1988年5月、既にバックバンドやスタジオミュージシャンの仕事をしていた松本孝弘は自身のバンドを結成しようと動いていたところ、長戸大幸からBeing音楽振興会に所属していたデビュー前の新人だった稲葉浩志を紹介され、2人は出会った。出会ってからわずか4ヶ月で1stアルバムが制作されてデビュー。3rdアルバムまではアルバムと同時に収録シングルの中でリード曲的な1曲をシングルとして同時発売するという手法を取っていた事もあり、シングルヒットは無かった。合間に実験的な試みを行うミニアルバムの制作も行われていたが、1989年の1stミニアルバム『BAD COMMUNICATION』がアルバムチャートでトップ10入りしないままに大ロングヒットを記録してブレイク。シングルもトップ10ヒットを記録するようになった。5thシングル『太陽のKomachi Angel』で初登場1位を獲得して以降、連続1位記録は現在も継続している。以後はミリオンセラーを連発するようになり、90年代前半は先行していた松任谷由実が成しえなかったアルバムでの200万枚越えをチャゲ&飛鳥やDREAMS COME TRUEと共に更新して売上記録更新を争った。
セールス面でのピークは1993~1995年頃で出すシングル全てミリオンとなり、アルバムは200万枚~300万枚にまで及んだ。1997年になり、連続シングルミリオンが途絶えるとGLAYやL’Arc~en~Cielなど新たなバンド勢に押され始めるも10周年でリリースした初の公式ベスト『B’z The Best “Pleasure”』は派手な特典商法も相まって史上初の500万枚越えの売上を記録し、続く『B’z The Best “Treasure”』も400万枚を突破して2作で1000万枚を突破、記録級のメガヒットとなった。
この最初の10年は方向性の変化も著しく、初期は打ち込みやダンスビートを中心とした楽曲が目立ったが、徐々にルーツであるハードロック色を出すようになっていった。それでも一気に傾く事はせずにハードな曲を出したら次はポップ寄りに戻すなどバランスを重視して多彩な方向性を見せていたのが大きな特徴と言える。
デビュー当時から関わっていたアレンジャー明石昌夫含めてエンジニアやギターテックのスタッフも含めた制作集団はB+U+Mと名付けられていた。明石昌夫が後年自ら語っているように明石昌夫のアイデアが枯れた事で体制を変えることになりアレンジから明石昌夫が外される形でB+U+Mは解体(明石昌夫本人がB+U+M解体後も明石昌夫以外のB+U+Mメンバーはそのまま起用されたため自身をアレンジャーから外す口実だったのではないかとしている。なお明石昌夫はしばらくベーシストとしての起用は続いた)。
B+U+M解体を機にアレンジに稲葉浩志も参加するようになりクレジットに名前も入るようになった。当初は松本と池田大介など稲葉が入らない事もあったが編曲は基本的に松本孝弘・稲葉浩志の連名となった。池田大介以外に1997年には徳永暁人も初参加となり1998年のツアーでも明石昌夫に代わって起用されたが、レコーディングでの明石昌夫の起用も並行して続いていた。
2023.9~11 全面リメイク執筆、一部2nd beat&アルバム曲新規大幅追加
- 1st だからその手を離して
- 2nd 君の中で踊りたい
- 3rd LADY-GO-ROUND
- 4th BE THERE
- 5th 太陽のKomachi Angel
- 6th Easy Come,Easy Go!
- 7th 愛しい人よGood Night...
- 8th LADY NAVIGATION
- 9th ALONE
- 10th BLOWIN'
- 11th ZERO
- 12th 愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない
- 13th 裸足の女神
- 14th Don't Leave Me
- 15th MOTEL
- 16th ねがい
- 17th love me,I love you
- 18th LOVE PHANTOM
- 19th ミエナイチカラ~INVISIVLE ONE~/MOVE
- 20th Real Thing Shakes
- 21st FIREBALL
- 22nd Calling
- 23rd Liar! Liar!
- 24th さまよえる蒼い弾丸
- 25th HOME
1st だからその手を離して
88年9月21日
デビューアルバム『B’z』と同時発売。C/W含めて2曲ともそのままアルバムにも収録され、ジャケットもまんまアルバムのコピーというあまりシングルを売る気のない宣伝用サンプラーみたいな体裁となっており、100位圏外。
肩幅のおかしい衣装に身を包んだ2人の絶妙なダサさといい、発売数年で廃れてしまった80’sセンスが炸裂しているのがキツイ。最初に見たり聞いたりしたのは2000~2002年頃だったと思うんだけど(Mixture Styleの方が先に聞いた記憶はある)、10数年前とは思えないくらい前時代に感じたのを記憶している。松本孝弘はTM NETWORKのサポートもしていて売れる楽曲を狙っていく中でTM NETWORKのような路線から入っていったのは自然な選択でもあったのかもしれない。ただ今作はギターとデジタルの融合といってもあまりにもギターが遠い。音はペッラペラだし、バブリーな打ち込みサウンドばかりが耳に飛び込んできてギターはそういえば鳴っているな程度の存在感しかない。天下のB’zの始まりとしては後追いで聞くほど衝撃の作風だ。
一方で曲自体はそれなりに耳に残るシングルらしさはあり、特に手探り・未完成感が強い1stアルバムの中ではダントツでこれしかシングルはないようにも思う。とはいえ”だからその手を離して”とか”今すぐ get out of my way”とか”ここには何もない”とかデビュー曲なのにとにかく追い出したい、離れてほしいワードが連発されるというのもなかなか凄い。そら売れねって。
ミニアルバム『BAD COMMUNICATION』では早々に「DA・KA・RA・SO・NO・TE・O・HA・NA・SHI・TE-OFF THE LOCK STYLE-」としてリメイクされた。2ndアルバムのタイトルがバージョン名に使用されているもののあまり繋がりは感じられず、リメイクというより引き延ばし系のリミックスに近い雰囲気でもあり、オリジナルが3分50秒だったのに対して7分14秒と3分以上も引き延ばしている。英語詞ではあるがタイトルがただローマ字にしただけの「DA・KA・RA・SO・NO・TE・O・HA・NA・SHI・TE」になっているように作中の「だからその手を離して」の歌詞部分は元のまま(御丁寧に歌詞もタイトルと同じローマ字表記)。英語詞になった事によるカッコよさはあるんだけどいかんせんトラックが長すぎるのとサビだけ急に日本語のままなのもあって正規の英語バージョンというよりリミックスバージョンでしかない感じはある。
2000年にはMixture styleとしてリメイク。『今夜月の見える丘に』2nd beat(C/W)として先行収録され、『B’z The “Mixture”』1曲目に収録された。こちらは正統派の生音ロックアレンジのリメイク。現在にも通じる今のB’zらしい演奏に変わった。だからその手を(ドン)離して(ドン)…と生演奏にしてもサビのリズムのもたついた感じは否めないものの、デビュー曲としては違和感ない仕上がり。
★★★☆☆
1stアルバム『B’z』
1stミニアルバム『BAD COMMUNICATION』(DA・KA・RA・SO・NO・TE・O・HA・NA・SHI・TE-OFF THE LOCK STYLE-)
非公認初期ベスト『Flash Back-B’z Early Special Titles-』
非公認初期ベスト『Flash Back-B’z Early Special Titles-』(DA・KA・RA・SO・NO・TE・O・HA・NA・SHI・TE-OFF THE LOCK STYLE-)
27thシングルC/W(Mixture style)
マストアルバム『B’z The “Mixture”』(Mixture style)
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
2nd 君の中で踊りたい
89年5月21日
アルバム同時発売でC/W共々アルバムに収録され、ジャケットもアルバムの使い回しと前作を踏襲しての2作目。今作も100位圏外。
基本的には前作の路線をそのまま引き継いだ曲で「おっどりた~い、きみのなか~で♪」というサビはそこそこキャッチーで耳に残る。シングルだけではあまり進化を感じないがアルバム『OFF THE LOCK』は1stに比べるとかなり完成度が上がっており、今作以外にもシングル候補になりそうな曲は今聞いてもいくつか散見される印象(当時は全曲シングルのつもりで制作していたらしい)。初期3作のアルバムでは1番完成度が高いと思う。
『WICKED BEAT』では「I Wanna Dance Wicked Beat Style」として全英語詞でリメイクされた。3分50秒が4分36秒まで長くはなっているものの前作のように極端に長くなったわけではないが、アレンジはダンスサウンド色がかなり強調されていて、『WICKED BEAT』4曲の中でもこの曲だけかなり大きく変貌している印象。今回もサビ頭は日本語詞のまま(表記はローマ字で”Odoritai Kimi no Naka de”)になっているのは前作を踏襲したのだろうか。タイトルは前作を踏襲した「O・DO・RI・TA・I・KI・MI・NO・NA・KA・DE-Wicked Beat Style-」とか長ったらしいことにせずにストレートにラストのコーラス部分から取っているのでスマートに収まっている。
『B’z The “Mixture”』の際は2ndアルバムから「OH! GIRL」「NEVER LET YOU GO」と2曲も選出されてMixture Styleとして生まれ変わったもののシングル曲である今作はスルーされた。その後も過去の曲のリメイクは何度か行われていたためいつか『MixtureⅡ』的な機会を設けてまとめてやるのではないかと思われたが全くそんなことは無く…。
すっかりあきらめかけていた35周年を迎える2023年に唐突にシングル『STARS』のC/W(4th beat)で「君の中で踊りたい 2023」として現行スタイルの演奏で蘇った。一部曲構成の変更もあったが、期待通りの今のB’zの音になったように思うし、メロディーのキャッチーさにかけては初期の頃からキレがあったんだなという事も再確認できた。
★★★☆☆
2ndアルバム『OFF THE LOCK』
2ndミニアルバム『WICKED BEAT』(I Wanna Dance Wicked Beat Style)
非公認初期ベスト『Flash Back-B’z Early Special Titles-』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
54thシングル『STARS』4th beat(2023)
HURRY UP!
