サザンオールスターズ 40周年シングル+回顧5~1988-1990~

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サザンオールスターズ 40周年シングル+回顧5~1988-1990~

1988年6月25日はサザンオールスターズデビュー10周年。このタイミングでの活動再開、復活となったがソロ活動を突き詰めていた桑田佳祐は1stアルバム『Keisuke Kuwata』発売とサザン活動再開がクロスする形となり強制的にソロ活動を終了せざるを得ない状況となってしまった。

大々的に復活してサザンでのツアーも行ったものの、サポートメンバーとして桑田ソロで起用していた面々がそのまま参加するようになり、メンバーの担当楽器をサポートメンバーが演奏する機会もこの頃から増加した。広く知られる「真夏の果実」はほとんどメンバーが参加しておらず、「希望の轍」に至ってはそもそもサザンの曲ですらなかったりもする。サザンオールスターズ&オールスターズという名義も使用されたが、これ以降のサザンは割と慢性的にサザンオールスターズ&オールスターズであり、その始まりの時期がこの時期だ。

2018.7執筆
2008年30周年時に聞いてないシングルがありながら禁断の空欄突破で公開した過去曲回顧「30周年シングルレビュー」を、2013年35周年復活時にA面全曲聞いた上での完成版「35周年シングルレビュー~1978-2008~」として公開。
今回は40周年を記念して全C/W追加各アルバムからも数曲ずつピックアップして全面リメイク。以前書いたA面部分もほとんど破棄して書き直している。
シングルは05年リマスター盤、アルバムは08年リマスター盤を全て聞いての執筆。
2023.6 文字サイズ、リンクの調整

24th みんなのうた

88年6月25日
86年以降は各自ソロ活動に突入(原由子は産休)。桑田・松田はKUWATA BANDを86年の1年間限定で結成、87年には桑田佳祐としてソロデビューも果たした。KUWATA BANDのツアーは87年1,2月に行われたが、ソロデビュー87年10月になってからとやや間を開けており、ソロ1stアルバムに関しても藤井丈司と新たに加わった小林武史と共にかなりじっくり作りこんでいたと思われる。結果的にソロ1stアルバム『Keisuke Kuwata』は88年7月まで発売がずれ込む事となった。

しかし88年6月25日はサザンオールスターズのデビュー10周年。10周年でのサザン3年ぶり復活は既定路線だったと思われ、今作リリースでサザン復活→ソロ1stアルバムリリース→サザンで全国ツアーという順序になってしまった。今作の2曲にはそのような大人の事情に対する思いも反映されている。またソロで関わっていた小林武史はアレンジャーとしてソロから引き続き参加。藤井丈司も参加しているがアレンジャーとしては参加せず、サポートミュージシャン及びCo-Produced by 小林武史、藤井丈司、今井邦彦と共同プロデューサー枠でクレジットされている。小林武史は93年まで重要な共同アレンジャーとして随所で活躍した。

2年10ヵ月ぶりのシングルとなったが、この間にレコードからCDへの切り替わりが高速進行。今作はサザンとしては初めて最初から8センチCDで発売された(レコードでの発売も継続はしていたがメインではなくなった)。今作から93年まで(『クリスマス・ラブ(涙のあとには白い雪が降る)』まで)のシングルは発売当時から8センチCDでも発売されているが、98年にももう1度8センチCDで再発(20周年を機に1st~34thまでを一旦8センチCDで再発、当時の最新作『Young Love』より前のアルバム、バラッド2作も再発して統一)している。

みんなのうた

作詞作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ&小林武史
復活を待っていたサザンファンへの「みんなのうた」。底抜けに明るくワクワクしてくるようなポップかつ勢いに満ちた楽曲で、小林武史の才能が存分に発揮されたのか、あれだけ色々な曲調をやってきたのにまだ今までに無かった方向、1番難しい大衆向けポップスという点でさらに上へ突き抜けたような名曲。桑田ソロ1期は小林武史のアレンジャーとしての出世作となったが、引き続きサザンでもそれが生かされていると思う。ただし85年以前の6人+サポートメンバーという体制から桑田+サポート+メンバー5人という体制にここからシフトしていった感もある。

