TUBE 35周年シングル回顧+6~2015-2020~
2012年のアルバム『SUMMER ADDICTION』では「夏の前田は卒業しません!」とAKB48前田敦子卒業に絡めたキャッチで毎年のアルバムリリースの変わらぬ継続を疑わなかった2013年。アルバムどころかついに一切の新曲リリースが無いデビュー以来初の1年となった。それは翌2014年も続き、丸2年TUBEの新作リリースは完全停止。
そして迎えた2015年、迎えた30周年は精力的に活動。03年以来となる春夏秋冬のシングル(C/Wでは初のメンバー4人単独ソロボーカル曲を収録する試みも)、20周年、25周年でもやらなかったベスト盤発売、提供曲と新作の2枚組オリジナルアルバムと大盛り上がりの1年となった。
2016年以降はシングル、もしくはミニアルバムというペースを落とした年1のリリースが続いた。2019年は新曲「いただきSummer」がタイアップ先CMで発表され、新曲としてライブどころかTVでも披露していたが何故か配信でも発売されずに終わった。これにより2019年は2013,2014年に続く新作発売の無い1年となった。
また2012年に編曲からほぼ撤退していたが、2015年も引き続き編曲は外部に委託しており、TUBEによる編曲は2016年以降になってようやく徐々に戻っていった。
56th いまさらサーフサイド
15年4月8日
作詞:前田亘輝、作曲:春畑道哉、編曲:鳥山雄司
2年間新曲を出さなかったが30周年は大々的に活動し新作制作を再開。03年以来となる春夏秋冬4枚のシングルを出し、オリジナルアルバムとベストアルバムも出すことを発表してまずは春シングル。またこの4シングルではC/Wで毎回1曲ずつそれぞれが自作してボーカルも担当するという初の試みが行われた。今作のC/W「Blue In Summer」では春畑道哉が初の単独ボーカルを担当している。
「青いメロディー」の爽やかな落ち着きとはまた異なるポップながらかなり低めで穏やかな曲。3年ぶりのシングルなのにこれは盛り上がらなすぎでしょ…!?と正直シングルにしてはあまりに残りにくい地味さに衝撃を受けたが、聞き馴染んでくるとこの地味さが心地よく感じられるようにもなった。まあもうそんなに派手に盛り上がらなくてもいいんじゃない?的な緩さの良さというか。
この年はTUBEとして編曲に一切参加せずに編曲は鳥山雄司に完全に一任。プロデュースはTUBEと共同扱いだが、前田曰く「現場監督と作業員」のような状態で制作されていた。鳥山雄司は2012年の『SUMMER ADDICTION』でも編曲で参加はしていたが、全体のプロデュースは武部聡志だった。武部聡志プロデュース体制では細かい演奏は自由にやっていいスタイルだったが、鳥山雄司はTUBE編曲ではなく自身が呼ばれたからにはと譜面を用意して、演奏における手癖を禁止してここは違うとかこのように弾いてくれなど演奏スタイルまで細かく指示する徹底したプロデュースをしたという。いつもの感じにしたくなかったという事で、メンバーとしてはそれが新鮮だったという。
結果パッと聞きかなり地味な2015年作品群となったが、よく聞くと綺麗にまとまっていて決して平々凡々としているわけでもない。5年経ってようやくこんな春の曲も悪くないと思えるようにはなった。ただもう少し攻めの姿勢があっても良かったのではないかとは思うし、やはり落ち着きすぎている印象は否めない。というかプロデュースの方向性としていつもなら派手にギターソロが来るところに来ないとか、全体にキーを下げるなどプロデュースの方向性が落ち着いた雰囲気を明らかに目指してはいるんだけど、そこをやりすぎた感じはある。
★★★☆☆
33rdアルバム『Your TUBE+My TUBE』
57th SUMMER TIME
15年6月2日
作詞:前田亘輝、作曲:春畑道哉、編曲:鳥山雄司
夏シングル。川口春奈出演のクノールの夏向け商品冷たい牛乳でつくるカップスープCMタイアップ。ただのタイアップなのに太字強調したが、実にここから川口春奈と共に冷たい牛乳でつくる夏向けスープで5年連続起用され続けている(川口春奈は前年秋から出演していた)。C/Wのソロ枠は今回は前田亘輝。そのままでは何も変わらないが、ここではmiwaをゲストボーカルに招いて親子役で歌うという「トコナツPaPa featuring miwa」が収録された。
30周年のメイン新曲として扱われ30周年ベストにも最新曲として唯一収録され、TV出演時も大概この曲と「あー夏休み」や「シーズン・イン・ザ・サン」などとのメドレーで披露された。30周年で久々にTVによく出ていたのでこのタイミングでいつの間にか随分キーが低くなったなと思った視聴者も多かったと思う。
