大塚愛 15周年シングル回顧2~2006-2008~
人気絶頂期から徐々に落ち着きつつあった15周年の中期に位置する時期。基本ルーティンを維持しつつも、前年頃から見せつつあった打ち込みから生音バンドサウンドメインでの移行、シングルでは新たな方向性も見せ始めていた。
産休前のオリジナルアルバムはこの時期のシングル収録までとなり、レンタル限定の2011年の『SINGLE COLLECTION』もここまでが対象となっていて概ねTVによく出てくる大衆向けシンガーだったのもこの頃くらいまでだった。
一応全アルバムCDで視聴しているものの今回はそのまま『Single Collection:LOVE IS BORN ~15th Anniversary 2018~』全曲という形のため、圧縮音源であるこの配信限定アルバムを聞いた上での執筆。
11th フレンジャー
06年4月12日
春恒例となったようなはじけた元気ナンバー。フレンドと戦隊モノのレンジャーを掛け合わせた造語でパッケージやMVでも戦隊モノの雰囲気がそこはかとなく導入されている。MVはどちらかというとバイクに乗っている大塚愛の方がメインだったように記憶しているが、Mステではバックバンドがカラフルな戦隊になっていてよりレンジャー感(?)があった。サビの最後の掛け声のファイッ!が力みすぎてポイッ!!に聞こえるなどともコメントしていてこの部分もインパクトがあった。これと「CHU-LIP」のパフォーマンス(後述)がTVで派手に爪痕残した…というかTV向けに派手なパフォーマンスを考えてやっていた最後の方の時期だったと思う。
これまでのアッパーな楽曲のイメージから大きく離れた曲ではないが、「SMILY」のようなサビのギリギリ感も無く、また初期と違ってIKOMAN編曲でも1人オケではなく、ちゃんとバンドメンバーを起用するようになったのでさりげに演奏にちゃんと厚みが感じられるのも特徴。バックバンドのカラーレンジャーはアテブリ感強かったけどな
★★★☆☆
4thアルバム『LOVE PiECE』
レンタル限定ベスト『SINGLE COLLECTION』
配信限定ベスト『Single Collection:LOVE IS BORN~15th Anniversary 2018~』
3rdベスト『愛 am BEST,too』
12th ユメクイ
06年8月2日
自身主演映画『東京フレンズ The Movie』主題歌。フジテレビとエイベックスの共同企画でDVDドラマとして展開した『東京フレンズ』はまさに全盛期フジテレビドラマのスタッフが集結した夢と葛藤と最終的には成功に至るキラキラの若者たちのドラマであった。初期の大塚愛対談レビューの際にすざきんぐ氏が名作だと絶賛していたのでその後でDVD見たんだけど、当時既に地上波では失われつつあった月9全盛期の頃のフジテレビドラマって感じだった。
このドラマは田舎から上京してきた主人公(大塚愛)が東京で良き友人たちと出会い、そしてバンドに誘われてバンドという夢を見つけていくというもので、そのバンドの持ち歌としても劇中で何曲か披露していた(サントラに収録)。ドラマは途中で終わってしまい、この映画に続く形となったが、映画の半分はドラマの再編集であった。しかもドラマと映画の重複シーンも全部新たに撮り直しされており、さらにドラマとは細部の設定や展開をズケズケ変更しまくるという、厳密にドラマと映画の話がちゃんと繋がってないですやん…改変してますがなという視聴者がちょっと混乱するような展開だった。ドラマと映画のこの微妙なズラし以外は結末は良かった。
この曲はまさにそんな夢を追った登場人物たちのテーマ曲であり、恋愛ではなく夢をテーマにした大塚愛のシングルの中でも珍しい楽曲となった。MVは映画と連動させずにアニメーションとなっていたようだが、ドラマ・映画がバンドの話だっただけに曲も通常よりもロックバンド調のサウンドになっている。ただ謎なのがここにきてドラムも生音での制作体制に移行していたのに何故かここでドラムが打ち込み。何故にロックバンド調のこのサウンドでドラマー呼ばずに機械で処理してしまったのか、もったいなさすぎる…。撮影が忙しすぎて制作がタイトだったのだろうか。