歌詞全体通しての流れはあまりないようにも思えるが、再出発とそれに向けての希望を感じさせる言葉が並んでいる。その一方で”偽りのシャツにためらいのボタン”、”旅の重さに疲れたならば”、”やり直そう“などこのタイミングで自分たちの意志というよりは上の意向によりサザンを再始動させざるを得ない心情も見え隠れする…ような気もする。ただ、多少の苦みを感じさせながらももう1度やり直そうというのは30代前半に差し掛かっていたサザンと同世代のリスナーたち含めて非常にしっくりくるものだったと思う。このくらいの世代になれば10代の頃のような一直線な前向きさを保つのは難しく、ある程度の苦みも伴ってくるもの。個人的にもその世代に突入してまた改めて違った良さを感じている今日この頃である。

あと”虹のカーニバル”はサザンオールスターズ+小林武史の7人、もしくはサザンオールスターズ+You(リスナー)だろうか。
★★★★★
限定ベスト『すいか
限定ベスト『HAPPY!
ベスト『海のYeah!!

C/W おいしいね~傑作物語

作詞作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ&小林武史
非キャッチーでかなりモヤモヤとした雰囲気の楽曲。音の響きなんかは桑田ソロの延長みたいな感じでこれまた小林武史の手腕っぽい感じではある。当時の状況はあからさまだったので(ソロアルバム発売なのにサザン再始動)、”産業ロックの陽が昇る”とか”ちょいと業界不惑にけがれてる”とかレコード会社や事務所への皮肉・不満を前面に出した曲だとは誰もが分かるようになっている。「みんなのうた」ではほのめかせ程度であくまで前向きさに満ちていたが、今作に関しては曲調からしても隠す気もオブラートに包む気も無さげ。業界不信ではなく不惑なのは業界FUCK!”と歌いたかったからだろうか。明らかに意図してそう歌っている。C/W限定で済まさずにわざわざ『すいか』『HAPPY』に連続で選曲したくらいなので、しばらくはけっこう根に持っていたのかもしれない。
★★★☆☆
限定ベスト『すいか
限定ベスト『HAPPY!

25th 女神達への情歌(報道されないY型の彼方へ)

女神達への情歌
89年4月12日
前作から10ヵ月ぶりのシングル。ビデオシングルと同時発売された。ビデオシングルの内容はCDと同じ2曲+前作「みんなのうた」を追加収録したもの。VHS、そして当時規格争いをしていたLD・VHDと合わせて3規格で発売されたが、VHDはまもなくLDに敗れ去り、LDも大して浸透せずに廃れ、VHSもDVDに取って代わられ、現在3規格ともその時代を終えている。DVD・Blu-rayでの発売はされていない。

今作には小林武史も藤井丈司も参加せずに新たに門倉聡が共同アレンジャーとして参加。演奏ではキーボードを担当している。

復活翌年となったがオリジナルアルバムへは着手せず、この年は限定ベスト『すいか』を7月にリリースした。

女神達への情歌(報道されないY型の彼方へ)

作詞作曲:桑田佳祐、英語補作詞:Tommy Snyder、編曲:サザンオールスターズ&門倉聡
アダルトビデオ(当時は文字通りに映像作品はビデオ(VHS)であった)をテーマにした何ともじめじめとした楽曲。PVには当時のAV女優松本まりなが出演。当時はすぐに引退してしまったようだが、2011年からしばらく熟女AV女優として復活して活躍していたらしいので、今作のビデオシングルが滅亡してしまったのとは対照的に当時の出演作が現代のフォーマット(DVDや配信)で出ているんじゃないかと思われる。

アダルトビデオにふける男の思いをひたすら展開しているのでまあ明るくなりようはないが、桑田さんの場合けっこう豪快にエロネタをやるイメージがあったのでけっこうイメージと真逆だ。曲としても単純に暗い。ある意味では攻めまくりのシングルではあるか。
★★☆☆☆
9thアルバム『Southern All Stars
限定ベスト『HAPPY!
3rdバラードベスト『バラッド3~the album of LOVE~

C/W Oh! クラウディア(Live in YOKOHAMA STADIUM)

『NUDE MAN』収録曲のライブバージョン。前年行われた復活ツアーのラストを飾った横浜スタジアムでのライブ音源。歌詞カードの方には何も書かれていないがジャケットでは逆にLive in YOKOHAMA STADIUMの文字は無く“1988.9.18 横浜スタジアム”としっかり日時まで明記されている。休止前も2作連続ライブ音源だったが、前作を挟んでここから4作連続でC/Wはライブ音源収録の場と化した(=全て未配信)。

