福耳 20周年シングル回顧~1999-2018~
事務所オフィスオーガスタのオールスターユニット福耳。参加メンバーは当初の3人から徐々に増員し、やがてほぼ全員が参加者となり、サポートの演奏メンバーも事務所内の演奏者で固めるようになり、演奏者もメンバーに含まれるようになった。
オフィスオーガスタ自体がBARBEE BOYS解散後ソロになった杏子のマネージメントのために設立されたため、杏子が最長老的存在となっており、当初の楽曲は杏子が完全なメインボーカルでそれ以外のメンバーはコーラス扱いであった。
1998年Zepp Sapporoの杮落しライブ「福耳」にて杏子、山崎まさよし、スガシカオの3人で杏子のソロシングル「星のかけらを探しに行こう」を歌唱したのがきっかけとなり、翌99年に杏子、山崎まさよし、スガシカオの3人によるスペシャルユニット福耳として「星のかけらを探しに行こう Again」でデビュー。
同じく99年、00年に山崎まさよしが行っていた夏の野外ライブ「YAMAZAKI MASAYOSHI in Augusta Camp」は01年以降は事務所ミュージシャンが集う年に1度の夏の野外イベント「Augusta Camp」として恒例化した。
これに伴い、福耳としての新作リリースも02年以降不定期に行われるようになった。基本的に各メンバーが多忙なため、福耳としての新曲はシングルでも表題曲に限られ、C/Wは「ALL OVER AGAIN」を除いて既存曲のコラボライブ音源に限られ、アルバムリリースも何度か行われているが、これも福耳名義での新曲は制作されず、各アーティストがお互いをゲストで招いていた既存曲を収録したり、リメイクだったり、一部メンバーでの新曲などに留まっている。
そんなわけで福耳としての『ALL TIME BEST ~福耳 20th Anniversary~』に収録された全12曲を振り返る。
1st 星のかけらを探しに行こう Again
99年7月14日
作詞:杏子、作曲:杏子・馬場一嘉、編曲:福耳Project、ストリングスアレンジ:森英治
編曲が福耳Projectとなっていて匿名性が強くなっているが、演奏メンバーは間宮工(Guitar)、中村”キタロー”幸司(Bass)、森俊之(Keyboards)、中村文俊(Manipulation)と表記されており、杏子・スガシカオはボーカルのみ、山崎まさよしがボーカルに加えてギターとハープを担当している。メンバー的に森俊之が編曲の中心人物になるのだろうか。
95年2月の杏子のシングル「星のかけらを探しに行こう」のリメイク。タイトルに新たにagainが付属しているが、オリジナルの方はかなり忘却&歴史の彼方に葬り去られた感があり、当時のオリジナルアルバム『Dear Me』の1曲目を飾るなどリード曲的存在だったようだ。
収録内容は同じで特典でオフショットブックレットが付属する程度の初回特典だったにも関わらず、品番が初回と通常で別だったため、当時のO社では別集計され初回盤は初登場9位、通常盤が初登場74位となった。初回盤はそのまま100位以内3週でチャートアウトして品切れ、通常盤は2週目以降に順位を爆上げして100位以内16週に渡ってロングヒット、最高16位を記録して20万枚を越えた。通常盤だけでもダントツの最大ヒット作だが、合算すると27.8万枚となる。これは2ndが02年でもう一気にCD売上が落ちていった時期という事も重なって今作以外は10万越えも1作も無い。
福耳バージョンは3人でボーカルを担当している事にはなっているものの、杏子の完全リードソロボーカル状態で、山崎まさよし・スガシカオの両名は完全にコーラス要員で一応最後に”今宵星のかけらを探しに行こう”の連呼などコーラスがメインパートみたいになる箇所もあるにはあるが、事務所の大先輩である杏子を引き立てるのに徹している。
