ZARD 30周年シングル回顧2+~1996-1998~
引き続きの全盛期から徐々に変化が生じていった90年代後半。DAIKOH NAGATO→BMF名義のプロデュースを経てProduced by IZUMI SAKAI、すなわちセルフプロデュースへと移行した。このセルフプロデュースに伴って…と当時は見られていたが、作家陣の相次ぐ退陣と時代の変化にどう適応していくかといった売上のピークを越えてからの模索、また坂井泉水自身の体調不良等様々な要因が重なってオリジナルアルバムの制作ペースが鈍化。シングル発売と歌詞提供は行っていたため、『TODAY IS ANOTHER DAY』『永遠』共にシングルとセルフカバーが大半を占め、アルバムオリジナル曲がほとんどないという状態となった。
オリジナルアルバムとして評価できるのは『forever you』までであるとするオールドファンも多く、00年代前半頃までのファンサイト、レビューサイト全盛期には当時の運営者がリアルタイム世代が多かったためこのような論調が主流であった。一方で『スラムダンク』『名探偵コナン』『中華一番!』等アニメタイアップから新たに聞き始めた当時の子供達世代はセミベスト的な『TODAY IS ANOTHER DAY』『永遠』は聞いたことのある曲がたくさん入っているので最初に手に取りやすく、加えて翌年の『ZARD BEST』2作も重なって、これ以前は全部後追いで思い入れも無いため、普通に『TODAY IS ANOTHER DAY』『永遠』の印象が鮮烈でフェイバリットに挙げるリスナーも多い。
編曲の明石昌夫が真っ先にビーイングから離脱、98年には織田哲郎も離れ、栗林誠一郎の提供は続いていたが自身のソロ活動はやはり98年頃を最後に途絶えていて以後消息不明となった(結果的に最後のオリジナルアルバムまで欠かさず栗林誠一郎の曲は収録されていたがストック曲とされている)。
一方で徳永暁人、大野愛果はこの時期になって登場しており、当時は新鋭の作家との世代交代もそこそこうまく進んでいた。
17th マイ フレンド
18th 心を開いて
君がいたから
96年7月8日
作曲:織田哲郎、編曲:葉山たけし
95年5月FIELD OF VIEW1stシングルとして歌詞提供した曲のセルフカバー。ドラマ『輝く季節の中で』サイドからの要望でZARDバージョンも作られて挿入歌として使用されていた。ZARDバージョンは終始穏やかな雰囲気になっているせいか、FOVバージョンはけっこうアレンジで化けていたというか、穏やかにまとめると割と地味な曲だったんだなと改めて思う。実際FOVの浅岡雄也も最初に聞いた時は何この曲?と思っていいとは思えなかったと後に語っているし、かなりアレンジを試しまくったほかミックス差し替えも複数回行うなどかなりこねくり回していた。
ZARDとしてはあまり人気が高い曲ではなさそうだが、『Brezza di mare dedicated to IZUMI SAKAI』にdi mare versionとしたミックス変更が収録されている。なんとなく変わってはいるが正直そんなに印象は変わらない。
★★★☆☆
7thアルバム『TODAY IS ANOTHER DAY』
4thセレクション『Brezza di mare dedicated to IZUMI SAKAI』(di mare version)
LOVE~眠れずに君の横顔ずっと見てた~
96年7月8日
作曲:栗林誠一郎、編曲:明石昌夫
栗林誠一郎がBarbier名義でリリースした2ndシングルのセルフカバー。Barbierは坂井泉水が作詞とゲストボーカルで参加したユニットという扱いにされており、シングルでは坂井作詞によるオリジナル新曲、それ以外はZARDの栗林作曲作品の英語詞セルフカバーを発表していた。ゲストボーカルと言いつつも「サヨナラは今もこの胸に居ます」での栗林誠一郎のゲストボーカル扱いと同様に実態はほぼコーラス参加であった。しかしBarbierはZARDに準じる扱いとなっていてZARDのディスコグラフィーにも記載、BOX作品でもZARDセルフカバーの方ではなく、Barbierバージョンをボーナスディスクに収録する措置が取られている(このためBarbierの曲だけ男性が歌っている曲が紛れ込んでいる状態)。
FOVやDEENに提供したセルフカバーはどれも原曲が大ヒットしたイメージも強く、原曲へ真っ向勝負して寄せるようなアレンジはせずに意図的に地味なアプローチにするか実験に走る事が多かったが、今作は実験要素が強いながらもかなり凝ったアレンジでこれはこれで遊園地のようで楽しい仕上がり。なんかアプローチの仕方が原曲大ヒット組(DEEN,FOV)と明らかに違いませんか?とも思うが、正直Barbierの曲はZARDバージョンを先に聞いたという人も多いだろうしなぁ…。
アルバムBOXに収録されたAnother arrange ver.は徳永暁人による別アレンジ。葉山たけしがアレンジしていたBarbierバージョンと明石昌夫のZARDバージョンのちょうど中間くらいを狙ったようなアレンジになっていてこれもまたいい感じ。
★★★★☆
7thアルバム『TODAY IS ANOTHER DAY』
3rd BOX『ZARD ALBUM COLLECTION~20th ANNIVERSARY~』PREMIUM DISC(Another arrange ver.)