オールドファンには人気の高いバラードナンバー。確かにいい曲ではあるんだけどどうも割とサザン・桑田でよくあるバラードという印象から抜け出せない。
★★★☆☆
ライブ音源アルバム未収録

26th さよならベイビー

さよならベイビー
89年6月7日
デビュー11年目、26thにしてシングル初の1位を獲得した(1st「勝手にシンドバッド」の最高1位は03年再発時に記録)。ここまでヒットしたシングルも決して少なくは無かった。しかし何故か最高2位とか3位とかばかりだった。今作に関してはドカ売れしたというより、なんか敵もいなかった…みたいな感じで売上枚数自体はさほど高くない。それでも一応前後のシングルよりは売上は高い。

さよならベイビー

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ&門倉聡
これがサザン初の1位という話になるとプチトリビア状態になり、これより前にも大ヒットした曲が山ほどなかったっけ?と思ってしまう事必至な初の1位獲得曲。人気かというとそうでもないし、かといって知名度が低いかというと大ヒット曲には負けるが『海のYeah!!』『バラッド3~the album of LOVE~』といった200万、300万級のベストアルバムに収録されているため、聞いたことがある人はかなり多い。

地味か派手かで言えば確実に地味な曲ではあるが、高音ギリギリを駆使した切なげなボーカル含めてけっこうじわじわ効いてくる曲で意識しないうちに気がついたら知っている曲になっていた。演奏の味気無さというか打ち込みっぽさが少し気になるところではある。
★★★☆☆
9thアルバム『Southern All Stars
限定ベスト『HAPPY!
ベスト『海のYeah!!
3rdバラードベスト『バラッド3~the album of LOVE~

C/W 鎌倉物語(Live in YOKOHAMA STADIUM)

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
アルバム『KAMAKURA』収録曲のライブバージョン。前年行われた復活ツアーのラストを飾った横浜スタジアムでのライブ音源だが、前作と異なり今作には収録日の記載が無い。Live in YOKOHAMA STADIUMという表記自体は同じだが、横浜スタジアムでのライブは9月17~19日の3daysだったため、前作と同じ18日音源なのかは分からない。

スタジオ音源の今作は原由子の優しいボーカルによりほんわかした印象が強く出ているためあまり気にならないが、バックの演奏は機械的でかなり味気ないところもあった。今作はライブで生演奏しているのでドラムの響き含めてスタジオ音源よりも演奏がしっくりくるものとなっている。一方でボーカル自体はスタジオ音源よりはやや堅めである。スタジオ音源がかなり特殊な環境下(妊娠中自宅に機材持ち込んでのリラックスした状態)で録音されていたためあの雰囲気はあの時にしか出せなかったと思われるので、まあそこは仕方ない。
★★★★☆
ライブバージョンアルバム未収録

27th フリフリ’65

フリフリ'65
89年11月21日
翌年1月にようやく発売される事となった88年の復活後最初のアルバム『Southern All Stars』への先行シングル。

タイトルの’65はin 1965と曲中で出ているように1965年を指す。翌年桑田佳祐初監督作品となった映画『稲村ジェーン』の舞台も1965年であった。また1989年は昭和64年が1週間で終わり、平成になった年。もし昭和が続いていれば、今作発売から1ヶ月強で昭和65年を迎えていた…というのは偶然の一致か、意図されていたのか。

フリフリ’65

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
編曲表記はサザン単独だが、Co-Arranged by 小林武史、門倉聡、菅原弘明として3人ともキーボードやプログラミングで参加している。少し前からキーボードにはサポートが入りがちではあったが、いよいよサポートメンバーの参加が本格化してくるのでどこまで原由子でどこまでサポートなのか分からなくなってくる。

ジャッ、ジャーンとシンプルなエレキギターから入るストーンズ直系のような60’s洋楽風のロックナンバー。コンピューターサウンド導入以降かなり味気ないサウンドが続いていてバンドというよりプロジェクト化が進行していただけに、今作のシンプルにロックバンドしている佇まいは逆に新鮮。硬派にロックを貫いていてキャッチーさはあまりないため、ヒット曲と並んで存在感を発揮できるような曲ではない。現在の知名度もやや低めではあるが、アルバム『Southern All Stars』ではこの曲が1曲目を飾り、サザンオールスターズがロックバンドである事を再確認できる1曲。ただこのような6人だけでアレンジ、演奏できそうな曲でもサポートがドカドカ入ってきているっていうのは現在に通じていく部分でもあるかも。
★★★★☆
9thアルバム『Southern All Stars
限定ベスト『HAPPY!