元々かなりハスキーな枯れボイスが杏子のボーカルの味とはいえ、この当時は後年ほどはガラガラしておらず、曲調も相まってしっとりと綺麗な声で歌っているようにも聞こえる。まさに夏の夜空を感じられるロマンティックかつ美しさを感じる楽曲で、当時ソロでは90位とヒットしなかったもののagainとして復活させただけの事はある名曲。夏の旅先で都会よりもたくさん見える星空を眺めながら聞く…というシチュエーションが最もハマる1曲だろう。当時人気絶頂を迎えていた山崎まさよし、スガシカオの力も借りて福耳という形で今度はヒットしたというところも含めて埋もれなくて良かったなと改めて思う。
C/WにはAgainの付属しない「星のかけらを探しに行こう(Southern Milky Way Version)」という別アレンジバージョンが収録されている。また2010年には杏子+さだまさよし(岡本定義(COIL)+山崎まさよしでの2010 Acoustic ver.があり、福耳としてはスタジオバージョンは3種。これ以外にも始まりの1曲らしく主にC/WでAugusta Campで披露したライブ音源の収録頻度が高い。文字通りの福耳の代表曲である。
★★★★☆
1stベスト『THE BEST WORKS』
3rdベスト『ALL SONGS MUST PASS-Office Augusta 20th Anniversary BEST-』
4thベスト『ALL TIME BEST~福耳 20th Anniversary~』
C/W(「星のかけらを探しに行こう(Southern Milky Way Version)」)
2ndシングル『10 Years After』C/W(1999年8月28日 富士急コニファーフォレスト・ライヴテイク)
4thシングル『惑星タイマー』C/W(Augusta Camp 2004)
5thシングル『DANCE BABY DANCE/夏はこれからだ!』C/W(Augusta Camp 2007 Live Version)
2ndベスト『THE BEST ACOUSTIC WORKS』(2010 Acoustic ver./杏子+さだまさよし(岡本定義(COIL)+山崎まさよし)
3rdベスト『ALL SONGS MUST PASS-Office Augusta 20th Anniversary BEST-』(2010 Acoustic ver./杏子+さだまさよし(岡本定義(COIL)+山崎まさよし)
ライブアルバム『ALL SONGS MUST PASS-BEST LIVE RECORDINGS From Augusta Camp 2012-』(YOKOHAMA Day1)
2nd 10 Years After
02年7月17日
作詞:杏子・谷穂ちろる、作曲:山崎将義、編曲:スガシカオ・森俊之
3年ぶり。参加メンバーが一挙急増したが、COIL以下のメンバーはコーラス参加のみで、基本的には初期メンバー3人に元ちとせが加わったようなボーカル編成。当時デビュー曲「ワダツミの木」が大ヒットしていたため、元ちとせの加入が大きな話題として取り上げられたが、野狐禅、スキマスイッチはインディーズでデビューしたばかりのド新人、サンプリングサンは全員では今回限りの参加であり、ほとんど注目されていなかった。
COILの扱いのみやや微妙なところで今作においてコーラス参加しかしていないメンバーとしては唯一次回作にも引き続き参加している。スキマスイッチは4th、野狐禅は野狐禅としてはこれっきりで、解散後に竹原ピストルが参加したのは7th(2017)から。
