槇原敬之 35周年シングル回顧+1~第1次ワーナー時代 1990-1996~

スポンサーリンク

槇原敬之はデビュー前から作詞作曲編曲までこなして本格的な楽曲制作をしており、録音機材を持っていた友人の沢田知久(後に彼もプロのエンジニアになり1996年頃~2002年頃までエンジニアとしても関与、しばらく離れていたが2度目の逮捕を経た2021年以降再度エンジニアの1人として関与を再開している)とコンビを組んでデモテープを制作し、近所の店に置いてもらって販売していたとされている。そんな中で受けたオーディションにてデビューが決まり上京。自営業(電器屋)をやっている親の意向で大学進学を強く勧められていた槇原は当時浪人中という肩書で1990年10月25日にシングルアルバム同時発売でデビュー。当初は売れなかったが翌1991年に映画タイアップのコンペに通り、3rdシングル「どんなときも。」で大ブレイクした。大学にも合格したが、大ブレイクにより多忙となったために通う時間が無くなってしまったという。

1stアルバムの制作では西平彰が共同アレンジャーとして入ったが、既に編曲どころか沢田と共に録音ミックスの領域までこだわった曲作りを行っていた本人にとっては手を入れられるのも、周囲にうまく伝えられない事も不本意だったようだ。”あんまり自分の意見が入ってない他人の手に渡ったアルバム”(1992年8月号『月間カドカワ』)、”人の手で僕の曲を解釈されていく事で、全然片栗粉の入ってない中華料理みたいになっちゃった”(同誌1993年5月号)とわずか数年後にはかなりストレートに不満を語っていたそうだが(これらの抜粋は『音楽誌が書かないJポップ批評』に記載)、大人になったためか後年になるほどマイルドな表現で当時の事を振り返っており、2004年の『槇原敬之の本』では不満ではなくプロの現場での苦労とか葛藤したという表現に留まっていた。2010年のアルバムBOXの特典冊子インタビューやこの時の証言を基にしたと思われる2021年の『歌の履歴書』では当時文句を言っていた事には正直に触れつつも、客観的な視点の大切さを学んだとか西平さんもやりづらかったと思う等の気遣いも見せていて学ぶことも多かったという形でまとめている。

2ndアルバム以降は早くも単独アレンジに移行して直後に『どんなときも。』がミリオンセラー最大のヒットとなり、一躍トップミュージシャンとなった。以降もヒット曲を連発し、シングルでは『もう恋なんてしない』、アルバムでは『君は僕の宝物』『SELF PORTRAIT』が連続でミリオンヒットとなった。

多忙の中で一時スランプに陥る事もありながらも順調なリリースを重ねていたが、1994年のアルバム『PHARMACY』を引っ提げての「CONCERT TOUR ’94~’95 WELCOME TO MY “PHARMACY”」は最大規模のロングツアーとなり、この間に喉のポリープによりツアー後に手術のために入院する事となり一時活動休止。1995年は新曲リリースが停止し、死亡説が流れたという話も…。

1996年にワーナー内にプライベートレーベルRiver Wayを設立し、MAKIHARA名義で全英語詞の作品展開を行う。続けて元の名義に戻して引退覚悟の金字塔となるアルバムとして『UNDERWEAR』を発売、置き土産的にシングル『まだ生きてるよ』をリリースしてワーナー時代は幕を閉じたのだった。

この頃に引退を考えていた詳細な理由は明かされていないが、2004年の『槇原敬之の本』ではある程度は個人的な話にも触れて話を進めているため、2年前に友人の酷い裏切りにあった事(詳細不明)とこの当時自身のネームバリューや富を目当てとして近寄って来る人を多く見てきた事や、あの人にはもう会わない方がいいなどと個人的な人間関係に色々な人が口を出すようになって嫌気が差して周囲の人間関係にかなり疲弊していた事が原因だったとしていた(“会わない方がいい”と周囲が言っていた人が後の薬物逮捕に繋がっていくような人物だった場合は止めていた周囲が正解だったケースもあるんじゃないかとも思わなくもない。一転して2021年の『歌の履歴書』では個人的な出来事には一切触れず音楽の話のみで構成されているためか、遺作になってもいい覚悟で作ったという程度しか触れられていない。

ワーナー内部でせっかく作ったプライベートレーベル結局River Wayは1996年の1年しかいなかった事になるが、1997年以降もワーナーはベストアルバム『SMILING』をシリーズ3作でリリースし、3作のベスト+カラオケ『SMILING GOLD』、3作のBOX化『SMILING BOX』とベストアルバムシリーズを擦り続けた。このうち1作目の『SMILING』はミリオンヒットを記録しており、「どんなときも。」に1万枚及ばなかったがアルバムでの自身最大ヒット作となっている。

1999年の逮捕後、2000年に『太陽』で復帰した際は再度ワーナーに復帰したが、その前の休止期間である2000年5月には『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~』もリリースされており、初めてワーナー時代のシングル16曲が収録された(両A面なし、最初の3シングルは沢田知久による新ミックスで全体のリマスターも沢田知久が担当)。

2004年の『Completely Recorded』もEMI移籍後だったがワーナーからリリースされその時点でのシングルがリリース順にレコード会社の枠を越えて収録された。2012年にはこの時代の7作のアルバムをリマスターしたBOX『EARLY 7 ALBUMS』、さらに7枚+第2次ワーナー期3枚のアルバムを単品リマスター再発、新規編集ベスト『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない』、2013年には『春うた、夏うた。~どんなときも。』もほぼこの時期の選曲といった具合にこの最初のワーナー時代を対象としたベストアルバムは移籍後も数多く発売されてきた。『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない』『春うた、夏うた。~どんなときも。』ではアルバム未収録だったC/Wのほとんどがアルバム初収録となっている。

最も売れていた時期でもあるが、リマスターもほぼ出揃っており、さらに2024~2025年にかけてLPでも全オリジナルアルバム+『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない』『春うた、夏うた。~どんなときも。』が発売された。アナログ用新規リマスターはされず、2012年リマスター+『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない』『春うた、夏うた。~どんなときも。』のリマスターを使用、無い場合はオリジナルのままという徹底した使い回し志向ながらC/Wや別バージョンも都度ボーナストラックとして収録された)。オリジナルアルバムにC/Wや別バージョンも追加収録していったのだからLPラインナップに季節ベスト2作を含んだのは少々謎だが…。

各種サブスクでも早い段階で全シングル音源、全ベスト、オリジナルアルバムは当時のオリジナルと2012年リマスターが揃って配信されているという充実っぷりとなっている。そんな第一次ワーナー時代を振り返る。

30周年は逮捕で中止にしたので35周年でやろうと思っていたものの、V6の30周年シングル回顧とドン被りしたため、V6の後にズラすことに決定。しかしこの最初のワーナー時代は秋冬の曲が多めでクリスマスソングも複数あった事から、年内に「まだ生きてるよ」まで不定期掲載という形で先行して公開していく方針となった。

2014 C/W追加で『第1次ワーナー時代・前期 1990-1992 レビュー』、「1993-1994」を拡大C/W追加で『第1次ワーナー時代・後期 1993-1996 レビュー』公開
2020 30周年用にリメイクに入る直前に2度目逮捕により中止
2025.10~12 35周年を記念してブログ移植リメイク

記載除く全曲作詞作曲編曲:槇原敬之

1st NG

B00005HF6H
1990年10月25日
1stアルバム『君が笑うとき君の胸が痛まないように』と同時発売でのデビュー。2曲ともそのままアルバムに収録されており、カラオケも無いので今作のみで聞ける音源は無い。アートワークもアルバムと共通のイラスト仕様となっていて3rdシングル『どんなときも。』まで連続で使用された。デビュー作なのにタイトルが『NG』で、売上もNG(100位圏外記録無し)になってしまったという問題作(?)

前述のように発売当日からここでしか聞けない音源が無いので完全なコレクターアイテム的であったものの、売れなかったので希少価値はそこそこ高い

アマチュア時代から既に独自で作詞作曲だけではなく編曲も手掛け、録音機材を持っていた友人の沢田知久と組んで2人で音源制作を行っていたが、デビューにあたってはプロのアレンジャーがつくことになった。このため西平彰の名前が共同の編曲者としてクレジットされているが、後に自分の作品に手を入れられるのが不満だったような事が語られており、次の制作からは希望通りに自身単独編曲にしてもらえたという。後のベスト盤に収録する際には自身の名前を外して”編曲:西平彰”と単独で表記されている。ただしベスト盤は基本的にほとんど本人非関与で前レコード会社がリリースしてきているため、本人の意志なのかは不明。またこの音はいらないとバッサリ削られる事もあってブーブー文句を言っていたのは事実で西平彰もやりづらかったんじゃないかと思うと振り返っている一方で、客観的な視点が入る事は勉強になり以降もその点を意識するようになった事や、西平彰のピアノが上手すぎて自分のピアノ演奏にはネガティブになった事も語られており、多数の学びもあったようだ。

NG

編曲:西平彰&槇原敬之
ベスト盤では編曲:西平彰

いわゆるサビどこ系バラード。後のヒット曲に比べて佇まいが圧倒的に地味なので『10.Y.O』『Completely Recorded』では最初の2曲を飛ばして「どんなときも。」から聞き始める人も多いかもしれない。じっくり聞くとメロの良さに浸れる。別れてしまったことの後悔を歌う歌詞は女々しくも切ない。初めて聞いたときはそんなに好きじゃなかったが聞き込むほどに名曲に思えるバラードで、そんなに好んで聞いていなかったのに早い段階で全編しっかり覚えてしまったのでなんだかんだしっかりした存在感のある1曲だったのかもしれない。

次回作も同系統のバラードである事からもレコード会社側がシンプルなバラードをシングルにする事に確固たる自信を持っていたものと思われるが、しかしデビュー曲で「NG」は無いし、売れる曲ではないような気がする。1stアルバム期ではこれが1番シングル向けという事もないし、けっこう判断が謎だったりする。

『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~』は1999年の逮捕後の活動停止~2000年『太陽』での復帰前の2000年5月にリリースされた本人非稼働のベストアルバムだったが、冒頭3シングルを10.Y.O Versionとして収録。これは別アレンジではなく、旧友の沢田知久による新ミックス(ミックス変更)となっていて、音の響きやバランスが調整されているもの。イントロや間奏でテン・テン・テテテテンをメインで演奏していたキーボードがごっそりカットされてギターがメインになっているところが分かりやすい違い。
★★★☆☆
1stアルバム『君が笑うとき君の胸が痛まないように
1stベスト『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~』(10.Y.O Version)
8thベスト『Completely Recorded
4thライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA “cELEBRATION 2010″~Sing Out Gleefully!~』(Live/メドレーの1曲)

C/W RAIN DANCE MUSIC

編曲:西平彰&槇原敬之
英訳:Jeff Patterson、編曲:槇原敬之(DANCING IN THE RAIN(ENGLISH VERSION))

同じく同時発売のアルバムにも収録。「NG」よりも明らかにシングルっぽいインパクトがある切ない失恋ソング。ちゃんとサビもあって盛り上がってメロディーもキレキレ。これがデビューシングルA面ならとんでもない新人が出てきた事を存分に示せたのではないかと思われるが、何故これがC/Wなのか…。アレンジ面では後年に比べると明らかに音が固い気はする。そういう点では最初期だなとも思う。タイトル通り雨の情景がとてもよく浮かぶ楽曲で、最初期から情景描写に優れていたことも分かる。意外な事にオリジナル音源でのベスト盤選曲は無い。

『SMILINGⅢ』では全英語詞でリアレンジされ、「DANCING IN THE RAIN(ENGLISH VERSION)」に変更された(元々サビの歌詞は”Dancin’in the rain.”だった)。ソニー移籍後にワーナーが連発していたベスト盤シリーズなだけにいつ制作されたのかは不明だが、同じENGLISH VERSION化した「CLOSE TO YOU(ENGLISH VERSION)」とは完全に同じ制作でシンセオペレーターに飯田高広、ギターに遠藤太郎、エンジニアが沢田知久となっていて、ソニー移籍以降のラインナップ(ワーナー時代の沢田の参加は『THE DIGITAL COWBOY』の一部参加だけだったはず)なので、移籍直前の置き土産か移籍後、いずれにしてもお蔵入り音源的なものではなく『SMILINGⅢ』発売からさほど離れていない新規のレコーディングだったのは間違いないだろう。原曲よりも全体に音が洗練されている。1stアルバムの曲はデビューに向けての書き下ろしではなくアマチュア時代のストック=沢田と共に録音制作していた時期の曲だったと思うので、あの頃の曲をお互いプロとして経験を重ねた後の再合流で再度沢田と共に録音した事にも感慨深いものがあったのではないか。
★★★★☆
1stアルバム『君が笑うとき君の胸が痛まないように
3rdベスト『SMILINGⅢ~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~』(DANCING IN THE RAIN(ENGLISH VERSION))

80km/hの気持ち

1990年10月25日
From 1stアルバム『君が笑うとき君の胸が痛まないように
彼氏のいる彼女に恋をしている主人公の切なく苦しい思いが綴られていて、歌詞は全く明るくはないが、曲調は明るくポップな曲。1stアルバムにおいてはミディアム~バラード系が多い中でポップさが際立っていて、デビューシングルっぽい初々しさもあるように思う。サビ冒頭の英語詞のハマりが良くて非常に心地いい。