C/W Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)(Live in YOKOHAMA STADIUM)

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
12thシングルのライブバージョン。3作連続となる横浜スタジアムでのライブ音源。洋楽ロックバンドしている「フリフリ’65」のC/Wでのライブ音源が、同じく洋楽ロックバンドを意識したようなロックナンバーである今作というのは非常に流れが良くて合っていると思う。単独で聞いた時よりも今作で続けて2曲を聞いた時の方がどちらの曲も満足度が高い。数あるシングルの中でもロックバンド色の強いシングルになった。
★★★☆☆
ライブバージョンアルバム未収録

From 9thアルバム『Southern All Stars』

SOUTHERN ALL STARS(リマスタリング盤)
90年1月13日
4年4ヵ月ぶりのオリジナルアルバム。88年の活動再開からも1年半が経過してのセルフタイトル作。現在も使用されているビクターの品番VIZL、VICLに「1」が割り振られた記念すべき(?)アルバムでもある。

忘れられた Big Wave

作詞作曲:桑田佳祐、英語補作詞:Tommy Snyder、編曲:サザンオールスターズ&門倉聡
アカペラとクラップのみで構成されているが声は全て桑田1人のものを重ねている。このためサザン名義ではあるがほぼソロ曲である。山下達郎の1人アカペラや『BIG WAVE』辺りの企画をサザン流(桑田流)にやってみた感じでもあるが、今作には特有の侘しさのようなものがあるように思う。名曲。

続くサントラ『稲村ジェーン』にも「愛は花のように (Olé!)」と共に収録されている。
★★★★☆
9thアルバム『Southern All Stars
10thアルバム『稲村ジェーン
限定ベスト『HAPPY!
ベスト『海のYeah!!
3rdバラッドベスト『バラッド3~the album of LOVE~

YOU

作詞作曲:桑田佳祐、英語補作詞:Tommy Snyder、編曲:サザンオールスターズ
サビの半分が英語詞だがこのアルバムから補作詞としてゴダイゴのドラマーTommy Snyderが参加するようになった。少し取り戻したバンド感とデジタル感が混在したようなサウンドのアルバムだが今作はまさに『KAMAKURA』までの無機質な感じにもう少しバンドっぽさが戻ったような雰囲気。『海のYeah!!』収録もあって、このアルバムの中では「忘れられたBIG WAVE」や「さよならベイビー」と共に、むしろこの2曲より先にいい曲だと認識した記憶がある。シングル4曲中3曲より先に聞いているのでむしろシングルじゃなかったのこれ?っていうの方が衝撃だった。
★★★★☆
9thアルバム『Southern All Stars
限定ベスト『HAPPY!
ベスト『海のYeah!!

逢いたくなった時に君はここにいない

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
ストレートに良メロを聞かせる王道タイプの優しい曲調のバラード(歌詞は切ない)。90年代に突入したばかりだが、ここから90年代っぽくなるというか、それこそ直近だと「涙のキッス」に繋がっていくような、地味を越えてヒットバラードの風格が漂うように思う。こんな必殺感漂うバラードをアルバム最終曲にさらっと置いてしまう…というのも90年代のサザンの始まりだったのかも。
★★★★☆
9thアルバム『Southern All Stars
3rdバラッドベスト『バラッド3~the album of LOVE~

28th 真夏の果実

90年7月25日
90年代最初のシングル。8センチシングルが一気に浸透し、徐々にシングルのミリオンセラーが見え始めてきた中でのリリース。このため売上を並べるとさほど現在上位ではないが、チャコ以来となる年間チャートトップ10入り(9位)を達成。1990年を代表するヒット作となり、以後も愛され続けてサザンの筆頭代表曲の1つとなっている。

真夏の果実

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ&小林武史
映画『稲村ジェーン』主題歌。名曲が多い中でもそう簡単には越えられないレベルの奇跡的な名バラード。ド派手なアレンジをしなくても、ピアノやストリングスで盛らなくても恐ろしく印象に残るアレンジを構築するという小林武史の才能は間違いなく天才的であった。ギリギリの高音を攻めるサビメロの切なさも圧巻。ほぼ小林武史に任せたと語っているように、コーラスと大森が演奏するウクレレ以外、ほとんどすべてのオケを小林武史が作ったようだ。コーラスと言っても原由子以外ほとんど分からないし、サザン名義ではあるがソロに近い状態。ほとんどメンバーが参加していないサントラ盤『稲村ジェーン』にだけ収録され、通常オリジナルアルバムには入らなかったのは納得。そして名義がどうこうよりも圧倒的名曲
★★★★★
10thアルバム『稲村ジェーン
限定ベスト『HAPPY!
ベスト『海のYeah!!
3rdバラッドベスト『バラッド3~the album of LOVE~