前作はあくまで杏子のソロ曲を手直ししたものだったが、今作は初期メンバー3人が作詞作曲編曲それぞれに関与して共作した完全なる新曲。加えて事務所の後輩たちがコーラス参加しているなど前作よりもスペシャルユニット感が出ている。ファンキーなポップチューンでこのファンキーな雰囲気は編曲に参加しているスガシカオの要素が強いように感じる。今回はクレジット上もVocal表記があるのは杏子1人だけで山崎まさよしがAcoustic GuitarとChorus、スガシカオがElectric GuitarとChorusという扱い。参加が話題になった元ちとせもクレジット上の扱いはBridge Voiceとなっていて単独の歌詞のあるパートは無いが、サビで延々とウ~ウ~♪と確かにブリッジなボイスを響かせているほか、最後のサビ前ではこのウ~ウ~♪コーラスがフューチャーされ、結果ウ~ウ~♪しかやってないのに神秘的な存在感を存分に発揮。当時ヒットしていた「ワダツミの木」に対してよく言われた“神の声”という形容も納得だ。元ちとせはあまりにも存在感が独特すぎるためか以後もこのように別枠のように登場してくる扱いが多い。他の後輩コーラス陣はたぶん最後のサビ以降に延々連呼されているエ~オッエ♪エ~オッエ♪エ~オッエ♪要員だったと思われ、判別はできない。
10年後を約束するような歌詞といい、福耳の活動年数が10年を越えてきた辺りからまた別の響きが出てきた1曲だと思う。ただ今作から10年後にはスガシカオが退社していなくなっ
★★★★☆
1stベスト『THE BEST WORKS』
3rdベスト『ALL SONGS MUST PASS-Office Augusta 20th Anniversary BEST-』
4thベスト『ALL TIME BEST~福耳 20th Anniversary~』
ライブアルバム『ALL SONGS MUST PASS-BEST LIVE RECORDINGS From Augusta Camp 2012-』(YOKOHAMA Day1)
3rd SUMMER of LOVE
03年7月23日
前作ではコーラスで後輩が大量参加したが、今作では杏子・山崎まさよし・スガシカオ・COIL・元ちとせまでの参加となっていて、当時ブレイクしていたスキマスイッチも参加していない。C/Wにオリジナルの新曲が収録されている唯一の作品。
SUMMER of LOVE
作詞:谷穂ちろる、作曲:佐藤洋介、編曲:間宮工
今作ではVocalは杏子 with 山崎まさよし。後は全員コーラス扱い。基本的に杏子メインだが山崎まさよしがAメロ部分でリードボーカルを取るなど、一部ツインボーカルのような編成になっている。ギターベースドラム+シタールというシンプルな演奏スタイルだが、シタールが独特の雰囲気を醸し出していて少し長いアウトロ部分で特に不思議な余韻を残す。基本的には野外ライブを盛り上げるのを念頭に置いたようなガツンとしたロックナンバー。
60年代のロックスターがテーマになっているのか歌詞の内容はイマイチよく分からないが”マナツ ノ ヨル ノ ユメ ロック・スターが空を翔ける”と歌われればなんだかとってもロックスターっぽい。ていうかサビ頭がオールカタカナ表記だったり、“クラッピョハン”、“ワンサゲン”など英語だと思ってたらまさかのカタカナ読みで掲載されていたりと歌詞を見ないと分からないオモシロポイントがあったりする。恐らくClap Your HandとOnce Againの事だと思われるが、ストリーミングやら配信ではますます歌詞を目にする機会が減っている昨今だが、歌詞を文字で見ると時々こういう思ってたのと違う表現がされていて面白いぞ…とさらっと推奨しておく。
★★★★☆
1stベスト『THE BEST WORKS』
3rdベスト『ALL SONGS MUST PASS-Office Augusta 20th Anniversary BEST-』
4thベスト『ALL TIME BEST~福耳 20th Anniversary~』
ライブアルバム『ALL SONGS MUST PASS-BEST LIVE RECORDINGS From Augusta Camp 2012-』(YOKOHAMA Day2)