1stBOX『ZARD PREMIUM BOX 1991-2008 Complete Single Collection』(Barbier原曲)
2ndBOX『ZARD SINGLE COLLECTION~20th ANNIVERSARY~』(Barbier原曲)
DAN DAN 心魅かれてく
96年7月8日
作曲:織田哲郎、編曲:池田大介
96年3月FIELD OF VIEW4thシングルとして歌詞提供した曲のセルフカバー。原曲はアニメ『ドラゴンボールGT』OPとして有名な曲だが、今作でも比較的勢いのある派手めなアレンジに仕上げている印象。それでもFOVに比べると丸みがあるというか、打ち込みバンド感が強く、音の抜けもイマイチには感じる。また多くのリスナーが指摘しているように2番から急にボーカルが不安定でヘタになる。声が出なくて苦しそうにも聞こえるヘロヘロボイスになってしまい明らかに1番とコンディションが違う。初の坂井泉水プロデュースのアルバムとしてディレクションの甘さや不慣れな点が出た一例としてこの部分を指摘する声も多かった。実際には急にヘタになったというか、半音下げで歌っていた音源を機械で半音上げたという説もあり、それにしたって何故そんなことをしたのか、明らかにおかしいだろ…とは思う(「LOVE~眠れずに君の横顔ずっと見てた~」でも同じことしている説があるが明らかに今作のヘロヘロっぷりは悪目立ちしている)。
そういった事情もあってか曲自体は有名だが、ZARDバージョン自体はあまり人気が無く、『ZARD Forever Best~25th Anniversary~』に収録されるまではベストに選曲されたことが無かった。何故か1度リクエストベストとかに収録されたことがある気がするのは気のせいではなく、08年の追悼リクエストベスト『ZARD Request Best~beautiful memory~』リリース前の初期に流れたCMで間違えて今作を収録曲として表記して流していたという事が実際にあった。
★★★☆☆
7thアルバム『TODAY IS ANOTHER DAY』
5thベスト『ZARD Forever Best~25th Anniversary~』
突然
96年7月8日
作曲:織田哲郎、編曲:葉山たけし
95年7月FIELD OF VIEW4thシングルとして歌詞提供した曲のセルフカバー。FIELD OF VIEW最大のヒット曲でもある今作だがセルフカバー群の中では最もオリジナルを踏襲したストレートな方向性でアレンジされている。やはりZARDバージョンの方が打ち込みバンド感があるのは変わらないが、単純に男性ボーカルバージョンがFOV、女性ボーカルバージョンがZARDといえるような仕上がり。
やはりストレートにセルフカバーすれば人気もストレートに高くなり、2度のリクエストベストでも堂々選曲され、『ZARD Forever Best~25th Anniversary~』にも当たり前のように選曲されるなどセルフカバー曲では断トツの人気を誇る。『ZARD BEST~Request Memorial~』収録時のみひっそりミックス変更されているようでドラム等の音の響きが異なる。ミックス変更されたバージョンの方がしっかりしていてよりバンドっぽい。
★★★★☆
7thアルバム『TODAY IS ANOTHER DAY』
2ndベスト『ZARD BEST~Request Memorial~』(ミックス変更)
4thベスト『Request Best~beautiful memory~』
5thベスト『ZARD Forever Best~25th Anniversary~』
Today is another day
96年7月8日
作曲:織田哲郎、編曲:池田大介
『TODAY IS ANOTHER DAY』10曲目に収録されたタイトル曲でリード曲。『ZARD BEST~Request Memorial~』投票20位で大人気曲というわけではなかったが、04年のツアーで披露され、『Golden Best 15th Anniversary』に突如収録され(アルバム曲は「Oh my love」と今作のみ)、『ZARD Forever Best~25th Anniversary~』にも収録された。追悼ベスト展開ではこぞって未収録になったのは『Golden Best 15th Anniversary』に収録されたためと思われる。また『LOVE&POWER』に坂井泉水が選曲していたのに勝手に入れ替えられて『Soffio di vento~Best of IZUMI SAKAI Selection~』に収録されなかった6曲のうちの1曲でもある。坂井さんは織田曲を3曲選んでいたうちの1曲でもある。
ブラスセクションを生かした明るくポップな雰囲気の楽曲。90年代前半は歌謡臭の強いミディアム~バラード系の曲の間奏でサックスがロングトーンを効かせる…みたいな使われ方ばかりだったが、今作では華やかな彩りを与えている感じ。ブラスセクションを入れたのを示すためなのか、このアルバム以降コーラス以外の演奏メンバー表記がちゃんとされるようになった(このアルバムでは一括表記ではあるがブラスセクションは明らかに今作)。ライブ映え、生演奏映えする曲でもあり、04年のツアーではブラスセクションも交えて披露されていて1つのハイライトになっていた。個人的にもそれまでそんなに印象に残っていなかったが、ツアーDVDと『Golden Best 15th Anniversary』収録で一気に印象が上がり、今では割と上位に来る好きな1曲になった。
★★★★★
7thアルバム『TODAY IS ANOTHER DAY』
3rdベスト『Golden Best 15th Anniversary』
5thベスト『ZARD Forever Best~25th Anniversary~』
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