Bluem of Youth シングル回顧~1995-2002~

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Bluem of Youth シングル回顧~1995-2002~

Something ELseに続く『電波少年』の派生番組『雷波少年』の企画による「ラストツアー~約束の場所へ~」のヒットで知られるBluem of Youth。ボーカルギターの別所悠二とギター、キーボード、ピアノ、プログラミングの松ヶ下宏之による2人組のロックユニットして95年にエピックよりデビューした。

実はブレイク前に「線路沿いの恋」で『HEY! HEY! HEY!』に出演したりもしたらしいんだけどエピックでは全作品O社100位圏外により、シングル「声」で契約を切られてしまう。その直後『雷波少年』の企画によりショッカーに拉致された2人が突きつけられたのはシベリア鉄道横断、旅の中で運命の1曲を完成させて日本武道館にその1曲を聞きにくる観客1万人を集める、出来なければ音楽業界引退…という過酷なものだった。

当時O社のチャート結果を使ったTVの企画モノはポケットビスケッツ、ブラックビスケッツなどいくつかあった。Something ELseもO社20位以内というものだったが、Bluem of Youthでは違う目標を設定したかったのか、同年ブラックビスケッツがO社での売上目標を全く果たせずに失敗して空中分解する事態となったためか、O社チャート結果を利用するのは避けてライブ動員数を目標としたのはちょっと新しかった。

企画を成功させたBluem of Youthだったが、その後の活動は順調とは言い難かった。企画自体が2番煎じのように見られた事で、Something ELse以上にすぐに売れなくなってしまったのもあるが、企画の間に作った曲だけでオリジナルアルバムを出した後は、活動を休止する02年までオリジナルアルバムを出すに至らなかった。途中からレンタルに入荷されなくなるほど扱いが悪くなったり、ライブでやたら発売未定の新曲を大量に披露したり、1万円を越える高額な未発表曲集2枚組+ライブDVDを出してみたり、休止後のラストライブの模様も2CD+DVDの1万越えアイテムだったり、正直中高生だった当時は作品を入手するのも妙にハードルが高かった

終始迷いの中で活動していたようでもあり、そんな迷いが反映されたようなそれっきりな作風の曲もあるが、それでも楽曲自体は非常にいいものが多かったと思う。

02年末に無期限の活動休止を宣言した後、2人はソロ活動を行っているが、10周年の05年にライブ3本で限定復活、08年には完全復活を遂げた。アコースティックリテイクアルバムと今度こそ迷いのないオリジナルアルバムをリリースするも全く売れなかった(O社300位圏外)。その後ここ何年かは目立った活動はほとんどなく沈静化してしまい、公式サイトも消滅してしまっている(各自のソロの公式サイトでBluemとしてライブをする際には告知する形を取っている)。

松ヶ下はソロ活動以外にサポートミュージシャン、楽曲提供やプロデュースも行っている。福山雅治の作品でギターを弾いたことがあったり、中川翔子のライブサポートやってたり、柏木由紀へ提供していたりもする。

またmiwaの1st~3rdアルバムまでのシングル、アルバム曲で編曲を担当していたQuatre-M=松ヶ下である。miwaが作曲面でもNAOKI-Tとベッタリになっていったせいかmiwaへの最終参加となった3rdアルバム『DELIGHT』でNAOKI-Tが1人オケ制作で埋め尽くす中で、Quatre-Mのサウンドプロデュース作品2曲はしっかり生バンドで制作していて、松ヶ下の丁寧なサウンドプロデュースっぷりが伺えて好印象だった。