C/W ALL OVER AGAIN
作詞:谷穂ちろる、作曲:M&G、編曲:間宮工
唯一のC/Wでの新曲。コーラスとしてサンプリングサンの矢野仁志・田鹿祐一、ドラムにあらきゆうこが参加している。
熱いロックバラード。Vocalは杏子1人になっているがAssociate Vocalという扱いで元ちとせがクレジットされていて後は全員コーラス。終盤以外はコーラスも無いので今まで以上に杏子の単独ボーカル色が強いが、大サビ部分でついに元ちとせが歌詞のあるパートで単独メインボーカルを担当(ただしこの部分のみ歌詞は「~」で括られている上に全部ひらがな表記になっていて別枠のような扱いになっている)。正直もっと歌わせてあげればいいのに…と思わなくも無いが、存在感ハンパ無いのでこれだけの出番でもかなりのインパクトがある。
★★★☆☆
1stベスト『THE BEST WORKS』
3rdベスト『ALL SONGS MUST PASS-Office Augusta 20th Anniversary BEST-』
4thベスト『ALL TIME BEST~福耳 20th Anniversary~』
4th 惑星タイマー
正式にスキマスイッチ、ドラムのあらきゆうこがメンバー入り。前年の「全力少年」、同年の「ボクノート」などスキマスイッチが事務所筆頭でヒットを飛ばしていた時期で、今作もそのままスキマスイッチが全面的に楽曲制作を担当。これ以降は事務所の新鋭アーティストが制作を担当したり、いきなりボーカルを担当したりする事が増える。また前3作は杏子が全面的にリードボーカルを担当していたが、今作から杏子以外のメンバーもコーラス以上に歌うようになった。今作は演奏メンバー以外は表記上全員がVocal,Chorus表記となり、1番はスキマスイッチ大橋卓弥、2番は杏子、大サビ以降はほぼ全員で歌っていて、最後のサビではスガシカオ、山崎まさよしにも単独パートがある。
スキマスイッチ単独のバージョンは2種存在し、1つは3rdアルバム『夕風ブレンド』に収録されたalbum ver.。こちらはリアレンジが施されてバラードに改変されているが、ベスト盤『グレイテスト・ヒッツ』、『POPMAN’S WORLD~All Time Best 2003-2013~』に収録されたバージョン(バージョン名なし)は福耳のオケそのままにボーカルを全面的に大橋卓弥に差し替えたものとなっている。元々全面的にスキマスイッチが作詞作曲編曲を手掛けていたので全く違和感が無い。
スキマスイッチに全面的に任せただけあって、完全にスキマスイッチの楽曲の世界観。先輩との共演なのでかなり気合は入っていたと思われるし、これまでの福耳の夏の夜というキーワードを拡大して宇宙をテーマに置くなどリスペクトもしている印象。そろそろソロでは全く売れなくなってしまっていた事務所の最長老杏子を救済するためのユニットと一部で揶揄されていた福耳だったが、それを気にしたわけではないんだろうけど1番はスキマスイッチで2番から杏子が入ってくる編成にしたのは革命的だった。さすがにこの楽曲で杏子全面ボーカルで残りはまたコーラスとなってしまうと、本当に杏子様を祭り上げるユニットに終始してしまっていただろうし、今作でオールスターユニットとして大きな変化を果たしたと思う。
★★★★☆
1stベスト『THE BEST WORKS』
3rdベスト『ALL SONGS MUST PASS-Office Augusta 20th Anniversary BEST-』
4thベスト『ALL TIME BEST~福耳 20th Anniversary~』
ライブアルバム『ALL SONGS MUST PASS-BEST LIVE RECORDINGS From Augusta Camp 2012-』(AMAMI)
5th DANCE BABY DANCE/夏はこれからだ!