From 2ndアルバム『OFF THE LOCK』
特に根強い人気があったわけでもない初期の埋もれアルバム曲の1つ…であったはずが2010年にアニメ界隈で2番サビの歌詞だけが有名になった事で知られる1曲。というのもアニメ『Angel Beats!』2話にてまともな台詞が無かった謎の登場人物TKが放った作中最長の台詞が“(瓦礫を受けとめながらヒロインに対して)Hurry up!今なら間に合う…Oh…飛んでいって抱きしめてやれぇ…(瓦礫に潰される)”というものだったためである。結果これはTKの台詞としてニコニコ大百科、ピクシブ百科事典、アニヲタWiki(仮)等でも代名詞のように扱われている。「Hurry up!今なら間に合う Oh 飛んでいって抱きしめてやれ」と検索するとこれらのTKキャラ紹介サイトと本来の歌詞サイトがせめぎあって上位にヒットする(1番はニコニコ)ほどである。
曲そのものより2番サビの歌詞だけ全く無関係のアニメキャラの台詞として一部で有名になってしまう、それも発売21年後に…という数奇な運命をたどる事となったが、正直当初この場面を見た時もすっかりこの曲の事は忘れていて全くピンと来ていなかった。改めて元ネタがこれだったと知って改めてちゃんと聞いてみたら初期らしい打ち込みポップながらもノリの良い軽快な曲でなかなかキャッチーな仕上がり。「君の中で踊りたい」があるならシングルはそっちなんだろうけどアルバム2曲目として確かな存在感のある良曲だったんだなという印象になった。
下記視聴リンクでは1分過ぎに該当箇所を聞く事ができる。
★★★☆☆
非公認初期ベスト『Flash Back-B’z Early Special Titles-』
BAD COMMUNICATION
From 1stミニアルバム『BAD COMMUNICATION』
1989年10月21日
1stミニアルバム表題曲。新曲「BAD COMMUNICATION」と英語詞リメイク2曲の3曲入りミニアルバムとしてO社ではアルバム扱いされたが、レコード協会ではマキシシングル初のミリオン作扱いされている。3曲とも7分越えのシングル市場向けではない楽曲で3枚目のフルアルバムで売れるための布石狙い、実験作であったため今作で売れるとは考えていなかったが、何故か初登場15位と過去2作のアルバムよりのっけから好調で、そのまま大ロングヒットを記録。1991年1月に最高12位を記録、1992年3月についに100位集計での売上がミリオンを突破した(2003年以降は300位まで集計されているが当時は100位集計で何度か100位圏外になっているの)。後発のアルバムが先にミリオンを達成していたので、B’zの作品の中で発売順では最古のミリオン作品となるが、最初のミリオンヒットではない、という事に。またトップ10入りせずにミリオン突破したアルバムは1992年のMr.Children『KIND OF LOVE』と今作のみである。
リアルタイムで今作のヒットを体感していないのでシングル扱いにならなかった今作がどのくらいヒット曲として浸透していたのかは良く分からない。内容的には「BAD COMMUNICATION」を表題曲として「BAD COMMUNICATION」がミリオンヒットになったという感覚になるはずだが、B’zのミリオンヒット特集になってもこの曲単独では扱われないからなぁ…。
今作はダンスビートに特化した実験作ではあるんだけど、キャッチーな歌メロ、耳に残るリフなどもあってインパクトは強い。まあこのインパクトのあるリフが「Trampled Under Foot」のパクリじゃねーか!という事で盗作研究糾弾者たちの間ではトップ級に取り上げられ、「B’zは洋楽のパクリ」言説を飾る1曲にもなってしまっているらしいんだけど…ちょっとパロッてより良い曲を作り上げたと考えればいちいち糾弾するような事でもないだろう(そもそも糾弾して怒っている時間がもったいない)。7分半近い長さだが、スピード感もあるしそこまで長くは感じない。
B’zサイドとしても早い段階からパクリパクリ言われていたものの動じず、思い入れが深い曲なのか何度もリメイクを発表している。『WICKED BEAT』ではE.Styleとして全英語詞リメイク、『LOOSE』では000-18としてアコースティックを生かしたブルース風味にガラッと変わった。『Pleasure』ではE.Styleが再活用されたが元のままではなく表記は無いがE.Styleのショートバージョンになっていた。『ULTRA Pleasure』ではULTRA Pleasure Styleとして原曲の正統進化形といえる原曲の生バンドバージョンに仕上がっている。長いので一部カットして短くしているが、現在のB’zっぽいのはこのバージョンだと思う。
『WICKED BEAT』のE.Styleのショートバージョンが『Pleasure』のE.Styleと一般的には言われている。しかし実際に聞いてみたら分かるように単に一部切って短くしたという感じではなく、随所でちょっと音色が違っていたり、『Pleasure』のE.Styleがオリジナルで『WICKED BEAT』のE.StyleはそれをEXTENDED系の引き延ばしリミックス施したバージョンなんじゃないか…とちょっと思ってしまうくらい『WICKED BEAT』のE.Styleの方にはサウンド面にリミックス感がある。
リアルタイムに最初に接したタイミングによってこの曲のイメージは異なると思われ、1番最初の今作がミリオンヒットになるタイミングでリアルタイムに接していた場合は当然原曲なんだろうし、『WICKED BEAT』のE.Styleや、『LOOSE』の000-18なんてリスナーもいるんだろうけど、空前の大ヒットになった『Pleasure』のE.Styleが初聞きでこれの印象が1番強い人は当時それなりに多かったと思う。『Pleasure』当時で中2だった我々の世代(1985年前後)だとオリジナルより『Pleasure』のE.Styleが最初に聞いて馴染み深いなんて人が特に多いんじゃないだろうか。最初は英語詞の曲だと思ってたし、無謀にもカラオケで入れたらなんか日本語の歌詞が出てきて全然歌えなかったなんてこともあった。
★★★★☆
2ndミニアルバム『WICKED BEAT』(Bad Communication E.Style)
8thアルバム『LOOSE』(000-18)
非公認初期ベスト『Flash Back-B’z Early Special Titles-』
1stベスト『B’z The Best “Pleasure”』(「Bad Communication E.Style」のショートサイズ)
5thベスト『B’z The Best “ULTRA Pleasure”』(ULTRA Pleasure Style)
3rd LADY-GO-ROUND
90年2月21日
3rdアルバムと同時発売でそのままC/W共々収録という3連続同じパターン。『BAD COMMUNICATION』のヒットで名前が浸透し始め、今作は初めてO社100位以内にランクイン(39位)。アルバム『BREAK THROUGH』は初登場3位を記録するなど躍進した。今作までは初期に在籍したBMG側に発売権利があり(BMGがAriolaに移行してソニー管轄のはず)、『Flash Back-B’z Early Special Titles-』を非公認でリリースされるに至ったが、ここまでが収録範囲である。権利処理が面倒なためか『Pleasure』以降の公式ベスト盤では選曲されず、例え『Treasure』『ULTRA Treasure』投票の中間発表ではこの時期の曲が収録枠に入っていたとしても最終結果で圏外へはじき出される不思議な何かが発動し、結局『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』まで選曲されることはなかった。
歌詞に百人一首が入ってるのが特徴で、MERRY-GO-ROUNDではなくLADY-GO-ROUNDとするなど歌詞の発想はなかなか面白いんだけど単純に前2曲に比べるともう1つパッとしない印象ではある。3枚目での大ブレイクを画策しており、BREAK THROUGH→ブレイクスルー→ブレイクするーと名付けた割にはラップに挑んだりと実験要素強めで2ndほどのキャッチーさがなく、『BREAK THROUGH』自体もどこかパッとしない印象のままだ。
『WICKED BEAT』では「Lady-Go-Round “W-40” Style」として英語詞リメイクされた。随所でややリミックス感はあるものの大枠のイメージはあまり変わっていない。前2作から続く伝統(?)であるローマ字で日本語詞を残すところは前2作のサビ頭から百人一首部分に移動しており、百人一首部分がローマ字表記された(読みにくい…)。
★★☆☆☆
3rdアルバム『BREAK THROUGH』
2ndミニアルバム『WICKED BEAT』(Lady-Go-Round “W-40” Style)
非公認初期ベスト『Flash Back-B’z Early Special Titles-』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
4th BE THERE
1990年5月25日
3連続のアルバム同発・同時収録から今作より単独リリースへ移行。1曲目を1st beat、C/Wを2nd beatという表現に変更した(後年3曲目以降がある時は3rd beat,4th beatと表記)。しかし今度は一転してアルバム直近のシングルしかアルバムに収録しないという方針をしばらく続けるようになり、2nd beatどころか表題曲がオリジナルアルバム未収録になる事が増えた。『BAD COMMUNICATION』のロングヒット、『BREAK THROUGH』の3位に続いて今作ではシングル初のトップ10入り(7位)を記録。ここから快進撃が始まった。2003年に今作から13th『裸足の女神』までが一斉にマキシシングルとして再発された際には3位に浮上して最高位を更新した(別集計ではなく加算集計されたので初登場ではなく急浮上、最高位更新扱い)。
テテテテーテーテー…といきなり音飛びしているかのような左右振りまくりの加工音声がインパクトが絶大。当時これをサンプリングするのはかなりの手間だったと思われエンジニア(野村昌之)の手腕が光る。メロディーも含めて前3作よりシングルらしいキャッチーさが増してきているように思う。今作もまだまだ打ち込みポップ路線ではあるが、アウトロでは延々とギターソロを聞かせながらフェードアウトしていくなどギターの存在感はどんどん増してきているのが分かる。
初期のシングルはミニアルバムで英語詞リメイクされたりリミックスされた曲が多かったが今作は別バージョンが一切存在しない。ストレートに8年後の『Pleasure』がアルバム初収録だった。それまではけっこう忘れられがちなシングルだったのではないか。
★★★☆☆
1stベスト『B’z The Best “Pleasure”』
5thベスト『B’z The Best “ULTRA Pleasure”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
5th 太陽のKomachi Angel
1990年6月13日
前作から半月ちょいでの連続リリース。初の1位獲得作品で現在も続く連続1位の記録はここから始まった。
かなりはじけた印象のラテン調のノリといい、あの娘はたいっようの小町♪エ~ンジェ~ル♪といい、インパクトは抜群で1度聞いただけで耳にまとわりつく破壊力がある。正直あまり好きな曲ではないんだけど勝手にまとわりついてくるくらい中毒性が凄い。そこそこ好きな曲よりよっぽど覚えちゃってるもんな。
冒頭サビ始まり(4行)、1番サビ(4行)、2番サビ(8行に倍増)、間奏明けブレイクサビ(4行)+ラストサビ(8行)と4回も出てきて増量されていくという構成だけになんかサビばっかりずっと歌ってんなという印象もあるが、こんだけエ~ンジェ~ル♪しまくれば(エ~ンジェ~ル♪は2行に1回登場する)耳から離れなくなるわけだ…。
当時はオリジナルアルバムに収録されず、直近の『WICKED BEAT』に「Komachi-Angel Red Hot Style」として英語詞リメイクが収録されただけだった。こちらはやや加工リミックス感があるものの大きくアレンジは変わっていない。『Pleasure』がアルバム初収録となったので8年もアルバム未収録だった事になる。実は20周年時の『ULTRA Preasure』ではひっそり外され、『ULTRA Treasure』にも選曲されなかったので、2013年までは『Pleasure』にしか収録されていなかったりと比較的不遇だったりするが全くそんな気はしないくらいの存在感である。
★★★☆☆
2ndミニアルバム『WICKED BEAT』(Komachi-Angel Red Hot Style)
1stベスト『B’z The Best “Pleasure”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
6th Easy Come,Easy Go!