『SMILINGⅢ』では’98 NEW VERSIONとしてリメイクされているが、NYセッションとUKセッションの2パターンあるうち今作はUKセッションの方でロンドンで現地ミュージシャンによりリミックス&リアレンジが施されている。正式なクレジットは“Remix,additional production and arrangement by James McMillan for Quiet Money”たぶんこの人。原曲ではサックスとエレキギターが生だったのが、’98 NEW VERSIONではGreg Lesterのアコースティック&エレキギター、Imaani Saleemのコーラス、JMcM(James McMillan)のドラム&キーボードが新規録音されている。ドラムが入ったといってもかなり軽めの質感で洋楽テイストなクールさとポップなメロディーが合わさった独特の仕上がり。
★★★★☆
3rdベスト『SMILINGⅢ~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~』(’98 NEW VERSION)
3rd配信限定ライブアルバム『Makihara Noriyuki Concert 2024″TIME TRAVELING TOUR”2nd Season~Yesterday Once More~』(Live)

2nd ANSWER/北風

B00005HF6I
1991年4月25日
両A面シングルで共に1stアルバムからのシングルカット。ジャケットでは堂々両A面表記になっているほか、反対側のジャケットでは『北風/ANSWER』とひっくり返して表記しているどこからどう見ても純然たる両A面シングルであった。…が、現在のというかかなり早い段階から公式では『ANSWER』単独A面扱い。前作同様に2曲ともアルバムから変更なしでそのまま収録されていて、カラオケも無いので今作のみで聞ける音源は無い。半年も前のアルバムから2曲ともそのままシングルカットでは売れるはずもなく、やはり100位圏外となり全く売れなかった。

前作同様の完全なコレクターアイテム的であったものの、売れなかったので希少価値はそこそこ高い

ANSWER

編曲:西平彰&槇原敬之
ベスト盤では編曲:西平彰

前作と同じタイプのピアノバラード。1stアルバムの1曲目を飾っているので、後追いで1stアルバムを聞いた当時のリスナーは「NG」よりも、今作が始まりの1曲という感じがするのではないか。前作同様のサビどこ系バラードではあるが、“愛という窮屈をがむしゃらに抱きしめた”のフレーズとメロディーの存在感の強さ、ラスト手前の”春の強い風も~”の部分で少し盛り上がる展開を見せるなど前作よりも緩急があるように思う。またギターベースドラムピアノが全て揃ったフルバンド編成なのは1stアルバムではこの曲だけ。別れそうなカップルが描かれていて一応最後には”君を抱きしめ”ているのだがハッピーエンドにはあまり思えない雰囲気で…。この続きは2ndアルバム収録の「EACH OTHER」で描かれているが、案の定ものの見事に別れてしまっているので切なさが倍増する仕様。

前作と比較しても今作の方が圧倒的に人気が高いようで2010年にコブクロ、2013年に堂本剛が相次いでカバーするなど同業者人気も高い。コブクロのカバーバージョンは槇原敬之公式のトリビュートアルバム『We Love Mackey』にも収録された(なおコブクロにはインディーズ最終作『ANSWER』というアルバムがあるが曲は入っておらず、1stアルバム『Roadmade』に「ANSWER」という曲が収録されているがそっちはコブクロのオリジナル曲でカバーアルバム『ALL COVERS BEST』に収録されているのが今作のカバーである)。

槇原サイドでの扱いも良く、ライブアルバムへの収録も多い。2010年のcELEBRATIONライブに行ったことがあるが、この時に披露された時はピアノのイントロの瞬間に嬉しさで号泣している人を見たのでそのくらい熱い思い入れのあるファンもいるようだ

10.Y.O Versionはオリジナルよりもボーカルのリバーブ感が抑えられている。”春の強い風も~”の部分の演奏の盛り上がりも抑えめになっている。オリジナルの絶妙に響き渡るボーカルに慣れているとなんだか物足りないが、こちらの方がネイキッドであり、そこを目指しての新ミックスなのかなと思う。
★★★☆☆
1stアルバム『君が笑うとき君の胸が痛まないように
1stベスト『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~』(10.Y.O Version)
8thベスト『Completely Recorded
3rdライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA “cELEBRATION 2005”~Heart Beat~』(Live)
4thライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA “cELEBRATION 2010″~Sing Out Gleefully!~』(Live/メドレーの1曲)
1st配信限定ライブアルバム『MAKIHARA NORIYUKI SYMPHONY ORCHESTRA CONCERT “cELEBRATION 2015”~Starry Nights~』(Live)
3rd配信限定ライブアルバム『Makihara Noriyuki Concert 2024″TIME TRAVELING TOUR”2nd Season~Yesterday Once More~』(Live)

北風

編曲:西平彰&槇原敬之
ベスト盤では編曲:西平彰

今作が1月にFM802でパワープレイになったとされ、それでシングルカットされたというのが定説となっているが…。それにしては両A面の2曲目、しかも今作の発売日GW前の4月25日であり、北風なんて1番遠い季節でどう考えても雪が降る曲をリリースするタイミングではない。アルバムがそもそも10月25日だったのとパワープレイを受けてのシングルカットなら同じ1月2月くらいが順当なところ。デビュー作から半年も経ってから新曲も出さずにシングルカットって…。次の制作に向けて西平彰を続投させるか、アレンジャーを変えるか、そもそも本人が1人でやりたがっているのでそれを尊重するか、次の制作体制をどうするかっていうのはたぶん年明けには単独で行くのは決まっていたと思われるが少なくとも年明けすぐに単独アレンジに制作体制を変えて新曲というわけには行かず、ある程度は単独アレンジへ移行しての制作に入るまで時間があったのではないか。

次回作で触れるように「どんなときも。」映画タイアップ決定の報は大学合格通知と同日とされている。2月26日に入試が全て終了した翌27日に映画タイアップ話を持ち掛けられたというのは『槇原敬之の本』でも『歌の履歴書』でも揃って日付が書かれているので確定。『歌の履歴書』には1週間で仕上げる事が条件だったとされているので3月前半のうちに結果が出ていたと思われる。必然的に3枚目のシングルは「どんなときも。」で決定となったと思われるが、映画は6月なのでそれまで「どんなときも。」は出せない。しかし10月25日デビューから6月まで何も出さないといきなり空白が半年を越えてしまうので”繋ぎ”でシングルカットする事にした…というのが実際のところなのかもしれない。なお実際に入学したのは青山学院大学文学部第二部英米文学科だが2月26日の試験が青学だったのか、映画タイアップ決定の報と同日の合格通知というのが青学だったのかは不明である。

1992年に「北風~君にとどきますように~」としてリメイクされてヒットしたため、基本的にヒット曲としてメディアでかかるのは「北風~君にとどきますように~」の方であり、原曲である「北風」がかかる事はほとんどない(特にTVは歌唱映像が「北風~君にとどきますように~」しかないはず)。ラジオでもよほど特別に指示が無い限りは(リクエストで指定されているとか、局側が絶対こっちだとかじゃない限り)こっちはかけないんじゃないかと思う。

「北風~君にとどきますように~」と比べて全く違うというほどには変わっていないが今作はかなり音が固めでシンプルな印象。原曲である今作の方が後追いで聞いたのもあるが、普通に「北風~君にとどきますように~」の方が売上全盛期の槇原敬之らしさがあるし完成度も高い。なのでわざわざこっちを聞く事はあまり無かったんだけど、しばらくしてからこっちにはこっちのシンプルな味があって、これはこの時にしか出せなかった味だなとも思えるようになった。

1992~1993年頃のインタビューで既に1stアルバムでアレンジャーが入った事について不満と取れる発言を残しているようなので、「北風」もアレンジに不満があって発売2年で自ら満足いく形にやり直した、と当然思われそうな発言をしていたわけだけど、後年語ったところによれば1stアルバムの中では真っ先に思い入れのある曲として「北風」を挙げており、西平彰との共同アレンジにおいてももともと自分がやっていたアレンジとはほぼ一緒だったとしていて、ふんわりニュアンスを変えている。いずれにしても多少アレンジが固くても確かな名曲には違いない新緑の季節にシングルカットされても季節外れでいくら名曲でもさすがに魅力は減退するよなとも思ふ

ベスト盤への収録は基本的に「北風~君にとどきますように~」となっているが『SMILINGⅡ』にのみORIGINAL VERSIONの表記をつけて今作を収録し、1曲目を飾っている。後追いのリスナーはここで初めてオリジナルバージョンを聞いた人も多いのではないか。

ライブアルバムでは2010、2015の2度「北風」表記で収録されており、どちらも「北風~君にとどきますように~」の歌始まりではなく、特に2010は原曲のイントロをアレンジしたものになっているので表記ブレではなく明確に「北風」のライブアレンジとして区別しているようだ(2015は「Christmas Medley」の2曲目に配置されておりコーラス隊とオーケストラによる導入インスト的な1曲目「WELCOME CHRISTMAS」からAメロに突入する仕様)。
★★★★☆
1stアルバム『君が笑うとき君の胸が痛まないように
2ndベスト『SMILINGⅡ~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~』(“ORIGINAL VERSION”表記)
4thライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA “cELEBRATION 2010″~Sing Out Gleefully!~』(Live/メドレーの1曲)
1st配信限定ライブアルバム『MAKIHARA NORIYUKI SYMPHONY ORCHESTRA CONCERT “cELEBRATION 2015”~Starry Nights~』(Live/「Christmas Medley」メドレーの1曲)

3rd どんなときも。

B00005HF6J
1991年6月10日
今作で初登場49位を記録し、3作目にして初チャートイン。39位→13位→4位→3位→1位と一気に駆け上がって6週目に1位となった。1位は1週のみに留まったがその原因は1位になった翌週からCHAGE&ASKA『SAY YES』の13週連続1位が始まったからで、そこから7週連続2位→4位→3週連続2位→3位→6位と推移、『SAY YES』がようやく1位から落ちた週に今作はトップ10から落ちていった。『SAY YES』13週連続1位のうち実に10週2位を記録するという怒涛の2位連発であり、全く取り上げられた事はないが、10週も2位を記録したシングルっていうのもなかなか他にない珍記録なのではないか。

紅白効果で年明けにはトップ10復帰(合算週+2週)しており、1年近い49週ランクインで167万枚の最大ヒットとなった。これはアルバム含めて自身最大となる(アルバムでの最大ヒットは『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~』の166万枚でわずかに及ばず)。

どんなときも。

織田裕二主演映画『就職戦線異状なし』主題歌。冬クールの月9ドラマ『東京ラブストーリー』で織田裕二が大ブレイクした直後の主演映画だが、この当時の織田裕二はまだ主演作で主題歌も担当するパターンはやっておらず(連ドラでも1994年になってから、主演映画での主題歌は連ドラから映画になった『踊る大捜査線』シリーズと2003年の『T.R.Y.』でしか担当していない)、主題歌コンペの話があって新曲を作る事になったと語られている。

前述のように話を持ち掛けられたのはこの年の入試を終えた2月26日の翌日(27日)で1週間で締切というタイトなスケジュールだった。しかも別のNTTのタイアップ話もあって2曲を1週間で仕上げることになったがそのもう1曲のタイアップの話は無くなったとされる(曲自体はもう1曲も1週間で仕上げていてアルバム曲「CALLIN’」になったとされるがこっちは具体的な制作エピソードは語られていない)。

人生応援歌のような曲は作った事が無くどうしようかと思いつつ打ち合わせを終えて店を出て後から出てくるスタッフを待っている時に早くもどんなときも~どんなときも~というフレーズが浮かび、うわダサいと思ったがこのフレーズがいつまでも頭から消えなかったため、直感を信じ、さらに自分は本当は何をしたいのか葛藤しながら浪人生を続けていた事、音楽をやりたいという思いを貫いてここまで来たことをそのまま歌詞にしようと素直に自分の思いを綴って今作が完成し、採用された。何故デビュー後も浪人生活をしていたかというと電器屋の両親は息子に継がせる気はなく大学を出て就職してほしいと考えていて、オーディションに合格したりデビューが決まった後も大学受験は続けるように強く言ってきたためだが、当の本人は音楽をやりたくて受験勉強に本腰が入らなかったために三浪するに至っていたようだ。大学受験を巡ってはかなりケンカになった事もあったといい、最終的には「合格通知をもらうだけで大学に行かなくてもいい」という良く分からない合意点に着地したという。

小貫氏による『歌の履歴書』ではややエピソードが補強されており、どんなときも~どんなときも~のフレーズが消えないので1度作ってみようと自宅アパートでデモ制作をした際には“大阪時代の友達でエンジニアの仕事をしようと思っていた人間”が東京に来ていたので呼び寄せて彼とデモの録音を自宅でしたと書かれている。既に同書では沢田知久の名前は出ているのにこの部分にだけ何故か名前を出していない。これは同じ小貫氏が1度目の逮捕から復帰した後の2002年に出版したインタビュー本『うたう槇原敬之』でも同様に触れられており、アマチュア時代の話では沢田の名前を散々出しているのにこの時の話になると槇原本人が東京に来ていたエンジニアの友人と名前を伏せて語っていた。作者が同じ小貫氏なので『歌の履歴書』は改めてもう1度話を聞いたのではなく『うたう槇原敬之』の時に聞いた話はそのまま使っていて同じ表現になった可能性もある。何故槇原がエンジニアの友人の名前を伏せて語った形になっているのかは謎だ。沢田以外にも大阪の友人にエンジニア志望がいたのだろうか(例えば目指していたもののエンジニアにならなかったので名前を出さないとか)。

