3rd どんなときも。

1991年6月10日
今作で初登場49位を記録し、3作目にして初チャートイン。39位→13位→4位→3位→1位と一気に駆け上がって6週目に1位となった。1位は1週のみに留まったがその原因は1位になった翌週からCHAGE&ASKA『SAY YES』の13週連続1位が始まったからで、そこから7週連続2位→4位→3週連続2位→3位→6位と推移、『SAY YES』がようやく1位から落ちた週に今作はトップ10から落ちていった。『SAY YES』13週連続1位のうち実に10週2位を記録するという怒涛の2位連発であり、全く取り上げられた事はないが、10週も2位を記録したシングルっていうのもなかなか他にない珍記録なのではないか。
紅白効果で年明けにはトップ10復帰(合算週+2週)しており、1年近い49週ランクインで167万枚の最大ヒットとなった。これはアルバム含めて自身最大となる(アルバムでの最大ヒットは『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~』の166万枚でわずかに及ばず)。
どんなときも。
織田裕二主演映画『就職戦線異状なし』主題歌。冬クールの月9ドラマ『東京ラブストーリー』で織田裕二が大ブレイクした直後の主演映画だが、この当時の織田裕二はまだ主演作で主題歌も担当するパターンはやっておらず(連ドラでも1994年になってから、主演映画での主題歌は連ドラから映画になった『踊る大捜査線』シリーズと2003年の『T.R.Y.』でしか担当していない)、主題歌コンペの話があって新曲を作る事になったと語られている。
前述のように話を持ち掛けられたのはこの年の入試を終えた2月26日の翌日(27日)で1週間で締切というタイトなスケジュールだった。しかも別のNTTのタイアップ話もあって2曲を1週間で仕上げることになったがそのもう1曲のタイアップの話は無くなったとされる(曲自体はもう1曲も1週間で仕上げていてアルバム曲「CALLIN’」になったとされるがこっちは具体的な制作エピソードは語られていない)。
人生応援歌のような曲は作った事が無くどうしようかと思いつつ打ち合わせを終えて店を出て後から出てくるスタッフを待っている時に早くもどんなときも~どんなときも~というフレーズが浮かび、うわダサいと思ったがこのフレーズがいつまでも頭から消えなかったため、直感を信じ、さらに自分は本当は何をしたいのか葛藤しながら浪人生を続けていた事、音楽をやりたいという思いを貫いてここまで来たことをそのまま歌詞にしようと素直に自分の思いを綴って今作が完成し、採用された。何故デビュー後も浪人生活をしていたかというと電器屋の両親は息子に継がせる気はなく大学を出て就職してほしいと考えていて、オーディションに合格したりデビューが決まった後も大学受験は続けるように強く言ってきたためだが、当の本人は音楽をやりたくて受験勉強に本腰が入らなかったために三浪するに至っていたようだ。大学受験を巡ってはかなりケンカになった事もあったといい、最終的には「合格通知をもらうだけで大学に行かなくてもいい」という良く分からない合意点に着地したという。
小貫氏による『歌の履歴書』ではややエピソードが補強されており、どんなときも~どんなときも~のフレーズが消えないので1度作ってみようと自宅アパートでデモ制作をした際には“大阪時代の友達でエンジニアの仕事をしようと思っていた人間”が東京に来ていたので呼び寄せて彼とデモの録音を自宅でしたと書かれている。既に同書では沢田知久の名前は出ているのにこの部分にだけ何故か名前を出していない。これは同じ小貫氏が1度目の逮捕から復帰した後の2002年に出版したインタビュー本『うたう槇原敬之』でも同様に触れられており、アマチュア時代の話では沢田の名前を散々出しているのにこの時の話になると槇原本人が東京に来ていたエンジニアの友人と名前を伏せて語っていた。作者が同じ小貫氏なので『歌の履歴書』は改めてもう1度話を聞いたのではなく『うたう槇原敬之』の時に聞いた話はそのまま使っていて同じ表現になった可能性もある。何故槇原がエンジニアの友人の名前を伏せて語った形になっているのかは謎だ。沢田以外にも大阪の友人にエンジニア志望がいたのだろうか(例えば目指していたもののエンジニアにならなかったので名前を出さないとか)。
