Every Little Thing シングル回顧3~2003-2006~

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Every Little Thing シングル回顧3~2003-2006~

徐々に枯れつつあった歌声が激変して個性的な歌い方を模索した結果、アコースティック路線へ転向していったELT史上最も激動期、かつ個性派路線だった時期。以前のイメージのままでいると変わり切った雰囲気を受け入れるのが至難だが、変化を受け入れることができるとこの時期は途端に名曲の宝庫と化す。

基本的に多くのアーティストの基礎売上は低下していく時期だっただけにELTもまた徐々に売上が低下していたが、この時期では「また あした」「恋文/good night」が前後の作品よりも目立った結果を残しており、TVで「fragile」まで代表曲を抑えて取り上げられるほどではないが、そこそこ知られた以降の代表ヒット曲として一定の認知は得ていると思う。

23rd Grip!

Grip! (CD-EXTRA)
03年3月12日
作詞:持田香織、作曲:原一博、編曲:HΛL
アニメ『犬夜叉』OP。CCCD採用期だがこのシングルのみCD-EXTRAにしてCCCDを回避。アルバム1週前の先行シングルでタイアップがあったのでとりあえずシングルで切っておいたというところか。バラード続きだった中で久々の王道ポップチューン。五十嵐時代を踏襲したようなバラードではないデジタルサウンドは『Graceful World』以来だが、今回は明確にアップテンポなので本当に久々。Aメロとサビしかないシンプルな構成だが、Aメロの後に突然サビにすっ飛んでしまうような流れになっているので少々違和感がある。何で普通にAメロとサビを繋ぐようなBメロを作らなかったんだろうか。

また久々にシングルでこういう曲が出ると声の変化がより顕著に分かり、かなりハスキーになってしまっているのが分かる。サビ終わりのダメ押しみたいな高音もそんなに無理させなくても…と思ってしまうが、次回作では自ら率先して叫び倒すとは思いもよらない。
★★★★☆
5thアルバム『Many Pieces
2ndベスト『Every Best Single 2
3rdベスト『Every Best Single~COMPLETE~
5thベスト『Every Best Single 2~MORE COMPLETE~

24th ファンダメンタル・ラブ

ファンダメンタル・ラブ(CCCD)
03年7月30日
作詞:持田香織、作曲:多胡邦夫、編曲:tasuku&伊藤一朗
『jump』と並ぶ問題作(?)。無理やり叫ぶように歌うというELT史上最もぶっ飛んだギリギリ感全開。これを最後にまるで枯れきったように歌い方が激変して声をあまり張らなくなったので断末魔の1曲だったんじゃないかと当時は思っていた。実際当時の持田の元にもキーが高すぎるんじゃないかとかそんなにギリギリのところで歌わなくてもいいんじゃないかという声がけっこう届いていたという。本人はそんなに気にしていなかったように振り返っているが…。今作のはじけっぷりを楽しむには当時の声の状況からしてもリスナー側にあまりその余裕が無かったかなとも思う。
打ち込みの軽さも気になるところだが…『jump』のような太い歌声であればもう少しパワーのある楽曲になっていたように思う。MVは楽しそうにはっちゃけている感じでけっこう好き。
★★★☆☆
2ndベスト『Every Best Single 2
6thアルバム『commonplace
3rdベスト『Every Best Single~COMPLETE~
5thベスト『Every Best Single 2~MORE COMPLETE~

25th また あした

また あした (CCCD)
03年11月12日
当時特に3曲A面などとアピールはされてなくて、実際に単独タイトル作品なんだけど、『Every Best Single~COMPLETE~』に全3曲全てがしれっと収録され、3曲A面扱いだった事が正式に判明した。
この当時複数A面形態があちこちで連発されていたせいだろうか…。
「ささやかな祈り」で初めて10万枚を割り、『UNTITLED 4 ballads』で40万近いヒットを記録した後は、5,6万程度まで落ち込んでいたが今作は好評で20万枚に迫るような目立ったヒットを記録した。今作以降で今作を越えたヒットは出ていない。

また あした

作詞:持田香織、作曲:小幡英之、編曲:十川知司&Every Little Thing
歌い方や声、サウンド含めて前作でドッカンはじけて、これ以前と次回作との過渡期にあたるような印象がある。これまでほど無理に張り上げる感じが無くなり全体的に優しい雰囲気。この後全開になる丸めたような歌い方の片鱗が随所に見られる。これまではバラードでもどちらかというと力強さという側面が強かったのだが、この曲ではもっと包み込むような非常に暖かい空気が流れていてこういうELTもありなんだと思えた。

