で「メリッサ」が今作を越えているが「メリッサ」の100位以内ランクイン週数は今作を下回る)。2001年よりミリオンヒットが一気に出なくなった影響で今作もミリオンに届かなかったもののO社年間10位に食い込んで唯一の年間トップ10ヒット作となった。一方でMVが制作されずタイアップ先のCM撮影を兼ねた1分程度の歌唱映像しか存在しない。Viewsic(現M-ON!)とかスペースシャワーTVのMVフルで流す長尺ランキング番組ではショートで流してお茶を濁していたが、『CDTV』等の地上波歌番組のランキングでサビだけかける際にはこれだけでも十分だったのでフルサイズが存在しない事を知らなかった人も多い。前作から今作まで半年間リリースは無く、次のシングルやアルバムまでもそんなに間隔が迫っていたわけではないので制作やTV出演に追われていたというほどではなさそうだが、ツアーが3月末~6月頭だったので、ツアー終了から発売までの間に時間が無かったのだろうか。

ソニー系が一時マキシシングルのケースをCD-Rのような薄型ケースに変更していたため今作よりしばらく帯がないと背文字が無くて何のCDなのか分からない仕様のケースが続く。これマジで迷惑なんだよな…割れると交換ケースも見つからないし…。ケース変更に合わせて今作よりお値段そのままに基本的に表題+C/W2曲(両A面は表題2+C/W1)の全3曲仕様となった。前3作より1トラック減ってるじゃねーか

再びak.hommaの曲に戻り、「サウダージ」に続くラテン系の必殺チューン。3曲目の「狼」が当初のシングル候補だったというから次のシングルはラテン系で行くのは決まっていたようだ。いかにもラテンといった感じではなく、サンポーニャやケーナなど民族楽器を取り入れた事で不思議な温度感の日本の夏っぽくはないどこか異国の夏のような夏曲になっているように思う。畳みかけるようなサビのメロディーは圧巻で2度目の夏に「ミュージック・アワー」の印象を軽く越えていって新たな夏の代表曲を生み出し、人気面でも頂点に達した感がある。終盤リフレインしている民族的なラララ合唱は広瀬香美「promise」のアレンジで本間昭光が得た成果と思われ、かなり雰囲気が似ている。

あとただでさえ早くて高い曲なのにカラオケでテンポMAXにして歌うという頭オカシイ暴挙に走った奴に1度だけ遭遇したことあってスピード感が凄くて面白かったのが妙に印象に残っている。

Red Mixは主にパーカッション周りの音色が増強している。ドラムは打ち込みでパーカッションが三沢またろうなのは変わっていないが、シングルの方がリズムの打ち込みっぽさが強く、Red Mixの方が生音部分を強調したミックスにしているっぽい。
★★★★★
3rdアルバム『雲をも摑む民』(Red Mix)
2ndベスト『PORNO GRAFFITTI BEST BLUE’S
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”
53rdシングル『解放区』C/W(From THE FIRST TAKE)
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~