2017.9~10新規執筆

1st 最後の願い

95年10月10日
作詞:別所悠二、作編曲:松ヶ下宏之
デビュー作だけあって気合の入った王道90’sポップロックナンバー。アーリー90’sではなく90年代半ば以降の王道J-POPで今聞いても古さは感じない。リズム隊にサポートメンバーの手を借りる以外はギターキーボードピアノプログラミングを一手に手掛けていた松ヶ下宏之のサウンドクリエイターとしての実力の高さが早くも炸裂している印象。「雷波少年」出演時にデビュー前はレコード会社で取り合いになったと紹介されていた記憶があるが、確かにデビュー作で自分でアレンジまで手掛けてこのクオリティというのは会社側も即ブレイクくらいの期待をかけても不思議ではない。未練全開の失恋ソングだが、曲調自体はそんなに切なくは無く、むしろ勢いがある。最後のサビを繰り返しすぎるせいか、アップテンポなのに5分オーバーというやや規格外のサイズではあるがそんなに長さを感じるわけでもない。紛れも無くいきなり飛び出した名曲である。

後追いで聞いた時、前企画のSomething ELseといい、何でこれが売れなかったのかなぁ…と不思議でしょうがなかったんだけど、最近になってこの曲のPVを見てぶったまげた。『ラストツアー』企画の時点では松ヶ下は寡黙な職人気質、別所は少しヤンチャそうな感じはあったけどあくまで普通の青年2人といった感じだったし、その後の休止までそのイメージは変わらなかった。しかしこの曲のPVにおいては松ヶ下はほぼそのままで真面目な職人気質のギタリストといった風貌だが、別所はプチヴィジュアル系みたいなメイクをしてクネクネした感じで歌っているという、お前誰だ状態。V系ユニットみたいなビジュアルイメージだったのである。本格的なV系よりも、V系のカテゴライズから抜けつつも、一般的にはV系扱いされていたようなブレイク時のSOPHIA辺りのイメージに近い感じだったが…。どっちみちロックといってもポップス寄りのけっこうストレートな曲を歌っているので、さわやか好青年スタイルで売り出せば良いものをV系のブームに便乗したかのような初期のビジュアル戦略は明らかに失敗だったんじゃないかと思う。
★★★★★
1stアルバム『bloom of youth
ベスト『Early Singles+
ライブアルバム『20021228LIVECOMPLETE』(ライブ)
リテイクベスト『Best Retakes』(リテイク)

2nd 10 Calls After

95年12月13日
作詞:別所悠二、作編曲:松ヶ下宏之
前作よりさらに洗練されたポップロックナンバー。電話をかけようかけまいかもどかしい気持ち、そしてかけても繋がらないという男性の心境を綴った歌詞は一応現代でも通じるが“ダイヤル”を回す描写があることと、メールやLINEなどの文字での送受信ツールが一切出てこないところに携帯電話がまだない(※携帯電話やPHSは存在はしていたがまださほど普及していない、また一応ポケベルはあったので暗号のような文字でのやり取りは可能ではあった)という時代性を強く感じる。ていうかダイヤル回すタイプの電話は95年時点でも少し古くなっていたと思うけど。我が家でも90年代序盤頃は黒いダイヤル式だった記憶があるが、95年にはもうプッシュ式に変わっていたような…。
歌詞の舞台とは少し異なるが金曜と土曜の深夜を舞台にしている事、曲のスピード感もあいまって深夜のドライブでこの曲を聞くと物凄くハマる。特に金曜か土曜の夜に高速道路を疾走しながら聞くこの曲のサビは格別だ。
★★★★★
1stアルバム『bloom of youth
ベスト『Early Singles+
ライブアルバム『20021228LIVECOMPLETE』(ライブ)
リテイクベスト『Best Retakes』(リテイク)

3rd Truth

96年7月1日
作詞:別所悠二、作編曲:松ヶ下宏之
OVA『TWIN SIGNAL』主題歌。アニメタイアップだったためなのか、前2作や1stアルバムとは毛色が異なり、打ち込みっぽいシパシパしたリズムが展開するロックナンバー。どんなアニメだったのかは知らないが何だかロボットアニメっぽい雰囲気。サビはそれなりに爽快にはじけるものの…どこか1つ物足りない。オリジナルアルバムにスルーされ、ラストライブや再結成後のリテイクでもスルーされるなど扱いも良くないが、確かにこれは初期のシングルどころかC/Wやアルバム曲含めても一段以上落ちて優先順位は下になるかも…。
★★★☆☆
ベスト『Early Singles+