MVでは持田が男性と田舎の川辺でデートしているという内容。後半はよくTVで流れていた男性におんぶされて運ばれていく状態となり、最後のサビでは現場音声に差し替わっておんぶされたままの持田がアカペラでサビの一部を歌唱する。幸せそうな雰囲気にほのぼのするが、川辺から離れる際に若干道なき草藪を抜けていくのでおんぶしたような感じだったのにその後も延々おんぶされっぱなのでいつまでおんぶされてんの?というのはある。普通の道に移動してからもおんぶされている持田の姿は若干シュールだ。
また伊藤は2番の途中辺りからようやくギターケースを抱えて登場。持田と男性とは同じ場所だが出会う事は無く、伊藤はその場にいた子供たちとギターを通じて触れ合う様子が描かれる。なんだか無理やり出番を作ったみたい
★★★★☆
6thアルバム『commonplace
2ndバラードベスト『14 message~every ballad songs 2~
3rdベスト『Every Best Single~COMPLETE~
5thベスト『Every Best Single 2~MORE COMPLETE~

一日の始まりに…

作詞:持田香織、作曲:HIKARI、編曲:HIKARI&Every Little Thing
この時期に欠かせない作家となるHIKARI楽曲。バラードではなくけっこうテンポのあるアコースティックでポップな1曲。心地いいがそこまで印象は強くない。やはりC/Wという印象。
★★★☆☆
6thアルバム『commonplace
3rdベスト『Every Best Single~COMPLETE~
5thベスト『Every Best Single 2~MORE COMPLETE~

しあわせの風景

作詞:持田香織、作曲:菊池一仁、編曲:中尾昌文&伊藤一朗
本格的にアコースティック路線に踏み出した時期だけにこれもアコースティックな質感のミディアムバラード。いかにもこの時期に量産されてそうなバラードという印象だが、案外オリジナルアルバムを聞くとバラードばかりではなく、バランスが良かったりもする。3曲とも幸せな雰囲気に溢れているというのが今作のポイントか。
★★★☆☆
6thアルバム『commonplace
アコースティックアルバム『ACOUSTIC:LATTE』(アコースティックリメイク)
2ndバラードベスト『14 message~every ballad songs 2~
3rdベスト『Every Best Single~COMPLETE~
5thベスト『Every Best Single 2~MORE COMPLETE~

26th ソラアイ

ソラアイ (CCCD)
04年2月25日
作詞:持田香織、作曲:HIKARI、編曲:HIKARI&伊藤一朗
アコースティック路線に本格転向し、歌い方も激変。いい意味で曲も声も枯れきったけだるさが漂うが、それがこれまでにない唯一絶対の世界観を生み出している印象。ここからしばらくのELTは最も個性的な時期だったと思うけど、それゆえに強く印象に残る楽曲が多い。
これまで基本的に青空全開なイメージだったのでサビ頭に”晴れるわけでもない空を それでも僕は今日を期待して生きてみる”と曇天を思わせる歌詞を持ってきたのも新しかった。ELTはもっと底抜けに前向きな楽曲を期待したいところもあるんだけど、個人的には晴れるわけでもないけど雨が降るでもない、とびきりいいわけじゃないけど悪くもない、そんな日々の中ではこの曲の持つモードが妙にしっくりくる。

相当な試行錯誤があったと思われるが結果オーライすぎる名曲だ。この時期ほぼ全曲を手掛けたHIKARIとの相性も本当に良かった。
★★★★★
6thアルバム『commonplace
2ndバラードベスト『14 message~every ballad songs 2~
3rdベスト『Every Best Single~COMPLETE~
5thベスト『Every Best Single 2~MORE COMPLETE~

27th 恋文/good night

恋文 / good night 恋文/good night(SACD) 恋文/good night
04年12月15日
『UNTITLED 4 ballads』以来、6作目にして最後の1位獲得作品。「また あした」には及ばなかったものの前後のシングルの2~3倍程度のヒットとなり、現時点で最後の15万&10万枚越えの売上を記録。
04年秋にCCCDが終息したため、今作から通常CD発売に戻ったがしばらくはレンタル用ではCCCDの採用が続いた。