7th ヴォイス

B00005NYQM
2001年10月17日
作詞:新藤晴一、作編曲:本間昭光
「サボテン」歌詞カード内でメンバーのフルネームが漢字表記された事があったが、今作では作詞作曲のクレジットが最初から苗字と名前の漢字表記に変更された過渡期のシングル。本名だとは実は言ってなくて特に“晴一”は芸名とされる。Amazon Musicの歌詞表示で使用されているMusixmatchでは一部の曲の末尾の作者のクレジットが“Fumiaki Shindou (pka Haruichi Shindou)”になっていたりもする。ak.hommaも”Akimitsu Honma (pka Ak.homma)”になっているが、クレジットネームと本名らしき名前を併記してMusixmatchに登録した者がいたというだけの話で公式発表や公式登録ではなさそうだ。C/W「ライオン(LIVE!)」はカタカナ時代の楽曲であるため変更されずカタカナ表記のまま。またもう1つのC/W「Swing」が岡野昭仁の作詞作曲だったので、楽曲クレジットでは岡野昭仁、新藤晴一の名前が表記されているが、白玉雅己の作曲はシラタマ時代の「ライオン(LIVE!)」だけ、次回作よりTamaに改名となったので“作曲:白玉雅己”のクレジットは出ないままとなった。今作での名前表記に合わせてak.hommaも本間昭光名義になっているが、これは今作限定。既に名の知られていた本間昭光が先入観を持たれないために別名義を名乗っていたというような理由だったと思うんだけど今作でしれっと正式に正体を明かしたとも言える。今作のクレジットは『雲をも摑む民』始めベスト盤収録時でも変更されずに律儀にこのクレジットのままとなっている(『RED’S』は編曲が一括表記なので本間昭光表記は無い)。初動15万枚は自身2番目だったが、hydeに及ばず初登場2位。3週トップ10入りして100位以内13週ランクインで35万枚弱の売上。”上がり”を迎えた感じの推移となった。

初のバラード系シングル。秋に似合う感じのミディアムナンバーで、本間昭光の全盛期だけにグッと掴まれるメロディーはさすがだが、これまでのヒットの流れから一気に落ち着いた感じもある。どこか不安な感じがするイメージがずっとあるのは個人的に沖縄への修学旅行の飛行機内でイヤホンから聞く事が出来たいくつかの曲の1つにこの曲が含まれていて飛行機の緊張感(911テロ直後だったので)と重なったためだろう。
★★★☆☆
3rdアルバム『雲をも摑む民
1stベスト『PORNO GRAFFITTI BEST RED’S
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~

8th 幸せについて本気出して考えてみた

B000062SEB
2002年3月6日
作詞:新藤晴一、作曲:Tama、編曲:ak.homma,ポルノグラフィティ
「サボテン」以来の自作表題曲。前作での本名表記への変更からさらに修正され、”岡野昭仁”、”新藤晴一”はそのまま継続、白玉雅己(シラタマ)はTamaに改名。何故かまだ同じソニー系列で現役活動中だったHysteric BlueのボーカルTamaと表記丸被りとなったがその辺り確認や調整とか無かったのだろうか…と当時かなり気になった。TRFのYU-KI/JUDY AND MARYのYUKI/Whiteberryの前田由紀/SHAKALABBITSのUKIとか同じソニー系列ではJUDY AND MARYのTAKUYA/Hysteric Blueのたくや/UVERWorldのTAKUTA∞とみんな表記変えて調整していたのに。一方で本間昭光は再びak.hommaへと戻した。以後ポルノグラフィティにおいては最後までak.homma名義となった。加えてak.homma単独だった編曲がポルノグラフィティとの連名表記となり、以後3人時代は”ak.homma,ポルノグラフィティ”で固定した。編曲でのバンド名の表記はこの後も節目節目で変更されていく。ここまでほとんどの楽曲が打ち込みドラムとなっていたが、生ドラムが使用された表題曲は今作が初となる。以降は生ドラムによるバンドサウンドが基本となった。

一気にロックバンド感が増した爽快ロックナンバー。バンドサウンドとストリングスの絡みが絶妙。いきものがかり以降の本間昭光にはストバラアレンジャーとしてストリングスをマストで使いまくる印象しかないが、当時は生音よりも打ち込みメインの印象が強かったのでかなり新鮮だった。「幸せについて本気出して考えてみた」というタイトルもインパクトがあり、これ以降しばらくネットミーム的に“○○について本気出して考えてみた”みたいなのが流行っていたし、今に通じる“○○してみた”系も子供の頃にこの曲に触れた世代が自然に使い出したんじゃないかとも思う(そこまで影響力は無いか?)。マイケル・ジャクソンが絶妙に世代ではなく、当時なんかスキャンダルに追われている80年代に人気絶頂だった昔の人くらいの認識しかなかったため歌詞中の“マイケル的生活”が最初どんな生活なのかイマイチピンと来なかった。そもそもまだまだ”小僧”だった高校2年生の終わりの時に聞いているので、歌詞の意味が本当に沁みてきたり、幸せについて本気出して考えてみる事になるのはやはり“マイケルにはなれなかった”事や誰だってそれなりには頑張っていて時々はそのそれなりも褒めてほしいとか見え隠れする本音の部分に共感できたのはもう4,5年後の事だった。

