サザンオールスターズ 40周年シングル+回顧2~1980-1981~

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サザンオールスターズ 40周年シングル+回顧2~1980-1981~

1980年に入ると制作に専念するためにTV出演を控え、FIVE ROCK SHOWを掲げての連続リリースを敢行するも、売上が激減。以降しばらくシングルヒットからは遠ざかるようになった。一方でシングルのチャート順位がどんどん落ちていく中でもアルバム売上は好調で3rdアルバムで初の1位を獲得。以後オリジナルアルバム、現存するベストアルバムの全てで1位を獲得している。

そんなわけでこの時期は8作連続でトップ10落ちしていて2年間トップ10ヒットが1曲も無い。しかし98年の『海のYeah!!』収録の機会に恵まれた曲を中心に現在は知名度が非常に高くなっている曲もいくつかある。

2018.6執筆
2008年30周年時に聞いてないシングルがありながら禁断の空欄突破で公開した過去曲回顧「30周年シングルレビュー」を、2013年35周年復活時にA面全曲聞いた上での完成版「35周年シングルレビュー~1978-2008~」として公開。
今回は40周年を記念して全C/W追加各アルバムからも数曲ずつピックアップして全面リメイク。以前書いたA面部分もほとんど破棄して書き直している。
シングルは05年リマスター盤、アルバムは08年リマスター盤を全て聞いての執筆。
2023.6 文字サイズ、リンクの調整

6th 涙のアベニュー

涙のアベニュー
80年2月21日
80年に入るとメディア出演を控えて制作に専念する形に方針転換。そしてFIVE ROCK SHOWとして5ヶ月連続シングル発売を打ち出し、その第1弾が今作となる。メディア露出を控えたら途端に売上が激減。一気にトップ10落ちしてしまい、以降しばらくシングルヒットからは遠ざかり、アルバム売上は好調だったがシングル売上の低迷期へ突入する。

今作以降しばらくのシングル曲の知名度は単純に売れたか売れなかったかではなく、『海のYeah!!』発売後は『海のYeah!!』に収録されたかされなかったか…で大きく分かれていった。

涙のアベニュー

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、弦管編曲:八木正生
ブルース色の強いバラードナンバー。サビでHarbor lightと歌っているが、これはそのままこの曲の着想をボズ・スキャッグス「Harbor Lights」から得ている事を示している模様。前5作からすると明らかにシングルとは思えないような地味な曲なのは確かでこれでTV出演も控えればそりゃ一気に売れなくなるわな…とは正直思ってしまうところはある。最初に聞いた時は『バラッド’77~’82』で聞いたんだと思うんだけど、全く印象に残らず、後でシングル曲だと知って驚いた。歌詞のモチーフになっている横浜にもう少し土地勘があれば情景が浮かんでムーディーさが増すのかもしれない。

そんなわけで長年印象のほとんどないシングルの1つだったんだけど、改めて聞いてみるとこれはこれでなかなか味わい深い。管弦アレンジを施しているものの、派手に使用せずに抑えた使い方なのもうまい。今作で起用された八木正生はこの時点で既に50歳近いベテラン作家だったが、以降『KAMAKURA』までのサザンの管弦アレンジに大きく関与して重要な外部アレンジャーの1人となっていた。ただコンピューターサウンドに系統し始めてからはあまり出番が無く、末期はアルバムに1曲とかその程度の参加になっていた。また88年の復活以降には関与せず91年に亡くなっている。
★★★☆☆
3rdアルバム『タイニイ・バブルス
1stバラードベスト『バラッド’77~’82
限定ベスト『すいか

C/W Hey! Ryudo!(ヘイ! リュード!)