4th 線路沿いの恋

線路沿いの恋
96年11月1日
作詞:別所悠二、作編曲:松ヶ下宏之
松ヶ下のメイン楽器はギターだがレコーディングではキーボード、ピアノを自ら演奏することが多く、ギターと鍵盤両方弾けるマルチプレイヤーだった。今作は4作目にしてピアノサウンドを主体とした文字通りの渾身の勝負作。過去の恋を振り返るアップテンポなんだけどとびきり切ない大名曲。畳みかけるように繰り返されるサビメロはキレキレで、6分を越える長尺にも関わらず全く長さを感じない。次回作からはサウンドプロデューサーを起用して方向性がひねくれてストレートさが失われてしまうので、恐らく相当な自信作であった今作さえ全く売れなかった事で方向性の転換を余儀なくされたものと思われる。

後の「声」にしても「ラストツアー」にしても名曲だけど、がけっぷちの状況でとにかく名曲を生み出さねば!という尋常ならぬ気迫を感じるのも確か。この曲にはそういった気負いは無く、純粋にいい歌を作り上げるべく活動していた結果辿りついた境地…といった印象がある。最高傑作

なお次回作「Time goes by…君がいるだけで」ではNEW VERSIONとしてリメイクしているが…シパシパした軽い打ち込み構成になってしまい何ですぐにこんな微妙なデチューンを行ってしまったのか…という微妙な仕上がり。
★★★★★
2ndアルバム『Target
5thシングルC/W(NEW VERSION)
ベスト『Early Singles+
ライブアルバム『20021228LIVECOMPLETE』(ライブ)
リテイクベスト『Best Retakes』(リテイク)

5th Time goes by…君がいるだけで

97年10月1日
作詞:別所悠二、作曲:松ヶ下宏之、編曲:松ヶ下宏之・鳥山雄司
エピック時代を1期と2期に分けるなら今作が第2期の始まりといえる。これは同時に試行錯誤の始まりでもあったと思う。これまでギター、ピアノ、キーボード、プログラミング、編曲はほぼ松ヶ下単独で手掛けていたが今作より共同アレンジャー、サウンドプロデューサーを起用するようになり、松ヶ下はギターのみなど参加が減り、アレンジャーがギターやキーボード、プログラミングを兼任もしくは完全に単独で行うようになった。そしてバンドを起用しない楽曲も増え、今作もギター以外打ち込みのポップロックナンバー。一応バンドサウンド風になっているが、これまでよりもこねくり回したような凝ったアレンジが印象的。サウンド面ではよりこれまでよりも聞きごたえが増したものの、肝心のサビがド頭の”Time goes by”こそキャッチーなもののその後もう1つ盛り上がりきれない印象で、これまでストレートに伝わってきていたメロディーのインパクトが弱くなってしまった感じもある。
★★★★☆
2ndアルバム『Target
ベスト『Early Singles+

6th Garden

98年3月21日
作詞:別所悠二、作曲:松ヶ下宏之、編曲:松ヶ下宏之・今井裕
アコースティックギター主体のミディアムナンバー。今作は生バンドを起用している。Gardenは庭ではなく、楽園の意味合いと思われどこかここではないどこか、現実から隔絶されたようなゆったりとした時間が流れているように感じられる。少し地味だが、今作はこねくり回すよりも抑えつつも主張するところは主張する事に徹したアレンジが絶妙。
★★★☆☆
2ndアルバム『Target
ベスト『Early Singles+
リテイクベスト『Best Retakes』(リテイク)