アルバムバージョンでは冒頭に新たな1行が加えられているが、これは前年のライブで披露した原曲「コメディ2001」のサビ部分とされる。イントロ突入後はたぶん同じ。
★★★★☆
3rdアルバム『雲をも摑む民』(アルバムバージョン)
1stベスト『PORNO GRAFFITTI BEST RED’S
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~

9th Mugen

B000065VP4
2002年5月15日
作詞:新藤晴一、作曲:ak.homma、編曲:ak.homma,ポルノグラフィティ
C/Wに新曲、ライブ音源、インスト曲が収録された全4曲仕様。

2002 FIFAワールドカップ NHK放送テーマソング。ややこしいがC/W「Go Steady Go!」は2002 FIFAワールドカップ NHK放送“イメージ”ソングとなっていて謎に使い分けされていたがメインのテーマ曲としては「Mugen」が主に使用された。初動7.7万枚で初登場3位と当初は楽曲の異色さからあまりウケが良くない様子で2週目11位→12位とあっさり下がってしまったが日韓開催のサッカーW杯という事で5月末の開催から日本がベスト16まで勝ち進んで大いに盛り上がりると、4~6週目にかけて8位→7位→7位と再浮上して100位以内13週ランクイン、2003年度200位以内集計拡大以降に再浮上して紅白出演効果で100位以内にも一時再浮上した事で暫定合計24週ランクイン、25.7万枚のヒットとなった。前年までに比べると非常に低い売上に感じるんだけどますます全体の売上が落ちてたので、年間チャート時点での24.6万枚は2年前なら年間100位に入らない数字だったのがこの年は年間46位だからそんなに悪いわけではない。

熱狂は当然意識しつつも勝者と敗者の光と影にも焦点を当てようとしたため、ウォウウォウパートなど何も考えずに聞けば熱い部分もあるんだけど、歌詞はいきなり暗闇を恐れているところから始まったりとクールな部分も目立ち、サビの”幻想とじゃれ合って 時に傷つくのをあなたは無駄だと笑いますか”とか、正直スポーツ系タイアップではかなり変わった曲だと思う。「無限」だけでなく「夢幻(ゆめまぼろし)」とも歌っていて、ストレートな熱狂オンリーの熱い応援歌っぽい曲を明らかに避けているのはいかにも晴一らしいひねくれっぷり。どこか盛り上がり切らない微妙さがどうにもしっくり来なくてW杯の盛り上がりで再浮上した時もマジか…と思ったし、当時はあまり好きな曲にはならなかった。今回久々に聞いてみたらW杯と切り離されて、派手なブラスサウンドもこの歌詞も何だか妙にしっくりくるようになっていた。

4曲目に収録されているOrchestra Versionは文字通りにオーケストラ演奏によるバージョンだがインスト曲で歌は入っていない総勢40名、ストリングスだけで27名、アレンジを担当した朝川朋之によるピアノとハープが入っている事は田村充義のコメントで明かされているが、当時のシングルに演奏クレジットは無いため詳細は不明。朝川朋之とストリングス27名以外の残り12人は何をしているのだろうか。オーケストラをバックに歌っているバージョンなのかと思って聞いてみたらメロディーもオーケストラが奏でていてインストだったのかよ!と思った記憶。
★★★★☆
4thアルバム『WORLDILLIA
1stベスト『PORNO GRAFFITTI BEST RED’S
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~