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、管編曲:八木正生
ビッグバンドジャズ風のアレンジがゴージャスで少なくとも華やかさにかけては「涙のアベニュー」よりも遥かに華やかさがあると思う。タイトルはビートルズの有名曲「Hey Jude」にひっかけ、Ryudoというのは宇崎竜童を指している。歌詞は宇崎竜童について歌っているものと思われるが、なんていうかひねくれているというか素直に褒めたりしないところがらしいというか。曲調に関しては「Hey Jude」っぽい要素は全く感じられず、単にタイトルのパロディに使用しただけだったのかもしれない。

アルバムでは普通に曲が終わってしまうが、シングルバージョンでは一旦演奏が終わった後に桑田と関口が少し会話をして桑田さんの合図でもう1回演奏して終わる。シングルが完全版と思われ、アルバムで聞ける今作はラストがバッサリカットされているショートバージョンといえる。
★★★☆☆
シングルバージョンアルバム未収録
3rdアルバム『タイニイ・バブルス』(最後をカット)

7th 恋するマンスリー・デイ

恋するマンスリー・デイ
80年3月21日
FIVE ROCK SHOW第2弾。3rdアルバム『タイニイ・バブルス』と同時発売で「恋するマンスリー・デイ」はそのまま収録、C/W「青い空の心(No me? More no!)」はアルバムには収録されなかったものの、当然前作より低迷してトップ20落ち(23位)、初の10万割れとなってしまった。

恋するマンスリー・デイ

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
マンスリー・デイとは女性の生理の事を指しており、そのまま女性の生理の日の憂鬱を男性目線で描写するという触れにくいところに挑んだ意欲作。歌詞中で何度も登場する“ユウコさん”は原由子から取っているのは明白だが、原由子について歌われているわけではなく、あくまで名前を使っただけ、という扱い。何故かまったりとしたレゲエの曲調で、盛り上がるサビが炸裂するわけでもなく、独特の歌唱によりアクの強さはあるもののあまり起伏のない曲ゆえ、率直に相当地味。同時発売でシングルカットしたのが謎すぎるが、FIVE ROCK SHOWなので攻めていたためだろうか。ROCK?う~ん…(汗)
★★☆☆☆
3rdアルバム『タイニイ・バブルス
限定ベスト『すいか

C/W 青い空の心(No me? More no!)

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
歌詞中に“サイダー”が連発されるが、三ツ矢サイダーのCMタイアップ。2018年に過去のサザンの名曲をピックアップしながらの三ツ矢サイダーCMが展開しているが、三ツ矢サイダーCMとの最初の接点は今作だったようだ。サイダーと直接出てくるわりには昨今の三ツ矢サイダーCMタイアップに通じる炭酸と青春を絡めたようなさわやかな雰囲気は正直あまり感じない。タイトルに反して青い空もあまり見えてこない。それでも「恋するマンスリー・デイ」よりはA面っぽい感じではあるか…。

サブタイトルのNo me? More no!は単純にノー、ミー、モァー、ノーすなわち“飲み物”なのではないかと思うが、”No me→飲め”、”More no→no more→もう飲めない”という説もあるらしい。これはCM撮影の際に桑田さんがサイダーを飲みすぎてもう飲めない!となったためとするもの。後者だと完全に撮影後の後付けタイトルという事になるが…。
★★★☆☆
限定ベスト『すいか

From 3rdアルバム『タイニイ・バブルス』

タイニイ・バブルス(リマスタリング盤)
80年3月21日
FIVE ROCK SHOWの合間(第2弾と第3弾の間)にリリースされた。「恋するマンスリー・デイ」と同時発売。さすがにスケジュールが押したのか翌4月はリリースが無く、次のシングルは2ヵ月後となった。

シングル売上が激減する中で、今作ではアルバム3作目にして初の1位を獲得。アルバムでの連続1位は今作から始まっており、以降シングルが低迷した時期でもアルバムは常に1位を獲得し続けている(かセットのみの企画ベストで逃すことはあったが現存するアルバムにおいては全て1位)。