初の両A面シングル。前作を経てさらに事務所オールスターユニットの色が濃くなり、参加メンバーも増え、ついに演奏メンバーが全員福耳メンバーで固められるようになった。これに伴い今作以降はメンバーの誰かがプロデュースするという扱いになり、今作では2曲ともCOILが前面プロデュースを担当している(COIL2人は岡本定義はギターとコーラス、佐藤洋介はベースで、2人ともメインでの歌唱は行っていない)。
長澤知之は初参加だが、ギターとコーラス(コーラスは「DANCE BABY DANCE」のみ)でボーカル参加はしておらずジャケ写メンバーからは外れている。MICRON’ STUFFは「夏はこれからだ!」でラップパートを担当しているもののやはりジャケ写メンバーからは外れている。またMICRON’ STUFFは2010年に解散したため結果的に参加は今作のみ。
初期メンバー3人のうちの1人であるスガシカオはこの後独立して事務所を去ったため、自動的に福耳メンバーからも外れ、今作が最終参加シングルとなった。
COILの佐藤洋介がCOILのメンバー、ベーシストして参加したのも今作が最後。佐藤洋介はライブ活動休止の後にCOILを脱退したが、オーガスタには残留してレコーディングエンジニアとしての活動は継続していたため、エンジニアとして福耳に関わってはいる。しかしさすがにエンジニアまではメンバー扱いしていないため、福耳メンバーからは外れた。
DANCE BABY DANCE
作詞作曲:岡本定義、編曲:COIL
杏子、山崎まさよし、スガシカオ、元ちとせがVocal表記、それ以外はChorus表記だが、実質的に杏子メインボーカルという結成初期のボーカル体制での現時点で最終楽曲。
どちらかというと夏の夜のロマンチックな雰囲気を打ち出していたこれまでから一転して熱さを感じるアダルトで情熱的なサマーソング。もう一直線にワンナイトラブみたいなそんな1曲。元ちとせの恒例大サビパートは今度はそこだけ古文風味になってしまうという相変わらずの神秘性押し。ギラギラした曲調の中でいい感じに中和している。
★★★☆☆
1stトリビュートアルバム『10th Anniversary Songs~Tribute to COIL~』
3rdベスト『ALL SONGS MUST PASS-Office Augusta 20th Anniversary BEST-』
4thベスト『ALL TIME BEST~福耳 20th Anniversary~』
夏はこれからだ!
作詞作曲:岡本定義、編曲:COIL
スキマスイッチ大橋卓弥、元ちとせ、秦基博がVocal、MICRON’ STUFFがFLOW(ラップ)、初期メンの杏子・山崎まさよし・スガシカオはChorusになっており、リードボーカルを若手が担当した編成。元ちとせは「DANCE BABY DANCE」同様に大サビ部分でリードボーカルを担当していて1人だけ2曲で単独パートがある。
新たに加入した秦基博のボーカルで始まる事もあって、「惑星タイマー」に続いて新メンバーを前に出して紹介みたいなスタイルも福耳の定番となった。メインボーカルが若手主体でバランス的に「DANCE BABY DANCE」よりもライブで披露されやすいのか後にライブ音源が2度収録されるなどさりげに扱いが良い。基本的には秦基博、大橋卓弥のWボーカルで1番は秦基博、2番は大橋卓弥、最後のサビも順番に登場するなど、2人がパートをほぼ均等に分け合って歌い、元ちとせとMICRON’ STUFFにも間奏部で単独パートを用意するという構成。これまで夜の曲ばかりだったが今作は夏の青空が歌われている昼間のサマーソング。若手…といっても既にアラサーではあったが、先輩方と比べると爽やかな雰囲気。MICRON’ STUFFが参加していたのでラップが入ってくるのが異色か。
★★★☆☆
6thシングル『LOVE & LIVE LETTER』C/W(Live Ver. Augusta Camp 2011)
1stトリビュートアルバム『10th Anniversary Songs~Tribute to COIL~』(Extended Ver.)