1990年10月3日
3週連続1位を記録したが売上は前作から少し伸びた程度でまだ50万枚に届かない程度だった。サビでは”踊ろうよLADY”などと歌っているものの、デジタルビート、ダンスミュージック路線からアコースティックギターを押し出して初期の路線から離れつつあることを感じられる変化の1曲。ポップに振り切った感じでもあり、後年全く見られないいい意味での軽い佇まいはどこかカワイイ感じも。ラララパートもあったりと合唱系のノリもあって馴染みやすい。初期ポップ路線の傑作の1つだと思う。
ミックスが異なるRISKY Styleではドラムが硬い音で目立つようになり、硬派でカッコよくなっている。アルバム『RISKY』は全面的にミックスエンジニアにJASON CORSAROを起用しており、この曲もRISKY Styleが先に仕上がっていたが、シングルで出すに当たってどうなのかという話になって野村昌之でミックスし直してシングルを出したという経緯だった模様。今の感覚だと普通にRISKY Styleの方が良いな…。
★★★★☆
4thアルバム『RISKY』(RISKY Style)
1stベスト『B’z The Best “Pleasure”』
5thベスト『B’z The Best “ULTRA Pleasure”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
7th 愛しい人よGood Night…
1990年10月24日
10月3日に前作がリリースされたばかりだったのに3週間程度での連続リリース。前作が3週連続1位で今作がそのまま初登場1位と引き継いだのでB’zとしては4週連続1位となった。ドラマ『代表取締役刑事』エンディング。11月7日にはアルバムが控えており直前先行シングルとなったが、元々先行シングルは前作で今作はアルバム曲の予定だったがドラマ関係者に気に入られたので急遽シングルとしてもう1枚リリースする事になったとされる。前述のようにミックスはJASON CORSAROが担当しているが前作と違ってこれで問題なかったのか、急遽シングル化が決まったのでシングル用にミックスし直す余裕が無かったのかシングルとアルバムで同じバージョンとなっている。
初のバラードシングル。当時のシングル曲としては規格外の2000年型ストバラ並(アレンジ自体はストバラではない)の6分越えのバラードでいかにもアルバムの名バラードっぽい。十分に良曲なんだけど、やや地味目の存在感になってしまった。B’zの楽曲はチャートでは「FIREBALL」以降、シングル手に取ったのは「Calling」「HOME」、後は基本的に1998年のベスト『Pleasure』『Treasure』2作で一気に初めて聞いたんだけど、2作の収録曲の中でも一番最後まで定着しなかった。2003年の一斉マキシ化再発の際に今作が1番低かったというのも申し訳ないけどイメージ通り過ぎる結果だった。予定通りにアルバム曲にしておいた方がアルバムの名曲として勝手に人気が出たような気もする。
『Treasure』にギリギリ13位(14位まで)で選曲された辺りまでは確かな人気はあったと思われるが、『ULTRA Treasure』では30曲の枠にランクインできなかった。その前に『The Ballads~Love & B’z~』に既に選曲されなかったりもするが、いない事にしばらく気づかないくらい他にバラードの名曲が多すぎたのはあるかも。久々に聞くと凄く良かったりもする。
★★★☆☆
4thアルバム『RISKY』
2ndベスト『B’z The Best “Treasure”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
8th LADY NAVIGATION
1991年3月27日
デビューが遅かった事もあり早くも松本がOVER 30’s WORLDに突入。しかもピタリ誕生日に発売となり、松本孝弘生誕30周年記念シングルとも言われる。1990年のシングル5作のうち4th以降の4作は30~40万台の売上を記録していたもののまだ50万以上の売上は記録していなかったが、アルバム『RISKY』は初のミリオン突破で170万枚の売上を記録するなど伸びまくった。アルバムから4ヶ月、1991年の幕開けとなった今作は初動20万枚から2週連続1位、3週目2位から4週目1位と3週1位を記録してそのまま初のミリオン突破。1991年の年間チャートでは7位(ちょうど100万程度)。50万枚以上を経験していないのに一気にすっ飛んだ上に、このまま驚異の連続ミリオン記録が始まった。なお登場週数記録では初動に集中していなかった初期が圧倒的であったため、2003年再発盤の300位集計も含むが今作の56週が最長、次いで「BE THERE」49週、「太陽のKomachi Angel」47週と続いている。
B’zのミリオンシングルだけを並べると「ALONE」じゃなくてこの曲からだったの?と驚くくらいバブリーな打ち込み主体の路線でけっこう浮いている印象。カネボウ化粧品 ’91夏のCMタイアップでCMソングらしいはじけたキャッチーさを意識したのだろうか。締めのえねっびあいじーえーてぃー、あいおーえぬ(N・A・V・I・G・A・T・ION)も凄くバブリー。数年後には完全絶滅したような80年代を引きずったアーリー90’sすぎるノリが後追いだと衝撃的だ。また”貴女”の描写がいきなりスイミングスタイルに始まり、公園でソフトクリーム舐めてたり、いつでももぎたてのベジタブルだったり切り取る瞬間の描写が独特過ぎるわ、”地球に弾ける頬”だったりあふれる涙は”世界にひとつだけのパール”だったりと規模もデカく、その締めがえねっびあいじーえーてぃー、あいおーえぬ(N・A・V・I・G・A・T・ION)なのだからインパクト強すぎ。
初期3作でPV制作して以降しばらくPVが無かったがこの曲はちゃんとスタジオ撮影したPVが存在。異常にクネクネ踊り狂う稲葉、間奏ではギターソロを弾きながら空中浮遊してしまう松本が超絶シュール。あまりのダサさに長らく事実上封印されていたのも分からなくもない。初期3作のPVもそうだったが80年代特有なのかクネクネするのがカッコいいという価値観は謎過ぎる。
オリジナルバージョンは『Pleasure』まで未収録のままだったが、間に2度英語詞の別バージョンが発表された。
Cookie&Car Stereo Styleはアレンジは大きく変わっていないが印象の強かったシンセが控えめになり、ドラムやギターが強調されているのでロック色が強くなって聞こえ、ダサさも軽減されてカッコよさを感じられる仕上がり。
『The 7th Blues』では「LADY NAVIGATION」とタイトルそのままで収録されているが、いざ再生すると英語詞のブルース調で渋~いスローテンポというまるで別の曲のように大変貌。当然こんな渋いアレンジの中で”えねっびあいじーえーてぃー、あいおーえぬ”なんて入れ込む余地が無いのでこの部分はカットされている。
★★★☆☆
3rdミニアルバム『MARS』(Cookie & Car Stereo Style)
7thアルバム『The 7th Blues』(ブルース調の別アレンジ)
1stベスト『B’z The Best “Pleasure”』
5thベスト『B’z The Best “ULTRA Pleasure”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
Pleasure’91~人生の快楽~
8thシングル2nd beat
過去の代表曲を中心に展開する全国ツアー「Pleasure」シリーズや、ベスト盤のタイトルにもなっている代表曲の1つだが始まりはC/W(2nd beat)であった。年数を重ねるごとに主人公の友人である「あいつ」の境遇が変化していき、主に2番冒頭の歌詞が書き換えられる事でもおなじみ。CD化されているのは他に’98と2008の合計3バージョンだが、ライブではさらに複数存在するようだ。最初期のバージョンであるこの’91はアルバム未収録のままなので現在は知名度も低く、個人的にも後追いで聞いたので馴染みが薄い。時期が時期だけに驚くほど音がペラペラな印象。ただ時系列ではこれでもこれまでの打ち込み主体の路線よりはロック路線っぽくなってはいる。
『Treasure』に収録された’98が最も馴染み深いというリスナーがやはりダントツで多いじゃないかと思う。1998年時点で既に今のB’zとほぼ変わらないロックサウンドになっている。しかし’91で父親になった事が示されていた「アイツ」があれから7年で1人になったと離婚して親権も取られた事が示唆されているが一体何があったんだ。しかも“とうとうひとりになった”というからにはそれ相応のやらかしをしていたと思われるが…(“とうとう”はオリジナル’91にあった”とうとう親父になった”から残したフレーズなのでそんなに深い意味は無いかもしれない)。
2008ではさらにマッチョなバンドサウンドにパワーアップ。「あいつ」の現在を示す2番冒頭の歌詞も自分以外の事に興味を持てなかったのが生まれて初めて守りたいものが見つかったという事で再婚?を示唆している…が、やはり厳密に繋がっているとか同一人物だとすると「あいつ」の息子or娘は17歳くらいになっているはずで、今になって自分以外の事に興味を持てなかったのが生まれて初めて守りたいものが見つかったというのはいくら何でもヒドイ。ライブでのみ披露された’95は親父になって5年と地続き、’98での離婚後、CD化されずにライブのみ2000では全てを捨てて旅に出て、2003で帰還して逃げているだけでは変わらないと気付き、そしてこの2008となるので繋がっているっぽいんだけど…前妻の子供かわいそうな感じに…。
なおこの後の2013では既に疎遠になっていてどこかで元気でやっているだろと思われるだけになっていて消息不明、2018では久々に電話してきて”誰かのために生きる喜びを今さらながら知った”と言ったそうで2008の後の10年を経て守りたいものがどうなったのか若干微妙な感じである。なんか2008での守りたいものとはまた別の誰かの元で今更喜びに気づいている感じが…。2023では2008以来直接再会した事が示唆されていたそうだ。
基本アレンジはあまり変わっていないが、’98や2008ではバンドサウンドの迫力が増しているのでそちらの方がしっくりくる。「あいつ」の状況の変化も聞きどころだが、“怖いものはありますか? 守るものはありますか? 止まれないこの世界で胸を張って生きるしかない”など人生を歌った歌詞は大人になってからよりビシバシと心に響く。アウトロのピアノ演奏も泣ける。当然2008が1番パワフルだけど、最初に聞いたのは’98なので結局’98が1番好きかなぁ…。
★★★★★(’91だと★4)
’91はアルバム未収録
2ndベスト『B’z The Best “Treasure”』(’98)
5thベスト『B’z The Best “ULTRA Pleasure”』(2008)
孤独のRunaway
From 3rdミニアルバム『MARS』
1991年5月29日
1990年11月に日本初の女性ソロギタリストのデビューシングルとして安宅美春へ提供したギターインスト曲に新たに歌詞をつけてB’zとしてセルフカバーした楽曲。提供は松本のサウンドプロデュースだったが当時のB’z制作チーム(B+U+Mや明石昌夫も参加)も参加し、一部コーラスの歌詞があって稲葉も参加していたとされる。シングルは87位に終わり、続けてリリースしたアルバム『孤独のRUNAWAY』は100位圏外に終わり、安宅美春ソロとしての活動はそのまま終了してしまったが、1991年にはボーカル浜口司と共にKIX-Sとしてデビュー。KIX-Sが女性版B’zと呼ばれたのはこういった流れに由来するが、KIX-SにはB’zは関わっていない。またKIX-Sは渡辺プロダクションとビーイングの共同プロデュースだったが、後期にはビーイングが撤退したため制作陣も変わってビーイング色は途中から無くなっている。