今作に関しては真っ先に浮かんでくるのがDEEN(織田哲郎作曲)の「瞳そらさないで」。「瞳そらさないで」を平坦にしたかのようなサビの雰囲気もあってどうしても低く感じてしまう。また爽やかというよりただポップな感じが強い。爽やかではあるんだけどかつてのような突き抜けた爽やかさがないので30周年のメイン新曲としてはどうしても物足りなさを感じてしまった。
実際にインタビューでは『My TUBE』の曲は本人が下げなくても歌えると言っているのに鳥山雄司によるキー決めでほぼ全部キーを下げたと語られているが、今作だけは上げて歌ったら印象が良かったので唯一といっていい当初よりキーを上げた曲と語られている。なんとまさかのこれでも上げていた…だと…!?当初のキーはこれよりも低かったってそのままだったら一体どうなっていたんだろう…。
2015年全体に言えることだがかなり余裕を持たせて低めにしているだけにボーカルにかなり余裕はあり、最後のサビ前のサンキューベイベーも余裕ゆえにさらっとしていて30周年の余裕は確かにあるにはあると思う。昔はダサいと思って使わなかったけどあえて使ってみたというベイベー、確かに20周年頃までで使っていたらダサかったかもしれないが30周年だからこそ余裕あるベイベーとしてなんかいい感じではあった。
★★★☆☆
33rdアルバム『Your TUBE+My TUBE』
4thベスト『Best of TUBEst~All Time Best~』
おかげサマー
15年6月17日
作詞作曲:広瀬香美、編曲:tasuku
『Your TUBE+My TUBE』の『Your TUBE』1曲目。冬の女王が夏のTUBEに夏曲提供という事で話題になった。しかし実は広瀬香美の方が90年代から夏とTUBEを取り上げていて、1997年の夏に出したカバーアルバム『Thousands of Covers Disc1』1曲目で「シーズン・イン・ザ・サン」を大胆カバーしていた過去があった。
広瀬香美らしいはじけた明るいアップナンバー。ほぼ広瀬香美の曲を前田亘輝がカラオケしているといった装いでTUBE感は無いがこれは実際『Your TUBE』の大半の曲は提供側がオケ制作まで担当していてほとんどTUBEで演奏していないため。今作も広瀬香美が当時起用していたアレンジャーによるもので広瀬香美そのままである。それでもおかげサマーというダジャレもノリの良さにハマっていて季節は違えど相性の良さを感じられる。4年後にはTUBE自ら「いただきSummer」という曲を発表して、サビでは“お互いSummer”というダジャレも登場。明らかに今作と連なっている。影響は大きかったのかもしれない。広瀬香美もカバーで再注目集めているので再度のコラボも期待される。
★★★☆☆
33rdアルバム『Your TUBE+My TUBE』
夏番長
15年6月17日
作詞:増子直純(怒髪天)、作曲:上原子友康(怒髪天)、編曲:野間康介
TAKURO×TAK MATSUMOTOとか大黒摩季×織田哲郎とかB社繋がりでの提供もあったが、アルバムで最も盛り上げナンバーとして最も重宝されたのはたぶんこの曲になったんじゃないかと思う。30年間夏番長♪という超絶なキラーワードと続く今年も夏に留年決定ェェェェェ!!!留年決定ェェェェェ!!!という連呼。低めながらも強烈にシャウトする力強さもあって、アクの強い楽曲が並んだ『Your TUBE』の中でも1曲突き抜けるほどのアルバム内でのインパクトを鮮やかにかっさらっていった。意外なところでまさかここまで怒髪天と相性が良かったとは…。最後のサビでは今年も夏に留年決定ェェェェェ!!!TUBEに決定ェェェェェ!!!とついにバンド名まで出してしまうがこれも提供ゆえ。いくらおふざけソングも得意技の1つとはいえさすがに自作でTUBEに決定という歌詞は出てこないだろう。
★★★★☆
33rdアルバム『Your TUBE+My TUBE』
58th TONIGHT
15年10月7日
作詞:前田亘輝、作曲:春畑道哉、編曲:鳥山雄司
秋シングル。C/Wのソロ枠は松本玲二で「Endless Way」を単独歌唱。「人類のために乾杯」以来のメインボーカルだがあの時は前田も歌っていたため、今回が初の全編単独歌唱となっている。
恐らくTUBEシングル史上ダントツに地味な1曲。アンプラグド感のあるアコースティックな演奏は「Purity」や「夏祭り」でもあったが、キーも低く全く盛り上がらずに進行していくためかなり渋く暗い作風。当時ここまで何度聞いても印象に残ってこないシングルはこれまで無かったぞ…と地味すぎて戸惑ったレベル。今回改めて聞き返してようやく思い出した…というのはシングルでは唯一これだけだったが、当時は見えなかった渋い良さが5年寝かせた事で少しは見えてくるようになった。
★★★☆☆
アルバム未収録
59th 灯台
15年12月16日
作詞:前田亘輝、作曲:春畑道哉、編曲:鳥山雄司