3rdベスト『ALL SONGS MUST PASS-Office Augusta 20th Anniversary BEST-』
4thベスト『ALL TIME BEST~福耳 20th Anniversary~』
ライブアルバム『ALL SONGS MUST PASS-BEST LIVE RECORDINGS From Augusta Camp 2012-』(YOKOHAMA Day1)
6th LOVE & LIVE LETTER
4年ぶり。2011年秋にスガシカオが独立により脱退、新たに参加したさかいゆうが全面的にプロデュースまで担当。今作でいよいよ誰がメインという事も無く、全員でソロパートやユニゾン、コーラスを交えて歌う(グループの楽器担当メンバーは除く)スタイルへ完全移行。
「惑星タイマー」の時にスキマスイッチに全面的に任せたのに続いて今回はさかいゆうに全面的に任せた楽曲。もう1つブレイクしきれていなかったさかいゆうを福耳を通して一挙知名度拡大という狙いがあったと思われるが、今作自体が謎の大コケ(トップ10どころかまさかのトップ20落ち21位で唯一の1万割れ)となってしまった。久々の福耳だったのにプロモーション不足だったのでは…。You Tubeでメイキング映像5回に分けて公開するとかもしてたけど再生数5万前後だし(MV本編は70万近くいっている)…。
個人的には完成されたカラフルなポップスっぷりに圧倒され、なんだこの新人、天才が出てきたぞ…とかなり驚愕した1曲。全員でボーカルを回していくスタイルやサビでは杏子&元ちとせと男性陣に分かれて歌唱したりとこれまでになかった文字通りのオールスター感も素晴らしかった(以降このオールスターボーカル編成が基本になった)。一部の音楽ファンの間では高い評価を得ながらも結局今もさかいゆうはもう1つ売れる事がないままだが、最大最強のこのチャンス、そしてさかいゆうの楽曲の中でも最も一般受けしそうなポップスに振り切りながらもこだわりを存分に発揮したこれだけ素晴らしい楽曲で何故か売上が滑ったというのは本当に惜しかった…。
サビの男女の掛け合いとオールスター感もそうだけど、1番終了後の間奏で演奏がステレオで分かれるところや、最後の最後で加速してアップテンポ化するところなどアレンジ面でも聞きどころが多い。またスケールの大きな愛を歌った歌詞は普通に曲だけ聞いていると最後に“こきゅうするぼくは”と歌っているので歌詞がよりいっそう軽視されがちというか歌詞を見ることが無くなってしまうサブスク時代に何とも思わないかもしれないが、実際の歌詞では“歌”と書いて”ぼく”と読ませていて、この曲自体が“歌”目線での”歌”からリスナーへのLOVE & LIVE LETTERであった事が分かる、というところもグッとくる。”生きてく言い訳教えてくれる”とか”明日もまた生きよう 理由などいらない 呼吸するプロジェクト”っていうフレーズが特に好き。
★★★★★
4thベスト『ALL TIME BEST~福耳 20th Anniversary~』
ライブアルバム『ALL SONGS MUST PASS-BEST LIVE RECORDINGS From Augusta Camp 2012-』(YOKOHAMA Day2)
7th ブライト/Swing Swing Sing
浜端ヨウヘイ、竹原ピストル、松室政哉が新たにメンバー入り。野狐禅時代に2ndにコーラス参加していた竹原ピストルはソロになってからもオーガスタにいながらこれまで福耳に不参加だったが、前年の紅白出場により一気に事務所知名度トップメンバーとなった中で今作で正式メンバー入りとなった。
COILから正式に佐藤洋介が脱退したため、岡本定義のソロユニットとなり表記が岡本定義(COIL)に変わった。ただし佐藤洋介はレコーディングエンジニアとして今作に関与している。
今作は長澤知之、秦基博がそれぞれ用意した楽曲を山崎まさよしがアレンジ・プロデュースするという形になっている。またボーカル表記が個別ではなく、福耳名義となっている唯一のシングル。
5年ぶりの新曲となり、さらに悪化したシングルCD市場の中で、何故か前作より売上大幅回復、トップ10復帰も果たした。マジで2017年時点で普通にこれだけ売れるなら前作だけなんであんなコケたんだよ…。
ブライト
作詞作曲:長澤知之、編曲:山崎将義
