サザンオールスターズ 40周年シングル+回顧10~2013-2015~
2008年にきちんと無期限休止を宣言したためか、桑田ソロで新曲が発表されたのは09年12月と1年以上開いていてゆったりとした出足となった。しかし2010年夏に桑田は初期の食道がんにより療養生活を余儀なくされる。さらに2011年の東日本大震災も発生。自身に、そして日本で起きた大きな出来事は確実に何らかの影響を与えたと思われるが、結果として無期限休止からきっかり5年、35周年のタイミングでサザンオールスターズは再始動を果たした。03年以降腰痛でなかなか参加できていなかった野沢も今度こそ全面参加で5人が揃った。
桑田ソロからこの時期にかけては長年固定状態になっていた制作陣に代わって新たな製作スタッフが参加した。アレンジャーにしてシンセ、プログラミングを担当する曽我淳一、マスタリングエンジニアのTed Jensenなどが新たに起用された。いずれも新鮮な驚きがあったようで起用当初から一気に多用され、サザン復活後も引き続き起用していたが、やはりいつも通りの方がいいという事になってきたのか、この時期のサザンでの起用を経て曽我淳一の起用は減り、Ted Jensenによる海外リマスタリングも国内エンジニアの起用に戻された。
また『葡萄』リリース後のツアーをもってしてまたしてもサザンは休止状態となり、しれっと桑田ソロ活動に戻ってしまったがこの際には特に休止宣言も出なかった。大方の予想通り、40周年である2018年に再びサザンでの活動が始まり、休止宣言は無かったが「再始動」という表現は使用された。
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54th ピースとハイライト
13年8月7日
35周年を迎えた2013年。3月には桑田ソロでのシングルリリースもあり、無期限休止を宣言した以上は5年での復活は無いかと思われていたが、35周年6月25日に活動再開が発表された。きっちり仕掛けていたのに勝手に情報掴んで情報流したマスコミがいたので少し前にサザン復活の報は流れた
初回盤は納涼サマーポンチョ付属。ライブ会場限定盤では色違いのものが付属した。5年の間にシングルCD市場はミリオンセラーは増えたが全部AKB48によるもので実質的には更なる縮小となっていたため、前作を下回ったものの30万枚を越える大ヒットを記録した。しかし初回盤に関しては2013年時点で30万枚越えの売上を記録するという大ヒット作であったにも関わらず、過剰生産してしまったようで前作同様に売り切れにはならずに後に投げ売られた。
ピースとハイライト
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
イントロ部分は復活の報と同時に予告のように流されていた。復活への期待感を煽る秀逸なイントロだったがそこから力強いバンドサウンドが入る。前作が打ち込み全開だったため、本当にバンドとしてのサザンが帰ってきたことを感じると同時に、ソロ活動中に初起用したTed Jensenをマスタリングエンジニアに起用したのも重なってより力強いサウンドを感じられる(ただし初起用時は称賛していたTed Jensenは途中でやはり違うという事になったのか徐々に本来のビクターのエンジニアへ回帰してその後のソロ以降は完全に戻してしまった)。
復活する大ベテランバンドであるサザンとして今何を歌うのかを考えた結果、期待される夏ソングではなく、平和へのメッセージソングとなったようで、近隣のアジア諸国との関係や歴史を踏まえたような歌詞となっている。要するにみんな仲良くしようぜ!平和に行こうぜ!というLOVE&PEACEなメッセージ以上も以下でも無かったはずが、国や政治を絡めると戦闘民族インターネッツに目をつけられて炎上するというSNS時代になってからの時代の変化はさすがに想定していなかったようで、見事に戦闘民族インターネッツの餌食となり、炎上。個人的にもまさかそんな大騒ぎになるとは思っていなかったので驚いた。翌2014年の紅白に中継出演した際にもウケ狙いのはずのパフォーマンスが再び戦闘民族インターネッツの餌食となり再炎上してしまった。なんだかなぁ…という感じではあったが、いろいろ難しい時代になったものだ。
炎上に次ぐ炎上でさすがに少し嫌な記憶になったのか、『葡萄』リリース頃までは次回作「東京VICTORY」よりも30万売った今作の方が復活後の代表的ポジションにあったが、40周年2018年ではライブのレパートリーから早くも外され、「東京VICTORY」やC/Wの「栄光の男」の方が残る事態となった。
まああまり小難しい事を考えなくてもキャッチーなメロディー、復活した力強いサザンサウンドだけでも十分に良曲。
★★★★☆
15thアルバム『葡萄』
プレミアムアルバム『海のOh,Yeah!!』
C/W 蛍
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:桑田佳祐&片山敦夫、管・弦編曲:島健