作品自体も良かったけど、楽曲単独でもやはり女性の恋愛感情以外がテーマになっているこの曲の歌詞は共感しやすかったし、メロディーにしても大塚愛の個人的最高傑作に位置する。主人公グループの1人として出演して当時はその演技の棒っぷりからドラマ視聴者界隈では”魔王”のコードネームで揶揄されていた小林麻央も早くに亡くなってしまった今、このドラマの夢を追う若者達も若者ではなくなり、遠い日々になりつつあることも感じる。年月を重ねるごとに懐かしい気持ちになる1曲になっていきそう。
★★★★★
4thアルバム『LOVE PiECE』
レンタル限定ベスト『SINGLE COLLECTION』
2ndセルフカバーミニアルバム『aio piano』(ピアノ弾き語り)
配信限定ベスト『Single Collection:LOVE IS BORN~15th Anniversary 2018~』
3rdベスト『愛 am BEST,too』
リメイクアルバム『犬塚 愛 One on One Collaboration』(SASUKE Remix)
13th 恋愛写真
06年10月25日
映画『ただ、君を愛してる』主題歌。恒例の秋冬年末バラード。サビでは映画タイトルを連呼するというタイアップに寄り添った楽曲。『ただ、君を愛してる』という映画は元々03年の映画『恋愛寫眞』が元ネタでこれとコラボレーションという形で『恋愛寫眞 もうひとつの物語』として『いま、会いにゆきます』が大ヒットした市川拓司が書き下ろした小説を映画化したものだった。分かりにくいが要するにリメイクに近い形で、『恋愛寫眞』の”男女が恋人関係になるが、女性が失踪、やがてNYにいるという情報をつかんだ男性がNYへ探しに行く”という大枠のストーリーのみを引用してそれ以外の経緯や結末を新たに設定して書き上げたもの。
映画自体はファンタジー色が強く、市川拓司の得意パターンである“特殊な病気”を映画『恋愛寫眞』の大枠と”ヒロインの消失”という結末に当てはめたような感じで正直パターンすぎてウンザリなところはあったが、全盛期のカッコよさを誇る主演玉木宏とヒロインを演じた宮崎あおいの圧倒的な美少女っぷりというピーク×ピークな美男美女カップリングは絵的には最強であった。というか最早宮崎あおい美しすぎてマジヤベェしか覚えていない勢い。他の映画でもかわいいことはかわいいんだけど、この映画の宮崎あおいだけなんか飛び抜けていたような印象が残っている。なお『恋愛寫眞』も『ただ、君を愛してる』も両方見たけど、『恋愛寫眞』は失踪の真相が唖然…、『ただ、君を愛してる』の方も市川さん病気ネタがパターン化しすぎ…だった。
そんなわけで「恋愛写真」という曲タイトルもタイアップ先の元ネタ(漢字は違うが)であり、かなりタイアップに密接した楽曲。映画タイトル『ただ、君を愛してる』に関してはこの曲が先にあり、主題歌を聞いた監督が映画タイトルを全く別のタイトルだったところからサビ頭のフレーズに変えたとされている。
いずれにせよ、シンプルにただまっすぐな愛の歌。過去形の曲であるというのもあるが、「大好きだよ。」ほど盛り上げるわけでもなく、より大人っぽく、よりしっとり、よりシンプルに届いていく1曲だ。
後に発表された「恋愛写真-春-」は単にピアノストリングスでシンプルに聞かせるリアレンジにも聞こえるが、最後のサビ前に新たな歌詞が追加されており、”その後”を示唆している。このたった1行の追加がある事で、最後のフレーズは全く変えていないにも関わらず2人の写真が過去のものではなく現在のものに変わり、意味合いが変わってくるというのは鮮やか。
★★★☆☆
4thアルバム『LOVE PiECE』
15thシングルC/W,2ndベスト『LOVE is BEST』(-春-)
レンタル限定ベスト『SINGLE COLLECTION』
2ndセルフカバーミニアルバム『aio piano』(ピアノ弾き語り)
配信限定ベスト『Single Collection:LOVE IS BORN~15th Anniversary 2018~』
3rdベスト『愛 am BEST,too』
14th CHU-LIP
07年2月21日
ドラマ「きらきら研修医」主題歌。遊び心全開のポップロックナンバー。中毒性の高いキャッチーさに加えて、TVでのパフォーマンスも派手で、やたらと濃い見た目の様々なバックダンサー(南流石ダンサーズ)が強烈なインパクトを残した。「フレンジャー」に続いてしてやったりなTV向けのパフォーマンスだった。シングル単位では聞いていなかったが、今作はこの中毒性とインパクトにハマってしまい、久々にシングルを手に取った。