ただやはりこれは沢田じゃないかと思える証言もある。当初出したサビの歌詞は映画サイドに修正を要請され、もっと自分の思いを出した歌詞に書き換えたのが現行のバージョンとされる。沢田氏本人が『地球音楽ライブラリー』のインタビューで「どんなときも。」はデモテープの段階から知っていると発言しているのだ。デモの歌詞の方が好きと発言しているばかりかそのデモのオリジナルテープも所持している事を語っているので、やはりデモ制作を手伝ったのが沢田だからこそ最初の歌詞を知ってるしテープも持っているのではないか。エンジニアが別人なら槇原は1週間後締切のそのデモカセットをダビングして沢田に聞いてもらうためにわざわざ沢田に送付している事になる。よって自宅でのデモ制作は上京していた沢田を呼び出して行ったと思うんだけどどうなんだろう。

不朽の名作。2000年代後半以降~2度目逮捕前までの「FNS歌謡祭」では一時期毎回コラボでこの曲を歌わされるなど懐古需要も高まっていたが、ライブでも定番なのでライブアルバムでも必ずこの曲は収録されており、観客の歓声も最高潮になるのが聞いてて分かる。ライフソングを押し出すようになったのは1度目逮捕以降で、この頃はラブソング主流だったので自分を信じていこう的な曲は珍しかったけど、今にしてみれば本質的なところは実は変わっていなかったのが分かる。自分らしさを貫くという強さもまあ後年ほど意固地なまでに歌詞で正しさを主張する時期もあったりと、今作で歌っている事がそのまま槇原敬之の人生になっていったようにも思う。““昔は良かったね”といつも口にしながら生きて行くのは本当に嫌だから”という部分が個人的には肝に銘じておきたいフレーズで、ついていけなくなるのは仕方ないにしても忘れないでおきたい考え方だ。

今作より外部アレンジャーを入れずに編曲も単独表記となり、基本編成は本人のキーボード、サポートシンセ、サポートギターを軸にした打ち込みで暖かみのあるサウンドを表現するというのが基本となるが、この頃は過渡期だったのでまだ生ドラムを使っている。しかし後の打ち込みドラムと比べてもあまり違いが無く、むしろ3rdアルバム以降の打ち込み曲よりも機械的な響きである。また「モーニング娘。」に先駆ける事7年、タイトルに「。」をつけたのは早かった。続く『君は誰と幸せなあくびをしますか。』でも「。」をつけているので一時期ハマっていたのだろうか。

バージョン違い最多曲でもある。10.Y.O Versionは前2作同様の沢田知久によるミックス変更。今作の場合は90年代序盤特有の角が立ったような硬い響きだったドラムの音色が丸くなっていて古さを感じない自然な響きへと変更されている。

’07は2007年のセルフカバー。Renewed(version4)は20周年時のセルフカバー、その後更にキャラメルVer.と題されたセルフカバーも制作された。’07とキャラメルVer.はC/Wなので該当シングルの項目で詳しく触れるが、ここでは20周年時に制作された『Best LIFE』収録のRenewed(version4)に触れておく。なおベスト盤『Song Book“since 1997~2001”』『Completely Recorded』『Best LOVE』『Best LIFE』『The Best of Listen To The Music』は未配信なので『Best LIFE』収録のRenewed(version4)は今作のバージョンの中で唯一配信で聞けない

これは原曲、ballad version、’07に続く4つ目のアレンジという意味(10.Y.O Versionはミックスを変えただけでアレンジは同じなのでカウントしていない)。この時は本人も似合うかどうかは別にしてと語るようにもう4度目だったためか好き放題に加工しまくっており異様な仕上がりとなっている。謎の女性の鳴き声+へくしっとクシャミして電子音まみれの不穏なイントロがはじまり、へくしっは曲中で効果音的に何度も出てくる。この時点で実に8枚ベスト盤が出ていて4枚に収録、3年前に’07も作ったばかりだったので聞き飽きるくらい既に聞いてるだろうという前提があったためにぶっ壊しにかかれたところはあったんだろうけど…。それでも一応初の本人積極関与の20周年ベスト盤『Best LOVE』『Best LIFE』であり、他のRenewedはオリジナルのブラッシュアップや常識の範囲内でのリアレンジだったのに今作だけ振り切りすぎ。実は収録したくないのに入れろと言われたので抵抗としてぶっ壊しにかかったんじゃないかとも思えてくる。実際この後にレコード会社渡り歩きを辞めて誰にも文句言われない自主レーベルに移行してるし…。
★★★★★
2ndアルバム『君は誰と幸せなあくびをしますか。
1stベスト『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
4thベスト『SMILING GOLD~THE BEST&BACKING TRACKS~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~』(10.Y.O Version)
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~』(「THE 10th ANNIVERSARY MEGA-MIX」の1曲)
8thベスト『Completely Recorded
36thシングル『GREEN DAYS』C/W(’07)
10thベスト『Best LIFE』(Renewed(version4))
12thベスト『春うた、夏うた。~どんなときも。
13thベスト(販路限定)『SELECTED BEST』(Renewed(version4))
42ndシングル『恋する心達のために』C/W(キャラメルVer.)
15thベストアルバム『Buppu Label 15th Anniversary “Showcase!”』(キャラメルVer.)
1stライブアルバム『THE CONCERT CONCERT TOUR 2002~Home Sweet Home~』(Live)
2ndライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA“cELEBRATION”』(Live)
3rdライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA “cELEBRATION 2005”~Heart Beat~』(Live)
4thライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA “cELEBRATION 2010″~Sing Out Gleefully!~』(Live/メドレーの1曲でアンコールでこのメドレーをもう1回やったので2回収録)
1st配信限定ライブアルバム『MAKIHARA NORIYUKI SYMPHONY ORCHESTRA CONCERT “cELEBRATION 2015”~Starry Nights~』(Live)
2nd配信限定ライブアルバム『槇原敬之 Concert Tour 2022~宜候~』(Live)
3rd配信限定ライブアルバム『Makihara Noriyuki Concert 2024″TIME TRAVELING TOUR”2nd Season~Yesterday Once More~』(Live)
5th配信限定ライブアルバム『Makihara Noriyuki Concert 2025 Buppu Label 15th Anniversary”Showcase the Live!”』(Live/キャラメルVer.)

C/W どんなときも。(ballad version)

編曲:服部克久
服部克久のオーケストラアレンジによるピアノ&オーケストラ伴奏によるバラードバージョン。よりじっくり歌を聴くことが出来るものの、アレンジがやや大げさすぎる感は否めず、あくまで原曲あってのオマケ的なバージョンにも思える。なおバラードバージョンでフルサイズなのに間奏が短いので原曲よりも30秒ほど短い

2ndアルバム『君は誰と幸せなあくびをしますか。』冒頭を飾っているインストゥルメンタルヴァージョンというのはこのballad versionを短く編集したインストゥルメンタルだが、歌メロが無いのでballad versionを知らないで聞くと全く「どんなときも。」には聞こえない。シングル盤を入手してballad versionを聞いたのは2010年前後になってからだったため、それより10年以上前から聞いていた2ndアルバム冒頭のインストゥルメンタルヴァージョンが何で「どんなときも。」というタイトルなのか10年以上に渡って謎のままだった。

発売から21年の時を経て『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない』に収録された。
★★★☆☆
2ndアルバム『君は誰と幸せなあくびをしますか。』(インストゥルメンタルヴァージョン)(ballad versionのショートサイズインスト)
11thベスト『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない』(ballad version)

僕の彼女はウェイトレス

From 2ndアルバム『君は誰と幸せなあくびをしますか。
初出の2ndアルバムや『SMILING』での表記は小さい”ェ”だが、現行配信では2ndアルバムと『SMILING』も大きい”エ”となっている。公式ディスコグラフィーの2ndアルバムと『SMILING』は本来の小さい”ェ”のままだが、最新のライブアルバム『Makihara Noriyuki Concert 2024″TIME TRAVELING TOUR”2nd Season~Yesterday Once More~』では大きい”エ”となっている。元が小さい”ェ”だったので小さい”ェ”が正解なのではないかと思うが、これらの流れからすると配信納品時に大きい”エ”にしてしまい、そのまま大きい”エ”に変わってしまったようだ。

バラードばかりの2ndアルバムの中でも飛びぬけて明るくてポップな曲。彼女とラブラブで”君の笑顔の理由がもう1つ増えるなら 今降り出した雨だって 僕はやましてみせるよ”と歌うサビの恋愛絶頂無敵状態の歌詞が微笑ましい。メロディーの高揚感もすさまじくて、歌詞の内容に関係なく聞くと元気が出てくる1曲。さらに盛り上がる間奏のWow Wowコーラスも効果的。ベスト盤『SMILING』が未だに価値を失わない理由の1つにこの曲の収録がある。

ただ収録された2作のアルバムではどちらも次の曲が失恋の曲という配置になっている。『君は誰と幸せなあくびをしますか。』では次の曲が別れた後に振り返る視点で書かれた落ち着いたバラード「AFTER GROW」で今作のウキウキとの落差が凄い。2度目の『SMILING』収録時は恋愛無敵絶頂から浮気現場を目撃してあっという間に失意のどん底に落ちていき自分を笑う奴を呪い始めるという感情の落差ジェットコースタークラスのハイパー失恋ナンバー「SPY」というよりによってそれかよというもうわざとやっているとしか思えない仕打ち。今作の最後のWow Wowコーラスが唐突に途切れるエンディングからの間髪を入れずの「SPY」のイントロはあまりにも出来過ぎ。

そんなわけで凄くハッピー無敵な恋愛ソングなんだけど直後に落とされるというイメージが強い。「THE 10th ANNIVERSARY MEGA-MIX」では次の曲は「DARLING」「No.1」と幸せな曲が連続しており救済が!ついに救済がァァァァァ!とリミックスメドレーなんだけど妙に安心した気分になる…がその次が「もう恋なんてしない」といきなりオトされるので注意が必要だ(?)。

ライブアルバム『Makihara Noriyuki Concert 2024″TIME TRAVELING TOUR”2nd Season~Yesterday Once More~』では初期曲中心のセットリストにより久々に披露されたと思われるが、次の曲は「2つの願い」とやっぱり失恋ナンバーであった。宿命なのか。
★★★★★
1stベスト『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~』(「THE 10th ANNIVERSARY MEGA-MIX」の1曲)
3rd配信限定ライブアルバム『Makihara Noriyuki Concert 2024″TIME TRAVELING TOUR”2nd Season~Yesterday Once More~』(Live)

4th 冬がはじまるよ

B00005HF6K
1991年11月10日
2ndアルバムのヒットもあったが、まだまだ『どんなときも。』も単体でロングヒットしており、ちょうどベスト20から落ちたところで初登場10位を記録。2週目に5位に浮上し、これが最高位となったが、その後もトップ10後半でロングヒットし12週連続トップ10入りした。今度は何故か8位を連発して、8位だけで6週ランクインした。76万枚を越える大ヒットとなり、最終的に4番ヒットとなる。1発だけ大当たりなヒットも多かった当時、その次もヒットしたのは割と異例でもあり、トップクラスの大ヒット作だが、2トップのミリオン2作に挟まれているので分が悪くやや影が薄い。

初回盤は4面パノラマジャケット仕様となっていて8センチCDながら折り畳みとなっている。ロングヒットしたため、通常仕様の方が多く出回っている印象。イラストの画風がこれまでと違ってアメリカンっぽくなっているほか、裏ジャケの左上に本人がしれっと実写で登場している。

冬がはじまるよ

サッポロビール「冬物語」CMソング。当時のジャケットでは「サッポロ冬物語」となっている。今でこそ冬限定ビールとして「冬物語」というだけで浸透しているが1988年に開始したばかりだったのでサッポロも商品名に含んでいたのだろうか。このタイアップで今作に続くヒットを記録した1995年度のカズン「冬のファンタジー」はライブのサポートキーボードだった本間昭光が編曲を担当している縁でノンクレジットで槇原がコーラス参加したとされている。

アップテンポな幸せ系ラブソングということで『どんなときも。』のプレッシャーに負けない別の方向で勢いのあるヒット曲という印象。8月の誕生日に今年の冬も一緒に過ごせるように半袖よ長袖のシャツを両方プレゼントしていてそこから無事に(?)冬を迎える時間経過を感じさせる描写が良い。サビでは“ビールを飲む”という描写も入れてしっかりタイアップソングにもするなど早くも職人芸的な一面も。冬の名曲の中ではそこまででもないけど確かな良曲くらいな感じ。この曲がラジオで流れ始めると毎年冬を感じる…くらいには定番曲になっているのではないか。

2007年にはEvery Little Thingがカバーし、やはり「冬物語」CMソングの新曲「恋をしている」との両A面でシングル発売もされた。エイベックスに移籍したばかりだった槇原もコーラス参加したため「冬がはじまるよ feat. 槇原敬之」となっているが、そんなにガッツリ名前が出るほど槇原の声が存在感を発揮しているわけではなくあくまでコーラス参加である(「チキンライス」も同様だったが、相手メインのコラボではあまり自分が前に出て単独ボーカルとかしない傾向がある)。少し後の世代だとこの時のELTの印象で根付いてる人も多いかも。

