旅の記録 嵐山渓谷

12月上旬、今年最後の紅葉でも見に行くかと思い立って行ってみた。

「嵐山」といえば京都が有名だ。しかし埼玉にも「嵐山」はある。京都は「あらしやま」だが埼玉は「らんざん」である。関越自動車道にも「嵐山PA」があるし、2004年には「嵐山小川IC」も開設されたのでそれなりに知られているはずだ。「嵐山渓谷」とはそんな埼玉県の嵐山にある渓谷であり、埼玉県を代表する景勝地のひとつ嵐山町も仰っているのである。

だが続けて説明を読んでみると『地名の由来(京都の嵐山を思わせる景色)』と思いっきり京都の嵐山が由来である事、さらには昭和3年に「武蔵嵐山」と命名されたという意外と歴史があっさい事、命名前は「秩父の長瀞岩畳に例えて「武蔵長瀞」と呼ばれていたこともある」などとどこまでもオリジナリティーが無い事がしれっと書かれているような気がするのは気のせいだ。きっと気のせいだ。

しかしそんな埼玉県を代表する景勝地のひとつであるにも関わらず、なんとなく通りがかった時にそんな名称があるのは目にしていたもののどんな場所なのかは知らなかった。もちろんそれなりに有名ではあり、紅葉のシーズンは特にそれなりににぎわうし、先の紹介ページの最下部にあるバーベキュー場は夏は大賑わいな観光地ではある。まあ夏は緑豊かな風景に反して標高が無いので余裕の連日猛暑日になり避暑地としてはあまり機能しなかったりはするけどな(川に飛び込む以外に避暑する方法無し)…。

地図の右上の国道254号(先日の道の駅「和紙の里ひがしちちぶ」へ行く時、おぎのや&道の駅 みょうぎの帰り道でも使用)から「嵐山農産物直売所」で昼飯を調達しながら左折して進行、トイレ&20台表示のあるPを出発地点としてハイキング開始。いきなり駐車場満車という憂い目に遭うが、よく見たら上側に1台だけ空いていた。

というわけでいきなりこの山 の 中 に い る 感。マップでもここから展望台まで川沿いを歩いているように見えるが実際にはいきなりガッツリ高度を稼いだところから始まるので川は遥か崖下であり、ほとんど見えない。単なる山道を歩いていく感じ。嵐山渓谷ェ…

こんな感じでザ・紅葉という感じのもみじはチラホラと拝める。なおこの時点で早くも暑くなり、3枚着ていたうちの上着は腰へと移動した。そして「展望台」に到着。展望台と言っても既に川から見ればそこそこ高台であり、展望台に上がらずとも下からでもこんな景色で川は下に見下ろせる。

展望台に上がらずに展望台の前から撮影したものである。既にこの景色なのに上っても角度が多少変わる程度で眺めが大きく変わったりするわけではなく、その先ものっそり山がそびえ立っているのでさらに遠くが見えるわけでもない。ぶっちゃけちょっと空間あるから立ててみただけで「展望台」として展望の役目を果たせているのかは謎である。

で、展望台はこれ(前の写真はこの展望台の先で撮影したもの)。


この場所が最も賑わっていて、展望台も埋まっていた上にその横のスペースでは野外ウクレレ教室が開かれており、顔パンマンズ(顔パンツヒューマンの略)がウクレレ演奏して歌っているという楽しそうなんだけど息苦しそうな光景が広がっていた。オカリナ教室だったらよかったのにねぇ…。

与謝野晶子の像があるという方向は少し行ってみたが紅葉終わり気味っぽいのと結局引き返すことになるのもあり、2度目以降に取っておく事に。またマップをよく見るとちょろっと黒線が出ているがこれもなんだかよく分からなかったのでスルー。しかしこれこそが「嵐山渓谷」の最も渓谷っぽい岩畳があるところまで下っていくルートだったのだろうか。現地ではなんか良く分からない感じで誰もそっちに進んでいかないし、なんか紅葉の終わった枯れ木地帯を周遊するオマケコースみたいな感じで何のアピールもされていなかったのでその先がどうなっているのか分からなかった。これも2度目以降の宿題だな。

ここから向かったのは「冠水橋」。途中にまた綺麗な紅葉。

冠水橋とは増水した時にそのまま沈んで大丈夫なように設計されている橋の名称で、埼玉県の他の場所にもいくつかある。しかしここはなんとまさかのそのまま「冠水橋」。観光協会の方のホームページではトップ画にしているほどだが、実際にたどり着いてみると…。

うん、

反対から見ても、イエス!橋

橋の上から見ると穏やかな川

うむ穏やか

といった感じでまあ普通の橋。通常時の水位があまりに低すぎるため、冠水橋と言われても冠水時の様子が浮かびにくい。とはいえ大自然の中にいるという気分は存分に味わえるし、これが大観光地まで遠征しなくてもこんな街からすぐのところにふいに極まっているというところで感動的な部分もある。

なお橋の先は暗い森林地帯でキャンプ場にもなっていたが進んでも森の中を遠回りしていくだけなのでやはり人は誰もいなくて橋を渡ってすぐ戻ってくるというのが基本ルートになっているようだった。

冠水橋を戻ってさらに下流へ進んでいくと、いよいよ見えてきた。

嵐山町の観光協会ではあまり推していないが、じゃらんの観光案内ではトップに使用されており、個人的にも「展望台」や「冠水橋」よりも遥かにこれがこの地の最大の目玉だと思った。飛び石による川渡りである。