2ndアルバムを最後にCDを手に取っていなかったので今作が生音編成になっていたのにまず驚いたが、ドラムが沼澤尚だったのも驚きだった。02~04年のDEEN’S AORを支えた名ドラマーという認識でいたので、こんな明るい曲でドラム叩いているイメージが当時なかった。
★★★★☆
4thアルバム『LOVE PiECE』
レンタル限定ベスト『SINGLE COLLECTION』
1stセルフカバーミニアルバム『AIO PUNCH』(-蜂蜜酒-)
配信限定ベスト『Single Collection:LOVE IS BORN~15th Anniversary 2018~』
3rdベスト『愛 am BEST,too』
15th PEACH/HEART
07年7月25日
2曲ともMVは制作されたものの、発売当時は「PEACH」の方にのみヒットドラマタイアップがついていたので、ほぼ単独A面に近いような扱いだった。
PEACH
ドラマ『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』主題歌。当初あまり期待されていなかったがヒットした堀北真希主演版(何故かわずか4年後にAKB48前田敦子主演でリメイクしてそっちはヒットしなかった)。OPではイケない太陽ォォォ~♪とORANGE RANGEがかかっていたらしいが、正式な主題歌はこっちだった。OPと主題歌が別にあってOPが勢いある場合、主題歌は落ち着いた曲というパターンもあるが、これは普通に明るくポップな大塚愛。さすがに落ち着きつつはあるが、期待に応えた、らしい曲といった印象。そこそこ広がったヒット曲としては恐らくこの辺りが最後になってくることもあるが、そもそも今までのイメージに応えた大塚愛らしいシングル曲という意味でもいかにも全盛期最後のヒット曲っぽい感じもある。
★★★☆☆
4thアルバム『LOVE PiECE』
レンタル限定ベスト『SINGLE COLLECTION』
1stセルフカバーミニアルバム『AIO PUNCH』(-ウォッカ-)
配信限定ベスト『Single Collection:LOVE IS BORN~15th Anniversary 2018~』
3rdベスト『愛 am BEST,too』
リメイクアルバム『犬塚 愛 One on One Collaboration』(Tomggg Remix)
HEART
後からCMタイアップがついたものの、当時は「PEACH」に完全に印象を持っていかれていた。「PEACH」のイメージを逆にしたものと当時もコメントしていたが、オシャレな感じのアレンジを施した落ち着いたポップス。恐らくそろそろ元気で明るい大塚愛としっとりラブバラードという期待に応え続けるよりもやりたかったのはこういう曲だったんだろうなと思う。A面曲の中ではかなり影が薄いが、聞き始めるとけっこう飽きない1曲。
★★★★☆
4thアルバム『LOVE PiECE』
2ndベスト『LOVE is BEST』
レンタル限定ベスト『SINGLE COLLECTION』
配信限定ベスト『Single Collection:LOVE IS BORN~15th Anniversary 2018~』
16th ポケット
07年11月7日
「マイナビ2010」CMソング。恒例年末バラード。これまでのバラードにあったサビでの一定の盛り上がりも無く、落ち着いたトーンのまましっとり進行するラブバラード。冬に向けて温かみを感じるサウンドは悪くは無いが、率直にこの流れでこの曲は相当地味。これまで10万枚を越えていた売上が今作で半減してしまい、以降回復することも無かったのでここらでプッツリヒットの記憶が途絶えているリスナーも多いかも。個人的にもこれ以降ってあまりヒットしていた印象が無い。ちょっとシングル向けの曲ではなかったんじゃないかとも思うが、確か当時は渾身の力作であるような事を語っていた記憶がある。ただ15周年ベストではあっさりスルーされていることから現在ではそうでもなかった…という風に変わったのかも。
★★★☆☆
5thアルバム『LOVE LETTER』
2ndベスト『LOVE is BEST』(~Last Love Letter~)
レンタル限定ベスト『SINGLE COLLECTION』
配信限定ベスト『Single Collection:LOVE IS BORN~15th Anniversary 2018~』