今やすっかり最初からB’zの曲だったかのようになっているが、ギターインストではなくKIX-Sに提供していたら代表ヒットの1つになっていたのではないかと思えるくらいには歌モノとしてもシングル級のヒットチューン。ミニアルバム『MARS』の実質的リード曲としてこれだけでおつりがくる勢い。
ベスト盤に選曲されてそうで1度も選曲されておらず、『Treasure』では19位落選(14位まで収録)とそこそこの位置までつけた人気曲だったが、『ULTRA Treasure』では中間発表も最終結果でも公開範囲内に入っていなくて忘れられてしまっていたようだ。Mixture styleでのハードロック化もかなりカッコいい仕上がりだったのでもっと人気ありそうなもんだけどなぁ…。『Treasure』になんとか入り込めていたら違ってたかも。
唯一取り上げられたのは『Mixture』でこの際はMixture Styleとして骨太ロックバンド路線にリメイクされていてかなりカッコいい。
★★★★☆
マストアルバム『B’z The “Mixture”』(Mixture style)
9th ALONE
1991年10月30日
1ヶ月後に控えたアルバム『IN THE LIFE』の先行シングル。前作『RISKY』は直前でもう1枚シングル化したのでシングル2曲になったが、『IN THE LIFE』『RUN』『The 7th Blues』と3作連続でシングルは先行シングルのみ(リメイク除く)というのが徹底され、大量のアルバム未収録ミリオンシングルを輩出した。1ヶ月後にアルバムが控えていようとも問題なく2週連続1位、ミリオンを突破(前作よりは低い)。まだ68万程度の段階だったが前作の7位に続く1991年の年間チャート10位に滑り込んだ。
ドラマ『ホテルウーマン』主題歌。挿入歌としてビーイングの新人たちが大量起用されてコンピ盤『HOTEL WOMAN Original Soundtrack』もリリースされた。シングルが10月30日、11月21日にコンピ盤に先に収録されて27日に『IN THE LIFE』(アルバムバージョン)に収録という流れだった。
全体的に泣きの雰囲気に溢れた夕日のイメージのバラード。これまでもメロディーの良さは発揮されていたとはいえ、さらに一段高みに達したように思う。文句なしの大名曲。メインのメロディーだけでなくコーラスのメロディーまで名曲っていう。
『IN THE LIFE』『The Ballads~Love&B’z~』に収録されているのは表記は無いがアルバムバージョン。エンディングで聞こえてくるコーラス(“ねきだーい、いーんですか~い”と聞こえるやつ)が冒頭にも入っているのでその分だけ長い。
★★★★☆
5thアルバム『IN THE LIFE』(コーラスから始まる)
1stベスト『B’z The Best “Pleasure”』
3rd(バラード)ベスト『The Ballads~Love&B’z~』(コーラスから始まる)
5thベスト『B’z The Best “ULTRA Pleasure”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
もう一度キスしたかった
From 5thアルバム『IN THE LIFE』
1991年11月27日
『Treasure』投票4位、『The Ballads~Love&B’z~』にも選曲され、『ULTRA Treasure』投票13位を記録した初期のアルバム曲の中でも上位クラスの人気を誇る1曲。Wikipediaではなんとアルバムの1曲でしかないこの曲単独の記事が作られているほど。
比較的同じようなメロディーが繰り返されるがキャッチーで覚えやすく、男女の出会いから別れまでが季節と共に巡っていくストーリーも切なく印象的。3度出てくるタイトルは全て”ふりかえるあなたを抱き寄せて もう1度キスしたかった”で共通しているがその時の状況が異なっているのでいずれにしても切ないものの意味合いが3回異なる。ギターの印象はあまりなく、キーボード中心で歌詞とメロディーを存分に生かした作風は初期作らしくもある。
★★★★☆
2ndベスト『B’z The Best “Treasure”』
3rd(バラード)ベスト『The Ballads~Love&B’z~』
6thベスト『B’z The Best “ULTRA Treasure”』
10th BLOWIN’
1992年5月27日
『IN THE LIFE』が初動ミリオン、240万枚突破の特大ヒットを記録し、それから半年ぶりの新作。かなりハイペースだった中での半年ぶりという待望の新作だったためか前2作からさらに60万近く売上を伸ばし、170万枚を突破。現在は3番ヒット作。1992年の年間チャートでは3位(168万)に食い込んだ。
打ち込みポップ路線の集大成のような非常にノリのいい曲でポップ路線のB’zの最高峰として極まったような1曲だと思う。風に乗ってどこまでも飛んでいけるような軽快さが感じられる。この曲は打ち込みでの完成度が非常に高かっただけにULTRA Treasure Styleでわざわざ生音リメイクに選ばれたのは少々意外だった。そっちはそっちでまた別のカッコよさはあるけど。
オリジナルアルバム未収録なのに『Pleasure』に選出されなかった…というのも自身3番ヒット作とは思えない扱いだったが、『ULTRA Pleasure』にもやっぱり選出されずに2回ともファン投票選出に回っている。わざと取っておいたのだろうか。2度目にはULTRA Treasure Styleに変えてしまったのでシングルバージョンで2回しかアルバム収録が無いというのも意外なところ。
★★★★☆
2ndベスト『B’z The Best “Treasure”』
6thベスト『B’z The Best “ULTRA Treasure”』(ULTRA Treasure Style)
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
TIME
10thシングル2nd beat
当時チャートでは何故か『BLOWIN’/TIME』と両A面扱いされていたが、公式には『BLOWIN’』単独表題シングル。ただこの時期、C/Wをアルバムに収録しなかったとはいえ重要視はしていたっぽく、前年のツアータイトルが『B’z LIVE-GYM “Pleasure ’91″』だったのに続いて、この後のツアーも『B’z LIVE-GYM Pleasure ’92 “TIME”』と曲名が使用されていた。ファン人気も高く『Treasure』5位、『The Ballads~Love&B’z~』に選曲され、『ULTRA Treasure』9位と根強い人気を誇る。特に『ULTRA Treasure』時は「BLOWIN’」(11位)を上回っていた。C/W(2nd beat)から3度ベスト盤選出になったのはこの曲のみである。確かベスト盤が出た98年頃にTVでも披露していたような記憶がある。
激しい後悔の念が歌われており、時の無情さを感じる歌詞だが、この時期にしてはだいぶロック色が強めのバラードナンバー。初期特有のポップ感があまりなく、90年代後半以降のロックなB’zの曲と並べてもあまり初期っぽく感じられない。そういう意味で耐用年数が長いアレンジになっていたのかもしれない。
★★★☆☆
2ndベスト『B’z The Best “Treasure”』
3rd(バラード)ベスト『The Ballads~Love&B’z~』
6thベスト『B’z The Best “ULTRA Treasure”』
11th ZERO
1992年10月7日
アルバム『RUN』を月末に控えての先行シングル。ノンタイアップだったが2週連続1位を記録。先行シングルだったのもあって前作ほどではなく120万台に留まったものの登場週数はさほど変わらず、問題なく大ヒットした。2009年に突如として「麒麟ZERO」CMソングに起用されたのでノンタイアップではなくなった。
ここまでの大ヒットを受けていよいよルーツであるロック路線に舵を切り、一気にハードロック色が強くなった。とはいえまだまだ気持ちよくキーボードやブラス音が鳴り響いたりとポップな要素も残されている。当時は大冒険でリスナーとしても一気にロックになったと思ったんだろうけど後追いで聞くとそこまでハードには聞こえない。それこそ1997年辺りで出ても今回はポップ寄りだなと思いそうだ。Aメロ、Bメロと来てサビに行かずにまたAメロ、Bメロと来てようやくサビになったり、間奏にラップが入ってきたり、その後はBメロ→サビで終わったりとなかなか最初のサビが来ないもののそこからは割と一気に駆け抜けていくような印象。序盤から車ごと相手に突っ込もうとしたりとかなりヤケクソ気味の歌詞だが、サビの感情一直線な勢いは全部ゼロになってしまえ的な思考に至るようなスピード感にマッチしている。
間奏のラップは歌詞には記載されておらず、意外となんて言っているのか良く分からなかったりもする箇所がいくつかある。有志ファンによる解析も進んでいて掲載しているファンサイトも古くから多くあったが、ライブではスクリーンに出た事もあったようで、2018年や2020年に出た新しいものが一応最新の公式見解のようだ。冒頭が”人のすることに文句ばかりつけて”ってのが“どおすうことに文句ばかりつけて”に聞こえちゃって早速分からなかったんだよな…。”Same’ol 田舎者 Hey 冷や汗かき 踊ってる 踊ってる”も“セモール仲間の HEY! ヤシガキ 踊ってる 踊ってる”ってなんだよ…続く歌い出しが”どうすりゃいいのヘンになりそう”だから既にちょっとおかしなこと言い出してるのかな…と思っていた。可笑しいネ HA HA HA HA…。
★★★★☆
6thアルバム『RUN』
1stベスト『B’z The Best “Pleasure”』
5thベスト『B’z The Best “ULTRA Pleasure”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
恋心(KOI-GOKORO)
11thシングル2nd beat
「ZERO」とは対になるようなドポップな楽曲。歌詞は結構カワイイ感じのノリで男性の恋心がポップに描かれており、教員免許を持っている稲葉が“先生”と歌っている、“松本に相談しようか”と松本の名前が出てくる遊び心もあってか、ファン人気が大爆発。『Treasure』投票で堂々1位、『ULTRA Treasure』でも2位と不動の人気を誇っている。
個人的には「ZERO」とこの曲だったら「ZERO」の方が好きだが、今作のとびきりポップな雰囲気もなかなか突き抜けていて他にないものがあるので大人気というのもうなずける。ただやはり“先生”と”松本に相談しようか”のフレーズがこの曲の人気をさらに高みに導いたところもあるんじゃないかとも思う。
「Pleasure’91~人生の快楽~」「TIME」「恋心(KOI-GOKORO)」とこの時期に連続して人気曲が輩出された事から、恐らく当時のリスナーの間ではB’zのB面にハズレ無し的なC/Wの信頼度が高いアーティストとして認知されるようになったとは思うんだけど…この時期が奇跡的過ぎたのか圧倒的過ぎたのか、この3曲に匹敵するほど人気を得るC/W(2nd beat)って出てこなかったような…。C/W集に近い性質を持つ『Mixture』なんか『Pleasure』『Treasure』が凄すぎたので周囲でもほとんど話題にならなくてこれはパッとしないなみたいな感じになってたし…。
★★★★☆
2ndベスト『B’z The Best “Treasure”』
6thベスト『B’z The Best “ULTRA Treasure”』
RUN
From 6thアルバム『RUN』
1992年10月28日
6thアルバム表題曲。直前まで先行シングル「ZERO」がそのままアルバムタイトルになる予定だったが、今作が出来た事でよりふさわしいとして今作がタイトルチューンとなった。