10th 渦

B000EBCLAW
2003年2月5日
作詞:新藤晴一、作曲:Tama、編曲:ak.homma,ポルノグラフィティ
2003年1月よりソニーは独自のCCCD、レーベルゲートCDを導入。秋にはネット認証機能を導入したレーベルゲートCD2に進化させたことに伴い2004年7月頃にレーベルゲートCD2で一斉再発、直後急転直下でCCCDを推進していたエイベックスが内紛社長交代劇で新社長となったMAX松浦の方針転換(弾力化)を受けてソニーは明確な撤退・終了を宣言し、9月後半頃から全て普通のCD発売に戻した事で、2006年1月に通常CDで一斉再発した。よって今作、「音のない森(通常盤)」「メリッサ」の3作はレーベルゲートCD、レーベルゲートCD2、通常CDで3回も発売し直される事態となった。そのタイミングでたまたま欲しくて買ったという以外にレーベルゲートCD2を買い直すようなリスナーは皆無と思われほぼ出回っていないが、レーベルゲートCD/2が不便なため通常CDで買い直しておきたい需要はそこそこあったと思われ、通常CD盤が中古屋に紛れている事は稀にあるような印象。品番は当然違うし特有のCCCDマークの有無などでも見分けが可能だが、帯の裏の部分がレーベルゲートCDの説明を長々と記載するために少し広めのスペースになっていて通常CD再発盤では説明が消し去られて帯裏がごっそり空白になっているので見分けやすい。

前週の宇多田ヒカル「COLORS」、大ヒットモード突入のRUI「月のしずく」に及ばず初動7.5万枚で初登場3位。初動こそ前作並ではあったものの月末にはアルバム『WORLDILLIA』が控えていたのもあって16位→30位と真っ逆さまに急落してしまい、100位以内ではここまで最低の5週ランクイン、200位集計でも7週というここまでの最低を大幅更新となり、累計10万程度に留まった。

3度目の自作曲。ドラマ『スカイハイ』OP。好評で年末から翌年にかけて映画と『2』まで一気に作られた。3作それぞれ主人公イズコを演じるのは釈由美子だが3作全てイズコになった経緯が異なっていて同じイズコでも別人というパラレル設定で話に繋がりが無い。GLAY『時の雫』が主題歌だったのは『2』の方でこの時は主題歌は1曲だったが、この1作目はOP/EDが別々にあった(エンディングはwyolica)。一応タイトルバックやキャスト表示もあったが、OPでの今作はいきなりサビ→アウトロで演奏終了というサビのみの構成だった。この曲自体暗めで抑えた平メロからサビで力強く歌い上げるサビのインパクトが特に強く作られた曲だったのでOPで毎回かかっているのはそれなりに印象に残るものだったし、何らかの理由で死んだゲスト死者が毎回死後の世界である「怨みの門」を訪れて天国へ行って再生を待つか、現世を永遠に亡霊として彷徨うか、誰か1人呪い殺して地獄へ行くか問われるところから始まるというドラマのおどろおどろしいOPに物凄くハマっていた

冒頭からドラムが左・中央・右でそれぞれ鳴りまくるというステレオ感のある複雑なサウンドが印象的。この左右に動き回るように聞こえるドラムや昭仁と晴一の左右のギターはどこか”渦”を思わせるようにしているのだろうか。歌詞でも”渦”に言及しているが、“渦”が登場するのは1番Bメロのみ。色々とこだわりを感じられる深い1曲だ。ブラスサウンドも印象的だが、これはシンセブラスとされる。ただトランペットだけはTamaが担当している事が田村充義のコメントにて言及されている(『全書』にも記載)。いわゆる暗黒時代的な括りになりそうな暗く重い曲ではあるけど、ドラマを通して聞いたせいか当時からこれはこれでありというか売れはしないだろうけど好きな曲ではあるというポジションの曲だった。固定ファンがもっとついていてこういう曲でも問題なくもっとヒットしたり評価される状況になっていればだいぶ変わっていたのかなという気はする。