『Best LOVE』のRenewdではかなりゴージャスなビッグバンド風に生まれ変わっている。それはそれで悪くはないが冬がはじまる感(?)はオリジナルやELTのアレンジの方があったような気はする。

2011年に再度「冬物語」CMソングに起用された際に「冬がはじまるよ 2012」としてリメイクしたとされるが音源は正式に発売されていない(配信の表記に「2012 Remaster」というのがあるがこれは単に2012年に一斉リマスター再発された原曲の音源)。当時の記事によるとキャンペーン特典として非売品のCDが存在するようだ。
★★★★☆
3rdアルバム『君は僕の宝物
1stベスト『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~
8thベスト『Completely Recorded
9thベスト『Best LOVE』(Renewd)
13thベスト(販路限定)『SELECTED BEST』(Renewd)
1st配信限定ライブアルバム『MAKIHARA NORIYUKI SYMPHONY ORCHESTRA CONCERT “cELEBRATION 2015”~Starry Nights~』(Live/「Christmas Medley」メドレーの1曲)
4th配信限定ライブアルバム『マキハラボ』(Live)

C/W 勝利の笑顔

安定の温もり系バラード。学生時代の友人との再会(と青春の思い出)を描いているんだけど、ただの同性の友人にしては描き方がドラマティックすぎるのは後の「MILK」にも通じるところか。普通にいい曲以上の印象にはなってこないものの、それなりの扱いを受ければそれなりの人気曲になりそうなものだが、2012-2013年の『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない』『春うた、夏うた。~どんなときも。』でワーナー前期8センチシングル時代のアルバム未収録C/Wが次々と救済される中で、今作だけが取り残される超不遇曲になってしまった。

2024年から始まったアナログ化の際は直近のC/Wや別バージョン曲を最も新しいリマスター音源で追加収録するという形で発売されていったので今作も3rdアルバム『君は僕の宝物』ボーナストラックとして収録されCDアルバム未収録ながらアナログ盤アルバムには収録された。しかしリマスター音源が無いためこの当時の音源のままで“1991年マスター”であった。
★★★☆☆
アルバム未収録
(2024年アナログ盤『君は僕の宝物』追加収録)

5th もう恋なんてしない

B00005HF6L
1992年5月25日
初動で30万近くをたたき出しながらB’z『BLOWIN’』に大差で及ばなかったため、初登場2位。2週目以降も3週連続3位→2位→2週連続3位…と今度は3位を連発しながら12週連続トップ10入りとまたもロングヒットし、139.7万枚2作目のミリオンヒットに到達。自身2番ヒットとなった。CHAGE&ASKAとB’zとと共に2年連続年間チャートトップ10入りを達成した。

前作まで4作連続イラストジャケットだったが、ジャケ写に初めて本人が登場した。

もう恋なんてしない

日本テレビ系ドラマ『子供が寝たあとで』主題歌。究極の失恋ソング。切なさ爆発のメロディーとアレンジにとにかく引き込まれる。精一杯に”もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対”とややこしい言葉回しで強がってみるものの未練残りまくりの情けない姿が泣ける。失恋ソングというと真っ先に浮かぶ曲はこれかもしれない。当時のサポートキーボードとして本間昭光(ak.homma)が参加しており、本間昭光の失恋話を聞いて書き上げたという実話エピソードは早いうちから知られていたが、2023年に『関ジャム』に出演した本間氏本人が語ったところによると失恋話を聞いた槇原が元気になる曲を作ると言って作られた曲ではあるけどこのような良い話ではないとも語ったらしい。また槇原本人によると当初は「もう恋なんてしない」と言い切って終わる曲だったが、プロデューサーの木崎賢治から救いがないとダメだと言われてこのような形に書き直したらしい。結果的に”もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対”はサビ頭よりもキラーフレーズになったと思うし、タイトルのままだったらここまでインパクトが残せたかどうか…。

なおこの曲を巡ってかつて友人が「槇原のさー、「もう恋なんてしないなんて~♪」って曲のタイトルさー、「もう恋なんてしない」だよね?あいつが「もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対」がタイトルだよとか言い張るんだけど!」とかいうややこしい電話がかかってきたことがある。なんだったんだ。酔ってたのか。

エイベックス移籍後にC/Wで「どんなときも。’07」が制作された翌年に「もう恋なんてしない’08」としてセルフカバー版が制作された。「どんなときも。」は『Best LIFE』でさらにもう1回作り直されたが今作は『Best LOVE』に’08のまま収録されている。そっちはやや無機質な印象。

『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない』では何故かタイトルソング扱いにされたが秋冬の要素は無くそもそも5月発売の春夏枠が妥当だったと思う。公開されたアンケート結果では15位とタイトルにするにはかなりビミョーな結果だった。
★★★★★
3rdアルバム『君は僕の宝物
1stベスト『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
4thベスト『SMILING GOLD~THE BEST&BACKING TRACKS~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~』(「THE 10th ANNIVERSARY MEGA-MIX」の1曲)
8thベスト『Completely Recorded
11thベスト『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない
38thシングル『Firefly~僕は生きていく』C/W(’08)
9thベスト『Best LOVE』(’08)
13thベスト(販路限定)『SELECTED BEST』(’08)
1stライブアルバム『THE CONCERT CONCERT TOUR 2002~Home Sweet Home~』(Live)
4thライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA “cELEBRATION 2010″~Sing Out Gleefully!~』(メドレーの1曲。アンコールでメドレーをもう1回やったので2回収録)
1st配信限定ライブアルバム『MAKIHARA NORIYUKI SYMPHONY ORCHESTRA CONCERT “cELEBRATION 2015”~Starry Nights~』(Live)
3rd配信限定ライブアルバム『Makihara Noriyuki Concert 2024″TIME TRAVELING TOUR”2nd Season~Yesterday Once More~』(Live)

C/W 夏のスピード

異国情緒のある笛系のアレンジが効果的な失恋ミディアムポップス。5月末発売のシングルだったのでタイトルにはリリース時期にも合った初夏の雰囲気もあったが、サウンドからはそんなに夏っぽさは感じられない。『君は僕の宝物』には別の夏歌「くもりガラスの夏」が収録されたせいかアルバム未収録のまま放置された。21年の時を経て『春うた、夏うた。~どんなときも。』に収録された。今作はシングル盤も所持してなかったのでこの時に初めて聞いたせいもあるがそこまで印象に残らなかった。早い時期に聞く機会があればもっと馴染んだかもしれない。
★★★☆☆
12thベスト『春うた、夏うた。~どんなときも。

くもりガラスの夏

1992年6月25日
From 3rdアルバム『君は僕の宝物
失恋ソングで、幸せな描写が全て過去形なのが切ないが曲自体はキャッチーで明るいサマーポップ。これが出来てしまったら「夏のスピード」はC/W送りのアルバム未収録になってしまうのも仕方がない。たぶん今作が「もう恋なんてしない」の代わりにシングルになっていてもそれなりにヒットさせられたんじゃないかと思う(まああくまでそれなりでミリオンまでの爆発力は無かったかもしれないけど)。

『SMILINGⅢ』の’98 NEW VERSIONNY録音によりOmar Hakim(Dr.)、Will Lee(Ba)、Philippe Saisse(Piano)ら同年までSMAPのアルバムのNY録音に関わっていたSmappiesの演奏メンバーらにより豪華生音に差し替えられたリメイクバージョン。原曲と同じなのは小倉博和(Gt)だけで、原曲では何故かパーカッションだった槇原本人はキーボードになっていて本人も新たに演奏し直している?アレンジ自体は大きく変更されておらず、生演奏で録音し直した感じ。この頃は一気にアレンジがカラフルさを増した時期だったので原曲も素晴らしかったが、豪華な生音も聞き応えがあって素晴らしい仕上がり。
★★★★☆

3rdベスト『SMILINGⅢ~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~』(’98 NEW VERSION)
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~』(「THE 10th ANNIVERSARY MEGA-MIX」の1曲)
12thベスト『春うた、夏うた。~どんなときも。

三人

1992年6月25日
From 3rdアルバム『君は僕の宝物
デビューを控えて上京した際にオーディションの審査員をやっていたエンジニアの家に半年ほど居候させてもらった時の実話をそのまま歌にした曲。曲作りの時間も取れずプライベートもろくにない超多忙な日々で不満が溜まってきた頃に原点を思い出そうとして書かれた曲だったようだ。エンジニアの人とやがて一緒に住み始めたその人の彼女との東京での最初の思い出を記録した温かい曲。曲自体は名曲揃いのこのアルバムの中では普通なのだが、実話だというエピソードを聞くと何とも暖かい。曲の最後に”ビアガーデンに行く約束”をまだ果たしてないと歌われているがその後、行ったのだろうか?けっこう切る時はバッサリ縁切る人だからな
★★★☆☆
3rd配信限定ライブアルバム『Makihara Noriyuki Concert 2024″TIME TRAVELING TOUR”2nd Season~Yesterday Once More~』(Live)

遠く遠く

1992年6月25日
From 3rdアルバム『君は僕の宝物
東京で2度目の春を迎えて外苑通りに来ていた時に新社会人のスーツ姿を多く見かけ、彼らは何を思うのかを考え自分ならこういう気持ちを向けるとして書いた曲と『槇原敬之の本』までの以前のインタビューではコメントしていたが、『歌の履歴書』では自分がアーティストとして名を成せば同窓会の案内状に頼らなくても僕が元気だと伝えられるのではないかという個人的には思いを”僕のことが分かるように”の言葉にあえて込めたとだけ書かれていて、曲を書いた動機の切り取り方が異なっている。『槇原敬之の本』の槇原像は正直でまっすぐないい奴感があるのに対して、『歌の履歴書』の槇原像はやたらと淡々としていてかなり人物像が異なる印象を受けるがこういう部分の積み重ねが大きい。

レゲエのリズムを取り入れたポップな新生活決意表明ソングでもあり、特に故郷から離れて頑張っている若者には突き刺さる1曲。”どんなに高いタワーからも見えない僕のふるさと”は故郷の大阪の事でもあるが大阪に限定せずに多くの上京して期待と不安の多い若者を励ましたと思われる。上京関連は個人的に実感があまりないものの大事なのは”変わってくこと””変わらずにいること”という言葉は強く刺さる。名曲。

当時から人気曲で『SMILING』収録もあって代表曲の1つ、アルバムの名曲枠でそれこそMr.Childrenの「Over」とかサザンオールスターズの「希望の轍」とかB’zの「いつかのメリークリスマス」だとかそこまでではないかもしれないけど類似するようなポジションの曲にはなっていたと思う。ただ逮捕からの復帰間もない桜ヴァージョンの時は世間に再度広がるまでは行かなかった(桜ヴァージョンはシングル『桃』で改めて取り上げる)。

2006年に’06ヴァージョンが制作されてNTT東日本のCMソングになったため東日本エリアでは少なくとも再注目され、その辺りからは筆頭代表曲級に知名度が爆上がりしていった印象がある。

何故か『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない』のリクエスト投票で秋冬ベストだと言っているのに5位にランクインするというキテレツな事態に陥り、秋冬ベストの中で外苑の桜を咲き乱れさせてしまった。当初告知は無かったが秋冬やったなら春夏も来るよねという大多数の予想通りにやっぱり続編企画として告知された『春うた、夏うた。~どんなときも。』のリクエストでは普通にもっと上位に入るのは確実で重複必至だろうと思われたがここで隠し技のように桜ヴァージョンが繰り出され、桜ヴァージョンアルバム初収録となった。大枠のアレンジやイメージは変わっていないので『春うた、夏うた。~どんなときも。』に収録された時も違和感はなかった。

’06ヴァージョンは槇原本人がプログラミングを手掛けるようになってから制作されている。『Best LIFE』ではこの’06ヴァージョンが採用されており、『秋うた、冬うた。』『春うた、夏うた。』もあったので2010年代前半になって相次いで全3バージョンがベスト盤リマスター音源で出揃うという特異な経歴の1曲になった。
★★★★★
1stベスト『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
4thベスト『SMILING GOLD~THE BEST&BACKING TRACKS~
23thシングル『桃』C/W(桜ヴァージョン)
14thアルバム『LIFE IN DOWNTOWN』初回盤のみ(’06ヴァージョン)
10thベスト『Best LIFE』(’06ヴァージョン)
11thベスト『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない
12thベスト『春うた、夏うた。~どんなときも。』(桜ヴァージョン)
13thベスト(販路限定)『SELECTED BEST』(’06ヴァージョン)
4thライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA “cELEBRATION 2010″~Sing Out Gleefully!~
2nd配信限定ライブアルバム『槇原敬之 Concert Tour 2022~宜候~』(Live)

君は僕の宝物

1992年6月25日
From 3rdアルバム『君は僕の宝物
アルバム表題曲バラード。失恋ソングも多かったが、今作は直球で幸せの曲であり初期三部作の集大成というか到達点のような1曲。幸せの意味を忘れぬようにかみしめようとしている主人公は、今までの主人公に比べると少し大人だ。

暖かさに溢れたバラードで、最初聞いた時は…あまり覚えていなかったんだけど…じわじわ効いてきて名曲という印象に変わっていった。シンセのピョコ・コン・コン・ピョコ・コン・コン・ピョコ・コンココンココンというフレーズも今となってはこの音色が少し古くも聞こえるが印象的。アルバムでは冒頭とラストにこの曲のインストを入れているためより印象的。