ここまで苦楽を共にしてきたB’z制作チーム全体をテーマにしたような1曲だが、リスナー含めても仲間同士でも適用可能。共にこの時代をサバイブして行こうぜ路線(?)の1曲として特に大人になってくると響いてくる1曲になった。もう当時の仲間なんて全く会わなくなってしまったけどなんとなく今作とか「Pleasure」とか「Brotherfood」みたいな精神は常にあったような感じはしている。
『Treasure』『ULTRA Treasure』共に12位で選出されているアルバム人気曲の1つ。『Treasure』では1998 styleとして冒頭にコーラスパートのリフレインを加えたほか全体により骨太な演奏の新録音バージョンで収録されたが、『ULTRA Treasure』には元のまま収録された。1998 styleの方を先に聞いていて好きだったので、『ULTRA Treasure』でオリジナルに戻ってしまったのは少しパワーダウンして聞こえてしまい、「Pleasure 2008」みたいに更なるリメイクをしてほしかったなとは思った。
★★★★★
2ndベスト『B’z The Best “Treasure”』(1998 style)
6thベスト『B’z The Best “ULTRA Treasure”』
いつかのメリークリスマス
From 4thミニアルバム『FRIENDS』
1992年12月9日
過去3作とは傾向の異なる落ち着いたAOR寄りの方向性のコンセプトアルバム『FRIENDS』のSCENE1(1曲目がPrologue「Friends」で2曲目)として収録されたのが初出。元々ストーリーの1つに過ぎなかったが単曲での完成度の高さやクリスマスソングとして人気が1人歩きしていって、クリスマスソングの代表作となった。この印象は『CDTV』で毎年行われていたクリスマスに聴きたい歌ランキングで1997年~2006年まで9年連続1位を獲得した事でより強く根付いていった感があるし、個人的にも『CDTV』と『Treasure』で聞いたのがほぼ同時くらいで一気に定着した記憶がある。9年連続ともなるとファンだけで莫大な数がいるのである程度組織票で1位を維持していたのかもしれないがMステの方でも割と頻繁に取り上げられていたので知名度が高いのは確かだと思う。
山下達郎同様にクリスマスソングというのは別にハッピーである事が必須ではなく、同じハッピーがつくニューイヤー、バースデイ、バレンタイン、近年だとハロウィンなんかで悲しい曲はあまり作られないし人気も出そうにないが、クリスマスは何故か切ない失恋ソングでも定着するという不思議な性質があり、この曲も切ないんだけど名曲。実際名曲なのだから悲しかろうと明るかろうとあまり意識しないものなのかもしれない。むしろ切ない方がいいような気さえする。
『FRIENDS』を締めくくるピアノインストとしてRepriseが同時に存在していたが、曲の人気に乗っかったたぶん会社側の要請で別バージョン商法を始めたのは21世紀になってから。2002年『The Ballads~Love&B’z~』ではオリジナルが1曲目に収録されたがシークレットトラックとしてリミックスバージョンのような軽い打ち込み風の新バージョンが収録された。2005年『PleasureⅡ』では1年ほど前から『恋するハニカミ!』で使用していたバージョンを改めて再録音。こちらはアコースティック色が強い音数をそぎ落としたおとなしめのアレンジになっている。2008年はオリジナルを『ULTRA Pleasure』に最初から選曲したのみで新規制作はしなかった(2002、2005でも擦ったばかりで3年おきになってしまうのもあったのかも)。
B’zとしてはその後は新バージョンの制作はされていなかったが、『FRIENDSⅢ』発売時には初回盤DVDに新規撮影のMVとMV用に新録音した音源で収録された(CD化は無し)。
★★★★☆
2ndベスト『B’z The Best “Treasure”』
3rd(バラード)ベスト『The Ballads~Love&B’z~』
3rd(バラード)ベスト『The Ballads~Love&B’z~』(シークレットトラック、リミックス)
4thベスト『B’z The Best “PleasureⅡ”』(「恋するハニカミ!」バージョン)
5thベスト『B’z The Best “ULTRA Pleasure”』
12th 愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない
1993年3月17日
3月28日放送のSPドラマ『西遊記』主題歌。WANDS,ZARD,T-BOLANが大ブレイクして上位にひしめき、前週デビューしたDEEN「このまま君だけを奪い去りたい」が初登場16位から9位に浮上し、この後もZYYGやREVがいきなり大ヒットするというビーイング自体がブームとなる中で初登場1位から4週連続1位を記録。初動70万突破から2週目にはミリオン、4週目には140万枚を突破していた。翌週からはWANDS「愛を語るより口づけをかわそう」が4週連続1位を記録するなどビーイングが1位を占拠し続ける事態となった(上昇してきたDEENは今作の4週目に2位となり、WANDSの1週目に2週連続2位となり自社先輩2組に阻まれて2位止まりとなった)。ビーイング=長い曲名というイメージを抱くリスナーが一定いるのは「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」→「愛を語るより口づけをかわそう」で合計8週も1位に居座った事とその下に「このまま君だけを奪い去りたい」がウロチョロし、その後に大黒摩季「別れましょう私から消えましょうあなたから」が続いたからだと思われる。意外とそんなに多くはない。
最終的に193万枚で1993年の年間チャート2位となり、B’z最大のヒットシングルとなった。現在はB’z唯一の200万枚突破シングルとしても扱われているがこれは2003年のマキシ化一斉再発の際に達成している(再発1週目に10作全てが6.5万~7万程度一気に積み上げた)。
雄大なストリングスのイントロから一転して全体にはポップ路線に戻してのキャッチーな印象の1曲。長い曲名ながらサビ頭にそのまま歌われる事もあってメロディーと共にとても耳に残りやすい。ある程度サビのメロディーが馴染んだ後であればこの長さでも曲名を間違える事はほとんどないのではないか。
大ヒットも納得のインパクトはあるが、その後の扱いがあまりよろしくなく、正直ファン人気が高い様子もない。意外とライブで盛り上がりにくいノリだったらしく、ほとんど演奏されないレア曲となってしまったのもあり、チャート系の特集でこそ200万枚シングルとして取り上げられるものの、この曲が1番好きだというリスナーも1番の代表曲と評する人も実際ほとんどいないような感じはある。長いタイトルのインパクトでとりあえず存在は知ってはいるけどあまり筆頭の代表曲だとは思われていない…みたいな。個人的にもまあ普通以上にいい曲ではあるんだけど、好きな曲を上げていくと気がついたら物凄く下の方になってしまっている…みたいなそれだけ他にもっといい曲が多すぎる印象ではある。
★★★☆☆
1stベスト『B’z The Best “Pleasure”』
5thベスト『B’z The Best “ULTRA Pleasure”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
13th 裸足の女神
1993年6月2日
前作から3ヶ月経たないうちに立て続けにリリース。前作の4週連続1位→WANDS4週連続1位→TUBE1位→ZARD2週連続1位と前作の1位以降ビーイングがずっと1位を占拠していて、そのまま今作が2週連続1位となった(2週目の1位の時はトップ5が全部ビーイング)。それでも終わらずT-BOLANが2週連続1位→TUBE1位→WANDS2週連続1位と占拠は7月まで続いた。今作も高い売上を記録し、165万枚で1993年の年間チャート5位(前作が2位)を記録。2003年の再発で加算されて170万枚を突破しての4番ヒット作となっている。2003年の一斉マキシ化再発は4thから今作までとなる。ビーイングのブームの真っ只中での上半期となったが、今作を最後に1993年の新作リリースは止まってしまい、デビュー以来初めてアルバムがリリースされない年となった。
これまでほどポップに振り切ってはいないが「ZERO」のようなロックにも振り切っていない、絶妙にロックとポップの中間を行きながらも何よりもメロディーがキレッキレで気持ちよく、全盛期極まる1曲といった感じ。ブームの中で消費されてしまうのはどうしても避けられないくらいのスピード感ではあったし、連続ミリオンの中でも盤石の1曲という印象には落ち着いてしまうんだけど…改めて聞くといい曲だなぁと思う。
★★★★☆
1stベスト『B’z The Best “Pleasure”』
5thベスト『B’z The Best “ULTRA Pleasure”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
14th Don’t Leave Me
1994年2月9日
8ヶ月ぶりの新曲。ビーイングのブームから距離を置くように1993年下半期は新作リリースなしで例年のようにアルバムを出さずに年明け3月まで遅らせて2枚組大作『The 7th Blues』を完成させ、その先行シングル。久々にメディアの前に出てきた2人はロックミュージシャンっぽい(?)長髪になっており、曲調も含めて雰囲気が異なっていた。今作も3週連続1位、2週目にはミリオンを突破するなど序盤は前作以上の勢いだったが、アルバム発売後は一気にランクダウンしていき144万枚で1994年の年間4位を記録。これまではアルバム先行だろうとなんだろうと20~30週は100位以内にランクインしていたのが今作は13週となり、以降は毎回15週前後程度となった。概ねミリオンヒットでもこのくらいの登場週数に留まる事が標準になってきていてCD売上が初動に偏る傾向が強くなっていった時期だった。
これまでになくブルージーで暗めの方向に一気に傾いた重めの1曲。今作と『The 7th Blues』と次回作「MOTEL」までの1994年は早くに暗黒時代と称されるようになった。後追いで聞くとそんなに重くはないし、なんならけっこうブラスサウンドを多用していて普通に明るく聞こえる部分も多かったりはする。ただここに来てヒットを狙っていくところからやりたい方向を重視してシフトした感はある。今作は暗黒時代においてはメロディーの強さもあってシングルらしい風格の1曲という印象。
『Pleasure』に収録されたが『ULTRA Pleasure』では外されてファン投票により『ULTRA Treasure』に収録された唯一の楽曲でもある(『Pleasure』に収録されたが『ULTRA Pleasure』に外された曲では「太陽のKomachi Angel」は落選で未収録)。
★★★☆☆
7thアルバム『The 7th Blues』
1stベスト『B’z The Best “Pleasure”』
6thベスト『B’z The Best “ULTRA Treasure”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
15th MOTEL
1994年11月21日
9ヵ月ぶりとまたもやや長めのブランクでの新曲。初登場1位から3週でミリオンを突破。130万枚を突破したが前作より10数万落とした。登場週数は変わらず13週。4thシングル頃からクレジットしていたメンバー2人と明石昌夫、エンジニア野村昌之、ボーカルディレクション寺島良一、ギターテック畠山勝紀などのスタッフも含めた制作集団B+U+Mは今作を最後に解体した。ドラムの田中一光も一時期B+U+Mメンバー扱いされていたが「裸足の女神」以降になるとサポートドラムは青山純がメインで担当するようになっていたので一足先に外れていた。長らく環境を変えないことが良くない方向になってきている事を感じ始めた2人がB’zは2人であるというメリットを最大限生かすためといったような説明だったと思う。