17th ロケットスニーカー/One×Time
08年5月21日
3作目の両A面シングル。前回同様に「ロケットスニーカー」がほぼメイン扱いされていた。
ロケットスニーカー
ポップで明るい曲だが以前のようなはじけた感じは無く、一定の落ち着いた雰囲気が感じられる。地球の上に立っている感じというのは華原朋美の某曲を思い出させるが日常の感覚を地球の上に立っているという最大規模の視点で綴った歌詞がユニーク。「ロケットスニーカー」というタイトルもキャッチーだが、“あぁ地球っこ”というキラーワードも飛び出し、代表作的なインパクトがあると思う。
低迷後結婚前の曲の中では屈指の1曲。ただ喉を壊したのか歌い方が少しおかしくなっていて、なんか妙にやさぐれ気味というか変に丸めるようになってきたというか、発音が一時期の先輩持田さん化しているのが気になる。
★★★★☆
5thアルバム『LOVE LETTER』
レンタル限定ベスト『SINGLE COLLECTION』
配信限定ベスト『Single Collection:LOVE IS BORN~15th Anniversary 2018~』
One×Time
「HEART」同様に徐々に見せつつあったが表題ではあまりやっていなかった落ち着いたポップス。やはりシングルとして聞いた場合に地味さは否めないが、これまた飽きない1曲。
『LOVE is BEST』ではRIP SLYMEのSUとのコラボで新たにSUによるパートを加えた「aisu×time/大塚愛×SU from RIP SLYME」としてリメイク。両A面で出した時よりもむしろこの時の方がリード曲扱いでMVも制作されて扱いが目立っていた。
初のコラボらしいコラボとなったが、翌年この2人は結婚を発表、単なる婚前カップルのいちゃつきだった事がほどなくして発覚この曲以降結婚までに狙ってたでしょ?と言いたくなるような曲がいくつか登場した。
★★★☆☆
5thアルバム『LOVE LETTER』
2ndベスト『LOVE is BEST』(「aisu×time
/大塚愛×SU from RIP SLYME」)
レンタル限定ベスト『SINGLE COLLECTION』
配信限定ベスト『Single Collection:LOVE IS BORN~15th Anniversary 2018~』
18th クラゲ、流れ星
08年9月10日
恒例年末バラード。前年の「ポケット」に比べるとそれ以前に近い系統だが実際昔からあった曲だったらしい。クラゲ流れ星という謎のキラーワードとそれをサビ頭に持ってきた事、そしてイントロもほぼこのサビメロをなぞっている事による1フレーズインパクトは非常に強いが、逆にそれ以外はやや地味でいつもの年末バラード的な印象に行きがちではある。このルーティン的な春にはじけて、夏は自由、秋冬ラブバラードという大まかなパターンが続けばまあ仕方ないところはあるか。浜崎あゆみも年末バラードの恒例化で後年ほどいつもの感じになっていったもんなぁ…。
★★★☆☆
5thアルバム『LOVE LETTER』
レンタル限定ベスト『SINGLE COLLECTION』
配信限定ベスト『Single Collection:LOVE IS BORN~15th Anniversary 2018~』
19th バイバイ
09年2月25日
初のシングルカット曲。C/Wも無し(カラオケのみ)でリリースしたため、5万を割っていた売上がさらに半減したがファンがバイバイしてしまったとか絶対言ってはいけかろうじてトップ10入りは果たした。アルバムに置いておくだけではもったいない軽快で良メロなポップナンバーだが、わざわざシングルで切らなくても…という気もしなくもない。それでも元気な大塚愛、バラードな大塚愛、最近やりたそうだったちょっとオシャレ風味なポップスのいずれにも属さない系統なのでシングルだけ並べて聞いていくとけっこういい曲だなと思えてきて耳に残りやすい。
★★★★☆
5thアルバム『LOVE LETTER』
レンタル限定ベスト『SINGLE COLLECTION』
配信限定ベスト『Single Collection:LOVE IS BORN~15th Anniversary 2018~』
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