アルバム1曲目の「INTRODUCTION」は今作のピアノとシンセメインのインストで最終曲「君は僕の宝物~REPRISE~」は佐橋佳幸&小倉博和によるアコースティックギターインストとなっている。

Renewedでは大胆改変はせず、ピョコ・コン・コンのフレーズも残されてそのまま現代的にブラッシュアップされた印象。
★★★★★
2ndベスト『SMILINGⅡ~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
4thベスト『SMILING GOLD~THE BEST&BACKING TRACKS~
9thベスト『Best LOVE』(Renewed)
13thベスト(販路限定)『SELECTED BEST』(Renewed)
1stライブアルバム『THE CONCERT CONCERT TOUR 2002~Home Sweet Home~』(Live)
3rdライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA “cELEBRATION 2005”~Heart Beat~』(Live)
4thライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA “cELEBRATION 2010″~Sing Out Gleefully!~
2nd配信限定ライブアルバム『槇原敬之 Concert Tour 2022~宜候~』(Live)

6th 北風~君に届きますように~

B00005HF6M
1992年10月25日
変則的なシングルカット。「北風~君に届きますように~」は2ndシングルに続く2度目のシングルカットでリメイク、C/W「涙のクリスマス」はシングルカット新曲はなかったためこれまでよりも売上は低くなり。初登場9位とギリギリのトップ10入りだったが、トップ10前後を行ったり来たりしながらロングヒットして年明けに最高6位を記録(トップ10入りした最終週)するなど売れ方も少し変則的で最終的に62.7万枚とリメイクとはいえ2度目のシングルカットとしては上々の売上を記録した。

北風~君に届きますように~

Strings & Horn Arrangement:服部隆之
「北風」を単独アレンジ+ストリングス&ホーンアレンジを加えてリメイクした曲。発表わずか2年でしかも1度シングルカットしているのにリメイクしてシングルにした事や当時既に1stアルバムでアレンジャーと共同編曲になった事が不満だった旨をインタビューで語っていたので、この曲は特に作り直したかったんだろうなと思われていた。…が、2004年『槇原敬之の本』でも2021年『歌の履歴書』でもこのリメイクについては特に何も語られていないどころかほぼすっ飛ばされて充実の3rdアルバムからこの後のスランプ(「MILK」「彼女の恋人」)の話に切り替わってしまう。2010年の『Best LOVE』セルフライナーでは曲を作った時の思い出話というアマチュア時代の話に終始し、2012年の『EARLY 7 ALBUMS』のインタビュー冊子ではオリジナル「北風」に対してデモからほとんど変わっていないので1stアルバムの中で1番お気に入りの曲と回答しているし、アマチュア時代からの大切な曲である事は分かるのだが現在でも最終版となっているこの「北風~君に届きますように~」自体については後年ほとんど語っていない。よって後年の本人による「北風~君に届きますように~」の立ち位置は良く分からない。

この微妙なニュアンスを象徴するかのように基本的なアレンジは大きく変わっていない。サビから入る構成や全体的な温もりのあるサウンドに大幅にブラッシュアップ。槇原冬の名曲No.1といってもいいほどでとにかく素晴らしい。雪国の人は見慣れていてなんとも思わないどころか迷惑に思うのかもしれないが、普段雪の降らないところで雪が降ってきた特別感、特に子供の頃に雪が降って来た時のあのワクワクを思い出させてくれる。

リメイクだったためか、オリジナルアルバムには未収録となったため、1997年の『SMILING』までアルバム未収録のままだったが、その後は多数のベスト盤に収録されていて何故かソニーのベスト盤『Song Book“since 1997~2001”』にまでわざわざ引っ張ってきてボーナストラック的に収録された事もある。『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない』のサブタイトルは”~君に届きますように”の方が良かったんじゃないかとは思う。
★★★★★
1stベスト『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
4thベスト『SMILING GOLD~THE BEST&BACKING TRACKS~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~』(「THE 10th ANNIVERSARY MEGA-MIX」の1曲)
7thベスト『Song Book“since 1997~2001”
8thベスト『Completely Recorded
9thベスト『Best LOVE
11thベスト『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない
3rd配信限定ライブアルバム『Makihara Noriyuki Concert 2024″TIME TRAVELING TOUR”2nd Season~Yesterday Once More~』(Live)

C/W 涙のクリスマス

3rdアルバム『君は僕の宝物』からのシングルカット。より季節に合うタイミングで再度出し直す形でのシングルカットと思われ、タイトル通りの失恋クリスマスバラード。何もわざわざクリスマスに哀しい曲を聞かなくても…という感じがするのと、そもそもけっこうかったるいバラードなのであまり聞かないかも…。
★★★☆☆
3rdアルバム『君は僕の宝物
11thベスト『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない

7th 彼女の恋人

B00005HF6O
1993年4月25日
絶頂期を過ぎて少し落ち着き始めてきた時期で初登場9位と低めの出足から5位→4位と連続上昇して最高4位、累計49.7万枚を記録。プロデューサーの木崎賢治から禁止令を出されていたブラックミュージックのテイストが解禁されて早速取り入れたためこれまでのシングルとは作風が変わったのもあってリスナーの戸惑いが反映されたのかもしれない。

彼女の恋人

曲が書けない、それどころか何も感じないスランプに陥り、知り合いの音楽ライター松野ひと実(のちに『槇原敬之の本』を出版)とお互いの悩みを吐露しあったことで復活して出来たのが「MILK」で、もう寝ようと思ったら次にできた曲が今作とされている。ポップな作風からブラックミュージックのテイストを盛り込んで一気にクールなサウンドに変貌、新たな方向性を示した1作となった。ある程度売上が落ちるのは想定内でそれ以上に違った部分を見せたかったという立ち位置のシングルだろう。

曲自体は彼女の恋人が僕の友達、僕が彼女を好きなことを彼女は知らないという片思いソング。これまでになく少しシリアスな作風で新展開を見せている。今までにないサウンドは新鮮だが、やはりポップな曲に比べるとカウンター的な1曲以上の印象にはならなかったところはあある。ただここでこういう曲を出しておくのは必要なことだったとは思うし、時々こういうのがあるから面白いし、ポップな曲もまた輝く。

ALBUM VERSIONは冒頭で車に乗る歌詞になっているためか車のエンジン音が加えられているほか最終曲「猫がふんじゃった」の編曲を手掛けているMichel Gibbsによるストリングスアレンジが加えられている。00年代以降に思ういわゆるストリングスが曲を覆っているような感じはなく、時々なんか豪勢な感じに聞こえる程度なのでパッと聞きは最初のエンジン音の方が分かりやすいかもしれない。Renewedでも同様にブラック風味を強調しているのでこの曲はもうそういう曲なのだろう。そして後から濃くしている事からもシングルはこれでもかなり薄めた仕上がりだったのかもしれない。
★★★☆☆
4thアルバム『SELF PORTRAIT』(ALBUM VERSION)
1stベスト『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~』(「THE 10th ANNIVERSARY MEGA-MIX」の1曲)
8thベスト『Completely Recorded
9thベスト『Best LOVE』(Renewed)
13thベスト(販路限定)『SELECTED BEST』(Renewed)
4th配信限定ライブアルバム『マキハラボ』(Live)

C/W CLASS OF 89

来年結婚する昔の彼女(友人?)と変わらない自分を対比させたゆったりとしたミディアムバラードナンバー。暖かみと少しばかりの切なさはあるものの、歌詞自体には悲しい感じはなくてむしろ主人公は前向きなのが良い。18歳だった4年前を振り返っており、発売年1993年から4年前が1989年。よって”89″はそのまま1989年の事と思われ、実話なのかは分からないが、時系列や感覚的な部分では当時のリアルタイム感がベースにはなっているような気はする。

長年アルバム未収録ですっかり埋もれた楽曲だったようだが、2010年のライブ「cELEBLETION 2010」で突如披露され、ライブCD/DVDとして発売された後に、『春うた、夏うた。~どんなときも。』にてアルバム初収録となった。
★★★☆☆
12thベスト『春うた、夏うた。~どんなときも。
4thライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA “cELEBRATION 2010″~Sing Out Gleefully!~』(Live)

8th No.1

B00005HF6S
1993年9月1日
アルバムまで駆け抜ける3連続リリースの1作目。前作の初動は7万にも届かなかったが、今作は初動25万と『どんなときも。』以来2度目の1位を記録。初登場での1位は今作が初となり、タイトル通りの「No.1」となった。68.0万枚で5番ヒット作(当時は4番ヒット)。初登場2位は1万枚を割る僅差でZARD「もう少し あと少し」だったため、タイトルと1位2位の並びがそのままという面白い並びとなり、このネタは後年『トリビアの泉』でも取り上げられた。

これまでカラオケ無しの2曲入りだったが、今作より表題曲のカラオケが収録されるようになり、3トラックとなった。ただしこれに伴い当時(3%)の税込900円だったのが1000円に値上げとなった。

No.1

前作から一転して王道のポップス、幸せ全開のラブソング。ここまでの明るさはシングルでは初、「僕の彼女はウェイトレス」に続くような恋愛絶頂感がある。個人的に旧作への入口の役割を果たしたベスト盤『SMILING』で1曲目を飾っていたので、始まりの1曲にしてど真ん中という印象が強い。なおこのシングルとその次の『SELF PORTRAIT』収録時はいずれも次の曲が失恋バラードという幸せ持続しなさすぎなところで「僕の彼女はウェイトレス」を踏襲しているが、『SMILING』『SMILING GOLD』ではそこまで被せてきていない。

1位獲得曲は3作しかないのでかなりの代表曲ということになるが、No.1よりオンリーワンを提唱する「世界にひとつだけの花」が有名になり、意味合いが違うとはいえ、あまりライブ等で披露される機会は多くないようだ。実際ライブアルバム4作にはいずれも収録されていなかった。その後2015年にリメイクしてからは配信限定のライブアルバムに収録される機会も出てきている。
★★★★☆
4thアルバム『SELF PORTRAIT
1stベスト『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
4thベスト『SMILING GOLD~THE BEST&BACKING TRACKS~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~』(「THE 10th ANNIVERSARY MEGA-MIX」の1曲)
8thベスト『Completely Recorded
9thベスト『Best LOVE
12thベスト『春うた、夏うた。~どんなときも。
配信シングル(2015)
1st配信限定ライブアルバム『MAKIHARA NORIYUKI SYMPHONY ORCHESTRA CONCERT “cELEBRATION 2015”~Starry Nights~』(Live)
3rd配信限定ライブアルバム『Makihara Noriyuki Concert 2024″TIME TRAVELING TOUR”2nd Season~Yesterday Once More~』(Live)

C/W 髪を切る日

女性が失恋を機に髪を切るというのは古風な習慣として知られていたが、”短く切ってください 彼女が嫌いだったスタイルに”と、未練を断ち切るために男がそれをやるという女々しいところを正面切って描いているのが新鮮な1曲。「No.1」のC/Wがこれって本当に幸せが長続きしないなぁ…となんとも複雑な気分になる。

『春うた、夏うた。~どんなときも。』配信版では当時SMAP提供セルフカバーの「世界に一つだけの花」が権利関係で自由に使えなかったようでカットとなったが、代わりに今作に差し替えられている(「世界に一つだけの花」セルフカバー版はEMI音源とエイベックス音源の2種があったがこのアルバムはワーナーだった)。近年までライブアルバムでさえ「世界に一つだけの花」「Love & Peace Inside?」はサブスクカット、バンドルDL配信のみなど制限があったが2025年2月『Buppu Label 15th Anniversary “Showcase!”』発売のタイミングでこの制限が解除された。しかし『春うた、夏うた。~どんなときも。』配信版に関してはそのままになっているので現在も「髪を切る日」が収録されたままとなっている。何故この曲だったのだろうか。春でも夏でも無いような季節感の無い曲だと思うんだけど…。
★★★☆☆
4thアルバム『SELF PORTRAIT
12thベスト『春うた、夏うた。~どんなときも。』配信版のみ

9th ズル休み

B00005HF6U
1993年10月1日
3連続リリースの2作目。厳密には今作が1日にリリースされ、31日には『SELF PORTRAIT』発売だった。初登場3位を記録したものの、同月末にはアルバムが出るためか前作の半分以下の累計31万枚に留まった。

ズル休み

1人ぼっち感漂う、別れた後に恋人を思ってグダグダしている失恋未練ナンバー。前作との落差が激しい。この時期は特に多忙だったとされているせいか、サウンドからもどことなく全体的に疲れた感じも漂う。曲の主人公は会社をズル休みしようとしているが、本人はズル休みする余裕もないほど忙しかったんだろうし。何とも煮え切らない感じがモヤモヤしているが、失恋に関係なくズル休みしたいようなグダグダした心情の時に浸れる曲だ。

しかしこの時代のサラリーマンってそんなにズル休みできたものなのだろうか。
★★★☆☆
4thアルバム『SELF PORTRAIT
1stベスト『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~
8thベスト『Completely Recorded
9thベスト『Best LOVE
1stライブアルバム『THE CONCERT CONCERT TOUR 2002~Home Sweet Home~』(Live)