私はピアノ

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、弦管編曲:八木正生
初の原由子ボーカル曲。桑田とデュエットで部分的にソロボーカルを取る曲はこれまでもあったが完全なソロボーカル曲は今作が初となった。ソロデビューするのは翌81年4月だが、2010年の原由子のソロベスト『ハラッド』リリース時に30周年と大々的に銘打たれたのは今作を起点としてのものだった。

また同年7月には高田みづえがカバーして自身最大のヒットを記録。このため発売当時はサザンというより高田みづえのヒット曲として世間に認知されていたと思われる。

ザ・昭和歌謡といった感じの歌謡ナンバー。ザ・ピーナッツとかその頃のヒット曲を再現したようなイメージの楽曲。これ以前のソロパートでは堅い歌声を披露していた原由子のボーカルも現在に通じる声を重ねた独特の雰囲気で早くも完成されている。このほんわかしたイメージが原由子の楽曲の最大の魅力で最大の生命線となった。この声で歌われればけっこうキツめの歌詞も、際どい歌詞でも全部さらりと聞けてしまう。
★★★☆☆
3rdアルバム『タイニイ・バブルス
1stバラードベスト『バラッド’77~’82
限定ベスト『すいか
原由子2ndベスト『ハラッド

松田の子守唄

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、弦管編曲:新田一郎
ドラム松田弘の初ソロボーカル曲。原由子以外のソロボーカルは近年あまり知られていないが、これは特に90年代以降にほぼやらなくなったためと思われる。サザンには脱退した大森含めて野沢以外にはボーカル曲がある。子守唄というタイトル通りにシンプルなバラードナンバーだが注目すべきは綺麗な高音ボーカル。正直本職ボーカルでもないのでそんなでもないのかと思いきやけっこうな美声なのである。これには驚いた。
★★★☆☆
3rdアルバム『タイニイ・バブルス
1stバラードベスト『バラッド’77~’82

働けロック・バンド(Workin’ for T.V.)

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、弦管編曲:八木正生
前述のようにいきなりの大ブレイクでTV出演をメインにしてその合間を縫うような楽曲制作という多忙な日々が続いていたサザンメンバー。そのストレスをそのまま曲に落とし込んだドキュメンタリーな自虐ソング。ゆったりした曲調で嘆き節みたいな感じなので曲自体は地味だが、結果的にはこうして作品として残る事で当時本当にしんどかったんだな…という当時の状況が後追いのリスナーでも垣間見ることが可能となった。
★★★☆☆
3rdアルバム『タイニイ・バブルス
1stバラードベスト『バラッド’77~’82

8th いなせなロコモーション

いなせなロコモーション
80年5月21日
FIVE ROCK SHOW第3弾。アルバムを挟んだのもあって間に合わず4月のリリースが無く、2ヶ月あいてしまったが、5作中最大のヒットを記録。最大と言ってもチャート最高位は16位。オリジナルアルバムにも収録されなかったため、しばらくは知名度はあまりなかったと思われるが、FIVE ROCK SHOW5作の中で唯一98年『海のYeah!!』に収録されたため、以降の知名度はズバ抜けて高くなった。

いなせなロコモーション

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
三ツ矢サイダーCMタイアップ。ピアノやコーラスが目立ち、非常にポップ&キャッチーな印象の1曲。FIVE ROCK SHOWの中でもこの曲だけずば抜けて一聴してして耳に残るというか聞いてて楽しくなってくる曲だ。サビの”あなたとドリス・デイ”とか知らないと何の事か分からないし、続けて”マッシュ・ポテト”は出てくるしで良く分からない事になるが、桑田さんが10代の頃に流行っていてよく聞いていたと思われる5,60年代の洋楽ポップスのアーティスト名が多数登場し、それらへ敬意を払った楽曲と思われる。マッシュ・ポテトに関しては名前ではなく、62年の洋楽ヒット「マッシュ・ポテト・タイム」から取っていると思われる(「ポニー・テール」に関してはそのまま当時髪型として流行っていたと思われる)。コーラスもそういえば思いっきりザ・ビーチ・ボーイズ風である。

まあ出てくる単語が分かったり、リアルタイム感があればより”あの頃”を感じられて楽しめるんだろうけど、単純にこの曲は歌詞が分からなくても聞いてて楽しいし華やかだ。この楽しさが伝わればそれに越した事はない、そんな1曲。
★★★★☆
限定ベスト『すいか
ベスト『海のYeah!!