ただやはりこれは沢田じゃないかと思える証言もある。当初出したサビの歌詞は映画サイドに修正を要請され、もっと自分の思いを出した歌詞に書き換えたのが現行のバージョンとされる。沢田氏本人が『地球音楽ライブラリー』のインタビューで「どんなときも。」はデモテープの段階から知っていると発言しているのだ。デモの歌詞の方が好きと発言しているばかりかそのデモのオリジナルテープも所持している事を語っているので、やはりデモ制作を手伝ったのが沢田だからこそ最初の歌詞を知ってるしテープも持っているのではないか。エンジニアが別人なら槇原は1週間後締切のそのデモカセットをダビングして沢田に聞いてもらうためにわざわざ沢田に送付している事になる。よって自宅でのデモ制作は上京していた沢田を呼び出して行ったと思うんだけどどうなんだろう。
不朽の名作。2000年代後半以降~2度目逮捕前までの「FNS歌謡祭」では一時期毎回コラボでこの曲を歌わされるなど懐古需要も高まっていたが、ライブでも定番なのでライブアルバムでも必ずこの曲は収録されており、観客の歓声も最高潮になるのが聞いてて分かる。ライフソングを押し出すようになったのは1度目逮捕以降で、この頃はラブソング主流だったので自分を信じていこう的な曲は珍しかったけど、今にしてみれば本質的なところは実は変わっていなかったのが分かる。自分らしさを貫くという強さもまあ後年ほど意固地なまでに歌詞で正しさを主張する時期もあったりと、今作で歌っている事がそのまま槇原敬之の人生になっていったようにも思う。““昔は良かったね”といつも口にしながら生きて行くのは本当に嫌だから”という部分が個人的には肝に銘じておきたいフレーズで、ついていけなくなるのは仕方ないにしても忘れないでおきたい考え方だ。
今作より外部アレンジャーを入れずに編曲も単独表記となり、基本編成は本人のキーボード、サポートシンセ、サポートギターを軸にした打ち込みで暖かみのあるサウンドを表現するというのが基本となるが、この頃は過渡期だったのでまだ生ドラムを使っている。しかし後の打ち込みドラムと比べてもあまり違いが無く、むしろ3rdアルバム以降の打ち込み曲よりも機械的な響きである。また「モーニング娘。」に先駆ける事7年、タイトルに「。」をつけたのは早かった。続く『君は誰と幸せなあくびをしますか。』でも「。」をつけているので一時期ハマっていたのだろうか。
バージョン違い最多曲でもある。10.Y.O Versionは前2作同様の沢田知久によるミックス変更。今作の場合は90年代序盤特有の角が立ったような硬い響きだったドラムの音色が丸くなっていて古さを感じない自然な響きへと変更されている。
’07は2007年のセルフカバー。Renewed(version4)は20周年時のセルフカバー、その後更にキャラメルVer.と題されたセルフカバーも制作された。’07とキャラメルVer.はC/Wなので該当シングルの項目で詳しく触れるが、ここでは20周年時に制作された『Best LIFE』収録のRenewed(version4)に触れておく。なおベスト盤『Song Book“since 1997~2001”』『Completely Recorded』『Best LOVE』『Best LIFE』『The Best of Listen To The Music』は未配信なので『Best LIFE』収録のRenewed(version4)は今作のバージョンの中で唯一配信で聞けない。
これは原曲、ballad version、’07に続く4つ目のアレンジという意味(10.Y.O Versionはミックスを変えただけでアレンジは同じなのでカウントしていない)。この時は本人も似合うかどうかは別にしてと語るようにもう4度目だったためか好き放題に加工しまくっており異様な仕上がりとなっている。謎の女性の鳴き声+へくしっとクシャミして電子音まみれの不穏なイントロがはじまり、へくしっは曲中で効果音的に何度も出てくる。この時点で実に8枚ベスト盤が出ていて4枚に収録、3年前に’07も作ったばかりだったので聞き飽きるくらい既に聞いてるだろうという前提があったためにぶっ壊しにかかれたところはあったんだろうけど…。それでも一応初の本人積極関与の20周年ベスト盤『Best LOVE』『Best LIFE』であり、他のRenewedはオリジナルのブラッシュアップや常識の範囲内でのリアレンジだったのに今作だけ振り切りすぎ。実は収録したくないのに入れろと言われたので抵抗としてぶっ壊しにかかったんじゃないかとも思えてくる。実際この後にレコード会社渡り歩きを辞めて誰にも文句言われない自主レーベルに移行してるし…。
★★★★★
2ndアルバム『君は誰と幸せなあくびをしますか。』