7th ロシアンルーレット

98年6月20日
作詞:別所悠二、作曲:松ヶ下宏之、編曲:森俊之
サウンドプロデュースにはBluem of Youthも入っているが編曲はアレンジャー単独。ドラムのみデモかよというくらいの軽い打ち込みで、ジャカジャカなるギター、地を這うベースなどリズミカルだが、全体にはかなり軽めでこざっぱりしている。ポップなんだけどひねくれ度が増していて、これはどうもなんだか煮え切らない。どうしても迷っていたように感じてしまうところがある。というか何しても売れないので売れる事こそがロシアンルーレットなんじゃねーの的な開き直りにも似た心情が隠されている…わけじゃないよな…。
★★★☆☆
2ndアルバム『Target
ベスト『Early Singles+
ライブアルバム『20021228LIVECOMPLETE』(ライブ)

8th 声

声
98年12月2日
作詞:別所悠二、作曲:松ヶ下宏之、編曲:松本晃彦
エピックとの契約終了前最後のシングル。後に平井堅は「楽園」リリース時にこれで最後だと告げられていたと語っているのでありえない話ではないが、恐らくこれで最後ね…と通告されていたんじゃないかというくらい気迫溢れるストリングスバラードナンバー。どうかこの声よ!届いてほしい!という祈りにも似た思いがこもっている…のかは分からないが、なんかずっとそんな印象がこの曲に対してはある。様々なアレンジャーを立ててこねくり回してきた結果、最終的には歌モノバラードで直球勝負といった装いで、確かに気合感じまくりのいい曲なんだけど狙いすぎたバラードという印象が強くてもう1つ何か足りない。

とはいえ普遍性はかなり高い曲で、これでストリングスアレンジをもっと覆い尽くすようにすれば、どこからどう聞いても完全にいきものがかりになるんじゃないかと思う。それはすなわち00年代半ば~10年代半ば頃までのJ-POP大盛王道である。10年後の方がトレンドだった?
★★★☆☆
ベスト『Early Singles+
リテイクベスト『Best Retakes』(リテイク)

9th ラストツアー~約束の場所へ~

ラストツアー~約束の場所へ~
99年12月1日
作詞作曲編曲:Bluem of Youth
「雷波少年」のがけっぷちミュージシャンによるSomething ELseに続く企画第2弾「ラストツアー」で生まれた運命の1曲。サムエルはマンションの一室で共同生活を送ってこれが売れなかったら契約終了という運命の1曲を制作してO社の20位以内を目指すというものだったが、Bluem of Youthの場合は既に「声」でエピックとの契約が終わっていて既に切られた直後だった(なので企画成功後にソニーと新規契約してのリリース)。また半年でシベリア鉄道でロシアを横断して、その間に運命の1曲を作り日本武道館でその1曲のみを聞くために10000人の動員を目指すというより過酷なものだった。移動はヒッチハイクではなかったとはいえ、異国の地を旅する間にヒッチハイク企画の猿岩石やドロンズのように2人はすっかり髪の毛モッサモサの髭面というワイルドな姿に変貌(特に松ヶ下の方がクセ毛だったらしくとんでもない爆発ヘアーに)していた。

この曲は当初候補曲に上がっていた数曲の事前街頭調査の結果がイマヒトツだったことを伝えられたメンバーが更なる究極の1曲を目指して山籠もりの末に完成させた渾身の1曲で、最終的にこのタイトルしかなかったという事で企画と同じ「ラストツアー」のタイトルがつけられた、というように放送されていた記憶がある。「約束の場所へ」というのも企画の最終地点である日本武道館を指していたと思われる。

直前番組ではゴールデン枠で上記の気迫のこもった内容をOAして煽った結果、10月4日運命の日本武道館はド平日にも関わらず満員御礼だった。この瞬間の様子はアルバム『スパシーバ』のライブ音源にそのまま収録されている。また結果発表の特番でも散々煽ってようやく成功した事が放送されたが、実は3万人集まって外に入りきれない観客がたくさんいると明かされて観客を入れ替えてもう1回ライブを行っていたことも放送されて企画は幕を閉じた。