近年は当時の最重要人物であり、松本と共にアレンジを担当していた明石昌夫がYouTubeで“B’zをクビになった話”等と称してB’zを離れることになったきっかけを何度か語っており、クビになった曲として今作が名指しされている。自身がアスペで人の気持ちが分からないところがあるので人間関係を大事にする松本にとってはよく思わない事が多かったのではないかとも推測しているがこれは明石昌夫本人の憶測であり、松本自身の証言は無い。ファンの間では2人の不仲説はあったが、その後もベーシストとしての起用はしばらく続いているほか、1度サポートベースからも離れた後に再起用した事もある。それでも「UBU」(『juice』2nd beat)へのアレンジ参加と『ELEVEN』での数曲のサポート演奏がB’zでの最後の音源参加で2002~2003年頃に偶然会ったのが最後で以降会っていないと語っており、記念ライブでも呼ばれることは無くなっている。5つの時代に分けての2020年の無観客配信ライブ『B’z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820-』でも呼ばれることは無く、該当の時期は後任の徳永暁人がベースを担当していた。
クビになった最たる理由はアレンジャーとしての明石昌夫が完全にネタ切れになってしまい、特に「MOTEL」制作時、アレンジに完全に煮詰まって何も出てこなくなってしまう様子を見てこれはもう形を変えなきゃいけないと松本が思ったらしいというのは後で聞いた話として語られている。B+U+M解体についても結局その後も自分以外は同じメンバーが継続起用されていたのでB+U+M解体は自分をクビにするための口実(1人だけクビにするわけにはいかないので)と推測しているが本当のところは不明である。ただ野村昌之、寺島良一、畠山勝紀は次のアルバム『LOOSE』にもそのままの担当で参加していたのは確かである。なお明石昌夫もアレンジを外れて以降もライブ・レコーディングのベーシストとしての起用はもう少し続いていて『LOOSE』でもメインのサポートベースではあった。
シングルでも1,2を争うような暗さで前作や『The 7th Blues』よりも遥かにこれぞ暗黒時代と思えてくるような1曲。『The 7th Blues』から半年も経過してからのシングルだけど、『The 7th Blues』の雰囲気をそのまま引きずっていて1994年はもうこのトーンでそのまま通そうとしてあえて売れ線に行かないような曲にしたのかなとは思う。ただ他にあまりない存在感を放っているシングルでもあり、馴染んでくるとけっこうじわじわ響いてくるものがある。『Pleasure』に選曲されることは無いが、『Treasure』投票9位、『ULTRA Treasure』投票22位で2回ともしっかり選出されていて一定の人気があるのもうなずける。“汚れながら生きてる”とか学生終えてからなんとなく実感していったフレーズだったなぁ…。
★★★★☆
2ndベスト『B’z The Best “Treasure”』
6thベスト『B’z The Best “ULTRA Treasure”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
16th ねがい
1995年5月31日
半年ぶりのシングル。制作集団B+U+Mを解体して制作スタイルを変更。といってもエンジニア野村昌之、ボーカルディレクション寺島良一、ギターテック畠山勝紀は引き続きそのまま起用されており、変わったのは明石昌夫がアレンジから離れた(ベースサポートはまだ継続していたが全曲ではなくなり、今作では別のサポートが演奏)。代わりにアレンジに稲葉浩志の名前が入るようになったり、アルバム『LOOSE』では一部の曲に池田大介が参加するようになったりといった変化があった。初登場1位→3位→1位と返り咲き1位を達成。前2作を上回る150万枚に迫る売上を記録した。
1994年で暗黒時代にしっかりと区切りをつけて心機一転新体制での制作となったためか、前2作から一転して久々にポップとロックの融合がいい形で戻ってきた感のある曲。サビ爽快感が印象的。最初に聞いた時はあまりアレンジまで意識していなかったが、じっくり聞くと平メロのアレンジがちょっとオシャレな雰囲気で凝っていたりとかなり聞き応えがある。やはり新体制1発目で気合が入っていたのか、今までになかった新しさがある。
“BUZZ!”STYLEはこの後に開催されたツアー『LIVE-GYM Pleasure ’95 “BUZZ!!”』でのライブアレンジを基にしたもので、オシャレ度が増してギターがやや目立つようになっている。このバージョンではよりアレンジ面の凝りっぷりを楽しめる。ベスト盤は全てシングルバージョンだが、いつか“BUZZ!”STYLEのリマスターも聞いてみたいところ。
社会人への応援歌のようになっていて、いつかねがいが叶うように生きていけとサビでは自分を鼓舞するような歌詞で学生時代でもそれなりに響くところはあった。ただ冒頭が最終電車で疲れている様子なのもあって、フル残業しているサラリーマン感があり、初めて聞いた時よりも社会人になってからの方が響いてくるものがあった。ラストでは“ねがひ”になって”かなえたまへ”、”かなえてよ”、”かなえろよ”と古語・祈り・命令になってしまうセンスが面白い。
★★★★★
8thアルバム『LOOSE』(“BUZZ!”STYLE)
2ndベスト『B’z The Best “Treasure”』
5thベスト『B’z The Best “ULTRA Pleasure”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
17th love me,I love you
1995年7月7日
前作からほぼ1ヶ月での連続リリース。『LIVE-GYM Pleasure ’95 “BUZZ!!”』ツアー初日発売にこだわったため、金曜発売となり、連続で70万枚を突破していた初動売上が45万枚で大暴落するどころか2週目と合わせても70万枚に届かない、2,3週で達成していたミリオン達成に5週かかるなど前作までの勢いが一気に無くなったかのような推移だったが、それでも2週連続1位を記録して累計も139万枚まで伸ばした。前3作のうち「MOTEL」以外は下回ったが登場週数17週は前3作より長い。
アレンジには稲葉は参加せず松本と池田大介の2人体制。前作以上にさらに以前のポップなB’zの要素を前に出してきて、1994年ではなく1993年までのみんなが思うB’z像に応えていったようなキャッチーなナンバー。ブラスアレンジも効いていて賑やかな感じがする。前作の噴水での歌唱や今作のスーツ姿で街中を練り歩きながらの歌唱などチャート番組で流れるPVの映像もこの辺りから印象的なものが多くなったイメージがある。この時期のは完全に歴代ランキング特集での後追いだけど。
『LOOSE』ではwith G Bassとなり、打ち込みだったベースが明石昌夫の生演奏に差し替えられている(アレンジには参加していない)ほかコーラスの追加もされているようだが演奏のアレンジ自体は同じなのでパッと聞きは良く分からない。G BassなのはGreatという誇張と明石昌夫が金髪だったのでGoldenを意味するGだったようで、アレンジからは外れてもらったものの最大限の敬意を見せている様子がうかがえる。
★★★☆☆
8thアルバム『LOOSE』(with G Bass)
1stベスト『B’z The Best “Pleasure”』
5thベスト『B’z The Best “ULTRA Pleasure”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
18th LOVE PHANTOM
1995年10月11日
アルバム『LOOSE』の1ヶ月後前先行シングルだったが、初動95.1万枚を記録、前年より13~17週程度になってきていた100位以内登場週数も22週まで伸ばし、186.2万枚の2番ヒットを記録した。先行シングルでこの好調っぷりだったのでアルバムがもっと後ならばシングル最高売上も狙えていたかもしれない。これまでとは一転して同年の3シングルを全て収録したアルバム『LOOSE』は300万枚を突破してオリジナルアルバム最高売上を記録し、売上面での全盛期を迎えた。
ストリングスのイントロという点で最大ヒット「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」と共通する部分があるが曲調自体は全く異なり、ストリングスや終盤のド派手なオペラなど生の躍動感も行かされている一方でメインの演奏は打ち込み主体で構成されていてスピード感がある。メロディーはサビとAメロしかないが、ストリングスによるクラシカルな部分もあれば、オペラも出てくるし、中盤ではラップも出てきたりと様々な要素を盛り込んで駆け抜けていく。有名な“いらない何も捨ててしまおう”のフレーズが主にこの曲を紹介する時に使用されるが、1番や2番のサビは全く別の歌詞でド頭サビと最後のサビの繰り返しでしかこの部分は出てこない。ド頭サビ部分を使用するのって案外珍しいような…。
スキのない完成度に何度聞いても圧倒されてしまう。この曲だけ違う次元にあるというか、全く同系統の曲が無い奇跡の1曲だったようにも思う。
あと目のドアップジャケットというと今作と4年後のMr.Children『I’LL BE』が真っ先に浮かぶ。ミスチルが反対側の目にしたのは偶然か狙いか…。
★★★★★
8thアルバム『LOOSE』
1stベスト『B’z The Best “Pleasure”』
5thベスト『B’z The Best “ULTRA Pleasure”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
ザ・ルーズ
From 8thアルバム『LOOSE』
1995年11月22日
インストを経ての実質的な1曲目でタイトル作(ただしアルバムタイトル『LOOSE』は「ルース」と読むらしい)。稲葉イズムともいえる独特に作詞のセンスが溢れまくった1曲。家庭教師やっている大学生がみんなが就職活動を始めている中でまだまだルーズのままでいたいという願望をあけすけに表現しまくった痛烈な1曲。ルーズ思考全開のダメダメな主人公ではあるが、就活前夜にはメチャクチャ響きまくる1曲だったという事に幸運にもその時を迎える前までにこの曲に出逢えた者はみんな思う事だろう。個人的にも『LOOSE』を聞いたのがその辺りの時期だったのでこんな表立って叫べないようなストレートな思いをストレートに歌にしているなんて…と妙な感動を覚えたのを記憶している。“ファミコン”には時代を感じるところであり、1994年が最後のファミコンソフトが出た年なので既にファミコンそのものはメインゲーム機ではなくなっていた。スーパーファミコン略してスーファミもそろそろ…という時期で、前年に出たばかりのPlayStation初代やらと色々なゲームが出てきていたが、初代ファミコンのインパクトは強く、まだゲーム=全部「ファミコン」という図式が成り立っていた時代も刻まれている。
★★★★☆
19th ミエナイチカラ~INVISIVLE ONE~/MOVE
1996年3月6日
初の両A面シングル。シングルジャケット裏面が「MOVE」仕様になっていて”2nd beat”の表記も無かった。トレイが中央に配置され「ミエナイチカラ~INVISIVLE ONE~」歌詞と「MOVE」歌詞の両サイドが開くという8センチとしては特殊仕様にしてまで両面がA面である事をパッケージでも表現している。ただ実際には当時から「MOVE」はほぼC/W扱いされていてチャート番組でも「ミエナイチカラ~INVISIVLE ONE~」しか流れていなかったような…。
アニメ『地獄先生ぬ~べ~』は『SLAM DUNK』の後枠で主題歌も引き続きビーイングが担当。OPのFEEL SO BAD、後期EDのPAMELAH共に自身最高ヒットではあるもののトップ10入りもしておらず『SLAM DUNK』ほど爆発的なヒットは出ていなかった。今作は元々のB’z人気から問題なく大ヒットはしたものの、プロモーションでのTV出演を一切控えていた事もあってか、初動70万突破での初登場1位、3週でミリオン達成まではこれまでと遜色のない売れ行きでトップ10に5週ランクインしてそこそこ存在感も示した推移だったが、そこからが意外と早いランクダウンとなり100位以内登場週数が11週に留まり、累計売上も123.6万枚とこれまでよりも低くなった。