1stベスト『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~』
4thベスト『SMILING GOLD~THE BEST&BACKING TRACKS~』
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~』(10.Y.O Version)
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~』(「THE 10th ANNIVERSARY MEGA-MIX」の1曲)
8thベスト『Completely Recorded』
36thシングル『GREEN DAYS』C/W(’07)
10thベスト『Best LIFE』(Renewed(version4))
12thベスト『春うた、夏うた。~どんなときも。』
13thベスト(販路限定)『SELECTED BEST』(Renewed(version4))
42ndシングル『恋する心達のために』C/W(キャラメルVer.)
15thベストアルバム『Buppu Label 15th Anniversary “Showcase!”』(キャラメルVer.)
1stライブアルバム『THE CONCERT CONCERT TOUR 2002~Home Sweet Home~』(Live)
2ndライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA“cELEBRATION”』(Live)
3rdライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA “cELEBRATION 2005”~Heart Beat~』(Live)
4thライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA “cELEBRATION 2010″~Sing Out Gleefully!~』(Live/メドレーの1曲でアンコールでこのメドレーをもう1回やったので2回収録)
1st配信限定ライブアルバム『MAKIHARA NORIYUKI SYMPHONY ORCHESTRA CONCERT “cELEBRATION 2015”~Starry Nights~』(Live)
2nd配信限定ライブアルバム『槇原敬之 Concert Tour 2022~宜候~』(Live)
3rd配信限定ライブアルバム『Makihara Noriyuki Concert 2024″TIME TRAVELING TOUR”2nd Season~Yesterday Once More~』(Live)
C/W どんなときも。(ballad version)
編曲:服部克久
服部克久のオーケストラアレンジによるピアノ&オーケストラ伴奏によるバラードバージョン。よりじっくり歌を聴くことが出来るものの、アレンジがやや大げさすぎる感は否めず、あくまで原曲あってのオマケ的なバージョンにも思える。なおバラードバージョンでフルサイズなのに間奏が短いので原曲よりも30秒ほど短い。
2ndアルバム『君は誰と幸せなあくびをしますか。』冒頭を飾っているインストゥルメンタルヴァージョンというのはこのballad versionを短く編集したインストゥルメンタルだが、歌メロが無いのでballad versionを知らないで聞くと全く「どんなときも。」には聞こえない。シングル盤を入手してballad versionを聞いたのは2010年前後になってからだったため、それより10年以上前から聞いていた2ndアルバム冒頭のインストゥルメンタルヴァージョンが何で「どんなときも。」というタイトルなのか10年以上に渡って謎のままだった。
発売から21年の時を経て『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない』に収録された。
★★★☆☆
2ndアルバム『君は誰と幸せなあくびをしますか。』(インストゥルメンタルヴァージョン)(ballad versionのショートサイズインスト)
11thベスト『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない』(ballad version)
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