その運命の日から2ヵ月、正式なレコーディングを行ってリリースされた。今作の売上は企画の成功には関係が無かったが2位を記録し、50万近いヒットを記録。また結果的に唯一のトップ10入り、当然ダントツ最大のヒットとなり、一般的にはこの曲の1発屋と認識されている。ウラジオストックで録音されたバージョンも後に発表されたがそちらはよりキーが高い。オリジナルの方がバンドサウンド等きっちり日本で作りこんで録音されたものと思われ、オリジナルの方が完成度は高いと思う。

運命の1曲に選んだだけあってやはり名曲。当時この曲を聞いた母は何だかミスチルみたい(別にミスチルのファンではないのでイメージ)とコメントしていたし、実際自分もいかにもヒット曲って感じだなぁ…とは思いつつもやはり名曲は名曲。宇多田ヒカルの登場を控え、これ以降のJ-POPは多様化が進むが、タイミングとしてもギリギリだった。
★★★★☆
3rdアルバム『スパシーバ
3rdアルバム『スパシーバ』(日本武道館 Live Version)
未発表曲+ライブDVD BOX『Gift~Bluem of Xtra~』(ウラジオストック recording)
ライブアルバム『20021228LIVECOMPLETE』(ライブ)
リテイクベスト『Best Retakes』(リテイク)

10th Stairway

Stairway
00年2月23日
作詞作曲編曲:Bluem of Youth
日テレの情報番組『知ってるつもり?!』EDタイアップ。「ラストツアー」企画の最終候補曲だった1曲を日テレのタイアップで次のシングルにする…というSomething ELseと全く同じ展開でのリリース。このためどうしても2番煎じ感が漂ってしまうが、Bluem of Youthの場合は企画最終段階の煽りで、この曲含む数曲の候補曲を街中で聞かせて反応を伺いイマイチな結果だった…なんていう企画最後の盛り上げのための演出を放送していたので、サムエル以上に2番煎じ感を宿命づけられてしまっていた…という正直かなりかわいそうな1曲。初登場17位と早くもトップ10入りを逃したが、最後のトップ20入りで5万枚の売上は2番ヒットとなる。

当時そんな風に「ラストツアー」以下…なんて事を思いながら聞いてみてビックリ。凄い名曲だコレ!と一瞬で印象がひっくり返ったのを記憶しているが、これ普通にこれ出しても企画は成功していたと思う。冒頭の「-5度のため息」というフレーズからはシベリアの旅だけでなく、雪国の景色を思わせるし(実際PVはとんでもない吹雪の雪原で撮影されていて見ているだけで凍えそうになる)、気が付いたらこっちの方が好きな曲になっていた。前作との大きな違いはストリングスを使用していないためバンド、特にギターがけっこう重厚に響いているところだろうか。
★★★★★
3rdアルバム『スパシーバ
ライブアルバム『20021228LIVECOMPLETE』(ライブ)
リテイクベスト『Best Retakes』(リテイク)

11th Lover’s slit

Lover’s slit
00年8月2日
作詞:別所悠二、作曲:松ヶ下宏之、編曲:Bluem of Youth
「雷波少年系ミラクルラブ&ホラーin日光江戸村」テーマ曲。企画から3枚目のシングルは雷波少年絡みのイベント企画のタイアップというこれまたSomething ELse(「あいのうた」)と全く同じ展開。この時点で既に次の『If』が用意されていたという話もあるが、アルバム『スパシーバ』も真面目なバラードばかりで、ここでバラード続きになるのを避けたかったのと、違う一面を見せたかったのか、レトロでダンサブルな雰囲気のアダルティーなロックナンバー。サビの歌詞は「腰に爪立てて」ではなく「cause she need 爪立てて」という空耳英語表記になっている。バラードイメージを打破するどころか、ぶっちゃけこれでリスナーが一斉にいなくなるという程の破壊力を見せた(37位→87位→100位圏外。これでギリ1万越えたのはまだCD売れていた時代ゆえか)。正直ナニコレ…っていう感じだったし、ここでこんな今までにない方向性を見せなくても普通に以前やっていた範囲内でのロックナンバーで良かったんじゃないかっていう。