冬シングル。ここまでは3作フォーマットが共通にしていたのに(初回盤にライブ映像数曲をピックアップしたDVD付)、今作のみクリスマス商戦に向けてレコード会社が欲を出したのか初回盤が2種になった。Aがクリスマスオーナメント付ボックス仕様、Bは角野秀行撮影のフォトカレンダー2016付属…とライブ映像収録DVDを廃止。CDの方もC/Wはメンバソロボーカル曲収録との2曲仕様だったが、今作だけ角野ソロボーカル曲「Back To Good Days」だけでなくもう1曲クリスマスソング「Love In White」も収録した3曲仕様となった。
家族愛を歌った穏やかながら確かに染み渡るバラード。キーの低さと落ち着きは共通しているが、2015年最後にしてTUBEらしいメロディーの良さが冴え渡り、2015年発売のあらゆる新曲を凌駕する名曲が最後に降臨した…と感動した1曲。かつてに比べてどうしても残らなさというか地味すぎるのは否めないが、家族愛に着地する新境地な歌詞や低くなったキーだから染み渡るサビの雄大ながら優しい雰囲気は30周年だから出せた30周年の重みがちゃんとあると思う。
なお03年の春夏秋冬リリースと同様に今回も春夏秋冬で連作のような松岡茉優と落合モトキ出演のMVが制作されたが今回は商品化すらされなかった。しかもYouTubeでは中途半端に途中で切られたショートサイズで公開されているため、話の繋がりが分からない…。
★★★★☆
アルバム未収録
60th RIDE ON SUMMER
16年7月6日
作詞:前田亘輝、作曲:春畑道哉、編曲:Jin Nakamura
2年連続川口春奈出演のクノールの夏向け商品冷たい牛乳でつくるカップスープCMタイアップ。30周年を越えてとりあえず新作リリースは継続されたが、この年はこれ1作ポッキリ。このクノールタイアップが生命線となり、ペースは落としてクノールタイアップで年1で新作というパターンが続く。
今作では編曲に新たにJin Nakamuraを起用。C/W「FULL SWING」ではTUB&佐藤晶名義でTUBEの編曲参加が復活した。
落ち着かせて綺麗にまとめていた鳥山雄司に比べるとだいぶバンドの躍動感が戻り、サビでそこそこ強く声を張り上げる感じも戻ってきた。翌年以降も踏まえて考えると数年間の新作制作停止前の「Touch Happy」以降ほぼ編曲から遠ざかっていたTUBEが徐々に自分たちの感覚を取り戻してきた過渡期のような1曲でもあると思う。クノールのCMタイアップに合わせて“爽やかな朝”というのが必須条件になっていたのか、このタイアップは全部必ず朝の始まりをテーマにしている爽やかな曲で統一されているが、「めざましテレビ」の時には5曲全てで朝を無視し続けた曲ばかり出してきたのを考えると寄り添うようになったなぁ…とも思う。
“また今日も新しい君に会える”というダルイ夏の朝をフレッシュに彩ってくれる良作。
★★★★☆
アルバム未収録
Shiny morning
17年6月7日
作詞作曲:前田亘輝・坂基文彦、編曲:TUBE
2017年はシングルではなく92,93年以来となるミニアルバム『sunny day』を発売。ミニアルバムはSで始まるという法則が守られた。1曲目のリード曲となった今作は3年連続恒例のクノールタイアップ。珍しく前田亘輝・坂基文彦という外部作家との共作による作詞作曲。
今回も、というか今回はもうタイトルから朝をテーマにしていてよりいっそう朝の爽やかさを彩る。ついに復活した編曲:TUBEとしてはやや抑えめではあるが疾走感のある曲調もあって安定しつつも意外と飽きない1曲。
★★★★☆
3rdミニアルバム『sunny day』
VICTORY
17年6月7日
作詞:松本玲二、作曲:春畑道哉、編曲:TUBE&佐藤晶
ミニアルバム『sunny day』3曲目。アスリート系の疾走ロックナンバー。前田が得意としてきた負けるなソングの系統ではあるが、レーシングドライバーとしても活動している松本玲二が作詞を手掛けているためか、レーサー目線のような歌詞になっていて、曲中でもレーシングカーが走り抜けるようなフオーンフオーンという音も導入されている。落ち着いた曲が増えていく中で、このようなロック系は珍しくなってきてしまっていて、キーも下がっているのでかつてのようなギッラギラな力強さは無いが、地に足のついた確かな強さは今も十分に感じられる。また『My TUBE』でも「WINNERS HIGH」という同系統のロックナンバーがあったがその時よりもTUBEっぽさが戻っている事も感じた。
惜しいのが最後まだ歌詞掲載部分も歌い切ってないのに妙に早くフェードアウトしていってしまうところ。フェードアウトするのはいいけどせめて歌詞掲載分がきちんと終わってからフェードアウトにしてくれないか…。
★★★★☆
3rdミニアルバム『sunny day』
61st 夏が来る!