映画『永遠の0』主題歌。編曲がバンド名義ではなくソロ名義になっている。タイアップの依頼があった時点でソロ活動中(3月)であり、たぶんサザンは無期限休止中だったので桑田佳祐個人に話が来ていたと思われる。発売のタイミング的にサザンのシングルに入れたものの実質ソロ曲と思われる。近年のバラードでは屈指の美メロによる名バラードで、アレンジの美しさも含めて感動的な楽曲。アルバムを締めくくるにもふさわしい1曲だったと思う。
★★★★☆
15thアルバム『葡萄』
プレミアムアルバム『海のOh,Yeah!!』
C/W 栄光の男
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
三井住友銀行CMタイアップ。長嶋茂雄の引退試合を見た当時の記憶を元にした楽曲で栄光の男とは長嶋茂雄の事を指すが、自分は栄光の男には決してなれないう視点で歌われた老いの1曲。休止中のソロ活動辺りから還暦が見え始めた事もあり徐々に老いの視点が見え隠れし始めたが、サザンにおいてそれが出た最初の1曲がこれだろうか。
リスナーにとっては長嶋茂雄だけではなく(個人的にも選手としてよりも監督としての方が馴染みがある、そして監督時代を知らない世代も増えている)、桑田佳祐もまた「栄光の男」だと思っている人が多いと思うんだけど、歌い手がそこを否定しているところにはギャップがあり、でもだからこそ多くの同世代のリスナーが自分に重ねる事もできるのかもしれない。渋い名曲。
なお長嶋の引退時スピーチは「永久に不滅」であったが、曲中では「永遠に不滅」となっており、スタッフが訂正を指摘しても歌いやすいという理由で変えなかったとされているので当初勘違い→指摘され間違いだと知っているがそのまま通した、という事になるらしい。
★★★★☆
15thアルバム『葡萄』
プレミアムアルバム『海のOh,Yeah!!』
C/W 人生の散歩道
作詞:原由子、作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、弦編曲:原由子
原由子ボーカル曲。5年飛んでいるが2作連続で原由子ボーカル曲が収録された。人生を散歩道に例えたという原由子らしいほんわかしたナンバーだが、人生の終わりに言及するなどここでも年齢を重ねた老いの視点が見られ、深い。同世代の竹内まりやは07年に50代前半で「人生の扉」という深い1曲を発表したがそれに通じるものがあるような気がする。
★★★☆☆
アルバム未収録
55th 東京VICTORY
14年9月10日
2014年にはオリジナルアルバム制作が告知されたが、年内に発売されるかどうかは不明な中で先行シングルとして発売された。結果的に先行というにはアルバムは半年先というかなり先行した発売となった。
今作ではソロ活動中の2011年に初起用した曽我淳一をサザンで初めて起用。曽我淳一はプログラミング、キーボード、シンセという長年起用してきたサポートメンバーの片山敦夫、角谷仁宣の2人の仕事を1人で担当できる元・トルネード竜巻(09年休止)のメンバーで彼の起用以降、片山敦夫、角谷仁宣の出番は大幅に減った。今作では3曲全て曽我淳一が担当しているため、片山敦夫と角谷仁宣の両名が揃って一切参加していないという彼らが起用されてからはほとんど初めてのような事態となっている。ただし、この後の桑田ソロでは新顔より慣れ親しんだスタッフの再起用傾向が強まったため、再び片山・角谷両名がメインのサポートメンバーとなり、曽我淳一の起用はほとんどなくなった。
初回盤は「“フレ!フレ!パッケージ”」仕様で「サザンの“フレ!フレ!”FLAG」付属という相変わらず『すいか』『HAPPY!』の時代で感覚が停止したようなグッズ特典だったが時代に見合わない初回盤を生産しすぎる悪癖は変わっておらず、やはり今回も余って後に投げ売られた。
15年3月に待望のオリジナルアルバム『葡萄』をリリース後、ツアーを経て再び休止状態へ突入。2016~2017年にかけてはまたしても桑田ソロ活動が行われたが、今回は特に活動休止を明言せずに、今までのようにしれっとソロ活動に突入してたぶん40周年でサザンだろうというルーティン的な活動となったが、さらに色々と1周したためか、無期限休止前のような窮屈さは感じさせない流れとなっていた。
東京VICTORY
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
三井住友銀行CMソング、TBS「2014アジア大会&世界バレー」テーマ曲。2020年の東京オリンピックが決まり、改めて東京への思いを前向きに綴ったポジティブな1曲。冒頭と終盤にはWOWWOW合唱パートもあり、聞き手にも高揚感を与える。一応バンドサウンドだが打ち込みも多用されており、高揚感がある割には前作ほどのバンドの躍動感は無いのが少し残念。また他の2曲は前作に続いてマスタリングがTed Jensenだがこの曲だけビクターの内田孝弘になっており、アルバム『葡萄』まではTedと内田を使い分けていたが、ソロ以降は桑田さんのTedブームが去ったのか起用しなくなり再びビクターの国内エンジニア起用へ回帰した。