年月を経て改めて聞いてみるとダンサブルでゴージャスなサウンドはそれなりに面白かったりもするけど、結局これっきりな上にアルバム未収録のままになったし、未だに何故これをシングルにしようという事になったのか、よほどラストツアー企画以降のイメージや群がる人々に嫌気が差していたのか…謎だ。

今作のC/Wは「fish」という新曲だが、3曲目にはstyle on pianoという別アレンジでも収録。こちらは原曲では冒頭からジイイイイイイイィィィと鳴りまくる強烈な音色のキーボード音を排除してピアノ演奏に変えたもの。こちらの方がスッキリしている上にピアノサウンドが凝っていてオシャレでカッコいい。

さらに4曲目にはtruth mixという別ミックスバージョンが入っているが曲自体は原曲と同じであり、間奏に作中で歌われている魅惑の女性についての”Truth”(電話の女性の声とそれを受けての別所のショッキングな叫び)が挿入されている。元々謎な曲だったがさらに謎深まる仕上がり。

1シングルで3バージョンも発表されたものの、前述のようにアルバム未収録のまま完全放置。配信もされていないので現在入手が最困難な楽曲となっている。
★★★☆☆
アルバム未収録
C/W(style on piano)
C/W(truth mix)

12th If

If
00年10月12日
作詞:別所悠二、作曲:松ヶ下宏之、編曲:Bluem of Youth
満を持しての勝負バラード。もう少し早く会えていたら?というIfの思いを歌う失恋バラード。淡々としたピアノ主体のサウンドだが何気にギターも重厚に鳴り響いてサウンドに厚みを出している。「線路沿いの恋」といい失恋の泣きメロを歌った時の別所の歌声、松ヶ下のメロディーメイカーっぷりは最強なんじゃないかと改めて思う。前作で興味が薄れていたところ、今作を聞いてなんて名曲なんだと思い、これ以降も聞き続けると事を決めた。また同じ週にFIELD OF VIEWの「秋風のモノクローム」がリリースされ(そちらは購入)、大体似たような位置にランクインしていてどっちも名曲なのに何で売れないんだ…とけっこう嘆いていたのも記憶している。

既に前作で多くのリスナーが関心を失っていた中でも初動だけで前作売上を突破、26位→36位→70位…と一応2週目に多少の粘りを見せて2万枚超の意地を見せた最後の5桁ヒット

Album Versionではこれみよがしなストリングスが導入されたが、より盛り上がった…というより完成されていたところに変にとってつけた感じがしてしまいイマイチ。さらに2年経っていたのでボーカルも再録音したようで、なんだかオリジナルにあった切実さが失われてしまったようなボーカルに変わってしまっていてこれまたイマイチ。シングルバージョンがアルバム未収録のままだが…この曲はシングルバージョンで聞け!と言いたいくらい名曲。

C/W3曲目に収録されたstyle on guitarは翌年のミニアルバム『冬の雫』にも収録されたアコースティックギター主体の別アレンジ。よりシンプルな味わいだが、それでも十分に響いてくる仕上がり。
★★★★★
シングルバージョンアルバム未収録
C/W(style on guitar)
ミニアルバム『冬の雫』(style on guitar)
4thアルバム『GROWIN’ DAYS』(Album Version)
ライブアルバム『20021228LIVECOMPLETE』(ライブ)
リテイクベスト『Best Retakes』(リテイク)