結果的にジャンプ系アニメと進研ゼミ中学講座という小中学生向けタイアップが2曲並ぶシングルとなり、当時のファン層よりも後追いでファンになる子供たちに種をまいたシングルになったのかなという気も。
ミエナイチカラ~INVISIVLE ONE~
アニメ『地獄先生ぬ~べ~』前期ED。全48話を1年2ヶ月かけて放送、原作途中で区切りのいいエピソードを使ってのアニメ終了となった。このうち前半1~29話まで使用された。当時アニメを見ていたのでたぶんB’zをB’zと知らずにぬ~べ~のエンディングでかかっていた馴染みやすい曲として認識していた。
初のアニメタイアップとなったが、曲が出来てからタイアップが決まったらしいので歌詞の内容も意識していなかったようだが、小学校を舞台にして霊能力を駆使して妖怪を退治する霊能教師が主人公の物語なので歌詞の意味とは異なってくるものの「ミエナイチカラ」を霊能力と捉えればざっくりと合わせてきているような気もしてくる。
全体に勇気をくれる歌詞とキャッチーな歌メロ、エンディングっぽい大団円っぽい雰囲気の曲調の良さもあって当時から好印象な曲だった。ただ前述のようにまだB’zと認識していなかったので当時レンタルすることもなく、ちゃんと聞いたのは『Treasure』が出た2年半くらい後。『Treasure』は知らない曲も多かったが、“ぬ~べ~の曲”とB’zが初めてちゃんと一致したのを記憶している。
MVが無い…と思われていたが実は未編集のまま放置された撮影素材が存在していたらしく、『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』初回盤DVDにはこの未完成素材を編集し直してショートサイズのMVが初公開となった。一応少年アニメ主題歌を少し意識したような内容で少年が見上げると宇宙まで吹っ飛んでいき雲をかき分けてB’zの元へ…というものだが構想が壮大過ぎたのかなんかうまくいかなかった感じはあり、編集を放棄したのも分からなくもない。
★★★★★
2ndベスト『B’z The Best “Treasure”』
5thベスト『B’z The Best “ULTRA Pleasure”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
MOVE
当時のO社は勝手に両A面扱いにしてしまっていた曲も多かったし、初期曲とC/Wを集めた『Mixture』にしか収録されていなかったのでてっきりC/Wだと思っていた。全シングルA面を網羅した『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』で初めて一緒に収録され、公式にもA面扱いを忘れていなかった事が判明した。…いや絶対『Pleasure』『Treasure』『Mixture』の頃はA面扱いなの忘れてただろ…。
「進研ゼミ中学講座」CMソング。歌詞は確かに中学生を応援するような(全年齢適応できるが)、迷ったりびびったりしているよりもひたすら突き進め(超訳)というメッセージ性が前面に出ている。しかし曲自体がキャッチーな割にはサウンドがかなりハードでこれまでよりも明らかにエレキギターが全開でバンドサウンドもすさまじい勢いで前面に出ている。この次のシングル以降急速にハードロック色を強めていく事となったが、その始まりの1曲だったように思う。それこそ2000年代以降の曲と入れ替えても違和感が無い。進研ゼミ中学講座のCMタイアップでリフ命の80年代LAメタル風(wiki記載)なアレンジを施すなんてのも「チャレンジ」だけにシャレが効き過ぎ。
★★★★☆
マストアルバム『B’z The “Mixture”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
20th Real Thing Shakes
1996年5月15日
1曲のみ500円で全英語詞のシングル。B’zという名前だけでミリオンになるほど買ってもらえる時期だったので、ここで例えミリオンが止まっても多くの人に聞いてもらえる今やっておきたかった曲として攻めの姿勢での全英語詞の完全に洋楽なロックナンバーをシングルとした。ノンタイアップではなく日テレ系のドラマ『俺たちに気をつけろ。』主題歌タイアップはついていたが、ちょうど同時刻にフジテレビで『SMAP×SMAP』の放送が始まっていたのも重なって全く話題にならず一桁視聴率連発で大コケした。
初動60万枚で初登場1位を獲得したが、ここまで70万台を連発していたので初動時点で既に10万人ほどが回避、4週でミリオンを突破し、今回も5週はトップ10にランクインしていたが、10週でチャートアウト。累計は114.1万枚。7thより13作連続ミリオンの偉業を達成した。この記録はAkushu Ken Bakudan略してAKB48に突破されるまで歴代1位の記録であり、2020年握手封じになるまで38作連続とダントツでAKB48が記録更新をした現在でもあまりの売り方の違いから実質B’zが歴代1位のままという見方もあるほか、O社自体が早期にチャートファンからオワコン扱いされるようになり、ビルボードチャート主体へと移行し、世間一般でもその空気に移行してきた中で、CDミリオン全盛期のO社売上記録自体がもう現在と断絶した過去のもので現代とは異なるものという認識になりつつあるのが実際のところかも。
分厚く重ねたギターで曲を引っ張っていき、シンプルながらもハードなバンドサウンドが展開。サビはそこまで高くないが、Aメロのメインメロディーが異常なまでの怪音波状態の高音ボーカルで普通の人間には再現不能。あらゆる面で攻めた洋楽的ロックナンバーだった。
『Treasure』で最初に聞いた時はスゲー曲だなとしか思わなかったが馴染んでくるとカッコいい曲という印象に変わりけっこう好きな1曲になった。やれあの曲のギターリフのパクリだアレンジのパクリだと言われがちだが、普段聞かない洋楽ロックナンバーの世界の入口になったなんていうリスナーは(それこそぬ~べ~世代とか)それなりにいたと思うし、そうならばシングルにした意味と種は育ったと言えるのではないか。
★★★★☆
2ndベスト『B’z The Best “Treasure”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
21st FIREBALL
1997年3月5日
前作から10ヶ月ぶりの新曲。前作でも最終的にシンセをカットして全曲生音で完成していたが、今作は最初から生音のみで制作を進め、No synthesizer & No computer usedを掲げて発売した。前作で一気にファン離れが加速したのか初動は40万台まで低迷、4週トップ10入りして11週でチャートアウトし、累計売上はこれまでの初動売上に少し毛が生えた程度の75.5万枚。ついに…とか惜しくも連続ミリオンが途切れた…というよりも一挙暴落して記録が終わってしまった。
個人的には『CDTV』を1996年の8月頃から見始めたので、B’zの新曲として1位になっているのを見たのはこれが最初の1曲だった。かなりクセのあるロックという印象であまり1位っぽい(ヒット曲っぽい)感じじゃないなぁ…と思った記憶がある。あとサビが何故か“冷凍マシンに火をつけろ♪”に聞こえたのでナンダソレっていう印象があったが、これは実際には最後のサビ前にメェ~イと溜めてから”魂に火をつけろ”と歌っていた部分を聞いたものと思われる。今作が資生堂ピエヌのCMソングでキャッチが「メイク魂に火をつけろ」だったので、少しでも寄せた結果がメェ~イの溜めだったのかもしれない。
改めて聞いてみると歌い方のクセもかなり強いし、ファーストインパクトがこの曲だったというのは刺激が強かった気がする。今では割と普通に聞けるけど、正直最初は好きじゃないなコレと思ったし。シンセを使ってないだけでなく、サポートもドラムのみで、ベースも松本が弾いている。加えていつもは稲葉自らがやっているような合いの手(?)のような歌詞に載っていないか、載っていてもカッコで記載されているようなコーラスパートも松本自ら歌唱しているのが珍しい。
★★★☆☆
9thアルバム『SURVIVE』
2ndベスト『B’z The Best “Treasure”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
22nd Calling
1997年7月9日
安達祐美主演『ガラスの仮面』主題歌。1975年から連載されて休載を挟みながらも2012年を最後にコミック刊行が49巻で止まってしまい、その後連載雑誌そのものが無くなり、作者は最後まで描く意欲を示しているが近年は目立った動きが無く原作は未完のまま(2023年時点で作者はOVER 70’s)。超長期未完結の弊害により見た目そのままの再現度で月影を演じていた野際陽子(2017年没)も完結を見届けられなかった1人に…。このドラマ化の際に既に不安定な刊行状況となっていたが、ドラマは好評で1997年夏クールに続いて1998年春クールに第2弾、1999年にSPまで制作されてドラマ版としては一応の完結を迎えた(完結編の前にライバル役だった松本恵が引退してしまったのでSPでは役者交代になってしまった)。
今作は一貫して続編にも主題歌として最後まで使用された。B’zのドラマ・映画主題歌で続編が作られるようなシリーズ作がまずほとんどないが、主題歌継続起用されたのはたぶんこのドラマと『SUITS』くらいしかないのでは。しかしドラマ2期やSPのタイミングでのチャート浮上は起こっていない。それでも発売時はドラマタイアップ効果はそこそこあったのか、単に曲の評判が上々だっただけなのか、初動は50万枚に回復して前作を上回り、4週トップ10入りした後もランクダウンが緩やかで17週ランクインした(前3作は10~11週)。売上も最終ランクイン週でミリオン到達、実に100万20枚という超ギリギリの集計マジック(?)でミリオンを達成した。レコード協会では『BLOWIN’』から前作もミリオン認定で今作までの13作連続ミリオンという扱いで13連続は同じだが対象作品がO社の記録とはズレがある。
ドラマを見ていたので気に入って当時レンタルしたのでちゃんと聞いた初めての曲という事で思い出深い。泣きのバラードのパートを激しいハードロックのパートで挟んだような構成になっているが、ドラマ自体が昭和の修羅場、昭和の虐待同然のようなスパルタ指導的な世界観で激しかったのでバラードだけでなくハードロックのパートもけっこうドラマにハマっていた印象がある。ただドラマの後半の方は覚えてないんだよなぁ…。最後の完結編はもしかしたら見逃してるのかも…。毎回苦労する→何かを掴む→「私は○○(演じる役)」→シャキーン(覚醒)→天才的演技…っていう分かりやすいパターンドラマだったんだけど、この流れでハードロック部分のウォウウォウパートも、泣きのバラードもとにかくハマってたというのだけはやたら印象に残っている。
あまりに毛色が違う2パートだが実際に違う曲を合体させたようで、アレンジには池田大介と初参加の徳永暁人が参加し、B’z2人と合わせて4人の連名。さらにベースも明石昌夫と徳永暁人、ドラムも青山純と山木秀夫と2人ずつ参加していて制作期間も半年以上かけかるなどかなり練りまくった曲だったようだ。
★★★★☆
9thアルバム『SURVIVE』
1stベスト『B’z The Best “Pleasure”』
3rd(バラード)ベスト『The Ballads~Love&B’z~』
5thベスト『B’z The Best “ULTRA Pleasure”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
23rd Liar! Liar!