時の経過を感じさせる深みとそんな中でもなお未来を信じられる希望、あまり希望が持てそうにない未来に向けてそれでもわずかでも明るさを感じられるという点でも非常にいい曲だし、今サザンが歌うからこそ響く1曲だなと思う。
発売から4年後サザンが40周年で再び活動したタイミングでスバルのCMタイアップ及びTBS「2018アジア大会&世界バレー」テーマ曲に再起用されたため、気が付けば前作よりも今作の方が35周年復活以降の筆頭代表曲みたいになっていた。
★★★★☆
15thアルバム『葡萄』
プレミアムアルバム『海のOh,Yeah!!』
C/W 天国オン・ザ・ビーチ
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、管・弦編曲:曽我淳一
いわゆる夏だ!水着だ!お祭りだ!路線の楽曲。プログラミング、ピアノ、シンセだけでなく管弦編曲まで曽我淳一が一手に手掛けるという曽我淳一の無双っぷりが際立つ1曲。作風は今まで通りなようでやはり異なっていて、今までのお祭りソングに比べると全体に音がスマート。お姉ちゃんのコーラスがやけにユルかったり、なんか以前の同系統の曲以上に歌詞がパッパラパーだったりするが、今までだったらド派手に鳴っていたブラスやシンセがかなりおとなしいのがかなり大きい。この辺りはアレンジャー兼プログラマーを変えた事によるセンスの差が出たのか。今までの感じが食傷気味だったのは否めないのでいい変化のつけ方ではあったが、単純にそろそろこういう路線求めるの止めてもいいんじゃないかなぁとも思う。
★★★☆☆
15thアルバム『葡萄』
C/W パリの痴話喧嘩
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
サッポロビール「プレミアムアルコールフリー」CMソング。2分に満たない短曲で、シャンソン風の曲調にフランス語風に日本語で歌うというネタ臭の強い1曲。サザンよりもソロのC/Wで出てきそうなノリだ(CMも単独出演だったし)。
★★☆☆☆
アルバム未収録
From 15thアルバム『葡萄』
15年3月31日
9年7ヵ月ぶりという過去最長ブランクでのオリジナルアルバム。先行シングル「東京VICTORY」でサザンには初参加となった曽我淳一が今作でも大活躍しているため、片山敦夫と角谷仁宣の出番は少なめ。一方でマスタリングはソロの『MUSICMAN』で起用して以降気に入っていたTed Jensenだけでなく国内の内田孝弘を起用するなど国内回帰の傾向が見られた。回帰の傾向はこの後の桑田ソロ活動でより顕著となりマスタリングエンジニアを完全に国内に戻し、片山敦夫と角谷仁宣の両名の起用もほぼ全面的に戻した。
アロエ
作詞作詞:桑田佳祐、編曲:サザンオールスター&曽我淳一、弦編曲:島健
WOWOWのCMソング。リード曲として先行配信もされた。曽我淳一が手腕を発揮したエレクトロなディスコ風ナンバー。メンバーあんまり参加せずに桑田・曽我・島・斎藤のほぼ4名でオケを作ってしまっているソロ色の強い楽曲ではあるが適度な新鮮さがあり、久々のアルバム1発目としては十分に勢いづく曲だと思う。間奏で出てくるちょっとしたラップみたいなパート意味が無いと語られており、タイトルや歌詞は語感重視っぽくてあまり意味は無さげだがノリの良さは魅力。
★★★☆☆
15thアルバム『葡萄』
プレミアムアルバム『海のOh,Yeah!!』
イヤな事だらけの世の中で
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
ドラマ『流星ワゴン』主題歌。TBS日曜枠でかなり気合が入っていて初回は2時間SPだった。家庭崩壊で人生に絶望した西島秀俊の前に吉岡秀隆、高木星来という死者の親子が表れ、戻るべき時に西島秀俊をワゴンで送り、西島秀俊はその時の人生をやり直して運命を変えようとするという話で、この時間旅行には西島秀俊の上手くいってなかった父親の香川照之が若き日の姿(ちょうど同世代くらい)で出現して同行。運命を変えていく話なのかと思いきや香川照之のあまりに傲慢な父親っぷり、常識人ぶっていた西島秀俊もまた妻や息子のことを全く考えていない身勝手な思いを一方的にぶつけようとする…しかも歴史を修正しても次の時間旅行の際には全部リセットされていて意味が無い…、息子や妻もやがてクズっぷりが明らかに…と出てくる人たちがどいつもこいつも自分勝手かつなかなか改善されない(リセットされてしまうので妻と息子は修正改善させても毎回元通りになってしまう)という展開が延々続き、ちょっとストレスの溜まるドラマだった。
「イヤな事だらけの世の中で」と題されたこの曲、まさにそんなイヤな事ばかり繰り返し見せられたこのドラマの主題歌としてはそこそこハマっていたようにも思う。過去のドラマタイアップに比べてシングル化に耐えうるほどの魅力は正直無いかなとも思ったけどアルバム曲としては十分にいい曲だった。
★★★☆☆
15thアルバム『葡萄』
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