C/W さみしいきもち

さらにダメ押しのようにこれまた別れた恋人を思う失恋ナンバー。C/Wはミディアム~バラードばかり続いていて今作もタイトルだけ見ると切ない失恋バラードを予感させるが、実際にはドラムがドッシンドッシンと響くわりとノリのいい明るいポップソング。タイトルとは裏腹にそんなにさみしい感じは漂っていないのが救いか。アルバムではこの次に「髪を切る日」に続くのが上手い。
★★★☆☆
4thアルバム『SELF PORTRAIT
11thベスト『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない
3rd配信限定ライブアルバム『Makihara Noriyuki Concert 2024″TIME TRAVELING TOUR”2nd Season~Yesterday Once More~』(Live)

10th 雪に願いを/Red Nose Reindeer

B00005HF6V
1993年11月28日
アルバムから1ヶ月でのシングルカット&新曲の両A面シングル。現在の公式では単独A面扱い。一応ジャケットは堂々の並列表記で両A面扱いになっていた。また4曲入りスペシャルプライスという文字も。これはカラオケ2曲が収録されているため。当初はシングルはカラオケ無し2曲だったのが、『No.1』で表題曲のみカラオケ収録の3曲入りになって少し値上げ、4曲入りになったのは初で今回は値上げせずお値段据え置きとなっている。つまりカラオケが2曲収録されて値段が据え置きな事がスペシャルだったのである。

「雪に願いを」シングルカットが実際には前面に出ていたためか、初登場12位とトップ10落ちとなった。最初の2作の100位圏外の後は一気に全てトップ10入りしていたので11位以下にランクインしたのはこれが初。それでもなんだかんだクリスマス商戦に乗っかって2週目も13位、さらにクリスマスを越えて年明け1月までランクインして登場週数は8週に達し、18.8万枚まで売上を伸ばしている。

雪に願いを

『SELF PORTRAIT』からのシングルカット。日本人が思う“クリスチャンでもないけど”なハッピークリスマスソング。特定の恋人に向けているわけではなく周囲の大切な人全員に向けて幸せを願うような内容で普通にラブソングの多いクリスマスソング界隈(?)において意外とそういうものは無いので新鮮。サビのTWINKLE TWINKLE LITTLE WHITE SNOW♪もキャッチーだしなんだかちょっとカワイイ。優しく温かい気持ちになれる最高のクリスマスソングだ。雪の降らない、星もあまり見えない都会の街が舞台となっているため、願いをかけるのが星ではなく雪、というのがポイント。

2009年のクリスマスコンサートで確か初めてライブに行ったんだけど終盤でこの曲が披露されて感動した記憶がある。
★★★★★
4thアルバム『SELF PORTRAIT
1stベスト『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~
8thベスト『Completely Recorded
11thベスト『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない
1st配信限定ライブアルバム『MAKIHARA NORIYUKI SYMPHONY ORCHESTRA CONCERT “cELEBRATION 2015”~Starry Nights~』(Live/「Christmas Medley」メドレーの1曲)
3rd配信限定ライブアルバム『Makihara Noriyuki Concert 2024″TIME TRAVELING TOUR”2nd Season~Yesterday Once More~』(Live)

Red Nose Reindeer

こちらは新曲として収録されたクリスマスバラード。前年の「涙のクリスマス」とは対照的に幸せで暖かな空気が流れているバラード曲。前作までの失恋続きからようやく歌詞にも暖かみが感じられる。

シングルの表記とは裏腹にまともにA面扱いされたことがなく、基本的にC/W扱いされておりオリジナルアルバムにも未収録だったので1998年の『SMILINGⅡ』がアルバム初収録で長らくそれだけだった。人気は高かったのか『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない』アンケート結果では4位という好成績で収録された。この扱いでよくそこまで上位に入れたな…。
★★★☆☆
2ndベスト『SMILINGⅡ~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
11thベスト『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない

Which hazel

1993年10月31日
From 4thアルバム『SELF PORTRAIT
「本気で好きになったみたい」と告げると君が困るという禁断の恋がテーマの曲。既に関係が終わって振り返っている過去形となっている。シリアスな雰囲気で今までにない新たな方向性としては「彼女の恋人」よりもシングルっぽさがある。ファン人気も高いようだが、ワーナー期はやはりシングルになりそうな曲がアルバムにもゴロゴロ転がっている率が格段に高かった。
★★★★☆
2ndベスト『SMILINGⅡ~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
4thベスト『SMILING GOLD~THE BEST&BACKING TRACKS~
12thベスト『春うた、夏うた。~どんなときも。
24thシングル『Are You OK?』C/W(French Disco Version)
4thライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA “cELEBRATION 2010″~Sing Out Gleefully!~』(Live)

SELF PORTRAIT

1993年10月31日
From 4thアルバム『SELF PORTRAIT
アルバム表題曲。1度もベスト盤の類に収録されなかったが、安定感ある良メロポップスでタイトル曲に恥じない仕上がり。当時一気に売れて忙しくなった事で「忙しい」が口癖になっていたそうだが、それでも支えてくれるみんなのためにがんばらなくちゃと歌う内容。前作の「三人」同様に当時の自身を反映させたドキュメントタッチの作風のため、ベスト盤に収録するような曲ではないのかもしれない。
★★★★☆

MILK

1993年10月31日
From 4thアルバム『SELF PORTRAIT
ファン人気も高い温もり感溢れる友情ソング。名言”ダメな自分も好きにならなくちゃ”がここで登場。前述のように曲が書けない、それどころか何も感じないスランプに陥り、後の『槇原敬之の本』著者となる松野ひと実とファミレスで悩みを吐露しあった後に免許取りたての槇原が車で送って行こうとしたところ横浜で迷った末に開けた場所に到達した際のベイブリッジの夜景を見て”感じる”心が復活。そして帰宅して最初に完成したのがこの曲とされる。この時の同乗者が松野ひと実である事を明記しているのは『槇原敬之の本』だけで、他の媒体(小貫氏執筆)では”友人”と書かれているほか、2012年のBOX発売時に槇原本人が小貫氏にこの時の事を振り返った際には、この時に何も感じない状態に陥ったのは神様に歌手になりたいとお願いしてなったのに(当時の多忙っぷりに)文句を言ったから神様に何かを感じ取るためのフィルターを奪われ、反省したから神様が戻してくれたなどと1つの出来事を伝えるだけなのにやたら神様ガー神様ガー連呼して語っており、神様がどうこうとは一言も書いていない松野さんの著書とはニュアンスがかなり異なっている。この2010年前後の時期はライフソングで真理を追究しまくった後で曲にもいくつか強く反映されているように特に神様神様連呼していた時期だったためだが、2度目の逮捕を経て精神的にさらに成熟した『歌の履歴書』では小貫氏の解説ベースながらも本人談として“神様に抜き取られた感覚”と表現するも以前のようにこの内容を伝えるためだけに神様神様連呼しておらず、使用はその1回だけでしかもあくまで例え話のような使い方に変わっていた。さらに何から書けば分からない状態だったのかもしれない、クールダウンしたらモノを”感じられる”ようになった、これ以降書けなくなることはなくなりこの時にリペアしてリカバーする方法を学んだのかもしれない、と神様ガーせずにかなり冷静に自己分析した発言を残している。まあ要するに多忙過ぎて疲弊により一時的に鬱のような状態になって感情を失っていたのが、飾らず松野さんと感情を吐き出しあった事でラクになったという事だったと思う。本人にとっても時期によって捉え方が変わっているのでニュアンスがその都度違っているのかなと。

友情にしてはドラマチックに盛り上がりすぎて友情越えて愛情になっているような気もするほどで、”事件前”まだ判明する前からその点が訝しがられることもあったようだが、基本的には前述の当時の心境がベースになって書かれていると思われるので実際にあった出来事ではなさそうだ。

2012年のBOXリリースの際は前述の曲が生まれる前の話の神様ガー連呼だけでなく、ちゃんとした今作についての本人の解釈も明示しており、曲中で訪ねてきたのは実は自分自身であると明かしている。要するに自分を客観的に見ているもう1人の自分が自分を励ましてくれたという内面の中の話を友情ソングっぽく表現して書いた曲ということなのだろう。だからこそ友情ソングにしては少し不自然だし、内面で自分と対峙しているにしては相手が他者すぎてやはり不自然なのかもしれない。

また1度目の逮捕を経て真理を悟って以降は「ダメな自分はなんとかしなきゃ」志向に変わったと『槇原敬之の本』ではコメントしており、実際こうあるべきだと断言するような曲ばかりになり、頑ななな姿勢が増してしまったのは率直に残念だった。2度目の逮捕を経た現在ではこの事についての言及は見当たらないが、やはりここも変わっている(歌詞通りの考えに戻っている?)んじゃないかなと思う。
★★★★☆
1stベスト『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
4thベスト『SMILING GOLD~THE BEST&BACKING TRACKS~
1stライブアルバム『THE CONCERT CONCERT TOUR 2002~Home Sweet Home~』(Live)

11th 2つの願い

B00005HJ5E
1994年5月25日
連続リリースから一転して半年ぶりのシングル。初登場3位を記録して累計は30万枚を突破。「ズル休み」を数万枚上回る売上となった。

2つの願い

モヤモヤした雰囲気の失恋ソング。未練たっぷりに電話がかかってくることを期待している主人公だが、曲全体からもどこか無理っぽい雰囲気が漂う。“雨がやみますように 電話がきますように”といった”2つの願いは必ずひとつしかかなわない”という分かりきった結末がドラマティックに描かれている。ラストでドアを開けた主人公の前に広がっていたのは“雲間に日がさしていた”光景。2つの願いの1つが叶った形だが、雨が止んだとは表現しない事で逆に情景が鮮やかに浮かぶ。そして案の定というべきほろ苦さが漂う。

曲自体モヤモヤしていてあまり好きではないが、情景描写が丁寧で絵が浮かんでくるし、発売時期も梅雨前ってことで合っていたと思う。ただ「ズル休み」とモヤモヤ感に似ているところがあって最初に『SMILING』でまとめて聞いた時はしばし区別がつかなかった。

VERSIONⅡでは、ほとんど全面的にアレンジが変更されており、かなりヘビーな雰囲気に変わった。
★★★☆☆
5thアルバム『PHARMACY』(VERSIONⅡ)
1stベスト『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~
8thベスト『Completely Recorded
9thベスト『Best LOVE
11thベスト『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない
3rd配信限定ライブアルバム『Makihara Noriyuki Concert 2024″TIME TRAVELING TOUR”2nd Season~Yesterday Once More~』(Live)

C/W TWO MOONS

アカペラから入る盤石のバラード。ラブソングマスターの王道的バラードバラードの多いC/Wの中ではかなり印象的な方だが、リアルタイムで聞いたのは後のgo home versionの方なのでそっちの方が馴染み深い。なんとなくAメロの雰囲気が後の「LOVE LETTER」の雛形になっている気もする。シングル以外のバラード選集の色合いが濃い『SMILINGⅡ』に選曲されなかったのは意外だが、少し印象が被ってしまうか。
★★★☆☆
5thアルバム『PHARMACY
26thシングルC/W(go home version)

12th SPY

B00005HJ5H
1994年8月25日
ドラマタイアップ効果もあってか、「No.1」に迫る初動24.8万枚を記録して3作目の1位(初登場1位は2度目)を記録。さらに「No.1」を上回る推移で3位→4位→3位と上位で粘り、最終的に86.6万枚の大ヒット。通常時30万程度まで落ち着いてきていた中で、会心の一撃となり、ミリオン2作に続く3番ヒット作となった。

SPY

TBS系ドラマ『男嫌い』主題歌。平均視聴率は15%を割るくらいでヒットしたとは言い難く話題作でも無かったようなので主題歌がけっこう独り歩きしてヒットした感じだったのではないか。

デートが中止になり、ガッカリしていた主人公は街中で偶然彼女を見つけて運命を感じる。別の男と会ってたりして?なんてジョークを考えながら、こっそり彼女を尾行した主人公は当初スパイ気分で楽しんでいて1番は疑う様子なく終了する。2番も途中までは浮かれているのだが、サビ前に彼女は別の男とキスするのを目撃するとシャレになんないよ、と2番サビはそのままな内容。大サビでは恨みごとを述べ始めて”今僕を笑うやつはきっとケガをする”と第三者へ呪いまでかけ始める始末。最後のサビの”信じてる”連呼は本当に信じていた1番のものと言葉は同じだが意味合いが変わっていてほとんどヤケクソ状態。抱きしめた強さが”アザのように残ればいい”と呪う。物凄く悲惨なんだけど悲しいだけじゃないコミカルさもあるし、アレンジ自体も今までありそうでなかったようなまさにスパイな雰囲気が漂うインチキ臭い怪しさが実にグッド。ここで胡弓を入れて怪しさを倍増させているのが凄い。

当時の制作現場では胡弓を入れようとしている槇原を見てプロデューサー木崎氏が「コイツ大丈夫か?」と思ったという逸話も残されているくらいなので全体にノリノリで制作されたと思われる。呪いをかける大サビでは実際に怪しげな雰囲気が5割増しになるなど、歌詞もメロディーもアレンジも一体となった史上最強のスパイソング。それでいてポップソングとして聞いてて爽快な部分もちゃんとある。一旦落ち着いてきたところで新機軸を見せた会心のヒット作といえる。

なお『槇原敬之の本』ではほとんど今作には触れていないが、『歌の履歴書』では先の木崎氏困惑の話に続けて(この話だけならBOXリマスターの冊子でも語っている)、当時あまりにも混沌とした恋愛を経験してしまい、曲でも書かないとやってられねぇ!と思ったのがきっかけとされ、実話だったとしている。途中から面白がって書いたとまでしか本人のコメント引用にはないので“まったくの実話”というのは小貫氏の解釈と思われ、それこそ呪うくだりあたりは”面白がって書いた”ところで全てが実話とも思えないが…。