18年7月25日
作詞:前田亘輝、作曲:春畑道哉、編曲:TUBE
4年連続恒例のクノールタイアップ。SUMMERを除くと「夏」が入ったタイトルは15年ぶり(「夏祭り」以来)。夏の到来を爽やかに歌うというと「夏だね」辺りを思い出させるが、「夏が来る」という曲は実は今まで無かった。これは同時代に大黒摩季が「夏が来る」という有名ヒットを持っていた事も大きく影響してあの夏タイトルを連発していた90年代は特に意図的に回避していたところはあったと思うんだけど、一応今作も「!」をつけて丸被りは回避している。
正直なところ年々夏が来るのがワクワクというよりかはあまりの酷暑続きに今年はどこまで暑くなるのか?乗り切れるだろうか?というサバイブ精神の方が勝っているのが多くのリスナーの夏の現実だろう。Stop the season in the sun 夏よ逃げないでくれ♪とか歌っている場合ではない、冷夏までは行かずとも少しは逃げてくれて構わない、とにかく暑すぎるぞ…と。
今作においてはインタビューでも前田亘輝自ら最近の35℃とかの酷暑ではなく自分たちが子供の頃のような30℃くらいの夏をイメージして書いたとコメントしていて、まさにそんなイメージの爽やかさ。古き良き日本の夏を感じさせる。メンバーの少年時代なので70年代くらいになるんだけど、90年代に少年時代でもギリまだ少しは分かる(35℃以上が続くことは滅多になく35℃がMAXレベルだが夏休みの間は32~34℃くらいは連日出ているようなそんなイメージ)。少年時代が00年代以降になってくるとこの曲のどこか懐かしい感じというかこういう夏は確かに昔はあったというイメージは抱きにくいかもしれない。
ラストはフェードアウトで終わるがシングルは4分20秒、『日本の夏からこんにちは』収録時は4分7秒まで縮められているためフェードアウトしていく演奏がまだかなり聞こえる段階でブツ切りされて続く「湘南バットボーイ」のイントロカウントへ移行する。音飛びかと勘違いするような仕様になっているが、恐らく意図的な編集と思われる。聞こえなくなるまできちんとフェードアウトしていくのはシングルでしか聞けない。
★★★★☆
シングルミックスアルバム未収録
34thアルバム『日本の夏からこんにちは』(アウトロのフェードアウト途中でブツ切り)
いただきSummer
20年7月8日
作詞:前田亘輝、作曲:春畑道哉、編曲:TUBE
2015年から毎年続けていた川口春奈出演の冷たい牛乳でつくるクノールCMタイアップは5年連続で2019年も続いていて今作が起用されていたが何故か未発売のまま放置された。ライブどころかこの年のTV出演でも新曲として複数回披露までしたのにどこにも売ってないし、配信もされていないという異様な状態のまま何の説明も無く1年が経過して2020年のアルバムに収録されることがようやく判明した。何故配信ですら出さないのにTVで歌っていたのだろうか…。2020年はアルバムのリード曲として披露される機会もあったが、この際もテロップでは2019年発表の曲扱いされていた。
クノールタイアップに合わせたさ爽やかな朝路線が続いていたのでさすがにここで趣向を変えたようで朝縛りから離脱。朝の爽やかさよりもちょいおふざけ要素を加味させたような明るい曲。2019年のTV披露で聞いた時は親父ギャグみたいな緩さのわりに過去のおふざけノリに比べるとそんなにノリノリでもない微妙に滑った感じの曲だなぁ…と微妙な印象だったが、きちんと音源で聞いたらそこそこTUBEっぽい安定の1曲といった印象に変わった。しかしこのタイトルというのはやはり広瀬香美提供の「おかげサマー」からの発展的な発想なのだろうか?この○○Summerだけでシリーズ化できそうではあるが…。
なお5年連続新曲起用の場だったが、2020年は引き続き今作が起用された。川口春奈出演は継続して新規のCMも作られたが、サイトのCMタイアップ情報は2019年のまま(2019年のツアーを告知したまま)になっている。新コロ騒動の影響だったのか今年発売されるので2年連続でこれでお願いという事になったのかは謎。
★★★☆☆
34thアルバム『日本の夏からこんにちは』
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