13th 夕立~sound of the memory~

夕立~sound of the memory~
01年8月8日
作詞:別所悠二、作曲:松ヶ下宏之、編曲:Bluem of Youth
サウンドプロデュースとして門倉聡が参加している事になっているが、全演奏を松ヶ下1人で担当(ギター、ベース、ピアノ、プログラミング)した宅録風のミディアムロック。かなり淡々とした地味な曲なんだけど、聞いているうちに何故かとても引き込まれる。時を経てどんどん好きになっていった曲だ。夏を歌う曲はさわやかなものが多いが、実際の夏というものは猛暑によるけだるさが漂い、グデーンとした休日を過ごす事も少なくない。この曲はそんなけだるい夏の風景を思わせる。

後に発表されたstyle on pianoはピアノとコーラスを主体としたアコースティックバージョンで、原曲よりも幻想的な雰囲気が漂っている。

この頃になるとオリジナルアルバムへ向かう様子が全く無くなり、シングルも結局この年これ1枚ポッキリ。年末にアコースティックテイストのミニアルバム『冬の雫』をリリースするのみに終わった。新曲が出来ない状況になっていたわけではないようで、後に未発表音源集として一挙まとめてもまだ音源化されなかった曲があるくらいには新曲をライブで披露していたようなんだけど…。

★★★★☆
4thアルバム『GROWIN’ DAYS
未発表曲+ライブDVD BOX『Gift~Bluem of Xtra~』(style on piano)
ライブアルバム『20021228LIVECOMPLETE』(ライブ)

14th サルヴェージュ

サルヴェージュ
02年10月9日
作詞:別所悠二、作曲:松ヶ下宏之、編曲:井上鑑
休止前最後にして『スパシーバ』以来ようやくとなるオリジナルアルバムに向けては紆余曲折の末に井上鑑をサウンドプロデューサーに迎えてアダルトで上質なロックを追求。アーバンサウンドと形容され、新たな一面を見せた。圧倒的に深夜の都会が似合うようなムーディーな雰囲気ながら一聴した感じ地味なので何度か聞かないと良さが見えてこなかった。

前作とその後のミニアルバム『冬の雫』を最後に、ついに近所のレンタル屋に入荷されなくなり、個人的には聞きたいCDがレンタル追放される事態に直面した初の経験となった。しかしいかんせん当時公式サイトでちょろっと視聴した感じがパッとせず、ひとまず保留として最終的にアルバム『GROWIN’ DAYS』を購入する…という形を取った。
★★★☆☆
4thアルバム『GROWIN’ DAYS
ライブアルバム『20021228LIVECOMPLETE』(ライブ)

15th ひとひらの夢

ひとひらの夢
02年12月4日
作詞:別所悠二、作曲:松ヶ下宏之、編曲:井上鑑&Bluem of Youth
結果的に最終シングル。前作をさらに突き詰めたような楽曲だが、おおよそシングル向けではない感じで井上鑑と目指したアーバンサウンドというのもまだまだ手探り感が強かったように思う。というのも「夕立~sound of the memory~」はほぼメンバーだけで完成させた楽曲だったが、当時のライブはロック調の新曲が多く、サウンドプロデューサーにも門倉聡を起用していたが『Gift~Bluem of Xtra~』で未発表曲集としてまとめてしまい、正式なオリジナルアルバムとしてまとめる事が出来なかった。その最中にリリースされたミニアルバム『冬の雫』はアコースティックだったかと思えば、いきなり井上鑑と組んで全く別の方向を目指し始めてしまい、今度はいきなりオリジナルアルバムでまとめようとしたので、当然突き詰めきれるはずもなく…。

結果的にアルバムのタイトル曲「GROWIN’ DAYS」が井上鑑との1つの完成形だったと思う。「GROWIN’ DAYS」は濃厚でジャジーなテイストを基本にしながらも前作や今作より明らかにシングルっぽいポップさとオシャレさを兼ね備えている。今作は井上鑑と目指したアーバンサウンドの完成へ至る過程の1曲という印象が強い。
★★★☆☆
4thアルバム『GROWIN’ DAYS
ライブアルバム『20021228LIVECOMPLETE』(ライブ)

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