なお『PHARMACY』でも『SMILING』でも幸せ全開の曲の後にドカンとこの曲が来るという明らかに狙いまくった曲順で何とも言えない気分になる。この辺りも面白がってやっている部分だろう。
★★★★☆
5thアルバム『PHARMACY
1stベスト『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
4thベスト『SMILING GOLD~THE BEST&BACKING TRACKS~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~』(「THE 10th ANNIVERSARY MEGA-MIX」の1曲)
8thベスト『Completely Recorded
9thベスト『Best LOVE
12thベスト『春うた、夏うた。~どんなときも。
2ndライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA“cELEBRATION”』(Live)
3rdライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA “cELEBRATION 2005”~Heart Beat~』(Live)
3rd配信限定ライブアルバム『Makihara Noriyuki Concert 2024″TIME TRAVELING TOUR”2nd Season~Yesterday Once More~』(Live)

C/W キミノテノヒラ

花屋に転職した友人を訪ねて再会する友情ソング。主人公は少し落ち込んでいる様子。友人は仕事上掌がひびわれてボロボロになっているんだけどとてもいい表情をしていてその充実ぶりを見た主人公は勇気づけられる。『歌の履歴書』ではカットされているが『槇原敬之の本』によると『SELF PORTRAIT』制作後に槇原は信じていた友人たちに裏切られ酷く傷ついたことがあったそうなので(具体的にどういうことがあったのかの記述はなく、「SPY」の話と同じなのかも不明)、時期的にもこの曲のストーリーも実話ベースの可能性もあるんじゃないかと思う。ただ歌詞は暖かいんだけどメロディーはいつものC/Wバラードといった印象。

長くアルバム未収録だったが『春うた、夏うた。』で救済された曲の1つとなったほか、2024年の”TIME TRAVELING TOUR”で披露された音源が配信されている。
★★★☆☆
12thベスト『春うた、夏うた。~どんなときも。
3rd配信限定ライブアルバム『Makihara Noriyuki Concert 2024″TIME TRAVELING TOUR”2nd Season~Yesterday Once More~』(Live)

DARLING

From 5thアルバム『PHARMACY
デートに遅刻した彼女が怒って、色々考えて仲直りのキスをするまでを描いたポップソング。シングル候補だったという話もあったとかなかったとかだが、実際にこの時シングルになった2曲よりも王道ラブソングといった雰囲気。前曲の「HOME WORK」もそうだけど、シングルにしていても普通にヒットしていたと思うがあえてこういうのはアルバムに残しておいて、冒険的な曲をシングルにしている辺りはさすがというべきか、もったいなかったというべきか。
★★★★☆
5thアルバム『PHARMACY
3rdベスト『SMILINGⅢ~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
4thベスト『SMILING GOLD~THE BEST&BACKING TRACKS~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~』(「THE 10th ANNIVERSARY MEGA-MIX」の1曲)

OCTAVERS

From 5thアルバム『PHARMACY
恋愛楽曲ばかりのアルバムの中において唯一友情を歌ったレゲエ調の楽曲。同じくレゲエ風味だった「遠く 遠く」では同窓会を欠席していたが、今作では久々に会った昔の仲間たちと夜景が見える秘密の場所へ行くという同窓会ソング。あえて彼女は置いてくるところがポイントだが、次来るときは連れてくるとしていて今夜は友情に徹するという部分がさりげにいい。また仲間の1人が結婚したりと時の流れを感じさせる辺りも同窓会ソングとしてグッドである。ベスト盤等には収録されていないが、もう少し注目されてもいいと思う1曲だ。6分越えの大作になっているのが扱いにくい理由にもなっているかも。
★★★★☆

今年の冬

From 5thアルバム『PHARMACY
ファン人気の高い幸せ全開の冬のバラード。アップテンポな冬の始まりが「冬がはじまるよ」なら今作はゆっくりと冬の到来を感じられる。雪がゆっくり降り積もる夜の光景が浮かんでくる1曲。

2003年には松本英子がカバーしており、槇原もコーラス参加している。
★★★★☆
2ndベスト『SMILINGⅡ~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
11thベスト『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない
1stライブアルバム『THE CONCERT CONCERT TOUR 2002~Home Sweet Home~』(Live)
3rdライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA “cELEBRATION 2005”~Heart Beat~』(Live)
1st配信限定ライブアルバム『MAKIHARA NORIYUKI SYMPHONY ORCHESTRA CONCERT “cELEBRATION 2015”~Starry Nights~』(Live/「Christmas Medley」メドレーの1曲)
4th配信限定ライブアルバム『マキハラボ』(Live)

東京DAYS

From 5thアルバム『PHARMACY
「三人」「SELF PORTRAIT」に続く今の自分を切り取ったような楽曲。”24歳の夏”というフレーズが出てくるし、当時の槇原をそのまま描いているのではないかと思う。東京で暮らす何気ない日常を描いた曲だが、ドラマティックなメロディーとアレンジで、何気ない日常が”すばらしき毎日”へ変貌。いわゆるライフソングを掲げるようになった2000年以降だが、今作こそまさに真のライフソングそのものであり、ライフソング=真理を追求する事ばかりに目を向けて見失ってしまった暖かさがここにあると後年強く感じた曲の1つでもある。

個人的に同じサビメロでも”東京DAYS”と歌っている本編よりも”星空に口笛よ響け”と歌っている冒頭部分(と2番後半)の方が歌詞がハマっていて好き。
★★★★☆
2ndベスト『SMILINGⅡ~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
2nd配信限定ライブアルバム『槇原敬之 Concert Tour 2022~宜候~』(Live)

13th SECRET HEAVEN

B00005HIIC
1996年4月10日
1995年はそれまでの多忙な日々に加えて50本を越えるロングツアーに規模拡大した影響で喉にポリープが出来て手術のために一時休養となった。この間は1人のリスナーに戻って洋楽中心に聞いていたところ、ラップやヒップホップが全盛になってきてメロディーが失われつつあると感じ、かつて自分が聞いて憧れていた素敵な洋楽を自分で作ろうと考えたという。

ワーナー内部にプライベートレーベルRiver Wayを立ち上げた事でより自由にやれる環境になった事もあり、全英語詞MAKIHARA名義での作品リリースを行う事になった。MAKIHARA名義では一貫してデジタルキャラクターとCGを前面に出したアートワークが展開。さすがに本当に”MAKIHARA”だけで統一してしまうと誰だか分からなくなってしまうためか、“Noriyuki Makihara”とも小さくジャケットに表記したほか、袋のシール部分では”槇原敬之”とちゃんと漢字表記も出していたようだ。

MAKIHARA名義第1弾となった今作は初のマキシシングル形態を採用。C/Wの新曲は無く、同曲のリミックスを3バージョン収録するなどこれまでとは一線を画す収録内容となり、値段も1200円と当時のシングル1000円基準の中では高めの設定となった。一方でカラオケは収録されていない。一連の英語詞作品の制作は作編曲を国内で制作し、作詞には関与せずに最初から海外発注する流れとなったため、全て曲先で制作されている。

これまでの固定人気もあって初動5.7万枚で初登場6位を記録したが累計は16.7万枚と1st2nd圏外2作を除く最低水準まで落ち込んだ。

配信ではMAKIHARA名義にすると別枠になってしまって取り扱いにくくなるためか普通に「槇原敬之」として配信されている。

SECRET HEAVEN

作詞:Andy Goldmark
レゲエのリズムに乗せた全英語詞曲。完全に外部委託にしたのと英語詞だからいいやという事もあってか、歌詞はけっこうセクシーな内容になっているっぽいが、基本的には英語分かる人はそのまま楽しんでもらうとして分からない人にはメロディーとアレンジと雰囲気で聞くのを想定しているっぽい。アルバムには改行なしでぎっしり日本語訳も記載していたが、後年のベストや紙ジャケ簡略化された再発盤(BOXリマスター)では訳詞は非掲載なのであまり重要視してなさそう。これまでの楽曲よりもザ・洋楽という感じがする。ただそこはメロディーメイカー。不思議とクセになる楽曲でもあり、一時期けっこうハマった。

Album Versionイントロのベースが抜かれているので冒頭から判別しやすい。

また全面的に参加するのはソニー移籍以降だが、『Ver.1.OE LOVE LETTER FROM THE DIGITAL COWBOY』では沢田知久の名前が初めてエンジニアの1人として名を連ねているように沢田がプロのエンジニアになってから槇原と仕事した最初の時期の楽曲のようでベスト盤のクレジットでも今作が沢田知久のミックスである事が確認できる(次回作「COWBOY」以降は再び佐藤康夫に戻った)。
★★★☆☆
C/W(Jamaican Heaven Mix)
C/W(Data Baby Mix)
C/W(Quivver’s Secret Mix)
6thアルバム『Ver.1.OE LOVE LETTER FROM THE DIGITAL COWBOY』(Album Version)
リミックスアルバム『LOVE CALLS FROM THE DEGITAL COWGIRL』(X-Trac Mix)
3rdベスト『SMILINGⅢ~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~
8thベスト『Completely Recorded

C/W SECRET HEAVEN (Jamaican Heaven Mix)
C/W SECRET HEAVEN (Data Baby Mix)
C/W SECRET HEAVEN (Quivver’s Secret Mix)

C/Wにはリミックス3種を収録。Jamaican Heaven Mixはオリジナルよりも短くなった別アレンジのように聞ける聞きやすい仕上がり。Data Baby MixとQuivver’s Secret Mixはどちらも7分前後と長尺化し、トラックメイカー色が強く、何の曲なのかも分からないインスト状態の部分も長い。Quivver’s Secret Mixの方がその傾向が強い。結果的に綺麗なグラデーションで聞きにくさが増していく。
★★★☆☆
★★☆☆☆
★☆☆☆☆

14th COWBOY

B00005HIID
1996年7月10日
MAKIHARA名義第2弾シングル。前作同様のマキシシングルでC/Wには3曲のリミックスを収録。

アルバムが2週後に控えていた事と、洋楽展開についていけなくなったファンが一気に買い控えたようで初登場20位、登場週数わずか3週、累計4.2万枚と1st2nd圏外を除くランクイン作品では第1次ワーナー時代最低を記録した。

この2シングルを先行シングルとしてアルバム『Ver.1.OE LOVE LETTER FROM THE DIGITAL COWBOY』を発売、さらにリミックスアルバム『LOVE CALLS FROM THE DEGITAL COWGIRL』をリリースしてMAKIHARA展開は一段落となった。アルバムは5位止まりで30万に届かない程度の売上となり(前のアルバムが1位90万越え、次のアルバムも2位75万)、リミックスの方は29位で今作以下の3万台の売上に終わった。本人も後年売れなかったと語っていたようだ。

元々海外進出を考えたものではなく、国内のリスナー向けに洋楽アルバムを届けたかったという意向で海外展開ではなかった。それでも作詞を担当した現地クリエイター陣にメロディーを褒められるなど嬉しいことがあったり、ワーナー秘書室のアメリカ人の指導により英語の発音で評価されるなどもあって、本格的に留学して英語を勉強しようかなど今後を考えるきっかけにもなったようだが、結果的にはこのまま英語アルバムでキャリアを終えるよりも遺作のつもりでもう1作日本語のアルバムを作ろうと考えて元の活動へと戻っていった。

COWBOY

作詞:Chris Farren
前作よりも親しみやすい軽快なトラックが心地いいカントリー調の1曲。まずは今作のような曲で慣らしてから前作を出した方が良かった気はするが、しかし前作がアルバム先行だとアルバムがますます売れなくなりそうだしな…。開放的で自由な曲というイメージ。2000年前後の頃に一時期凄くハマってカラオケで歌おうと試みたものの発音も高音も無理だった。

『Ver.1.OE LOVE LETTER FROM THE DIGITAL COWBOY』では1曲目の「Hey Yo!」でサビの一部がサンプリングされて使用されており、そのまま2曲目のAlbum Mixへ繋がっていく。前作のようなあった音が無くなったりはしていないが、全体の音の響きがやや異なるミックス変更(VersionじゃなくてMixと区別している)。冒頭のギターの大きさ(シングルは小さい、アルバムは近づいた感じ)辺りで判別できる。
★★★★☆
C/W(Chris Farren Rock Mix)
C/W(Chris Farren Acoustic Mix)
C/W(HNB Mix)
6thアルバム『Ver.1.OE LOVE LETTER FROM THE DIGITAL COWBOY』(「Hey Yo!」)
6thアルバム『Ver.1.OE LOVE LETTER FROM THE DIGITAL COWBOY』(Album Mix)
リミックスアルバム『LOVE CALLS FROM THE DEGITAL COWGIRL』(Towa’s Elektric Vibe)
3rdベスト『SMILINGⅢ~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~
30thシングル『Good Morning!』C/W(「Cowboy REMIX(’03 IIO MIX)」)
8thベスト『Completely Recorded

C/W COWBOY (Chris Farren Rock Mix)
C/W COWBOY (Chris Farren Acoustic Mix)
C/W COWBOY (HNB Mix)