向こう側はそのまま河原になっているが、こっちからは階段を下ると始まる。

まさに川渡り。先ほどの冠水橋はそれなりに増水しないと冠水しない高さだったがこれはちょっと大雨で増水すればあっという間に川に沈む。しかもそれなりの広さはあるものの、すれ違うには狭いし、濡れていたり、足がもつれるとうっかりドボン、しかも確実にどこか打ち付けて激痛、激痛のままプカプカ流れていってしまう可能性もなくはない。先ほどの冠水橋方面の上流がこれ。

そしてこっちが下流。このまま対岸(右)側を進むとバーベキュー場。つまりバーベキュー場に直接来た客は上流へ向かうとこの飛び石地帯に来ることができる。またこの写真の右の森に少し上がっていく道があり、ランチやってます看板があるので何なのか見に行ってみたらフクロウの森というのがあった。この「フクロウの森」が車で飛び石付近まで来れる最短地点だろうか。

飛び石を戻った後はどうせなら神社まで行って大平山まで登っちゃう?とテンションを上げてマップのピンクの道へ突入。しかしここから急に世にも奇妙な世界に迷い込んだかのように誰にも遭遇しなくなった。あんなにうろついていた顔パンマンズもノーマルヒューマンも全くいない。そのまま一瞬だけ山を抜けて人家がある場所へたどり着いたが、どうやらもう1つ先が神社へ通じるルートだったがすぐに山の方へ戻る道に向かったため、ちょろっと伸びた茶色のルートからそのまま「あずま屋」へ向かう登山道へ向かってしまったようで、春日神社も次回へお預けとなった。

179mしかない低山なので多少しんどくてもまあそんな長くないだろう、という読み自体に間違いはなかった。とはいえ誰もいない狭い登山道の急坂を延々登っていくのはかなりしんどく写真を撮る余裕もないほどゼーゼーハーハー。ていうか頂上が迫ってくると道が消えるんじゃないかというくらい茂みに覆われかけていてちょっと焦った。「山の神」なんていう地点もあったが…。ようやくたどり着いた「あずま屋」では随分久々に感じる人類との再会も果たし、世にも奇妙な世界に迷い込んでいなかった事も確信。

登ってきた道なのだが…左側が道なんだけど…。

低山とはいえ見渡せる平野はそこそこな絶景。厳密には頂上はもう少し進んだところにあるんだけど頂上は生い茂ってて何も見えないので見渡せるポイントはこの「あづま屋」である。「あづま屋」にいた人たちは「展望台」から直接か、帰り道の正規赤いルートで来ているのだろう。突然茂みのようなルートからゼーゼーハーハーしまくっているおじさんが出てきてしばらくゼーゼーハーハーしているのを横目に何を思ったか…。

頂上にあった看板では「山の神」という表記もあった。また神社から直接登ってくる階段もあったが、こっちは完全に一直線に上がってきているからもっとしんどいのかも…。なお下山時には最早最初の上着はとっくにリュックの中、もう1枚のポロシャツが腰巻に移動していてロングTシャツ1枚になっていた。下山すると駐車場より少し道の手前の位置に出てくる(ここにも大平山専用の駐車場がある)。

下山地点から反対側の山並みを撮影したんだけど、青空や紅葉のコントラストもあいまってなんか今回1番綺麗な写真になったような…。

いやこれ最初のマップ画像だと「嵐山渓谷紅葉見どころスポット」の紅葉のイラストと「ト」の字の間くらいの方にある反対側の山の写真なので嵐山渓谷ではなく、たぶんときがわ町の山林風景なんだけどそれが1番鮮やかって…。

こうして駐車場に戻ってきたがマップの「20台」の真下ちょろっとだけ川へ通じる道がある。実際に駐車場の奥にこの道があり、ご丁寧に行き止まりである旨が書かれている。恐らく川沿いを直接進んでいく遊歩道を作ろうとして地形が厳しいので断念し、結局川に出るまでで整備が放棄されたものと思われる。

渓谷っぽいという意味ではこの日の中でここが1番渓谷っぽいかもしれない。

なおすれ違ったおじさんが「この先って自己責任って事ですかね?」とこの先の道なき未知への挑戦をしようとしていたので遊歩道はこの上にある事を教えてあげると素直に遊歩道へと進んでいった。

「展望台」は顔パンマンズで混んでいたし、「あづま屋」ではゼーゼーハーハーしててそれどころではなかったので結局持ち歩いていた「嵐山農産物直売所」で調達した昼飯は車に戻ってから召し上がり。

下に見える謎のうどんはこれで一緒に買ったやつ。

だいぶ汗ばんだのでどうせなら温泉でさっぱりしていこうという事で移動。ここは嵐山町ではあるがほぼ境界線上にあり、ちょっと走るとすぐにときがわ町。ときがわ町には温泉がいくつかあり、2つ過去に行っているが今回はそのうちの1つ「都幾川 四季彩館」へ。

NACK5とかでも宣伝している『昭和レトロな温泉銭湯 玉川温泉』の方が有名なためかこっちは空いている印象。ここも一応近くに渓谷があり紅葉はほぼ終わっていたが自然が堪能できる。

建物の反対側もこんな景色だし。

なお世界が変異する直前である2019年12月、3年前に初めてここに来ていて同じ景色を撮影していた。

時間帯が違うので2019年の方が暗い写真になっているが、景色そのものは変わっていない。でも見える世界は何もかも変わってしまった気がする。

ときがわにある「とうふ工房 わたなべ」もよく来る場所で両親へのお土産に豆腐を買って帰ったがここには地下水が飲めるスポットもある。

ときがわも何年か前からよく来る場所になったけど、近さと田舎っぽさが絶妙な素敵な街だ。

というわけで勢いで低山登山までしたのでかなり運動になった今シーズン最後の紅葉であった。

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