1997年10月8日
前作が好評だったためか初動・累計共に「FIREBALL」はを上回り、79万枚の売上。しかし2週目に1~6位まで新譜がひしめいたため7位まで押し出され、トップ10入りは3週、100位以内は8週ランクインとついに一桁になってしまった。当時としてはここまで来ると1位は取るけどあっという間に落ちていくという印象だった。
デジタルとロックの融合が果たされたような曲だが今までに比べるとかなりハード寄り。徳永暁人が本格的にアレンジャー兼ベースとして参加し、ドラムは打ち込み処理なので3人編成。徳永暁人は1度離れるが再度復帰した2000年代序盤頃に通じていく編成だが、今作での打ち込みドラムは2000年代序盤のベタベタした響きよりももう少しドタドタしていて質感が異なる。
比較的ハード寄りの音像に対して情けなさ全開で人間不信に陥っていく歌詞は稲葉イズム全開でかなりユニーク。「ZERO」に続いてヤケクソになって車で突っ込もうとするなど物騒な事を歌った挙句に(しかも”つっこんじゃうぞ アクセルべったり踏んで”と表現するところが天才的)、先生→ママ、警察→悪い人に挟んで政府→火星人と知らないところでナシがついてると政府だけ相手が凄いことになっている上、それまではあくまでYou,liar,liarと歌っていたのが最後にはOh,liar,liar 誰もがliarと完全な人間不信に陥ってしまう。それでも愛する人がハッピーになればそれでいいとで締めるところ、なんだかんだいい奴なところに少しほっこりもする。発売当時は良さが分からなくてスルーしてたんだけど、大人になると段々響いてくるところがあった。
★★★★☆
9thアルバム『SURVIVE』
2ndベスト『B’z The Best “Treasure”』
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
スイマーよ!!
From 9thアルバム『SURVIVE』
1997年11月19日
『SURVIVE』の中ではポップ寄りというか初期のB’zっぽさを感じられるデジタルナンバー。勢いよく泳いでいくイメージでスピード感がある…が、泳げない者にとってはあくまでイメージでしか無かったりはする。
後に『ultra soul』が世界水泳タイアップになった際に水泳繋がり&デジタルナンバーでノリが近いところがあったため2nd beat「スイマーよ2001!!」としてリメイクされた。!!の位置が数字の後に来るというところが個性的…。打ち込みサウンドなのは変わらないが、もう少しロック色が強くなったほかDメロが追加された。さらに序盤の”ストローかむなら僕をかんで”の部分が”僕のをかんで”に書き換えられるという一体どこにこだわっているんだという変更も…。『ULTRA Treasure』では原曲が採用されたので2001はアルバム未収録のままとなった。
★★★☆☆
31stシングル2nd beat(2001)
6thベスト『B’z The Best “ULTRA Treasure”』
24th さまよえる蒼い弾丸
1998年4月8日
初の公式ベストアルバム『B’z The Best “Pleasure”』発売1ヶ月前で当初は収録予定は無かったが急遽追加収録になったとされ(ベスト盤の初回出荷分のシールではまだ13曲になっていた)、結果的に先行シングルになった。初動はついに40万ギリギリとなり、前作同様の8週ランクインだったが10万程度落とした69万枚の売上。
「ポカリスエット」CMソング。1992年頃から起用が続いていたビーイングによるポカリCMソングタイアップは織田哲郎(1992)、ZARD(1993)、DEEN(1994)、FIELD OF VIEW(1995)、ZARD(1996)と全て織田哲郎作曲で1992年以外は坂井泉水の作詞で統一されていて爽やかな曲が続いていた中で、今作だけ異色である。歴代でもポカリCMタイアップは清涼感重視で基本的に爽やかな曲が並んでいるのに今作だけゴリゴリのギターサウンドにシタールやら民族的な要素も混ぜ込んだエスニックなアレンジになっていて清涼感皆無。“蒼い”がかろうじてポカリの青に一致している程度だろうか。今作を最後にビーイングがポカリに起用される事も無くなってしまったが、さすがにちょっとイメージ違い過ぎて切られたのでは…。
楽曲だけ取り出すと激しさはあるものの、力強く突き抜ける勢いは当時よりもむしろ後年の方がしっくりくる。2007年海外限定iTunesで「Dangan」としてリメイクしたほか、2012年に正式に日本で配信した全英語詞リメイクミニアルバム『B’z』では「Into Free-Dangan-」として生まれ変わり、先行配信してリード曲扱いにもなった。こちらはさらにカッコいい仕上がり。これも当時はそんなに…だったんだけど後年になって好きな1曲になったなぁ…。
★★★★☆
1stベスト『B’z The Best “Pleasure”』
5thベスト『B’z The Best “ULTRA Pleasure”』
配信限定ミニアルバム『B’z』(全英語詞「Into Free-Dangan-」)
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
25th HOME
1998年7月8日
『Pleasure』と『Treasure』の間にリリースされた。L’Arc~en~Cielの3枚同時シングルと発売が被り、連続1位記録最大のピンチを迎えたがO社では僅差でなんとか1位を獲得。ここ数作の初動ではラルク3作全ての初動に及ばないところだったが、今作では初動55.9万枚まで大回復し、「HONEY」の54.4万枚をなんとか上回った。しかし今は亡きプラネットチャート集計ではラルク3作全てに及ばない初登場4位となった。O社でも当時数字が公開されていなかったデイリーチャートで負け気味だったのに週間では1位になった事から“O社マジック”とも一部で揶揄された(「Calling」が最終ランクインで100万20枚になったとか、ZARDでも最終週に大台を突破する事があったりとか他にも偶然の事例が散見されたため)。2週目には「HONE」「侵食~lose control~」が上回って1位2位となり(今作は4位)、3週目も同様にこの2作が上回り、「花葬」のみ今作の下にランクインしていたが、4週目からは「侵食~lose control~」が急落したので最終的に「侵食~lose control~」のみ今作より売上が低い。代わって「花葬」が今作の上に上昇して追い抜いてミリオンを突破、「HONEY」は2週目の時点で今作を越えてそのまま120万枚を越えるラルク最大ヒットとなった。すっかりラルクやGLAYなど旬のロックバンドにはシングルヒットでは及ばない感じになっていたものの今作も95.5万枚と再ミリオンに迫るところまで売上を伸ばし、登場週数の20週の大台に乗せる久々の目立ったヒットとなりB’z健在ぶりを示したと言える。レコード協会では今作もミリオン認定されている。前2作の8週から20週と倍以上のロングヒットになった事から100位圏外の後も売れていたと思われ200位集計(2003年より変更)になっていたらミリオン到達はあったかもしれない。
当時のO社始め『HOME/The Wild Wind』と両A面表記にされていたが、これは「The Wild Wind」に映画『不夜城』主題歌という「HOME」の角川文庫CMソングより明らかに大型タイアップがついていた上に、割とA面のような扱いで「The Wild Wind」もプロモーションしていたためと思われる。
ベストとベストの間の新曲という事で過去の曲に負けない1曲を出そうといつも以上に気合が入っていたのかは不明だが、今作はこの時期のシングルの中でも特にシングルらしいメロディーの強さが印象的。最新曲が最高傑作をそのまま実現してしまったかのようでもあり、当時も「Calling」に続いてレンタルしてきた記憶があるがカセット録音だったのでその後シングル盤も入手した。
他者との関係や絆を改めて考えるような歌詞も印象的。この曲に書かれている内容はけっこう真理を突いた深い内容だと思う。しかし真面目な歌詞の中で2番のBメロ“鏡をのぞけば”のフレーズに呼応したコーラスで突然テクマクマヤクォ~ンウォ~ン♪とかぶち込んでくる稲葉イズムは相変わらず最高だ。これはアニメ『ひみつのアッコちゃん』に出てくる手鏡に向かってこの呪文を唱えると誰かに変身できるという魔法の呪文「テクマクマヤコン」。原作が1960年代、アニメ1作目が1969~1970年とかなり古いが稲葉浩志が5,6歳の頃にリアルタイムで目にしていた可能性はある。アニメ2作目は1988~1989年に放送されているので個人的には3~4歳の頃に見ていた可能性はあるが当然記憶はない。アニメ3作目は1998~1999年とちょうど今作がリリースされた時に放送されていたのでそれもあってぶっこんだのかも。その後は20世紀の過去の作品と化して徐々に知らない世代が増えていたが2012年に綾瀬はるかで実写映画になってまた盛り返した。以降は大きなメディア展開は無いので、そろそろまたこのテクマクマヤクォ~ンウォ~ン♪って何!?という後追い世代が続出し始めた頃合いだろうか。
前作と違って今作は『Treasure』の投票対象ではなかったので収録されなかったが、最終曲「RUN-1998 style-」終了後にそのまま若干の無音を経て今作の1コーラスのみ2人だけのアコースティックバージョンがシークレットトラックとして収録されていた。この音源は配信ではカットされており、『Treasure』CD盤でしか聞く事ができない。
次のオリジナルアルバムには収録されず、シングルバージョンの初収録は2002年の『The Ballads~Love&B’z~』まで待たされる事となった。『The Ballads~Love&B’z~』にも「いつかのメリークリスマス」の別アレンジがシークレットトラックで収録されたので、以後またシークレットトラックあるんじゃないかと『PleasureⅡ』、『ULTRA Pleasure』、『ULTRA Treasure』のたびに期待したが何もなかった…。
2007年海外限定iTunesで「Home」として全英語詞バージョンが配信され、この音源は『ULTRA Treasure』で票を集めて収録された。2007年海外限定iTunesにて『B’z』として配信された5曲(「Ai No Bakudan」「Dangan」「Home」「Ultra Soul」「Brighter Day」)のうち、この「Home」のみが国内CD化され、残り4曲は幻の音源と化している。2012年の国内配信EP『B’z』とは別音源である。
★★★★★
2ndベスト『B’z The Best “Treasure”』(シークレットトラックに1コーラスのアコースティックバージョン/配信ではカット)
3rd(バラード)ベスト『The Ballads~Love&B’z~』
4thベスト『B’z The Best “PleasureⅡ”』
5thベスト『B’z The Best “ULTRA Pleasure”』
6thベスト『B’z The Best “ULTRA Treasure”』(全英語詞「Home」)
7thベスト『B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998』
コメント