C/W LOVE SICK CHICKEN

作詞:大森隆志&フジミ・ミド、作曲:大森隆志、編曲:サザンオールスターズ
ギター大森の初の単独ボーカル曲。先のアルバムの原由子、松田弘に続くソロボーカルナンバーだが、シングルでは桑田以外の単独ボーカル曲は今作が初となる。ギタリストらしいエレキギターが曲を引っ張っていくギターロックナンバー。後年になるほど存在感が希薄になってきてしまうところがあるが、さすがにこの頃は自作曲でもあるし、大森が自由に自分が思い描くロックをやっているものと思われる。伸び伸びとサザンのギタリストをしていた頃の大森隆志のプレイを堪能できるという点では貴重な曲の1つか。ただボーカルに関しては先の原・松田に比べると、意外な声の良さを聞かせるというよりかは、いかにも本職ボーカルじゃない人が歌ってます感が…。
★★★☆☆
限定ベスト『HAPPY!

9th ジャズマン(JAZZ MAN)

ジャズマン
80年6月21日
FIVE ROCK SHOW第4弾。33位とついにトップ30落ちにまでなってしまったが、当時の順位があまりに低かったため、05年リマスター盤発売時の一斉ランクイン時に今作は32位を記録。なんと25年越しで最高位を1つだけ更新した。

ジャズマン(JAZZ MAN)

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、弦管編曲:八木正生
タイトル通りのジャズナンバーで、管弦アレンジを効果的に取り入れたスウィングジャズっぽい明るいノリ。これが思いのほか聞きやすい。意外と明確なサビらしい盛り上がりが無いまま進行する感じではあるので、印象には残りにくい曲だったりはするけど、全体のノリはけっこう好印象。弦管編曲を任せた八木正生はもともとジャズピアニストとして著名な人物で、恐らく八木正生に対するリスペクトがこの曲にはかなり込められているんじゃないかと思う。ジャズマンというのも八木正生その人を指しているのかも…?
★★★☆☆
限定ベスト『すいか

C/W ひょうたんからこま

作詞作曲:関口和之、編曲:サザンオールスターズ
前作の大森に続いて今作はベース関口が自ら作詞作曲ボーカルを担当(1番と2番の間奏の歌詞2行部分のみ桑田ボーカル)。まったり淡々と進行する楽曲。大森同様にボーカルは本職じゃない人が素朴に歌っています…といった感じ。この素朴さに味がある…といえば味があるんだけど…う~ん、普通…。

何気に『バラッド』収録を果たしたため、A面より扱いが良くなっているC/Wの1つ。

これにて残すは野沢秀行ボーカル曲のみとなったが、何故か野沢秀行の単独ボーカル曲が来ることは無かった。よほど歌が下手だったのか、拒否したのか、準メンバー扱いされてやらせてもらえなかったのか…謎である。
★★★☆☆
1stバラードベスト『バラッド’77~’82
限定ベスト『すいか

10th わすれじのレイド・バック

わすれじのレイド・バック
80年7月21日
FIVE ROCK SHOW最後を飾る第5弾。今作制作時に原由子が体調不良により参加できなくなってしまったという。このため今作の原由子のクレジットは「Mind…」となっている。代わりにSpecial Guestとして奥慶一がKeyboardsとしてクレジットされている。

またC/W「FIVE ROCK SHOW」をみんなで歌っているため、原由子以外のクレジットもいつもと異なっており、関口・松田・野沢にVocal表記がある。大森のみChorus扱い