C/W ナチカサヌ恋歌(Live at BUDOKAN)

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
アルバム『Southern All Stars』収録曲のライブバージョン。日本武道館でのライブはアルバムツアーの最終4日間4月25~28日に行われているので4日間のうちのどこかでの音源と思われる。

沖縄音階を取り入れた…というか取り入れたっていうレベルじゃない完全な沖縄曲。沖縄での戦争を思わせる反戦歌となっており、題材としてはベタといえばベタだが聞きやすい1曲。原由子のボーカルと沖縄音階の曲調が恐ろしく似合うのが驚き。
★★★★☆
ライブバージョンアルバム未収録

From 10thアルバム『稲村ジェーン』

90年9月1日
映画『稲村ジェーン』のサウンドトラックアルバム。サザンオールスターズ&オールスターズの名義で発売されており、サザンオールスターズ名義の曲は全て既発のもので、新曲として収録された曲には大森・関口・野沢は丸々参加しておらず、桑田佳祐以外のメンバーは数曲で松田がドラム、1曲原由子が歌っているだけ。要するにサザンメンバーがほぼ参加していない。それゆえのサザンオールスターズ&オールスターズ名義だったと思われ、当時はオリジナルアルバムとしてはカウントしていなかったようだが、98年及び08年リマスター盤の発売時にいずれも今作が10thアルバムとして明記されてカウントされたことで現在は10thアルバムとして扱われている。

映画『稲村ジェーン』は桑田佳祐が監督を担当した事で話題になりヒットもしたが評論家ウケは良くなかった。翌年にVHS/LD化されるもそれっきり放置され、DVD化しなかった事や監督業を2度と行わなかった事から黒歴史化したというのが通説となっていた。しかし30年の年月を経て(映画公開からは31年、VHS/LD化から30年)2021年にBlu-ray/DVD化が実現した。

希望の轍

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:桑田佳祐&小林武史
最早シングルよりもシングルみたいな代表曲となっている名曲。タイトル通りに果てしなく希望を感じられる前向きなアップテンポナンバー。なんでこんな明確にアッパーな曲が『バラッド3』入りしたのかは気にしてはいけな初めて知った時「轍」が読めなくて「きぼうのてつ」と読んだことがある人は少なくないはず。コブクロが01年に「轍-わだち-」を出してくれたのでそっち知ってると簡単かもしれないが…。

編曲が桑田佳祐&小林武史となっており、実際演奏メンバーは小倉博和、原田末秋の2名によるギターと桑田・小林武史の合計4名のみ。バンドサウンド風だがギターとキーボード以外は打ち込みである。

元からファンの間では人気曲だったと思われるが、98年の『海のYeah!!』収録やフジ「めざましテレビ」内の「ワールドキャラバン」テーマ曲として起用された事で、90年代末以降一気にお茶の間に浸透して知名度を大幅に上げた。個人的にもこの2点が接点だったので、なんでこの曲だけ編曲がサザンじゃないんだろうとは思っていたがまさか実質桑田ソロ曲だったとはかなり後で知った。サザンのライブでも普通にサザンの曲として演奏されているため、実は桑田さん以外のメンバーが音源に不参加だということはほとんど知られていないと思われる。この辺りどうせならどこかのタイミングでメンバーで再録音するとか、この頃よくやってたライブ音源でのC/W収録という形でサザンオールスターズ6人での演奏バージョンを音源で残しておいてほしかった気もする。

あとこの曲、iTunesにしてもwikiにしても「稲村オーケストラ」名義という事になってるんだけど、少なくとも08年リマスター盤の『稲村ジェーン』には稲村オーケストラなんていう名称は確認できない。オリジナル盤には表記があったのだろうか…?
★★★★★
10thアルバム『稲村ジェーン
限定ベスト『HAPPY!
ベスト『海のYeah!!
3rdバラッドベスト『バラッド3~the album of LOVE~

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