またCCCD音質が悪いという声に対抗(?)したのか今作ではCDを上回る情報量で収録できるSACDDVD-AUDIOでも発売するという実験的試みもされた。いわゆる現在のハイレゾに相当する音源を収録できる新世代フォーマットだったが積極採用や積極アピールに至らずに全く広まらず、SACDは現存するが、DVD-AUDIOは滅亡してしまっている。

恋文

作詞:持田香織、作曲:HIKARI、編曲:HIKARI&Every Little Thing
アコースティック路線で括られる時期の代表作。前作をさらに進化させたようなELT史に渾然と輝く名曲。切なくもあり、とにかく引き込まれる。当時は弟がこの路線にハマって聞いていたので自然に耳に入っていた影響もあるが特徴的な歌い方とアコースティックに傾倒していたこの時期では最も印象的な1曲である。年末の空気感にも妙にハマっていて良かった。十分に爪痕は残したもののもう少しヒットして代表曲に肩を並べるくらいになっていればこれ以降のTV番組でボロボロ歌唱の「Time goes by」「fragile」の連発にならずに済んだかもしれないとも思う。

MVにはメンバーが一切出演せず、結婚する一人娘とその父親の披露宴が行われる1日を追ったドキュメント風の映像になっている。母はいないらしく、一人娘の晴れの日に終始穏やかな表情の父、朝は2人で披露宴へ出かけていくが、娘は夫と暮らすので帰り道の運転は父1人。音声は入らないが車中で「おめでとう!」(たぶん)と叫ぶ父…という大まかな流れは感動的ではあるが、曲とは少しイメージが異なる気がしなくもない。
★★★★★
7thアルバム『Crispy Park
2ndバラードベスト『14 message~every ballad songs 2~
3rdベスト『Every Best Single~COMPLETE~
5thベスト『Every Best Single 2~MORE COMPLETE~

good night

作詞:持田香織、作曲:HIKARI、編曲:HIKARI&伊藤一朗
アコースティックを生かしつつロックテイストのミディアムバラード。「恋文」が強すぎてどうしても影が薄くなってしまったところがあるが、単なるおやすみバラードではなく、故人へ向けて歌っているのでかなり歌詞が重い。

「恋文」にメンバーが出演しなかったためか、初めて両A面曲でちゃんとMVが制作された。真夜中のまっすぐな田舎道のど真ん中で演奏するというシンプルな内容だが、何故かカメラに向かってに演奏メンバーが並んでいるので、最前にいる持田しか映ってなくて伊藤でさえも持田の背後に隠れてあまり見えない。ほぼノーカットで映りっぱなしの持田は後半になるにつれてかつてないほどに大口を開けて超絶な大熱唱を繰り広げる。なんか重くて暗い曲だなとしか思ってなかったんだけどこのMVを見て実はかなり熱量の高い楽曲だと気づいた。
★★★☆☆
7thアルバム『Crispy Park
2ndバラードベスト『14 message~every ballad songs 2~
3rdベスト『Every Best Single~COMPLETE~
5thベスト『Every Best Single 2~MORE COMPLETE~

28th きみの て

きみの て
05年10月26日
作詞:持田香織、作曲:HIKARI、編曲:HIKARI&Every Little Thing
前作から10ヶ月ぶりのシングルだが前作を踏襲したようなアコースティック路線。同じような印象にならずにまたこの路線で新しいところを聞かせてくれた良作だったと思うんだけど、何故か結果が伴わず…。

この路線は特に暑い時期には正直あまり合わず、秋冬、特に日に日に寒さが深まっていく時期に聞くと特にじんわりくるところがあると思う。丸めたような歌い方がますます強くなってきたので、歌詞が若干聞き取りにくくなってきている感じも。さらに持田の髪型がキノコヘアーになってしまったので個性派路線にかなり傾いてきたなぁ…と当時思っていた。
★★★★☆
7thアルバム『Crispy Park
3rdベスト『Every Best Single~COMPLETE~
5thベスト『Every Best Single 2~MORE COMPLETE~

29th azure moon

azure moon
06年3月15日
作詞:持田香織、作曲:HIKARI、編曲:HIKARI&Every Little Thing
アコースティック路線最終章。というか好評かと思いきや前作で半減し、今作でさらに半減以上の大幅ダウンとなりトップ10入りも逃してしまう大失速になってしまった。スパっとこの方向性を辞めてしまったのはやりきったというのと急速低迷によるところが大きかったのかも。