Helix Trackはミックス変更で演奏の響きがやや異なる。サビ以外のボーカルの処理はかなり異なっていてややエフェクトがかっているほか全体のバランスもボーカルやベースドラムはやや後退、ギターは少し目立つようになっている。ドラムはかなり複雑にドカンカンドカンカン鳴らしていた間奏部分でもやや抑えているので全体に他を喰っていたような目立っていた部分を抑えて整理した感じかな。なおここまで4作のアルバムでは意識的か偶然か必ず2曲はアルバムバージョンにしていたが、これを最後にアルバムバージョンはほぼ制作されなくなった(明確に表記があるのは「2012Spark」だけ)。
★★★★☆
4thアルバム『WORLDILLIA』(Helix Track)
2ndベスト『PORNO GRAFFITTI BEST BLUE’S
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~

11th 音のない森

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2003年8月6日
作詞作曲:岡野昭仁、編曲:ak.homma,ポルノグラフィティ
岡野昭仁が初の表題曲採用となり、作詞作曲を両方手掛けた。これにより新藤晴一が作詞ではない初のシングルにもなった。タイアップなしで楽曲勝負したいという強い意向でリリースされ、1曲目「awe」、3曲目「sonic」というInstrumental(いずれも昭仁作曲)を挟んだ組曲的な構成となっている。初の初回盤DVD付(デジパック仕様)となり、DVDには3曲連作でのMVを収録、音と映像で世界観を堪能できる仕様となっていた。レーベルゲートCD2、通常CDでの再発は通常盤のみが適用され、初回盤は”レーベルゲートCD+DVD”仕様しか存在しない。これまでより売れない事は承知の上でそれでも今やりたい曲としてリリースした経緯もあり初動は5万台に低下、初登場5位から100位以内は4週しかランクインできずに急落したが200位以内ではその後9週も粘り合計13週ランクインとなった。累計は7.6万枚前2作の初動並に落ち着いた。

「awe」「音のない森」「sonic」とシングル盤で聞くとより浸れるが、2003年夏の曇天続きのスッキリしない空模様を思い出す1曲。偶然にも2003年夏の空模様とジャケットのイメージが合致した。ギターをガンガンに聞かせた重めのロックサウンドでこれもいわゆる“暗黒時代”的な1曲だが、不思議と惹かれる1曲。C/Wやアルバムで徐々に存在感を見せていたがこの時点ではソングライターとしては3番手っぽい立ち位置で、曲よりボーカルが評価されていた岡野昭仁の作詞作曲がいきなり表題採用という急成長も見逃せない。メインライターとされていたはずのTamaは確かにいち早く自作でのシングル採用があったが、昭仁と晴一の作曲も増えてきたのでアルバム単位で見るとTamaが明確にメインライターと言うほど作曲数が多いわけでもなくなっていてバンド内のバランスも変わりつつあった時期だが、1年後にTamaが脱退してしまったのを思うとここで自身の曲ではなく岡野昭仁のA面採用と急成長っぷりを見たTamaは何を思ったのか。ak.hommaのような売れ線ではないけどシングル曲としてはちゃんと強さもある確かな表題曲ってけっこう当時のメンバーが目指したかった部分でもあるだろうし、それを見事に実現した1曲だと思う。
★★★★☆
2ndベスト『PORNO GRAFFITTI BEST BLUE’S
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~

12th メリッサ

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2003年9月26日
作詞:新藤晴一、作曲:ak.homma、編曲:ak.homma,ポルノグラフィティ
前2作での低迷が響いていて初動5万枚と実は不振だった前作すら若干下回っていた初登場2位、そこから数万程度の売上を刻み続けて6位→3位→2位→5位→6位→9位と怒涛のロングヒットとなった。年末にかけて20位前後までゆっくり落ちていくも年明けに再浮上して7位(合算週)、9位とトップ10復帰してその後もロングヒット、100位以内でも24週の自身最長、200位以内で38週ランクインとなった。一方で「アゲハ蝶」以前のように上位ランクイン時に週単位で10万ずつ積み重ねるような数字ではなく数万枚を積み上げる程度にまで全体のCD売上レベルが低迷していたため、累計は37.1万枚と初期ヒット群には及んでいない。翌週リリースの中島美嘉「雪の華」と一緒にロングヒットモードになって2003年秋を代表するヒット曲になっていた印象。