前作同様にC/Wにはリミックス3種を収録。Chris Farrenによる2種はタイトル通りにRock Mixはオリジナルより少しがっしりとした別アレンジ、Acoustic Mixは音数少なめだが共に生音主体の別アレンジとして聞ける。特にRock Mixの方はもう1つの可能性として大いにありだったと思う。トラックメイカー色が強いリミックスはHNB Mixのみだがこれも前作よりは聞きやすい。
★★★★☆
★★★☆☆
★★★☆☆

15th どうしようもない僕に天使が降りてきた

B00005HJ5S
1996年9月25日
MAKIHARA名義での活動を立て続けにリリースして終了させた後に、連続してリリースした久々の通常シングル。MAKIHARA展開は正直そこまで大きなヒットにならなかったので、今作リリース時は活動再開的な見方もされた。個人的にも1996年後半から「CDTV」などを見始めたので、

初登場4位を記録して健在ぶりを示したもののトップ10は1週のみだった。ただ2週目以降11位→11位→12位→17位→16位→19位…とトップ20でロングヒットを記録したため、初動6.8万から累計32.1万枚まで引っ張り、『ズル休み』『2つの願い』ラインの売上まで引き戻した。

どうしようもない僕に天使が降りてきた

Brand New槇原みたいなイメージもあるんだけど、これまでよりもロックバンドテイストでエレキギターが効いた勢いのあるアレンジが印象的。歌詞中にある”枕の羽根”が舞う様子が浮かぶ情景描写はより磨きがかかっていてこれまでの王道からさらに突き抜けた進化と勢いを感じる。

ライブでも1度見たことがあるけど、正直バラードやポップに聞かせる曲中心でドカンと盛り上がるような曲があまり多くない中でこの曲が出てくるとかなり起爆剤的な役割を果たして一気に盛り上がっていたのが印象的だった。

ここでまた1つ上に突き抜けたような出し惜しみ無しの全力投球感は『UNDERWEAR』全体にも漂っているが引退を視野に入れた金字塔になるアルバムという覚悟がそうさせたのかもしれない。リアルタイムで『CDTV』でランクインしているのを見た曲はこれが最初だったかと思う。
★★★★★
7thアルバム『UNDERWEAR
1stベスト『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
4thベスト『SMILING GOLD~THE BEST&BACKING TRACKS~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~』(「THE 10th ANNIVERSARY MEGA-MIX」の1曲)
8thベスト『Completely Recorded
3rdライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA “cELEBRATION 2005”~Heart Beat~』(Live)

C/W I need you.

2001年頃を先取りしていたようなちょっと軽めなR&Bっぽいトラックで今までより大人っぽく仕上がっているところが渋い感じのミディアムナンバー。表題曲と合わせて休養&英語詞からの久々の通常モードシングルとして、新たな一面を見せたように思う。

時代を先取りしすぎたせいか、そのままではアルバムで浮くためか、ALBUM VERSIONはリズムがもう少しがっしりした音色に変更された。
★★★☆☆
7thアルバム『UNDERWEAR』(ALBUM VERSION)
11thベスト『秋うた、冬うた。~もう恋なんてしない
3rd配信限定ライブアルバム『Makihara Noriyuki Concert 2024″TIME TRAVELING TOUR”2nd Season~Yesterday Once More~』(Live)

男はつらいっすねぇ

From 7thアルバム『UNDERWEAR
アルバム冒頭を飾った槇原史上最もハードなギターが鳴り響く異色チューン。トランクス1枚の姿でもカッコよくみられる男になりたいと歌ういつになく男らしい楽曲。歌詞もそうだけどハードなサウンドでこれまでとは確実に何か変わったと思ったリスナーも多いのでは。これ以外には「revenge」もロック色が強く、今までと違う部分も見せたアルバムを印象付ける。
★★★★☆

PENGUIN

From 7thアルバム『UNDERWEAR
駆け落ち未遂をした2人の物語、と一般的には捉えられる楽曲。既に笑顔で振り返る事が出来るほどに過去になっており主人公が当時を回想する形になっている。その逃避行先が南極だったなら君と僕とペンギン(しかいなくて)それも悪くない、とけっこう飛躍した想像が展開しそれで「PENGUIN」。実際に南極にペンギンと君と僕で立っている絵を想像すると相当シュールな感じがするけど、楽曲自体はドラマチックに盛り上がる。

当時もその筋ではそう解釈されていたのかもしれないけど、間接的に色々と明らかになってからは同性同士の叶わなかった恋についての歌という解釈も広がったのかもしれない。シチュエーション的には男女でも同性でもどうとでも解釈できるようにはなっているが、“誰も許してくれないなら”というフレーズが強いため、男女であった場合は相当な格差があるとか、年齢差があるとか(教師と生徒とか)じゃないと誰も許してくれないって事はないだろうし、逆に言えば同性でも誰も許してくれないってことはなさそうなんだけど、時代とか世間とか広義に捉えると”誰も許してくれない”と感じるものなのかなぁ…。

曲調的には「Which hazel」と同系統、更なる進化版という印象が初めて聞いた時からずっとあって数年は区別がつかなかった。後のリメイクの際にメロディー展開やこれまでにないアレンジが好きだなと再発見して、現在ではこっちの方が好き。ギターの小倉博和にブズーキを使ってもらったり、イントロや間奏にロングトーンの民族的なコーラス(アァァァイェエェェェェ~みたいなやつ)を入れたりとワールドミュージック感も漂っており、小倉博和がアイリッシュの匂いを指摘すると本人は無自覚だったが以降意識するようになる等、後年の作風にも影響を与えたと思われるエピソードも後に明かされた。
★★★★★
3rdベスト『SMILINGⅢ~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
25thシングル『雨ニモ負ケズ』初回盤のみC/W(North Pole Version)
2ndライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA“cELEBRATION”』(Live)
3rd配信限定ライブアルバム『Makihara Noriyuki Concert 2024″TIME TRAVELING TOUR”2nd Season~Yesterday Once More~』(Live)

LOVE LETTER

From 7thアルバム『UNDERWEAR
旅立つ君に好きだと言えないままでいる切ない片想いラブバラード。初期から歌ってきたラブソングの盟主としても本当にここが頂点だったなと思える楽曲だ。描かれている元々の2人の関係が大勢の友人同士の中の1人、つまり同性の友人のように解釈できるところはあり、これによって大好きだととうとう言えないばかりか何度も書いたラブレターすら渡せなかった理由も変わってくるが、現在はそういった解釈もだいぶ広がっているようには思う。当時は一般的な片想いソングとして捉えたファンが多かっただろうし、この辺りどの立場でも切なく捉えられるような絶妙な描写と構成は凄いなと思う。

Renewdにおいても他の曲とは異なり、「君は僕の宝物」同様に原曲を踏襲したアレンジに仕上がっている。
★★★★☆
7thアルバム『UNDERWEAR
2ndベスト『SMILINGⅡ~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~
4thベスト『SMILING GOLD~THE BEST&BACKING TRACKS~
9thベスト『Best LOVE』(Renewed)
12thベスト『春うた、夏うた。~どんなときも。
13thベスト(販路限定)『SELECTED BEST』(Renewed)
1stライブアルバム『THE CONCERT CONCERT TOUR 2002~Home Sweet Home~』(Live)
3rdライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA “cELEBRATION 2005”~Heart Beat~』(Live)
4th配信限定ライブアルバム『マキハラボ』(Live)

まだ見ぬ君へ

From 7thアルバム『UNDERWEAR
「三人」「SELF PORTRAIT」「東京DAYS」とこの曲は槇原のリアルタイムを切り取ったシリーズだと勝手に思っているんだけど、今回は未来の恋人のためにいい男であろうとうする様子がポップに歌われている。生活感のある若者の日常の描写はリスナーにも身近に感じるんじゃないだろうか。相手が現状実在しないのでラブソングなのか微妙なところではあるけど、ラブソングライフソングの括りにはない暖かさはここにある。
★★★★☆
2ndベスト『SMILINGⅡ~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~

16th まだ生きてるよ

B00005HJ5T
1996年11月18日
1996年、MAKIHARA名義でのシングル2作、アルバム1作、リミックス1作から、通常体制に戻ってシングル1作、アルバム1作とほとんど毎月のように怒涛のリリースが続いた1996年の最後にリリースされ、結果的に第1次ワーナーでの最後の置き土産にもなったシングル。River Way立ち上げたばかりだったのに急に移籍を決めるなんてソニーからの好条件引き抜き話でもあったのだろうか

C/Wなしでカラオケのみの2トラック仕様。初めてC/Wが無く、カラオケ収録のみだったため、定価800円は歴代シングルで最安となる(税抜き価格では同じ777円で同じ1曲+カラオケの『足音』があるが、『足音』発売時は消費税5%で定価は816円に上がっていた)。

1995年がリリースゼロとなり一時活動していなかったせいかこの当時死亡説が流れたらしく、それを逆手に取り、ジャケットは通常の紙ではなく、8センチジャケットの仕様のまま通常は紙の部分が透明クリアケースになっていてスポーツ新聞の見出し風のデザインになっており楽曲タイトルよりもデカく“槇原生還”と書かれていた(公式等のジャケ写だと透明になっていないが、実際には中のCDやトレイが透けて見える)。またカラオケの最初に謎寸劇が入っていたりと、曲本体だけでなく、全てにおいて遊び倒したシングルとなっている。

初動5.8万枚は前作から1万減程度だったが初登場10位とトップ10ギリギリにランクイン。2週目以降は24位→35位とあっという間に落ちていってしまい、40位前後で3週ほど粘ったため登場週数は9週まで持たせたものの累計14.8万枚と圏外2作と「COWBOY」に続く低さとなってしまった。

まだ生きてるよ

史上最低のクリスマスソングとも称された怪曲で、年末に彼女にフラれ、高熱なのに残業でボロボロになる独身1人暮らし男の魂の叫びが綴られた歌詞はインパクト絶大。”うちだって電器屋だ!”とかしれっと実話(槇原の実家は電気屋)を盛り込んでいたり、大サビでようやくポップソングらしくお星さまにお願いをしようとしたら洗濯物で見えないという散々なオチだったりと徹底して遊びまくっている。直後のラストサビ前には歌詞カードにはない”ウォエッ!吐きそう!けど飲んじゃったーー!”というトンデモ歌詞が炸裂する。ここだけ歌詞に載らなかったのはさすがにキツイので自重したのか…。

目立ったヒットシングルを除くとアルバム単位で話が進むため、シングルは個別で触れられないものもあるんだけど、それにしても『槇原敬之の本』でも『歌の履歴書』でも今作には触れられていない。今作が実話なのか含めてどういう立ち位置のシングルとして本人の中に残っているのかは良く分からない。たぶんアルバムの遊び曲ポジションで制作するもこれはさすがに『UNDERWEAR』に入れても目立ちすぎるし、史上最低のクリスマスソングとしてシングルに取っておこうぜ!くらいなノリと勢いでシングル発売されたんだとは思うんだけど…。

アルバムでは「困っちゃうんだよなぁ。」「恋はめんどくさい?」など遊び心を発揮した曲もこれまであるにはあったが、今作は遥かに上に突き抜けてしまっているし、シングルヒットしか知らない多くの人は唖然とすることは間違いないしはじけっぷりだ。

このまま移籍してしまったのでオリジナルアルバム未収録となり、最初のアルバム収録は『SMILINGⅢ』だったが、『SMILINGⅢ』ではの’98 NEW VERSIONとしてまさかのNY豪華ミュージシャンによる生演奏差し替えが行われた。Bass:Will Lee、Drums:Omar Hakim、Piano:Philille Saisseら参加メンバーは当時のSMAPのアルバムのバック演奏をしていたSmappiesメインメンバーであり、パーカッションやホーンセクションも現地メンバーによる生演奏で、槇原本人のキーボードとギターの佐橋佳幸はそのまま残されている(なのでギタリストの現地メンバー参加は無しで100%佐橋佳幸)。無駄にゴージャスすぎて余計に虚しくなるぜ!シングル発売当時のネタ的な話題性でタイトルくらいは目にした記憶はあるけどヒット曲としては記憶していなかったので『SMILINGⅢ』で聞いたのが実質初めてだったかなと思う。

シングルバージョンは逮捕謹慎時の2000年『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~』でようやくアルバム初収録となったが、何故か’98 NEW VERSIONが『Completely Recorded』にも未表記で収録されているため、シングルバージョンは8センチシングルか『10.Y.O』でしか聞けない。アレンジはまったく同じなのでよく聞かないと違いは分からないが、生音バージョンの方が全体的に温かみがあり、特にドラム周辺に集中して聞いていると違いが分かる。
★★★★☆
3rdベスト『SMILINGⅢ~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~』(’98 NEW VERSION)
5thベスト『10.Y.O~THE ANNIVERSARY COLLECTION~
8thベスト『Completely Recorded』(表記は無いが’98 NEW VERSION)

C/W まだ生きてるよ[オリジナルカラオケ・歌謡教室編]

C/W無しでカラオケだけかと思いきや、単なるオリジナルカラオケではなく、“歌謡教室編”と謎のサブタイトルが付け加えられており、ただのカラオケではなかった。これは冒頭30秒ほどと演奏終了後にコーラス隊(?)がコンサートに備えてこの曲のコーラス練習をしていて先生(槇原)に指導を仰ぐという謎の寸劇が入っているというもの。先生(槇原)の喋り方は何故かおネェ風であるが、別にここでいきなり素を出したわけではなくマジでふざけているだけだと思う。オケが始まってからは普通のカラオケとなり、演奏終了後に先生に挨拶して終わる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました