サザンオールスターズ 40周年シングル+回顧1~1978-1979~
1978年6月25日の「勝手にシンドバッド」でのデビュー当時はあまり売れなかったが、8月の1stアルバム発売頃からTV出演をきっかけに徐々に火が付き始めて大ブレイク。以降2年間でシングル5作全てをトップ10入りさせたのがこの最初期である(アルバムは2作のうち2ndでトップ10入り)。
連日TV出演をこなしながら夜レコーディングというスケジュールになったため、メンバーの疲労はいきなりピークに達し、特に2ndアルバム周辺は「ノイローゼ」というキーワードで持って語られる事も多い。
この時期は前述のように当時もヒットしているため、リアルタイムで接したリスナーはもちろん、98年から20年ロングセラーを続ける『海のYeah!!』に5シングル中3曲が選ばれており、それらに関しては当時を知らないリスナー間でもかなり知名度は高いと思われる。
そんな最初期のサザンオールスターズを振り返る。
2008年30周年時に聞いてないシングルがありながら禁断の空欄突破で公開した過去曲回顧「30周年シングルレビュー」を、2013年35周年復活時にA面全曲聞いた上での完成版「35周年シングルレビュー~1978-2008~」として公開。
今回は40周年を記念して全C/W追加、各アルバムからも数曲ずつピックアップして全面リメイク。以前書いたA面部分もほとんど破棄して書き直している。
シングルは05年リマスター盤、アルバムは08年リマスター盤を全て聞いての執筆。
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1st 勝手にシンドバッド
78年6月25日
03年6月25日(BOX)
いきなり大ヒットを記録した衝撃のデビュー作…とされているが実際には発売当初は売れなかった。7月末に「夜のヒットスタジオ」でTV出演を果たすも歌詞が聞きとりにくいので普段表示してなかった歌詞テロップが用意されたとか8月末の「ベストテン」出演時には原由子以外はジョギングパンツ+上半身裸だったため黒柳徹子にミュージシャンなのかと問われて“目立ちたがり屋の芸人で~す!”と返答した…などの逸話も残っている。これらでかなり強烈なインパクトを残したのかチャートを駆け上がっていき、O社では最高3位を記録(ただし記録した時点ではすっかり秋になっていた)。
最終的に50万越えのヒットを記録。98年の『海のYeah!!』でも1曲目を飾り、当時を知らない後追いリスナーにもサザンオールスターズ始まりの1曲という認識は広く持たれていった。
当時はレコードだったが、88年、98年にはそれぞれ8センチシングルCDとして再発。05年には44thまでがまとめてリマスターされてマキシシングル化されている。
今作に関してはそれら以外にデビュー25周年を迎えた2003年に胸さわぎのスペシャルボックスとしてCDとEPで単独再発されている。シャツやホイッスルなどのグッズが封入されているBOXだが特筆すべきはCDの方でシングルで唯一カラオケバージョンが追加収録されている(05年リマスター盤には収録していない)。
この2003年バージョンはBOX抜きのマキシシングルとして普通に中古に転がっている事もある(05年リマスター盤と形は同じだが品番や発売日表記が違うのですぐ分かる)。
2003年の胸さわぎのスペシャルボックス発売時、サザンは00年の『バラッド3』を最後に長期活動休止状態となっており、桑田ソロとして01~02年には「波乗りジョニー」「白い恋人たち」「東京」などの大ヒットを連発していた。01年にはギター大森が脱退していたが、大森脱退後にサザンの活動が無い状態で迎えた25周年だった(その後5人で本格的に活動を再開した)。
ただそれでもサザンオールスターズの需要は非常に高まっており、なんとこの胸さわぎのスペシャルボックスはO社1位を記録して、当時の最高3位を塗り替えてしまった。25万枚限定とか言っていた気もするがO社では30万近くを売り上げた。別集計だったが合算すると当時の50万枚、03年での30万枚、さらに05年リマスターでの数万枚を含めて80万枚以上の売上を記録している。
勝手にシンドバッド
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:斉藤ノブ&サザンオールスターズ 管編曲:Horn Spectrum
猛烈な勢いのラララ大合唱で始まり、最初から最後まで怒涛の勢いで駆け抜けていくサンバノリのお祭りナンバー。思わず一緒に叫びたくなるラララ大合唱、“今何時?”と聞かれて“そうねだいたいねぇ~♪”と返したくなった(または返された)経験は人生において1度くらいは誰でもあるんじゃないだろうか。“胸さわぎの腰つき”など意味不明だけど妙に残るフレーズの数々といい、キングオブ1発屋みたいな強烈なインパクトだ。これで1発屋にならず、あくまで数ある代表曲の1つに過ぎない…というのが改めて凄い(当時プレッシャーは当然生じたんだろうけど)。
サザンはパーカッション専任のメンバーが在籍しているというバンドとしては変わった形態で、これ…パーカッション無くね…?という曲が多々あるのも確かではあるがデビュー曲である今作はパーカッションも咲き乱れており、6人組バンドとして各々が最初からフルスロットルなところも地味にいい。
★★★★☆
1stアルバム『熱い胸さわぎ』
限定ベスト『すいか』
限定ベスト『HAPPY!』
ベスト『海のYeah!!』
C/W 当って砕けろ
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:斉藤ノブ&サザンオールスターズ 管編曲:Horn Spectrum
「勝手にシンドバッド」に続いてホーンセクションを生かしたコミカルなナンバー。「勝手にシンドバッド」がテンション高すぎて落ち着いた普通の曲に思えてしまうところもあるが今作の印象も単独で聞けば十分にコミカルだと思う。終盤でWANTED!とか叫び始めるのはピンク・レディーと思われるが、そもそも「勝手にシンドバッド」も沢田研二の「勝手にしやがれ」とピンク・レディーの「渚のシンドバッド」をくっつけただけとされているので(そもそも曲中にも出てこないし…)、ピンク・レディーが凄かったという時代も強く反映されている。
1stアルバムに収録されているのでC/Wの中ではそんなにレアな曲ではないが、ベスト盤にはあまり選曲されていない。
★★★☆☆
1stアルバム『熱い胸さわぎ』
限定ベスト『すいか』
From 1stアルバム『熱い胸さわぎ』
78年8月25日
TV出演により「勝手にシンドバッド」に火が付き始めた頃にリリースされたようだが、今作は唯一トップ10入りを逃したアルバムとなっている。あくまでシングルヒット中心でアルバムはあまり伸びなかったようだ。
女呼んでブギ
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、管編曲:Horn Spectrum
1stアルバムで「勝手にシンドバッド」に続いて強烈なインパクトを放つ迷作。下ネタな言動や時にはセクシーなダンサー相手にセクハラじみた行動をする破天荒なエロオヤジという桑田さんのパブリックイメージをそのまま映し出したような初期の1曲。デビュー前の桑田さんはピストン桑田を名乗ってこの曲をやっていたらしいが“女呼んでもんで抱いていい気持ち”とキャッチーかつザ・桑田さんな迷(?)フレーズの炸裂にはド頭からインパクトがある。メロディーとフレーズがハマりすぎているのでとてもキャッチーな印象ではあるが、それ以外の歌詞は基本的に何 言 っ て る の か 分 か ら な い。酔っ払いがなんか喚いているみたいなノリで(途中歌詞に記載が無くアヤフヤになっている箇所もある)、色々言ってはいるが最終的に行き着くのは”女呼んでもんで抱いていい気持ち”である。色々うるさい現代でこれを出すとネットが炎上しそうではあるが…ここまであけすけだと逆にいやらしくない気もする。
『すいか』『HAPPY』に連続で収録されるなど待遇も良く、ライブに行っているファンの間では現在も知名度が高いと思われるが、『海のYeah!!』『バラッド3』などこのような曲を選曲できる余地のあるベスト盤が『HAPPY』を最後にリリースされていない事もあり、結果的に現在はちょっとサザンを聞き進めないと触れる事ない曲になっている。
★★★☆☆
1stアルバム『熱い胸さわぎ』
限定ベスト『すいか』
限定ベスト『HAPPY!』
今宵あなたに
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
1stアルバムのラストを飾る曲。ピアノとギターの掛け合いから始まり、セッションしている雰囲気のブルースロックっぽいバンドサウンドが展開する。やや地味な曲ではあるが、まだサポートが演奏の中核を占めるようになる前の純粋な6人組バンドとしてのサザンを堪能できる。中盤過ぎではほぼメインボーカル状態の強めの原由子のコーラスが入ってくるが、「茅ヶ崎に背を向けて」で聞けるソロパート同様にその歌声は堅く、後の原坊な雰囲気はあまりない。
“今宵あなたに逢いたくて”なんだけど”あなた悲しや天ぷら屋だけども”という事で会えない、そして”素肌負けないで”の連呼という…突如天ぷら屋という具体的かつ多くのリスナーが共感しにくいシチュエーション、そして何をどうしたら素肌負けないでの連呼になるのかという一見謎な設定となっている。天ぷら屋に関しては原由子の実家が天ぷら屋である事に由来、素肌負けないではこの数年前の資生堂のキャッチコピーの1つを引用したとする説が有力となっている。
今宵逢いたいのに天ぷら屋なのが理由で逢えない(悲しや)というのは要するに飲食店は夜が最も忙しいので実家の手伝い等で夜は逢う時間が無いという事と思われる。実際に桑田と原が交際していての実感を歌詞にしたものなのか、単にモチーフにしただけなのかは不明。そしてそこからの素肌負けないでに繋がる理由も良く分からないが、これを資生堂のキャッチからの引用ではなく、天ぷら屋→油を使う→お肌に影響が!→(油に)素肌負けないで、と解釈した方がしっくりくる。
★★★☆☆
1stアルバム『熱い胸さわぎ』
2nd 気分しだいで責めないで
78年11月25日
前作から5ヵ月、1stアルバムから3ヵ月だが、前作の大ヒットが遅れてやってきていたので前作がヒットしている最中にリリースされた。初のトップ10入り(10位)を果たし、何気に30万枚近いヒットを記録している。しかし前作のインパクトが凄すぎたのと、次回作が更なる大ヒットを記録した事や、いきなりのブレイクと多忙によりノイローゼ状態で同じような曲を求められたこともあってベスト盤に1度も収録しなかった事もあり、現在の知名度はかなり低いようだ。
気分しだいで責めないで
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、管編曲:新田一郎
前作の路線を求められてそのままリクエストに応えたようなハイテンションな楽曲。しかしノイローゼ!と当時TVで叫んだという逸話が残っていたり、史上最低の曲だと言い放ったとも言われており、当時の経験がある程度懐かしく振り返れるようになるまでは長い歳月を要したらしく、90年代になるまでライブでもやらなかったとか。
確かに勢いで押し切っているというか、とりあえず前作みたいなハイテンションを無理やり出している感じは否めないし、圧倒的なまでの二番煎じ感はある。それでも勢いだけでもそこそこのインパクトはあり、何度か聞いていればちゃんと耳にも残ってくるシングル曲らしいシングル曲だと思う。「勝手にシンドバッド」と「いとしのエリー」に挟まれている事や、そもそもベスト盤に1度も収録しなかったので聞ける機会が圧倒的に少ないという条件の不利もあると思う。
特に記載されていないがシングルとアルバムでは明らかに演奏が違う。全く違うわけではないが、イントロの瞬間からなんか違うなというくらい演奏が違うし、リマスター盤同士の05年のシングルと、08年のアルバムでも音圧やミックスがかなり違っている印象がある。
具体的にはシングルバージョンでは間奏突入時に「勝手にシンドバッド」を踏襲したものと思われる歌詞に無くなんて言っているのかよく分からない桑田の叫びが入る、そして最後はひたすらサビを繰り返しながらフェードアウトしていく。そして全体にボーカルが前に出ている。
アルバムバージョンは間奏突入時の叫びが無く、ラストも普通に演奏が終了する。またボーカルがやや演奏に埋もれ気味。叫びやサビ連発が無い事もあってアルバムの方がおとなしい印象がある。
★★★☆☆
シングルバージョンアルバム未収録
2ndアルバム『10ナンバーズ・からっと』(別バージョン)
C/W 茅ヶ崎に背を向けて
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
1stアルバムからのシングルカット。歌詞が3ブロックしかなく、歌自体も2分程度で終わってしまうがそこからアウトロで1分くらい長い演奏を聞かせてフェードアウトしていく。原由子に初めて単独のボーカルパートがある曲で(当時はまだソロ曲はやってない)、桑田と原のデュエット曲。といっても原は3ブロックある歌詞の2ブロック目を担当しているだけで2人がボーカルで掛け合いを見せるわけではなく、あくまでソロパートがある、といった感じ。この原の歌声は広く認識されている声を重ねたあのほんわかしたボーカルではなく、かなり堅く重ねていないボーカルを披露しているため、後追いで聞くと誰だか分からない。
楽曲自体は故郷を離れる心情を歌っており、それは故郷を離れ、学生生活を終え、プロの世界へ飛び込んでいく当時の自分たちの状況、青春時代(学生時代)との別れが反映されているものと思われる。背を向けてと言いつつも、茅ヶ崎を舞台にしたような名曲は以降もたくさん出てくるし、アラフォーになってから「Young Love(青春の終わりに)」なんて曲を書いたりもしているが、この時にしか書けなかった、出せなかった空気感は確かにあると思う。なんだか変にクセのある歌い方をしているのは本音に対する照れ隠しなのかなんなのか。
2018年の40周年ライブでは1曲目を飾り、歌詞を40周年のファンへの感謝を示したものに変更して披露された。
★★★☆☆
1stアルバム『熱い胸さわぎ』
3rd いとしのエリー
79年3月25日
当初は前2作と同じ路線の「思い過ごしも恋のうち」を3rdとしてリリース予定だったが、メンバーの強い意向でバラードである今作に変更したとされている。O社では2位を記録しているが、16週に渡ってトップ10入りするロングヒットを記録したほか、TBSの「ザ・ベストテン」では1位も獲得。70万枚を突破し、92年の2枚同時発売「涙のキッス」「シュラバ★ラ★バンバ」で2作にぶち抜かれて以降は続々抜かれたが、13年に渡って自身最大のヒット曲として君臨していた。年配世代にとってはかなり強烈なヒット曲としての印象が残っているらしく、サザンといえばこの曲だと答えるリスナーも多い。
いとしのエリー
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、弦編曲:新田一郎
いわゆる初期の名曲、名バラード。1stアルバムがそんなにヒットしたわけではなかったし、前2作のインパクトからしても確実にコミックバンドだと思われている中での大マジで歌いあげるバラードというのはなかなか難しいところがあり、一歩間違えるとインパクトの薄い凡バラードという印象で終わってしまいかねない。しかしここでこんなスタンダードな名バラードを生み出してくるとは天才か。桑田さん天才か。
ドラマ『ふぞろいの林檎たち』主題歌。発売当時のタイアップではなく、1983年のドラマ。以降85年、91年、97年と長きに渡って放映された人気シリーズとなり、一貫して主題歌として使用された事もあり、そのたびにプチリバイバル的に思い出されていたものと思われる。個人的には97年の最終シリーズの際にそういえばそんなドラマやってたような…という記憶がある程度でドラマ自体は知らない。同年夏の北海道旅行で石の家を観光した事から「北の国から」にハマって後追いしたのがまさにこの97年だったが、ふぞろいシリーズに関しては見ることは無かった。
サザンといえばこの曲という人が年上世代(80年代前半より前に生まれた)にべらぼうに多い上にやたら裾野が広いのはドラマの影響も大きかったんじゃないかと思う。
★★★★☆
2ndアルバム『10ナンバーズ・からっと』
1stバラードベスト『バラッド’77~’82』
限定ベスト『すいか』
限定ベスト『HAPPY!』
ベスト『海のYeah!!』
C/W アブダ・カ・ダブラ(TYPE 3)
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、弦編曲:新田一郎
前2作で根付いていたコミカルな雰囲気の楽曲。何故かいきなりTYPE 3として発表されたが、1ヶ月後の2ndアルバム『10ナンバーズ・からっと』にTYPE 1と2が揃って収録されている。番号的には今作が1番最後になるが、内容自体は1と歌詞が同じ、2は歌詞が異なっていて非掲載(記号)だが、アレンジ自体は3曲ともほぼ同じもの。2はともかくとしても1とは歌詞が同じで、アレンジも最後がちょっと違う程度しか変わらないような…。
何故に3バージョンも作ったのかは謎だが、TV出演が多すぎて並行しての制作がしんどかったというのは今も言われている事で、「いとしのエリー」をA面に主張して通した以上は2ndアルバムリリースを遅らせる事も出来ず、タイトル通り「10」曲揃えるのも必須、しかし曲を書く時間が無かったので苦肉の策で1曲を分割する事でアルバム残り1曲を埋め、先行シングルのC/Wを埋め…と何とか乗り切った…という事なのかもしれない。
★★★☆☆
TYPE-3アルバム未収録
2ndアルバム『10ナンバーズ・からっと』(TYPE-1)
2ndアルバム『10ナンバーズ・からっと』(TYPE-2)
From 2ndアルバム『10ナンバーズ・からっと』
79年4月5日
突然の大ブレイクによりTV出演を連日こなす中でノイローゼ状態で必死に作られた作品とされる。
お願いD.J.
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、管弦編曲:新田一郎
ラジオDJをテーマにした曲で間奏で桑田さんが変な声でDJになりきっているのはアメリカの有名なラジオDJウルフマン・ジャック(95年没)のモノマネだという。今でも若者向けミュージシャンがオールナイトニッポンなどの深夜ラジオを担当したりして人気を得ているので若者の間でのラジオ文化はそこそこ健在ではあると思う。今ならradikoもあるし。個人的にはradikoが無い時代にノイズ交じりの深夜ラジオを中高の頃によく聞いていて例えばZONEをデビュー時から買い続けたのも深夜ラジオで偶然聞いたからだったりする。
そんな音楽との出会いの場としての側面を持つラジオだが、今作リリース時点は既に桑田さんはラジオを聞く側ではなく出る側、呼ばれる側になっていたと思うので、今作で歌われているような事はたぶんいちリスナーとしてラジオを聞いていた今作時点よりもさらに前の頃の思いを反映させていると思う。70年代のラジオは今よりももっと若者の文化の中心だったと思われ、音楽との出会いの場としても筆頭の場所だったと思う。You Tubeどころかネットも無い、それどころかウォークマンすらなかったのである(ウォークマン1号機の発売は79年夏で今作リリースの後)。当然ラジオは今よりもずっと身近なものだったと思う。そう考えてこの曲を聞くと想像の域は出ないけど、現代の感覚で聞くよりも何かもっと大切な思いが込められているように思えてくる。
★★★☆☆
2ndアルバム『10ナンバーズ・からっと』
限定ベスト『すいか』
ラチエン通りのシスター
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
茅ヶ崎に背を向けたばかりだったが、ラチエン通りというのは茅ヶ崎に実在する通りでいわゆるご当地ソング的な側面もある楽曲。3連バラードの名曲といえば「栞のテーマ」だが、80年代以前のサザンファンだったら「栞のテーマ」と並べて今作を上げるのではないか、というくらいにはあまり隠れてない人気曲と思われる。割と量産タイプにも聞こえるがそれでも普通以上にいい曲になってしまう、個人的にはさりげない良曲といった印象。
★★★☆☆
2ndアルバム『10ナンバーズ・からっと』
1stバラードベスト『バラッド’77~’82』
4th 思い過ごしも恋のうち
79年7月25日
アルバムから3ヵ月でのシングルカット。2曲ともシングルカットとなったため、前3作の売上を下回ったがそれでもトップ10入り(7位)を果たして20万枚を越えるヒットを記録している。
思い過ごしも恋のうち
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、弦管編曲:新田一郎
元々これが3rdシングルの予定であった…と言われなくてもそうだったんだろうなというような早口歌唱&ノリノリな1曲。ブリッジ部分で原由子がメインになったり、管弦アレンジをふんだんに盛り込んだりと色々と工夫して凝ってはいるので、単なる「勝手にシンドバッド」の同系統という方向性に留まらずに越えていくような気概も感じられる。現在は3枚サイクルだとか似た曲調だとかで片づけられてしまっていて、wikipediaレベルでもそのような言葉が散々並んで解説されているため、恐らく曲を聞くよりそういった文章を見るのが先になっていて先入観が出来上がった状態で聞く事になるリスナーも多いと思うけど、聞いてみれば思った以上に歌詞、メロディー、アレンジすべてにおいて完成度が高い。パーカッションがけっこう活躍しているのも個人的にはポイント。
基本的な演奏はほぼ同じだが、シングルバージョンとアルバムバージョンではホーン演奏やコーラスなど上モノのアレンジが少し異なっている。全体的な印象ではシングルバージョンの方が管弦の音(特に管)がアルバムよりも目立って前に出ている感じはする(アルバムだとそういえば鳴ってるな程度だが、シングルではもっと明確にパラッパ鳴ってるのが耳に入ってくる)。シングルバージョンはシングルでしか聞けない…が「気分しだいで責めないで」ほど明らかに違うわけでもないのでややマニア向けか。
★★★★☆
シングルバージョンアルバム未収録
2ndアルバム『10ナンバーズ・からっと』(アルバムバージョン)
限定ベスト『すいか』(アルバムバージョン)
C/W ブルースへようこそ
作詞作曲編曲:サザンオールスターズ
作詞も作曲もバンド名義になっている珍しい曲でこれもアルバムからのシングルカット。2ndアルバムで歌詞が記号になっていた曲の1つで、歌詞が記号になっていたのはタイトなスケジュールで入稿に間に合わなかったためとか色々な説があったが、2ndアルバムから3ヵ月経過した今作でも歌詞掲載は無い(05年リマスター盤では記号ではなくタイトルとクレジットだけで後は空白)。今作に関しては理由がもう1つ言われていて歌詞が男性の同性愛をモチーフにした過激なものだからではないかというのが通説で、実際そっちなんじゃないかと思う。これでオチに使われてしまったムクちゃん(ベース関口の愛称)はちょっとかわいそう。そしてそんなギリギリなテーマの曲をわざわざC/Wとはいえシングルカットしたのは謎だが…。
実際のところは普段から聞き取りにくい桑田歌唱が今作では明らかにブーストしたような聞き取りにくい不明瞭な発音で歌っているので、聞き取ろうと耳を傾けない限りはほとんど出鱈目歌詞歌唱にしか聞こえず、断片的なフレーズしか耳には入ってこない。主にこの曲については歌詞の面でしか語られずどんな曲調なのかには言及されない事が多いが、曲自体はレイドバックしたゆったりしたサウンドが展開していてけっこう心地いい。
★★★☆☆
2ndアルバム『10ナンバーズ・からっと』
5th C調言葉に御用心
79年10月25日
79年3作目、最高2位で40万枚近いヒットを記録した。連続でのトップ10ヒットで大成功した1979年の締めは初の紅白出場(「いとしのエリー」)。大忙しでメディア出演をこなしていたが、この反動で翌年はメディア出演を控えたりと一気に方針転換したため、初期からのシングル連続ヒットは一旦ここで止まる事になる。
C調言葉に御用心
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、弦編曲:新田一郎
調子いい→ちょーしいー→しいーちょー→C調というギョーカイ用語的な造語。要するに調子のいい言葉には用心しろよ!とC調に歌いあげるC調な曲(しかし音楽理論的な意味ではこの曲はC調ではなくE調とされる)。C調に限らず、この手の“ザギンでシースー”(銀座で寿司)に代表されるような単語を分解してひっくり返す業界人風の言い方は最早死語と化しており、現在は完全なバブル・ギャグとして扱われている。”あいつ最近C調だよな”とでも口走ろうものなら奇異な目で見られることは確実だろう。ただこの曲自体は「海のYeah!!」収録により現在でもそこそこ有名なのでサザンファンだと名乗らなくてもサザンファンだと相手に認識してもらえるかもしれない。
曲調も含めてポップで聞きやすく、ようやく「勝手にシンドバッド」の延長みたいなイメージから逃れられた事を感じる。冒頭の「ウィン!」といい、アレンジといい何だか妙にカワイイ雰囲気も漂う。
★★★★☆
3rdアルバム『タイニイ・バブルス』
限定ベスト『すいか』
限定ベスト『HAPPY!』
ベスト『海のYeah!!』
C/W I AM A PANTY(Yes, I am)
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、管編曲:新田一郎
またしても歌詞非掲載な楽曲。タイトル通りストレートにパンティーをテーマにしていてサビでは桑田メインボーカルと原コーラスによる“パンティー”が連呼されるというかなりの珍曲。なんなんだこれは…というのを平気でやってしまうのもまたサザンオールスターズ。
★★★☆☆
限定ベスト『すいか』
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