アニメ『鋼の錬金術師』OP。ソニーが連発していたアニメタイアップの中でも最高峰である土曜夕方6時、通称“土6″枠で1つ前の『機動戦士ガンダムSEED』が当たり、続けて今作も当たり、その次の『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』も当たって主題歌が次々とそのアーティストの代表曲、最大ヒット化しまくる現象が多発した。ak.hommaによる売れ線ヒットチューンに戻したのもあるが、低迷しかけていたところでの今作の復活ヒットは翌年のベスト盤の大ヒット、不安定だった固定ファンがより強固になるきっかけにもなった。

前2作もけっこう好きだったけど、リアルタイムで聞いていた時、サビ始まりでの“帰ってきた”感は圧倒的だった。もちろん単独で聞いてもいきなりのサビのメロディーで鷲掴みされるような圧倒的これぞヒット曲といえるヒット曲だ。これが控えていたから2003年前半は自由にやれていたのか、シングル2作自由にやらせたんだからak.hommaでヒット曲を作ってくれ的なテコ入れになったのかは不明だが、いずれにしても挑戦を重ねた事で新たな一面を見る事ができたし、それがあったから王道ヒットがより輝くという最高の流れだった。Tamaのベースラインがいつもよりフューチャーされているのもポイントか。

一方で自作のC/W「見えない世界」「月飼い」と3曲合わせて”月”がテーマになっているなど前作で見せたシングル1作通してコンセプトを提示する試みもさらっと継続するなどアーティスト性も見せている。今作がキャッチーすぎるのでどうしても霞んでしまうが、シングル盤で3曲通して聞くと当時ならではの味わいを感じる事が出来るし、それをするには9~10月がよく似合う。
★★★★☆
2ndベスト『PORNO GRAFFITTI BEST BLUE’S
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~

13th 愛が呼ぶほうへ

B000BV7XGW
2003年11月6日
作詞:新藤晴一、作曲:ak.homma、編曲:ak.homma,ポルノグラフィティ
レーベルゲートCDは”元々ネットワーク認証型CCCD”として発売したもので専用音源(圧縮)をインターネットを通じて認証しないと再生できなかったため、ネット認証なしで専用音源を直接再生できるように改良したレーベルゲートCD2に進化。この11月6日発売のソニー系列のシングルから”2″へ移行した。なおどっちみちザル機能で一般的な普通のPCで普通のリッピングソフトを使えば普通にコピーできたため(ドライブに過度な負担はかかるが)、クソ真面目にレーベルゲートCDの機能を利用していたユーザーはほぼいなかったと思この”2″になってから翌年1月よりアルバムにも採用を開始したが結局1年経たずに撤退した。今作と『BEST RED’S』『BEST RED’S』「シスター」は撤退後に通常CDで再発されているのでレーベルゲートCD2と通常CDの2種存在する。

前作が7週連続トップ10入りしていた7週目9位にランクインしている週に初登場3位を記録して2作同時トップ10入りとなった。前作のヒットにより初動7.5万枚に回復し、今作も6位→4位→6位→8位→4位→5位→5位(合算2週分)と刻みまくる9週連続トップ10入りとなり、トップ10だけなら前作を上回った。100位以内16週、200位内24週と以降のロングヒットでは前作に大きく及ばなかったが累計29.7万枚、2作連続の大ヒットとなった。前作も今作も年間チャートでは分断されてしまっていて上位ではないし、急速に全体のCD売上が激下がりしていたのもあって「アゲハ蝶」までの数字には劣ってしまうが、1度落ち着いた後の第2の黄金期のような勢いがあった。