41位と前作よりさらに順位を落とすトップ40落ちとなり当時は不振だったが、05年リマスター盤では28位を記録。25年越しでかなりの最高位更新を果たした。

わすれじのレイド・バック

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
ゆったりとしたカントリーロック調のナンバー。歌詞がかなりアダルティーだが、曲調にアダルトさを増幅させるような怪しげな要素が全くないどころか、むしろカントリーロック調のサウンドが実に健全な雰囲気なので相対的になんだか穏やかで健全な曲に聴こえてくる。シングルにはあまりに地味な曲だった気がしなくもないが、FIVE ROCK SHOWという企画ではこれまで以上に通ってきた洋楽を下敷きにしたようなルーツ志向だったと思うのでこういうのがやりたかった、ということだろう。
★★★☆☆
1stバラードベスト『バラッド’77~’82
限定ベスト『すいか

C/W FIVE ROCK SHOW

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
みんなで歌っているFIVE ROCK SHOWの集大成にしてそのものズバリ「FIVE ROCK SHOW」。1曲ではなく曲の断片がめまぐるしく入れ替わっていくため、少し歌ったらふいに全く別の曲に切り替わっていく。メドレーでもなく、未完成曲のコラージュといった方がふさわしい気がする。

ボーカルは基本的には交代で歌っているようなんだけど、誰がどこを歌っているかは正式に明かされておらず、聞いてみても桑田さん以外はイマイチ判別しにくい。冒頭は確実に桑田ボーカルだが直後の部分は歌詞に記載されているにも関わらず、くぐもり加工を施しすぎて歌詞を見ながらでもどこを歌っているのか追えず、誰の声なのかもハッキリしない。以降は大森の声?松田の声?という感じで2人出てきて、その次に出てくるのが関口、野沢の両名と思われるが…意外と野沢ボーカルにこれといった特徴が無いようでイマイチ判別できない。
★★★☆☆
アルバム未収録

11th シャ・ラ・ラ/ごめんねチャーリー

シャ・ラ・ラ
80年11月21日
FIVE ROCK SHOW完結から4ヶ月でリリースされた1980年6作目のシングル。初の両A面扱いとなっており、実際ジャケットで2曲が並列表記されている。ただし04年以降の両A面シングルと異なり、公式サイトでは両A面扱いされていない。一方でレコード会社であるビクターでは両A面扱いしている。

シャ・ラ・ラ

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、弦編曲:八木正生
AOR風の落ち着いたバラードナンバー。桑田ソロ、原ソロ、Wボーカルと2人がほぼ均等にボーカルを担当した桑田・原の完全なデュエットナンバー。部分的に原由子が歌う曲はシングルでも他にあるが、今作のように完全にデュエットしている曲は珍しく、シングル表題曲では唯一といっていいだろう。

やや地味だがコクのある英語詞のサビ部分はけっこう印象的で、ライブではみんなで大合唱できそうな感じなので初期のライブにおいてラストの定番だったというのも納得できる。終盤になると”雪”、”Merry Christmas”、”今年も”など、冬やクリスマス、年末を思わせるフレーズが一挙放出される。このためサザン初のクリスマスソングという事になるが、これらの単語が終盤で登場するまでは特に季節を感じさせる要素が出てこない事もあり、あまりクリスマスソングっぽい感じはしない。サザンとしては二大クリスマスソングとして「CHRISTMAS TIME FOREVER」と「クリスマス・ラブ (涙のあとには白い雪が降る)」のどっちが好きかみたいな話になりがちな上に、「CHRISTMAS TIME FOREVER」をサザン初のクリスマスソングと紹介される事も多々あり、今作が2曲と並べて語られる機会も特に90年代以降がリアルタイムの世代間ではなかなか上がってこない感じではある。