あまりに歌い方が丸くなりすぎて、最初のサビとか「azure moon 月はつよく」が完全に「あじゅれみゅ~ん ちゅきはちゅよく」に聞こえるなど赤ちゃん言葉歌唱法になってしまった。ちょっと個性的な方向に進みすぎてしまったところはあるし、落ち着きすぎていてパッと聞きでも引き込まれるような曲でもないし…。春に希望や旅立ちの曲が溢れる中でも暗すぎた。

今作のMVでは夜の都会の街の人々の日常が描かれた群像劇みたいになっていて、メンバー2人も別々にその人々の中の1人として出演。最後にはみんなが月を見上げているので、この月の下には様々な生活がある…というのを表現したかったものと思われるが、最初は「恋文」みたいにある家族だけを追うのかと思っていたら次々に関係ない人々が出てくるので面食らった。
★★★☆☆
7thアルバム『Crispy Park
2ndバラードベスト『14 message~every ballad songs 2~
3rdベスト『Every Best Single~COMPLETE~
5thベスト『Every Best Single 2~MORE COMPLETE~

30th ハイファイ メッセージ

ハイファイ メッセージ
06年6月14日
作詞:持田香織、作曲:HIKARI、編曲:HIKARI&Every Little Thing
3月のアルバムリリースが多かったが、デビュー10周年を迎えるこの年はピタリ10周年のタイミングで夏にアルバムを出そうということになってそこへ向けての先行シングル。夏発売なので明るい雰囲気になり、ここまで続けてきた統一感のあるアコースティック路線とは一線を画す開放的な曲になる…はずだったが、いきなり妙な軽さで開放感というより謎な印象ばかりが残る謎の1曲となってしまった。トップ10復帰は果たしたが実は売上は前作を下回っている。

軽めの打ち込み+軽快なギターサウンド+力の抜けたリラックスした歌い方…と全体に軽やかな開放感があるが、変に個性派な雰囲気が漂う。時々はじけたことをやりたくなってしまう持田さん的には「jump」や「ファンダメンタル・ラブ」の流れを汲んだ曲だとは思うんだけど今回ははじけた感じは無いしなぁ…。それよりも前作までと同じHIKARI作品という幅の広さが驚き。「jump」や「ファンダメンタル・ラブ」がそうだったように変わった曲を出してその次から別の方向性になるっていうそういう役割の曲だろうか。
★★★☆☆
7thアルバム『Crispy Park
3rdベスト『Every Best Single~COMPLETE~
4thベスト『Every Cheering Songs
5thベスト『Every Best Single 2~MORE COMPLETE~

31st スイミー

スイミー
06年8月30日
作詞:持田香織、作曲:早川大地、編曲:中村康就&Every Little Thing
阿部寛主演のドラマ『結婚できない男』主題歌。発売されたばかりのアルバム『Crispy Park』からのシングルカット。ドラマは後半になるほど視聴率を伸ばして最終的に大ヒット。シングルカットだったのでトップ10入りできなかったものの、アルバムは1位を獲得してヒットし、今作もシングルカットにしては前作と変わらぬ売上を記録した。

前作がちょっとワケ分からなかったので久々のポップナンバー。ドラマを見ていたのでリアルタイムでは久々にELTに触れることになったが、冒頭の“ふぅ~ぉぉ~ちゅうぉ、ちゅぉぅぉうぉ~♪”という言葉にするとどう表記すればいいのか分からないような歌い方はど う し て こ う な っ た ? と多くの視聴者を困惑させたのも確かだと思う。キーはかなり低いし、なのにTV出たら昔の曲はもちろんこの曲すら危うく、持田の目も虚ろに見えたのが妙に印象に残っている。

TV出演と変な歌い方で印象が微妙になっていた曲だがドラマでかかっているのやCDで聞く分にはけっこう好きな曲。東京エスムジカの早川大地を作曲に起用した曲自体はキャッチーだったので、歌い方に慣れてくればかなりいい曲だと思えるようになった。
★★★★☆
7thアルバム『Crispy Park
3rdベスト『Every Best Single~COMPLETE~
5thベスト『Every Best Single 2~MORE COMPLETE~

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