TBS日曜劇場ドラマ『末っ子長男姉三人』主題歌。日曜劇場、家族、心あたたまるといったキーワードのみで台本もドラマタイトルしか知らされていない状態で歌詞が書かれたとされ、”愛”の視点で”愛”からのメッセージが歌詞になっているという愛を擬人化したユニークな歌詞が印象的なミディアムナンバー。「ヴォイス」がもう1つしっくりこなかったのもあったが、ak.hommaのアップテンポではない曲としては今作がダントツで完成度が高いように思う。年末ミディアム~バラード系のシングルには当たりが多い。改めて作詞家新藤晴一の個性も際立った。

社会人1年目のクリスマスを描いたC/W「Hard Days, Holy Night」も秀逸だった(珍しくC/Wでも晴一×ak.hommaによる表題曲並のキャッチーな曲でもあった)のでシングル盤としての印象も強い。
★★★★★
1stベスト『PORNO GRAFFITTI BEST RED’S
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~

14th ラック

B0000TPUJC
2003年12月3日
作詞:新藤晴一、作曲:Tama、編曲:ak.homma,ポルノグラフィティ
翌日12月4日から始まるツアー「6thライヴサーキット “74ers”」の“プレカット・シングル”という謎の形容で発売されたレーベルゲートCD2+DVD(デジパック仕様)の限定盤シングル。通常盤が存在しない。通常盤が無いのでレーベルゲートCD2撤退後の正規CDでの再発がされず、ポルノグラフィティ全CD作品で唯一コピーコントロール盤(レーベルゲートCD2+DVD)のみでしか存在しない作品となった(C/W2曲は通常CD化されずじまい)。C/W「Theme of “74ers”」「Anotherday for “74ers”」共にツアーを意識したインスト曲だが、「Anotherday for “74ers”」の方には英語詞が少しだけあるので厳密にはインストではない。

DVDには「Planning Document of “74ers”」(インタビューやレコーディング、過去ツアー映像ダイジェストなど)を収録していたようだが、レンタル版では抜かれていた(レンタル用が制作されるのではなく単に店側がレンタル禁止のDVDを抜いた状態で出していたような記憶)。前作の5週目8位にランクインしている週が隙間週で強敵がおらず初動5.9万枚で「アゲハ蝶」以来4作目(初登場では3作目)となる初登場1位を記録。2週目も3位に残り、2週連続で2作同時トップ10入りを達成し、3週目も10位に残っていたが年末年始にかけては品薄になったのか一挙急落して8週ランクイン累計10万割れとなった。

数少ない1位獲得作だが、前述のようにラッキー1位であり、ヒット曲としてはあまり認識されていないと思われるマニアックなロックナンバー。2作王道ヒットチューンを出した後にこういうガツンとした曲を持ってくるのは面白かったし、これがやれていたのはこの2003年だけだったと思う。Luckかと思いきやLack欠落感を連呼するロックナンバーがTamaの最終楽曲になってしまったわけだけど、最後のつもりで用意したわけではなかったと思われ、5月にはレコーディングを終えてタイミングを見ていたとされる(ボーカルは10月に再録)。まあ今作があったのに見送られて昭仁曲の「音のない森」が先にシングルになったのでメインライターとされていたはずのTamaとしては思うところはあったのかもしれないし、『ポルノグラフィティ全書』のコメントで晴一が“「ビタースイート」やこれやこういう曲ばかりやるバンドになりたかったな”と意味深な一言コメントを寄せているところも含めて色々気になるところではある。1人のミュージシャンとして大きな岐路だったのは確かだろう。

毎回これだとさすがに人気はもっと低迷してしまったとは思うが、2003年のあらゆる面を見せてくるスタイルは2003年だけのものだったし、そういうバランス感覚で3人で進んでいく未来は全く違ったものになっていたかもしれない。
★★★★☆
1stベスト『PORNO GRAFFITTI BEST RED’S
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~

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