そんなわけで決して派手さは無い。しかしデュエットは貴重だし、じっくり聞けば味わい深い曲だと思う。
★★★☆☆
1stバラードベスト『バラッド’77~’82
限定ベスト『すいか

ごめんねチャーリー

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、管弦編曲:八木正生
チャーリーというのはレイ・チャールズから取られているようだが、曲中で出てくるチャーリーは普通に解釈して女性であり、レイ・チャールズとは関係が無いようだ。ソウル風味&歌謡風味で管弦交えてのゴージャスなサウンドが展開。両A面にするほどだったのかはビミョーな気がしなくもないが…。この手の曲調、割と「Yin Yang」以降の桑田ソロでやっていた歌謡路線と並べて違和感が無いような気がする。
★★★☆☆
限定ベスト『すいか

12th Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)

Big Star Blues
81年6月21日
前作から7ヵ月、81年1発目にしてアルバム『ステレオ太陽族』の先行シングル。というか80年のシングル全部未収録になって今作しか収録されなかっ

最高49位、売上4.6万枚は再発盤売上を足してもサザン史上最低位、最低売上を記録したままとなっている。

Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
映画『モーニング・ムーンは粗雑に』主題歌。ダスティン・ホフマン、エリック・クラプトン、オノ・ヨーコ(ジョン・レノンの妻)、マーク・チャップマン(ジョン・レノン射殺犯)の名前がそれぞれ1ブロックずつ登場し、おちゃらけつつも各パートでそれぞれの心情(?)が歌われている。よく見ると自意識過剰なビッグスターに対してカッコでくくられたコーラスパートでの返信がそっけなくてなかなか面白い(「私しゃ有名なMovie Star」に対して「I don’t know you」、「サインならやるよ」に対して「No,thanks」など直球でバッサリ)。

苦情とか来なかったのかなと若干心配になってくるところだが、着想は80年12月に起きたばかりだったジョン・レノン射殺事件からと思われる。ジョン・レノンの名前は一切出てこないものの、妻ヨーコ、犯人マークが立て続けに登場するなど、直接的に悲しみを歌わずとも今作はやはりジョン・レノンへの追悼なんじゃないかと思う。

最低売上という不名誉な記録を持つシングルではあるが、今作がダントツで地味だとか分かりにくいというわけでもない。前作までよりロック色がやや強く、決してキャッチーな曲ではないが音だけ聞いても前年にはあまりなかったカッコよさはあると思う。しかしこれだけテーマのハッキリした曲が映画主題歌ってそれは合っていたのか…?
★★★☆☆
4thアルバム『ステレオ太陽族
限定ベスト『すいか

C/W 朝方ムーンライト

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
淡々とした曲だが、そこそこには盛り上がり、どこか情緒があるようにも感じられる。地味だけど意外とクセになるようなそんな不思議な魅力を持った1曲だ。

映画『モーニング・ムーンは粗雑に』では他のアルバム曲(栞のテーマ、恋の女のストーリー)と共に挿入歌として起用されていたようだが、事務所アミューズ制作の映画なのでタイアップとして回ってきた…という以外にあまりタイアップに選ばれた理由が無さげである…。
★★★☆☆
4thアルバム『ステレオ太陽族
1stバラードベスト『バラッド’77~’82
限定ベスト『すいか

From 4thアルバム『ステレオ太陽族』

ステレオ太陽族(リマスタリング盤)
81年7月21日
前作以降大量に溜まっていたシングルを未収録にして先行シングル「Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)」のみを収録。これまで管弦編曲で新田一郎、八木正生の2名を起用していたが今作は新田一郎は参加せずに八木正生が深く関わっているのが特徴。「栞のテーマ」がシングルカットされた。

我らパープー仲間

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:八木正生
管弦編曲としてではなく、編曲として八木正生が単独クレジットされたアルバム中唯一の楽曲。八木正生のジャズ&ブルース色が強く出たアルバムを象徴するのは今作の中ではこの曲かなと思う。ヘンテコな雰囲気と言ってしまえばそれまでではあるし、一連の有名ヒット曲に比べて全体にとっつきにくい作風ではあるが、”我々も我も君達もパープー”をかなり不明瞭な崩れた発音でコール&レスポンスするくだりなどはなかなか耳に残るし盛り上がる。
★★★☆☆
4thアルバム『ステレオ太陽族
限定ベスト『HAPPY!