次々とボーカルリレーしながら突き進んでいくアップナンバー。新たに加わった竹原ピストルの歌声は序盤で聞けるがかなり個性的だ。杏子のパートでキーを合わせるように転調するものの基本的にみんな同じパートを繰り返し歌っているのに、元ちとせだけ神秘的別パートという伝統芸も復活した。長澤知之はそういや前作にもいたのか程度で名前もちゃんと把握してなかったんだけど、こんな勢いのあるいい曲を書くのか…と前作ほどではないにしてもかなり驚いた1曲。
★★★★★
4thベスト『ALL TIME BEST~福耳 20th Anniversary~』
Swing Swing Sing
作詞作曲:秦基博、編曲:山崎将義
秦基博の初提供曲。初参加の「夏はこれからだ!」で歌いだしリードボーカルを担当していたものの、そういえば福耳へ曲を書き下ろしていなかったので、少し時期がズレての曲提供となった。秦基博なのでバラード系かと思ったらなんとウキウキ系のポップナンバー。自分の曲どころかV6や大原櫻子など他人へ提供した時もこんなウキウキな曲は書いていなかったのでかなり意外性がある。みんなで歌うというのを相当意識したのだろうか。ただ女性陣はコーラスに徹していて単独パートが登場しない。
この頃にはもう秦基博は徐々にリリースペースが落ちていて2016、2017年辺りからさらに新曲がなかなか出ない、アルバムどころではない状態になっていたが、直近の作品の中でも1つ抜けて印象に残る1曲だ。こんな隠し玉を持っていたとは(別に隠してない)…。なかなか最強の両A面シングルになった。
★★★★★
4thベスト『ALL TIME BEST~福耳 20th Anniversary~』
配信 イッツ・オールライト・ママ
18年4月12日
作詞:岡本定義、作曲:松室政哉、編曲:岡本定義・松室政哉
初の配信シングル。「Swing Swing Sing」に続いてボーカルが男性メンバーのみとなり、女性メンバーは完全にコーラス扱い。福耳で杏子がここまで出てこなくなると時代も変わったんだなぁ…と改めて思うが、中盤以降の合唱パートでは女性陣の声が少し強めに入っているので「Swing Swing Sing」よりは参加している感じはある。というかこの事務所いつの間にやらオッサンまみれになっていて、女性陣は杏子と元ちとせ、ドラムのあらきゆうこの3人だけの状況が長く続いていた。いつの間にか村上紗由里が参加するようになっているが1番下っ端扱いのこの人は1度も単独パート回ってこないし…。
基本的に前年を踏襲した方向性で誰がメインというより短いパートを回して歌い繋いでいく&終盤にかけて大合唱的に盛り上がっていくというナンバー。今回は前年も参加していたが制作関与は無かった松室政哉に作曲の出番が回ってきていて伝統も継続。オールスター感の漂う楽しげな曲で、近年この感じで固まってきたので真新しさは無いものの安定以上の良作といった印象の1曲。
★★★★☆
4thベスト『ALL TIME BEST~福耳 20th Anniversary~』
八月の夢
ベスト盤用の新曲。制作時間が取れなかったのか、参加メンバーが少なくなっていて5th頃までの古株メンバーのみが集結。スマートなメンバー構成になった事で、今回は女性陣も含めて全員(ボーカルではないスキマスイッチ常田、あらきを除く)にほぼ平等にソロパートが回ってくる構成。また少ないので集まりやすかったのか、配信シングル「イッツ・オールライト・ママ」はレコーディングメイキング映像のみでMVが制作されなかったが、今作はベストの新曲ながらMVがきちんと制作された。
COIL岡本の曲をスキマスイッチで編曲するという異色の組み合わせでベースとエレキギターはスキマスイッチのサポートバンドメンバーになるなど(ギターソロは山崎まさよし、アコギは秦基博)、演奏もストリングス以外はほぼ事務所メンで行っていた近年からやはり少し前に戻したような編成。
やや地味目な落ち着いたバラードナンバーだが、基本的に夏真っ盛り(近年はあまり季節感無かったけど)を歌ってきた福耳としては初めて終わりゆく夏や幾度も過ぎてきた過去の夏への感傷がしっとり表現されていて何度か聞いているとコクが出てくる1曲。終盤に”星のかけらをさがしていた”というフレーズも出てくるがこれもまた遠い過去になっているところに20年を感じられる。
8月が終わっていく夜に聴きたい1曲。できればそのタイミングでは少し涼しい風が吹いていればモアベター。
★★★★☆
4thベスト『ALL TIME BEST~福耳 20th Anniversary~』
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