ラッパとおじさん(Dear M.Y’s Boogie)

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、弦管編曲:八木正生
全英語詞ナンバー。タイトルにも出てくるM.Yはそのまま八木正生を指しており、前曲に続いて八木正生との関わりの深さを象徴する曲。ラッパとおじさんというのもほぼそのまま八木正生の事だろう(当時桑田25歳に対して八木48歳なのでメンバーから見ればザ・おじさんである)。曲調はサブタイトルにあるようにブギでズンズン突き進んでいくようなノリの良さが気持ちいい。
★★★☆☆
4thアルバム『ステレオ太陽族

13th 栞のテーマ

栞のテーマ
81年9月21日
『ステレオ太陽族』から2ヵ月でのC/W共々シングルカット。シングルカットだった事と、『ステレオ太陽族』は1位を獲得する大ヒットだったが、当時のサザンのシングル低迷傾向は今作まで続いていて当時の記録は44位。05年リマスター盤では35位に記録を更新したが、それでも売上は5万程度に留まっている。

ヒットはしてない上に、選曲されてそうな『バラッド’77~’82』には外されるなど、当時は埋もれ気味だったが98年『海のYeah!!』収録による新規リスナーへの浸透もあり、現在はファン内だけでなくある程度の一般知名度も獲得した人気曲の1つへと成長している。

栞のテーマ

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
映画『モーニング・ムーンは粗雑に』挿入歌。「栞」は映画の登場人物の名前から取られているが、現在は完全に映画と切り離され曲単独で知られている。というか80年代半ば以降この曲から取って「しおり」と命名された女の子がたくさん誕生したようで、それを公言している芸能人も多い。

3連バラードの名曲といえばやはりこの曲!と言ってもいいくらい真っ先に浮かぶ3連バラード。最初から最後まで平メロ、サビ関係なく全部のメロディーが素晴らしい。正直割と地味な曲続きだったこの時期において何故こんな名曲が唐突に出てきたのかという勢い。たぶん特にヒットを狙おうとか全く気負わずにさらっと書いたら結果名曲だったという事なんじゃないかと思う。05年に『キラーストリート』最終曲「ひき潮~Ebb Tide~」を3連バラードで制作する際には“ある意味「栞のテーマ」は絶対に超えられない”と自ら語っており、桑田さん本人の中でもなかなか超えていくのが難しい楽曲という認識があるようだ。

いずれにせよサビで歌われる“ね、どしてなの なぜに泣けるの”というフレーズがこの曲を最も的確に表した一文だ。理由は分からない。しかし何故だか泣ける。そんな名曲。
★★★★★
4thアルバム『ステレオ太陽族
限定ベスト『すいか
限定ベスト『HAPPY!
ベスト『海のYeah!!

C/W MY FOREPLAY MUSIC

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
アルバム2曲目を飾っていた楽曲のシングルカット。アルバムでは「My Foreplay Music」と表記されていたがシングル盤では何故か「MY FOREPLAY MUSIC」と全部大文字になっている。またジャケットを見ると両A面のように並んでタイトルが書かれている

アルバムの中では比較的ロック色が強く、カッコよさを感じられる1曲でシングルカットも納得。歌詞自体はけっこうアダルティーなところがあるが、曲調はアダルトさを強調するよりもどちからというと洋楽的なカッコよさが前面に出ていてあまりそれを感じさせない。
★★★☆☆
4thアルバム『ステレオ太陽族
限定ベスト『すいか
限定ベスト『HAPPY!

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